隣組が5月28日、アドバンス・ケア・プラニング(Advance Care Planning: ACP、事前医療ケア計画)のセミナーをZoomで開催した。
講師を務めたのはフレイザーヘルスからアドバンス・ケア・プラニングの専門チームメンバーの看護師ローレン・トーマスさんとソーシャルワーカーのアンドリュー・サンダーソンさん。
セミナーの内容から、アドバンス・ケア・プラニング(前編)と、もしものときに意思決定を行う代理人について(後編)と、2回に分けてリポートする。今回は後編。
いざというときに意思決定するのは誰?
カナダでは提供される治療やその目的、利益、危険性、結果を理解する能力が本人にある限り、その医療処置に対して本人のインフォームド・コンセント(理解と同意)が求められる。
しかし本人が自分の意思を伝えることができない場合もある。そのような際には代理の意思決定者が必要になる。この代理の意思決定者を決めることがアドバンス・ケア・プラニングでは重要だという。
代理意思決定者は本人に代わって医療・ケアの決断を下す権限をもつ判断能力のある人で、本人が選んだ代理人(Representative)か、誰も選ばれていなければ、医療ケア提供者が任命する暫定的な代理意思決定者(Temporary Substitute Decision Maker)となる。
もしくは、裁判所が個人後見人(Personal Guardian)を任命することもある。
1人に定める必要はない代理人
もしもの場合の治療や処置を決める代理人は、1人または複数を指名することができる。代理人は19歳以上の成人で、本人の要望がわかっていればそれに従って決断を下すことに同意している必要がある。
代理人を指名する文書は「代理人同意書(Representation Agreement)」。この同意書で、代理人が決定することのできる医療、または住環境、食事、衣類、運動、衛生面や安全面についてのケアの種類と範囲を定めることができる。
BC州では、代理人同意書には「代理人同意書第9条」と「代理人同意書第7条」の2種類があり、弁護士や公証人の関与なしに作成することができる。
医療や身の回りのケアなどに関連して、必要と考えることをすべて行うことができる代理人を指名。判断能力のある成人が作成する。
本人に代わって医療や身の回りのケアなどを決める、または医療や身の回りのケアを決める手伝いをする人などを指名する書類。
第7条で代理人は延命治療を拒否することはできない。しかし、十分な判断能力がない人でも第7条の作成は可能。
代理人を決めていないとどうなる?
代理人を決めていない場合は、医療ケア提供者が暫定的な代理意思決定者(Temporary Substitute Decision Maker)を任命する。
次のリストから順に、代理意思決定者になる意思・能力があり条件を最初に満たす人が任命される。
- 配偶者(事実婚・同性婚を含む。同居期間は問わない)
- 子ども(優先順位なし)
- 親(優先順位なし)
- 兄弟姉妹(優先順位なし)
- 祖父母(優先順位なし)
- 孫(優先順位なし)
- 血縁または養子縁組でつながりのあるその他の親族
- 親しい友人
- 婚姻によって直接つながりのある親族
- Public Guardian and Trustee (公的後見人・受託者協会)によって任命された人
取材後に記者が会った55歳の女性は親の介護を通して、アドバンス・ケア・プランニングについて考えるようになったという。「希望しない治療をダラダラされるのはまっぴら。夫ではなく娘に代理人になってほしい」と最近、書類を作成したという。
アドバンス・ケア・プラニングは厚生労働省が2018年から普及活動を行うなど、日本でも注目されている。セミナー参加者には、神戸大学が作成したアドバンス・ケア・プラニングのリーフレットも配布された。
Fraser Healthアドバンス・ケア・プランニング質問窓口
TEL: 1-877-825-5034
advancecareplanning@fraserhealth.ca
電話番号はボイスメールだが、「Japanese please(日本語でお願いします)」と英語でメッセージを残すと、通訳と一緒に話をすることもできる。
参考資料
www.advancecareplanning.ca
(取材 西川桂子)
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