カナダで病気やケガで医療関係者と話をする際、言葉の問題から不安に思っている人も多いのではないだろうか。
スペシャリスト・専門医の診察を受ける際をはじめ、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州での医療関係者とのアポイントなどで、言葉のヘルプがほしいという人に耳よりな情報がある。プロビンシャル・ランゲージ・サービス(Provincial Language Service)がBC州の医療保険(MSP)を通じて、通訳、翻訳支援を行っている。
プロビンシャル・ランゲージ・サービスのディレクター、キーラン・マリさんにZoomで話を聞いた。
– プロビンシャル・ランゲージ・サービスについて教えてください。
MSPを通じて利用することができる通訳、翻訳サービスで、日本語ほか、さまざまな言語や手話にも対応しています。通訳は対面だけではなく、ビデオ通話や電話でも行っています。
– 日本語以外も対応しているそうですね。何カ国語に対応しているのでしょう。
対面の通訳は50から60の言語を扱っています。ビデオ通話や電話での通訳はもっと多くの言語に対応していて200語以上です。
ビデオ通話を利用することで、メトロバンクーバーのみでなく、州内遠隔地に住んでいる方にもサービスを提供しています。
– 通訳や翻訳サービスを利用するシステムについて教えてください。例えば、私が来週、BC Cancer Agencyにアポイントメントがあり日本語の通訳をお願いしたい場合、プロビンシャル・ランゲージ・サービスに電話をして通訳に来てもらうようリクエストできるのでしょうか。
患者側から予約することはありません。私たちのサービスはMSPを通してになります。病院や医師といったヘルスケアプロバイダーが必要に応じてプロビンシャル・ランゲージ・サービスにサービスを要請して、私たちが通訳サービスを手配します。
ですから患者自身からヘルスケアプロバイダーにリクエストをすれば、私たちに連絡があり、通訳がつきます。
現在はかかりつけ医、GP(General Practitioner。総合診療医のこと)も電話での通訳をリクエストできるようになっているので、かかりつけ医が日本語対応をしていなくて、通訳を頼みたいというときにはGPに頼んでください。
– 大した病気でないのに、通訳をお願いするのは気が引けるという人もいるかもしれません。
重病の場合に通訳をつけてもらえるというものではなく、たとえばフィジオセラピーの治療を受けていて、コミュニケーションをとることができず、通訳を頼みたいという場合は、その治療がMSPで提供されているものであればリクエストできます。
– MSPでということは、歯医者に行く場合は通訳をお願いすることはできないのでしょうか。
歯科治療はMSPの範囲ではないので対応していません。
– カナダではCTを撮ってもらうのにも時間がかかることがあったりと、一部の人は早く診察を受けるために民間医療機関、プライベートクリニック、検査機関を利用する人もいます。そのような場合の通訳はお願いできるのでしょうか。
MSPの範囲ではないので対応していません。プロビンシャル・ランゲージ・サービスは公共部門になります。MSPとは関係のない民間のクリニックを利用するような場合は、ご自身で通訳会社に連絡して手配してください。
– エマージェンシー・救急で病院に行って、通訳が必要になる場合もありますよね。その場合はあらかじめ予約しておくことはできません。どうすればいいのでしょう。
現在はローワーメインランドの各エマージェンシー部門でビデオでの通訳に対応するようになっています。ですから、言語サービスを利用しやすくなっているはずです。
– ビデオ通訳などは新型コロナウイルス感染拡大がきっかけになったのでしょうか。
コロナ以前にもビデオ通訳のサービスはありました。しかし、パンデミック以来、ビデオ通訳の利用者が増えたのも確かです。
昨年の春はロックダウンで病院に入る人数が限られていて、通訳は病院を訪れることはできませんでした。そのためビデオ通訳を利用することになりました。
– 利用費はどうなっていますか。
ヘルスケアプロバイダーがプロビンシャル・ランゲージ・サービスに連絡して通訳がつく場合は、MSPでカバーされていて、患者が費用を支払う必要はありません。
– 日本人で通訳サービスを利用している人はどれぐらいの数になりますか。
今年1月から8月末までの間に、日本語の通訳のリクエストは対面、電話、ビデオの3種類の合計で1,406件ありました。一方、私たちが受けた通訳リクエスト総数は127,206件でした。
– プロビンシャル・ランゲージ・サービスの日本人通訳の数を教えてください。
病院などを訪問して対面での通訳サービスを行う人は5人、電話で対応する通訳はもっと多いです。
– 最後にBC州の日本人コミュニティの人たちにアドバイスがあれば。
病気のときには、自分の言葉を話す医師やヘルスケアプロバイダーから診察を受けたいと思うこと、自分の言葉で話すほうが楽というのは当然です。でも、診察を受ける医師が日本語なり、自分の言語を話さない場合は、通訳を利用することで、その隙間を埋めることができます。
ですから通訳が必要な場合は、ヘルスケアプロバイダーにつけてもらえるようリクエストしてください。
(取材 西川桂子)
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