水族館で働きたい人必見!海洋生物トレーナーのKPさんが仕事に就くまで

Vancouver Aquarium, Vancouver, BC
バンクーバー市スタンレー公園内にあるバンクーバー水族館。Photo © バンクーバー新報

 バンクーバー水族館で海洋生物トレーナーとして活躍するKP(クリスティン・プランカート)さんが、水族館で働くことになった経緯をYouTubeのビデオで公開している。バンクーバー新報ではKPさんに許可を得て、その内容を紹介する。

 水族館が昨年9月に閉館となってからも、一部スタッフやボランティアが水族館で暮らす海洋生物の様子をSNSを通して紹介している。特に、昨年保護されて大人気になったジョーイをはじめ、ラッコたちの情報は、世界中にバンクーバー水族館ファンを広げた。

 KPさんは発信者の一人で、多くの人からどうすれば水族館での仕事に就くことができるのかという質問を受けたという。これらの質問に答える形で動画「How to Get the World’s GREATEST Job | How I Got a Job Working with Marine Mammals」を公開している。

環境保護と動物への情熱がなければできない仕事

 海洋生物について学んで水族館で働きたいという人は多い。KPさんは海洋生物に関連した仕事に就くための重要な要素の一つとして、環境保護と動物への情熱・パッションを挙げる。

 大学を卒業していることなどが必要である一方、収入はよくない。動物が好きだから、関心があるからといって、簡単になれるものではない。情熱がなければできないという。

 アメリカ・コロラド州出身のKPさんは両親にデンバー動物園に連れて行ってもらったことをきっかけに、動物に関心を持つ。

 近年、欧米では動物福祉を重視する気運が高まっている。バンクーバー水族館でもかつてはシャチやイルカ、ベルーガも飼育されていたが、水族館のあるバンクーバー公園局が、ケガをしていたり保護されたとしても、クジラ族を新たに飼育することを禁止することを決めた。2017年5月のことだ。

 しかしKPさんは「コロラド州デンバー郊外で生まれ育った私が、動物園がなければ、素晴らしい動物たちを見る機会はありませんでした」と、動物園や水族館の存在意義を訴える。

バンクーバー水族館で海洋生物トレーナーとして活躍するKP(クリスティン・プランカート)さん。Photo courtesy of Kristyn Plancarte
バンクーバー水族館で海洋生物トレーナーとして活躍するKP(クリスティン・プランカート)さん。写真はタズ。Photo courtesy of Kristyn Plancarte

業務に役立つ、心理学の知識

 次に必要なことは、大学で学ぶことだ。情熱だけでは海洋生物学者にはなれず、大学を卒業している必要があるという。

 KPさんはコロラド州立大学で動物学と生物学を専攻して学位を持つ。ダブルメジャーだが、海洋生物に関してどんな仕事をしたいかによって、さまざまなオプションがあるそうだ。

 ただし、海洋生物の何らかのトレーニングに携わる職業を目指すなら、心理学の講義を数種類選択することを勧めている。「ヒトと動物の心理は基本的に同じものです」と心理学を学ぶ理由を説明する。

 「海洋生物に対して(行動心理学の基本的な理論である)『オペラント条件付け』や『正の強化』をよく用いるのですが、これらについては基本的な心理学コースで学びます」*

 そして何より重要なこととして、実務経験を挙げる。KPさんは学生時代にはロッキーマウンテンの猛禽類保護施設、Rocky Mountain Raptor Programでボランティア活動を行った。

 ワシ、フクロウ、タカなどの世話をして、プログラムの教育部門に関わり、コロラド周辺のさまざまな教育機関やイベントにおいてアウトリーチを担当した。アウトリーチ教育や保全に大きな関心を持つようになったのは、このボランティア活動がきっかけだったという。

 さらに大学卒業後、インターンとして働くことができるところを探す。アメリカ各地のプログラムに加え、ベルーガやラッコの世話をするというバンクーバー水族館のインターンシップ募集を見つけ「ダメ元」で応募した。

 「22歳でコロラドから出たことがなかった私が、バンクーバーで、それも4人の見ず知らずの人たちと暮らすことは不安でした」とインターンを始めたときの気持ちを振り返る。その上、インターンは無給だった。

 「2カ所以上で無給のインターン活動を行って、やっとフルタイムの海洋生物トレーナーの仕事に就くことができるという状況です。4カ所でインターンをしたという人もいます。私はバンクーバー水族館でのインターンのあと、ワシントン州タコマのポイント・デファイアンス動物園&水族館で働きました」

 ポイント・デファイアンス動物園&水族館でのインターンを終えるころに、バンクーバー水族館での有給のポジションのオファーを受けることができたという。

最後にKPさんは、海洋生物学者になるために必要なことは

・情熱。積極的な姿勢
・冒険の精神。リスクを受け入れ、自分の安全圏から外に出ること

とアドバイスしている。

KPさんのYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/WineandWins

Twitter
https://twitter.com/KPinotNoir

インスタグラム
https://instagram.com/kp.assionate

TikTok
https://vm.tiktok.com/ZMevdmy9j/

編集部注 
『オペラント条件付け』は、ヒトや動物が自発した反応の直後に報酬や懲罰を与えることで、その反応が起こる頻度を変化させること。
『正の強化』は、行動によって快刺激が得られる場合であり、行動は強化される。(出典『科学事典』)

(取材 西川桂子)

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