
北米でニューヨークに次ぐ規模を誇るファッションイベント「バンクーバー・ファッション・ウィーク(Vancouver Fashion Week:VFW)」が4月8日から13日までバンクーバー市David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouverで開催された。
2001年にスタートして以来、毎年春と秋の2回開催され、若手から著名デザイナーまで世界各国のブランドがコレクションを発表する登竜門的存在として注目されている。
今年は、カナダ国内をはじめ、アメリカ、フランス、メキシコ、オーストラリア、ウクライナ、タイ、コロンビア、日本、韓国、中国などから注目のデザイナー約40人が参加。ファッション業界関係者だけでなく一般の観客も多く、国際都市バンクーバーの文化的魅力を象徴するイベントのひとつ。

日本からも複数のデザイナーが参加。各国から多様なブランドが集まる中、日本のファッションもその一角を担った。今回は熊本を拠点とするmaison de chatnoirのデザイナー、NoirさんとMakotoさんに話を聞いた。
日本から初参加、maison de chatnoirが魅せた「ノーティーファッション」

初日のランウェイで存在感を放ったのは日本から初参加のmaison de chatnoir(メゾン・ド・シャノワール)。熊本にアトリエ兼店舗を構え、革製品・革靴デザイナーのNoirさんと服飾デザイナーのMacotoさんの二人が手がけるブランドだ。
メゾン・ド・シャノワールは1930~60年代のイギリスファッションに「やんちゃで好奇心旺盛な子ども」をイメージした「ノーティースタイル(Naughty Style)」で、独自の世界観を築いてきた。今回のショーでは60年代スタイルを軸に、ブランドオリジナルの柄を随所に取り入れているという。

ショー直前のインタビューにNoirさんは「日本人は外から入れてきたものをより良くして、日本スタイルにするっていうのがすごい好きだと思う」と語り、「だからこそ(同ブランドのコンセプトは)60年代のイギリスのファッションなんですけど、そのスタイルを日本人がやることがやっぱり一番かっこいいと思ってる」と話した。
「今の自分だったら海外でもおもしろいことが起こせるかも」
今回のショー参加に至るまでには、数年前から招待がありながらも、まだ自分たちのタイミングではないと辞退してきた経緯があった。だが知人デザイナーからの後押しや増えてきた海外ファンの存在が背中を押し、「今ならおもしろいことが起こせるかもしれない」と初の海外ランウェイに挑んだ。

ブランドの出発点には「誰とも同じ服を着たくない」というMacotoさん自身の思いがある。ロリータファッションに引かれながらも、既製品で人とかぶることに違和感を抱き自ら服を作り始めた。ブランド立ち上げ当初はロリータスタイルを軸に展開していたが、約2年後、現在のスタイルへと方向転換した。
「ロリータってお嬢様のイメージがあるじゃないですか。でも私はその逆、親の言うことを聞かない子どもみたいな、ちょっとクソガキっぽい子が着る服があってもおもしろいんじゃないかって思ったんです」と笑顔で話す。
自由な発想と遊び心が詰まったコレクションは多様な文化が交錯するバンクーバーの空気の中で堂々とランウェイを飾った。
「次は200倍、300倍を目指したい」
ショー直前のインタビューでは「どんな反応が返ってくるのか、不安と楽しみが入り混じっていた」と話していたMacotoさんだったが、ステージを終えた二人の表情には安堵がにじんでいた。
ショー終了後に話を聞くと「いろんな国の人たちが、すごい、かわいいと、日本語で声をかけてくれて。本当に反応が伝わってきてうれしかったです」とNoirさん。コレクションの場でこれほどダイレクトに海外の観客のリアクションを感じたのは初めてだったという。

「次に出るかどうか、もう悩んでいるくらい」と声を弾ませ、「今はもっと前向きに歩いていこうと思っていますね。200倍、300倍って、どんどん上も目指せそうな気がします」と先を見据えた。
ジャマル代表が語る日本ブランドの魅力
VFWを主催するジャマル・アブドゥラーマン代表はイベントの理念について、「私たちの目的や目標は毎年同じです。クライアント、デザイナー、パートナーの露出を高めること、そしてショーに来てくださるお客様に、すばらしく、インスピレーションに満ちた体験をしていただくことです。毎シーズンそのために努力を重ねています」と語った。

今年も世界各国から多彩なブランドが集う中で日本のブランドについては、「プレゼンテーションや音楽、演出まで、どれもこだわりがありすばらしい」と評価。「たとえ自分のスタイルとは違っても、自然とリスペクトしたくなる」と述べ、日本の文化的背景やものづくりへの姿勢に敬意を示した。

(記事 田上麻里亜)
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