
ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で4月20日、「海活 」が開催された。会場では、漁業に関わる日本人とカナダ先住民の登壇者によるパネルディスカッションや試食会を行い、魚食と漁業をテーマに日本とカナダ先住民の文化をつなぎ、サステナブルな漁業への可能性なども提示した。UBC有志学生8人の主催で、Ttsukiji Fish Market Inc.とHummingbird Projectの共催。
UBC(ブリティッシュコロンビア大学)に在籍する日本からの交換留学生8人が中心となって開催した今回のイベント。学生の一人である蛭川恒さんは「帰国前に現地でお世話になった日本人コミュニティーに何か貢献できないかと考え、幅広い世代が共に学び交流できる場を作ろうと企画した」とイベント開催のいきさつを話す。
「企画の段階で、バンクーバー沿岸の清掃活動「海活」を通じて地域に貢献している疋田拓也さんと知り合ったことから、バンクーバーの『海文化』をテーマとした交流会にしようと決めた。バンクーバーの海文化を深く知ってもらうには先住民の方のことも知ってもらう必要がある。そこで日本人とカナダの先住民の生活に根付いている『魚食文化』を中心に、双方の文化をつなぎ学び合う場にしようとなった」とも。

登壇者の疋田拓也さんは、バンクーバー周辺の漁業や流通システム、日本の漁港との違いなどを説明。バンクーバーエリアでは生食用の魚の多くは日本から輸入されている現状もあげ、「環境への負荷を考えても地元産の魚を消費することは必要」とサーモン以外にも多様な地元産の魚を生食用として流通させる可能性に触れた。
「自然を保護しながらも漁獲を続けることは可能か?」との問いには「四季折々に漁獲する魚を変えるという仕組みを守り、もうかる魚だけ集中して採ることは止めなければいけない。魚を食べ続けたいから魚を守る、という考え方を広めていきたい」と話した。

先住民で漁業に長く関わるウィルフレッド・ウィルソンさんは、環境汚染、乱獲が原因でサーモンをはじめとする魚の減少が深刻な状態であることを説明。「漁獲量を減らすなどの対策は取られているが十分ではない」と訴えた。ウィルソンさん自身は父親から漁業を学び漁を続けているが「若い世代で漁業に携わる人数は減っているし魚を食べる量も減っている。時代に合わせながら継承してゆければ」とも話した。
「子どもの頃から知り合いに日本人がいる。自然や仕事に向き合う精神に共感を覚えることが多く、その仕事ぶりにも信頼を寄せてきた。日本人は魚についても深い知識を持っていると知っている」と話し、「今日聞いた話では、地元で旬の魚を必要なだけ取り、無駄なく消費するという考え方に共感を覚えた。将来の環境を守るために共に何かできるならすばらしいこと」とも。

司会進行を担当した西薮彩良さんは、「企画を始めた2月からずっと忙しい中準備をしてきたので、無事に終了してほっとしている。先住民の文化についても知らないことが多かったので直接お話しが聞けたのも良かった」と感想を話した。会場では、幅広い年齢層からの参加者らによる活発なディスカッションも見られた。「世代を越えた交流を生み出すという企画当初からの目的も達成できたのでは」と安堵の笑顔を見せた。
約60人が参加した会場ではサーモンやキハダなどの試食会も実施。来場者からは「魚食文化を通して、日本文化と先住民文化の共通点があると知ることができた」、「スーパーで魚の選択肢が少ないのを見て、カナダではサーモン以外の魚を食べる習慣があまりないとのだと思った」、「刺身用の魚は日本食料品店まで買いに行くのだが、近くの店でも手に入るようになればうれしい」、「食文化を通して他の文化を知ることができ大変勉強になった」などの感想が聞かれた。

(取材 Michiru Miyai)
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