米国民主党の主導する民主主義普及活動について    前編

 桂川雅夫さんの米国民主党が主導する民主主義についての投稿。前編。

2021.11.11

 桂川 雅夫

 米国にBiden政権が誕生して、ほぼ2か月が過ぎたところで、初めての記者会見が行なわれた。その折にBiden大統領は、“中国の習近平は、民主主義を全く理解していない”だったか、”理解をしようという気持ちが全くない“と云う様な趣旨の発言をした。正確な表現は忘れて思い出せないので、この様な表現でお許し願うとしての話であるが、正直それを聴いていてちょっと驚いた。

 何故かと云えば、米国の大統領が公式の場で、他国の最高指導者の名前を挙げて、その様な批判か非難をする様な発言を、遠慮なくしたことから察して、Biden大統領は、それぞれの国の発展段階とか国々の宗教などにかかわらず、政治体制は全て民主主義であるべきだというのか、或いは民主主義はすべての国において、それぞれの国の経済的基盤や国民の民度や宗教などにかかわらず、機能するはずだという理解を持っているのかは分からないが、兎に角世界の国の政治は全て民主主義化されるべきだ、という確信を持っているのではないのかと感じたからである。

 この8月のタリバンの復活で、アフガニスタンの民主主義化は不成功となり、米軍は撤退したが、その折の不手際を咎められているBiden大統領は、最近は民主化主導のトーンはいくらか下がっている。併し、米国民主党は過去のObama大統領時代から、世界の警察の役割はやめると云っていたが、一方では米国は民主主義のリーダーであり世界に民主主義を広める役割が米国にあると云って、後にアラブの春と呼ばれた、北アフリカ諸国や中近東、アジアの一部で、民主主義化を色々と後押していた。その結果はほとんどの国で成功しなかったが、唯一の成功例だと云われたチュニジアでは、独裁政権はなくなったが、唯一の産業とかという観光産業は不振で、若者の失業率は高く、職を求めて欧州への密航者が後を絶たない状態で、国はまさに崩壊状態である。

 エジプトは軍事政権に後戻り、イエメンは政権側をサウジが、反政府勢力側をイランが後押し内戦状態であり、シリアは既存の政権は崩壊せずに存在し、反政府勢力と、ISと、更には国を持たない最大民族と云われるクルド族も加わった3つ巴或いは4つ巴と云える内戦が10年近くも続いている。更にそれぞれを支援する、ロシア、トルコ、米国、イランなどが参戦し何百万人ものシリア難民が隣国のトルコやヨルダン、更には欧州へと逃れ、悲惨な生活を余儀なくさせられている。ロシアは自国の影響力拡大ト云う野心もあるようだが、一方表向きにはエジプトやリビヤの結果から学べと云い、既存の独裁政権を倒せばよいというものではないとして、既存のアサド政権を軍事的にサポートし、米国のObama大統領は、反政府をサポートする側であった。(米国はTrump大統領に変わった後、ISを標的にするべく変更、ISがほぼ消滅した段階で軍を引上げた。)

 先ず、アラブの春とかと称せられた民主主義への移行の試みは、上記通り失敗に終わった。結局は元の政権のままが良かったか、軍事政権が出来て事態を収拾することで収まった。なぜそういう結果になったのかは、民主主義政権を構築し、機能させることができる土台が無い状態であったという事だと思う。一口で言えば、民主主義が何かを理解し機能させ得る国民の共通理解を得られる民度の段階、それに個々の個人の尊厳を敬い相互に恵愛できる或るレベルの精神的なものの共有が、その国の国民の既存の教育や宗教心などで十分得られていなかったからだと思う。それともう一つは、民主主義を云々する前に、独裁政権であろうが、軍事政権であろうが、その国の国民が生きて行けるための、最低の生活手段、即ちどんな形や種類であろうが“所得“が、何らかの形で形成されているという必要が有るという事だったが、そういうものがまだ形成されていなかったからだと思う。逆に言えば、若しもそういうものが既に形成されていれば、民主主義でなくても、国民が望めば、中国の如く共産主義でも、何主義でもが構築できて機能させることができるのではないのだろうか。

 そういう理解が無い状態で、Obama大統領やBiden大統領が米国は民主主義のリーダーだ、民主主義を世界に広めるのが米国の役割だと云って、世界の国々に民主主義を押し付けてきたし、又押し付けようとしているのを、ロシアのプーチン大統領は何故シリアの状態から学ば無いのかと、思っているのではないのだろうか。

                                         

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