令和2年度外務大臣表彰を受章したメアリー・キタガワさんへの伝達式が9月17日、在バンクーバー日本国総領事公邸で開かれた。
活動家として知られる日系二世のキタガワさんは、日本とカナダの相互理解の促進に寄与した功績により昨年12月に同表彰を受章。コロナ禍により延期された伝達式は感染対策を施した形で実施され、キタガワさんの親族を中心に約30人が出席した。
日系カナダ人のための活動
冒頭で挨拶した羽鳥隆総領事は「キタガワさんはお母さんから、傍観者にならずに意見を言うことの大切さを教えられたそうです。約70年前には難しかったことと思います」と述べた上で、キタガワさんの活動内容を紹介した。
キタガワさんは、2006年にバンクーバーダウンタウンの連邦政府の建物に反アジア派として知られる政治家ハワード・グリーンの名前が付けられると聞き、反対運動を起こした。その結果、この建物の名称は連邦政府初のアジア系議員であるダグラス・ジャングに変更された。
また、第二次世界大戦中、カナダ政府による強制移動政策によってブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)を追われた元日系人学生へ学位を授与するよう大学側に働きかけた。4年後の2012年、UBCは76人に名誉学位を授与。歴史に残る出来事として国内外で報道された。
アジア系カナダ人の歴史
出席者全員をひとりずつ紹介したキタガワさんは、羽鳥総領事および総領事館職員に感謝の言葉を述べた。その中には、UBCアンバサダーのウェンディー・イップさん、日系文化センター・博物館理事長ハーブ・オノさん、同事務局長ケーラ・後新門フォスターさんの姿もあった。
全カナダ日系人協会会長のロリーン・オイカワさんからの祝辞が読み上げられたあと、UBCのセント・ジョンズ・カレッジで歴史を教えるヘンリー・ユー博士が「UBCではキタガワさんの活動を元に、ローラ・イシグロ教授がアジア系カナダ人の歴史と移民学を教えています」と述べ、キタガワさんの貢献は日系カナダ人の遺産であると称えた。
メアリー・ケイコ・キタガワ
1934年、ブリティッシュ・コロンビア州ソルト・スプリング島生まれ。日系2世の教師・活動家。グレーター・バンクーバー日系カナダ市民協会会員。夫はトッシュ・キタガワさん。2018年にブリティッシュ・コロンビア勲章、2020年に外務大臣表彰受章。
(取材 ルイーズ阿久沢)
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