家の中の危険を確認、できるだけ転ばない身体を作る!作業療法士が説明する転倒予防 3

    隣組シニアライフセミナー「オキュペーショナル・セラピスト(作業療法士)」

     隣組が毎月第4金曜日に開催しているシニアライフセミナーではシニアの生活に役立つ情報を提供している。

     9月には「オキュペーショナル・セラピスト(作業療法士)」のタイトルで、オキュペーショナル・セラピストの仕事について、サポートを受けるにはどうすればよいか、高齢者の転倒防止など解説があった。 

     高齢者が転倒すると寝たきりになることもよくある。高齢者本人や家族に高齢者がいる人に有益な情報が満載のセミナーだった。内容を3回に分けてリポートする。

     最終回は部屋別の転倒防止アイデア、転倒予防の運動、アラームシステムなどについて。

     講師はバンクーバー・コースタル・ヘルス(VCH)に所属するフジノ・ミドリさんで、日常生活の行動が困難な人の手助けをする作業療法士(オキュペーショナル・セラピストOT)として活躍している。

    家の中に潜む危険に注意。部屋別に転倒防止策を確認!

     フジノさんは部屋別に転倒を防ぐための注意事項や転倒防止のアイデアも説明した。

    階段やステップ

    ・階段やステップに物を置かないようにする。
    ・手すりが緩んでいないか確認。照明にも注意。
    ・階段の照明のスイッチは階段の上と下の両方に。(暗闇での階段上り下りは危険)
    ・階段のカーペットがしっかり留まっているか?緩んでいないか確認。
    ・手すりをつけることを検討。

    台所・キッチン

    ・頻繁に使うものは、手が届きやすいところに置く。目線からウエスト辺りの高さが目安。
    ・床にものを置かない。歩きやすいスペースを確保。
    ・ウォーカーを使っている場合は、トレイをつけると、物が運びやすくなって便利。

    浴室・バスルーム
    ・滑り止め防止用のマットをバスタブやシャワーストールに敷く。
    ・手すりをつける。タオル掛けを手すりとして使わない!

    「タオル掛けを手すりとして使っている方が結構いらっしゃいます。タオル掛けはタオルを掛けるためのもので、人間の体重には対応していません。危険です」という。

    ・トイレから立ったり、座ったりが難しい。
    ・バスタブまたは、シャワーストールから出たり、 入ったりするのが難しい。

    「トイレから立ったり、座ったりが難しい、浴槽やシャワールームの出入りが怖いという方はOTに相談してください」とフジノさんはアドバイスした。

    寝室・居間

    ・照明のスイッチはベッドから届くところに。(暗闇を動かずに済むように)
    ・ベッドやソファから簡単に立ち上がれるか?
    立ち上がることができない場合には、「furniture riser」などを使って、ベッドやソファの高さを調節すると、楽になる場合がある。

    ・電化製品のコードは、壁際にまとめておく。
    ・床に物を置かない。

    「フローリングにラグを敷いている場合、境目でつまづくことがありますので、どちらか一つのほうがいいです。またラグやカーペットの端がめくれていたら端を固定してください」(フジノさん)

    エクササイズで筋力やバランス能力をつける!

     転倒予防、転倒防止には筋力やバランス能力をつけることも大切だ。地域のエクササイズや運動のプログラム、オンラインで開催されているプログラムがある。

     ただし、エクササイズを行う場合には医師に相談して、個人の責任で参加する。

    1. SAIL (Strategies and Actions of Independent Living)

    ・自宅で行うエクササイズ。レベル1から3まで。
    ・過去3カ月に骨折したことがある場合は、相談時にその旨を告げること。

     http://www.vch.ca/Documents/HAP-Info-for-Clients.pdf

    レベル1:座って行う体操
     http://www.vch.ca/Documents/HAP-Level-1-Sitting.pdf

    レベル2:立った状態で行う体操
    http://www.vch.ca/Documents/HAP-Level-2-Standing.pdf

    レベル3:動きがら行う体操
    http://www.vch.ca/Documents/HAP-Level-3-Moving.pdf

    *英語
    *各レベル、7つのエクササイズがある。

    2、太極拳やOsteoFit、Steady Feetエクササイズ

    バランス能力をつけるエクササイズ。ビデオやクラス情報。
    https://findingbalancebc.ca/exercise/

    ・OsteoFitは骨密度が低くて気になる人、骨粗鬆症の人などを対象に、骨折するリスクを軽減するためのプログラム。

    ・Steady Feetはバランスとモビリティ能力改善のためのプログラムで、週2回コミュニティセンターなどで行われる。8~10週間のコース。

    ・太極拳はゆっくり動いてバランスを取るため、転倒防止エクササイズとしてよい。

    そのほか、「Choose to Move」や、歩行をするのに杖やウォーカーを使っている人を主な対象とした「Get Up & GO !(ゲットアップ&ゴー!)。

    http://www.bcwomens.ca/our-services/population-health-promotion/osteofit/#Get–Up–&–Go
    https://www.choosetomove.ca

    転倒したらどうする?

     転倒防止策を行って気を付けていても、転ぶことはある。転んだ時はどう対処すればいいのだろう。

     フジノさんが強調していたのは、まずは落ち着くこと。転ぶとショックを受けることもあるが、あせらずに起き上がってみる。うまく立ち上がれない場合は何度か挑戦する。

     起き上がるのに時間がかかることもある。あるいはケガをして動けないこともある。そのようなときは、手が届くところに羽織るものがないか探して、暖かくしておくことも大切だという。

     起き上がることができず、またすぐに助けを得ることができないような場合は、動けなくても少しずつ体勢を変える。床ずれを防ぐためだ。

    http://www.fallsclinic.ca/wp-content/uploads/2015/09/VCH_What-To-Do-If-You-Fall.pdf

    一人のときに転んだ時のために、呼び出し機能付きメディカルアラーム

     一人暮らしの人が転んでしまった時に備えて、呼び出し機能のついたメディカルアラームの利用も勧めた。

     メディカルアラートシステムにはリストバンドやネックレス型などがあり、

    ・ライフライン Lifeline® Senior Alert System
    ・テラス TELUS Medical Alert System
    ・セントジョンズ St Johns Medical Alert Systems

    をはじめ、いくつかの企業が提供している。転倒を検知するシステムもあり、着用者が転ぶと検知すると、緊急通報サービスに連絡する。

    *セミナーでフジノさんが利用した参考資料
    オンライン
    ・Fall Prevention, The Government of British Columbia
    https://www2.Gov.bc.ca/gov/content/family-social-supports/seniors/health-safety/disease-and-injury-care-and-prevention/fall-prevention

    ・Home and Recreational Safety, Centers for Disease Control and Prevention
    https://www.cdc.gov/homeandrecreationalsafety/falls/adultfalls.html

    ・Seniors’ falls in Canada second report, Public Health Agency of Canada
    https://www.phac-aspc.gc.ca/seniors-aines/publications/public/injury-blessure/seniors_falls- chutes_aines/assets/pdf/seniors_falls-chutes_aines-eng.pdf

    バンクーバーコースタルヘルスの資料
    (Vancouver Coastal Health VCH publications)
    ・Prevent falls; Stay in the Game
    ・Stay on Your Feet; Fall & Injury Prevention Program
    ・Stay on Your Feet; What to do if you fall, Fall & Injury Prevention Program

     
    (取材 西川桂子)

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