カナダde着物
第21話 季節*夏至
太陽の光が一年で一番強い季節に入りました。昼の時間が長く夜の時間が短いので、冬が長い北欧などでは、夏至のお祭りが盛んなのだそうです。人々が太陽をいっぱい浴びて喜ぶ姿が想像できますね。
「万葉の時代から愛されている野の草*露草(つゆくさ)」
6月頃から夏の間に咲く小さな青い花、露草は別名が多くあります。「月草」「搗き草」「着き草」(つきくさ)とも呼ばれ、可愛いその姿から「蛍草(ほたるぐさ)」「帽子花(ぼうしばな)」などの名前もあるそうです。
朝咲いても昼には萎んでしまうので、「はかなさ」や「うつろい」が好きな日本人に愛されるでしょうか。
青い色が布地に染まりやすく、草木染にも使われるそうです。
「初夏に合う草木染(くさきぞめ)」
天然の植物染料(*1)からできている草木染(*2)は、制作の過程で品質を一定にすることが難しく、単一の色を持たないので、同じ色を出すことがほぼ不可能だそうです。まさに「世界に一つだけの色」を愉しむことができます。着物でしたら、「一点もの」になるわけです。
草木染の爽やかな色目は、初夏から夏の着物や帯に合うような気がします。それは、春から夏は、草花が芽吹き始め、私たちの周りを彩りますので、その色を身にまといたい気分になるからでしょうか。
もちろん、年間を通じても愉しめる素敵な染めものだと思います。
あと、天然の染料だけですと濃い色が出し難いため、顔料という鉱物を粉にしたものを使うそうです。染めものの中で代表的な技法である型染め(*3)は、鮮やかな色が映えますので、華やかな着物や帯が仕立てられることでしょう。
残念ながら、草木染は科学染料が登場した明治初頭から衰退の道へと進み、現在の染色の殆どは合成染料で染められているそうです。
それでも、昨今では安全性が高いこと、環境に優しいこと、薬効があるなどで、天然の良さを見直されています。
千年の歴史があるといわれる草木染。日本の衣類の歴史そのものです。昔も今もお洒落をしたい気持ちは同じですね。
薬を服用するという、“服”の字はこの草木染が薬用として使われていたことを表しています。着ることで薬用効果があるとは、現代では思いもつきませんね。
私の幼なじみが、趣味が高じて手染めの手工芸品を作っています。彼女は型紙を使った型染めで浴衣や着物、先日は愛娘の成人式の振袖まで自作で染めてしまいました。昔から手先が器用で、美術大学でデザインを勉強した後、子育てをしながら様々な作品をマーケットなどで販売しています。 ((2021年7月1日現在、受付停止中)
HIRAME BLACK&TAN
https://www.instagram.com/hirame_b.t/
植物染料 しょくぶつせんりょう(*1)
ベニバナ(色素成分:カルコン誘導体)、藍(インジゴ)、露草(アントシアン類)、アカネ(アントラキノン誘導体)、ウコン(ナフトキノン誘導体)、クチナシ(カロチノイド類)、栗(ピロガロールタンニン)、柿(カテコールタンニン)など植物組織を破砕、又は抽出して得られる天然染料。
草木染 くさきぞめ(*2)
植物や果実など天然の原料を使用した染色方法のこと。草木を煮出した汁で布地を染め上げることで、独特の色合いを表現できるという点が大きな特徴である。
型染 かたぞめ(*3)
型染とは、型紙を使って布の上に防染糊を置き、染液をつけた刷毛で染めるか又は染液に浸して染め、水洗いで糊を落として模様を表す染め方です。非常に細かい模様を彫った小紋や、中くらいの模様を彫った中型や唐草はその代表的なもので、日本で幅広く行われた独特の手法です。
***引用***
暮らしの歳時記 http://www.i-nekko.jp/
田中直染料店 https://www.tanaka-nao.co.jp/
コナともこ
アラフィフの自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
10年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。通常でしたらお寺で学ぶ和の学校ですが、今年はオンラインで初めて試みることにしました。お家から是非ご参加下さい。
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持に為に使われている。
カナダ人の夫+高校生と大学生3人娘+老犬1匹と暮らしております。バンクーバー近郊在住。
和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
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