~公邸料理人竹内シェフに聞くハレの日のおもてなし~
クリスマスから新年にかけてはパーティーなど人と集まる機会が多い。2022年の新年も2021年同様にパンデミックによりこれまでとは異なる年明けになりそうだが、プレゼンテーションやスタイリングに工夫をして、美味しい料理を楽しみ、明るい気持ちで新年を迎えたい。
2021年の新年号で在バンクーバー日本国総領事館公邸料理人の竹内えみさんに公邸での正月料理や、おもてなしでの工夫などについて聞いたものを再紹介する。新年会レセプションでの画像も新たに3点加えた。
まず、公邸で提供しているお正月料理について教えてください。
公邸での料理は会食とレセプションになります。お正月らしさを出すために前菜に工夫をしています。たとえば、お節料理を代表する食材や、松竹梅や金粉など縁起のよいあしらいで演出します。
金粉は日本から仕入れていらっしゃるのでしょうか。
いえ、金粉はデザートで使う方も多いですし、カナダでも簡単に手に入ります。
確かにフレンチなどでも、金箔をあしらったりしていますね。スペシャルティショップのような専門店を使っていらっしゃるのでしょうか。
キッチンウェア専門のお店を使っています。レストラン関係者のみでなく、一般の方も利用できます。
新年の時期の前菜は、どのようなものを用意されていますか?
メニューはお客様がアレルギーがないかなどを確認してから決めます。問題がないようでしたら、数の子や黒豆といった普段は召し上がらないお節料理の食材を取り入れた献立をご用意します。
公邸での会食は外交活動の一環として日本の食文化の発信の場でもあります。はじめの前菜でお正月(年中行事)を表現することによって、日本に興味を持っていただくきっかけになればと考えています。
数の子(子持ち昆布)は塩抜きして、鰹と昆布の合わせ出汁とお醤油、みりんで仕上げます。
芽が出る、出世するという縁起のよい慈姑(くわい)も、アジア系スーパーなどで手に入るので使います。煮物のイメージがあると思うのですが、薄くスライスして素揚げにするとポテトチップのような仕上がりで美味しく召し上がれます。
そのほか栗が手に入りやすいのできんとんも作ります。
お肉料理でしたら、七という数字が入って縁起がよい七面鳥(Turkey)の挽肉を使って松風焼とか。こちらのミートローフに似たお料理です。
またモモ肉(Thigh)はポーションが小さめで扱いやすので、塩麹に漬けて焼くと柔らかくて美味しいですし、おめでたいお料理としても映えます。
塩麴は取り寄せていらっしゃるのですか?
麹も手に入るので自分で作ります。2週間ほどでできあがります。
ご飯は赤飯だったりするのでしょうか。 お赤飯よりも、ちらしお寿司や混ぜご飯でおもてなしいたします。今の時期でしたら蟹(カニ)やイクラで華やかさを演出して、さらに旬の柚子を添えて和の香りも楽しんでいただきます。
以前、総領事館の公式YouTubeチャンネル*やフェイスブックで紹介させていただいたのですが、最近ではバンクーバーでも柚子を売っているお店があります。
デザートはいかがでしょう?
きな粉や抹茶を使って洋菓子を作ることもありますが、和を感じていただけるように金粉や和紙などを使ってお正月らしさを演出します。
会食でなくレセプションでも、前菜でお正月料理を用意されるのでしょうか。
年始のレセプションでもお正月を意識した演出をします。
黒豆を松葉に刺してお料理に添えたり。取り分けやすいですし、見栄えもします。
普段のおもてなし料理と違う点があれば教えてください。
公邸には特にお正月用の食器があるというわけではないので、縁起の良い色の水引きや季節の草花を取り入れています。
水引きなどは、日本から手に入れているのでしょうか。
バンクーバーにも日本の食器や雑貨を扱う店があるので、10月から11月のうちに訪れて準備するようにします。使いたい色味の物が品切れになる前に早めに調達しています。
お正月料理の食材を仕入れる際に困ることはありますか?
お正月に限ったことではありませんが、仕入れが安定しないことです。食材が手に入らず、メニューを急きょ変更することも多いです。それから今年は新型コロナの影響で去年より食材の値段が高いように感じています。
日本から取り寄せているものがあれば教えてください。
豊洲直送の鮮魚や、バンクーバーでは手に入らない生麩などの加工品、それにスダチなどの柑橘類を取り寄せることもあります。生麩をまだご存知ないお客様も多いですし、ベジタリアンの方にも安心して召し上がっていただけます。
あとは用途に合わせた竹串も取り寄せています。竹細工も日本を代表する伝統工芸品なので、文化紹介になります。
串も工芸品なのですね。見慣れているので特別なものだとは思っていませんでした。
本日はありがとうございました。一般家庭でも取り入れることができるアイデアも教えていただいたので、これからおもてなしの際には参考にさせていただきます。串についても次回、日本に行く際にはチェックしてみたいと思います。
*https://www.youtube.com/watch?v=QqQrtTy6Nxw
(在バンクーバー日本国総領事館 公式YouTubeチャンネル)
(取材 西川桂子)
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