トラベルトレーラーの魅力

アラスカハイウェイを走るトラベルトレーラー。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
アラスカハイウェイを走るトラベルトレーラー。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

 旅の途中で、お気に入りの風景を目の前にして目を覚ます。

 同じ空間に居ながら行く先々で景色が変わっていく楽しさは、キャンピングカーの旅ならではの醍醐味でしょう。

 キャンピングカーには、ワンボックスタイプから大型バスのような車両を改造したものまで種類は豊富です。

 今回は比較的居住スペースに余裕があるトラベルトレーラー(TT)に焦点をあて、これからTTの旅を始めたいと思っている皆さんが注意する点などを、私の経験をもとにまとめてみました。

1. 牽引車との関係
2. 内装
3. 価格
4. 電力、水と生活排水
5. メリットとデメリット

車窓からの景色が行く先々で変わる。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車窓からの景色が行く先々で変わる。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

1. 牽引車との関係

 TTはエンジンを持たず自走しないため、牽引するためにピックアップトラックやSUVなどの牽引車が必要です。トレーラーとの関係は馬と幌馬車にも似ていて、北米ならではの文化的な匂いを私は感じます。

 牽引車は、TTの重量に対して最大牽引力が約1.5倍、あるいはそれ以上あることをお勧めします。

 たとえば4,500ポンド(約2,000kg)のTTを引く時は、最大6,800ポンド(約3,100kg)以上の牽引力を持つ車両が必要だと思います。

 理由は距離の長い急な峠道(例えばコカハラ・ハイウェイなど)を走るとき、牽引車のパワーを最大限に使うことがあるので、余力がないとエンジンを壊す可能性があるからです。

 これはTTを初めて購入したあと、よく耳にするトラブルなので注意した方がよいでしょう。

 なおブリティッシュ・コロンビア(BC)州では、重量4,600kg以下のトレーラーならば牽引免許は必要ありません。

2. 内装

 一般的な室内装備は、ガスコンロとオーブンに冷蔵庫や電子レンジ、流し台とダイニングテーブル、クイーンベッドやソファー、そしてシャワーとトイレなどです。

 またバンク(2段)ベッドを備えたり、スライドアウトといって駐車中に居住スペースを広げることができる車両もあります。

車内前方に、出入り口(右)とメインベッドルーム(中央)がある。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車内前方に、出入り口(右)とメインベッドルーム(中央)がある。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車両の中央にキッチンスペース(右)とテーブルが配置される。後方中央の扉内はトイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車両の中央にキッチンスペース(右)とテーブルが配置される。後方中央の扉内はトイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車内レイアウトの一例。RV Guide.comから引用。

3. 価格

 トラベルトレーラーの車両購入価格は、どのくらいでしょうか。

 新車の値段は大きさによって異なりますが、たとえば7〜8人用ですと約2万ドル台から5万ドル以上とかなり幅があります(2022年2月現在)。

洗面台とシャワー(右奥)、トイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
洗面台とシャワー(右奥)、トイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

 中古車もあるので、探せば程度の良いものをリーズナブルな価格で購入することも可能です。あとはレンタル*を利用する方法もあります。

 購入の際に注意する点ですが、使用人数よりは少し大きめの車両を買うことをお勧めします。 

 仕様書などに書かれている最大就寝人数というのは、ダイニングテーブルを折りたたんでベッドのスペースを作る(2人分)ことを想定していることがほとんどです。ただテーブルは食事の時はもちろん、それ以外のときでも物を置くスペースとして重宝するので、ベッドとして使わない方が通常の使い勝手は良くなります。

 ですから7人まで就寝可能とあれば、テーブル展開分の2人分を差し引いて実質5人で利用すると考えた方がよいでしょう。

(*レンタル会社にはCanaDream https://www.canadream.com
Fraserway RV https://www.fraserway.com/ があります)

公営のキャンプサイト。テーブルや焚き火ができるファイヤーピットが常備されている。2017年7月、BC州のオカナガンで。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
公営のキャンプサイト。テーブルや焚き火ができるファイヤーピットが常備されている。2017年7月、BC州のオカナガンで。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

4. 電力、水と生活排水

 キャンプサイトには電力と水の供給のほかに、キッチンやシャワー、トイレで使用した生活排水を流し込む設備を持つ所があります。これらは民営のキャンプ場に多く、3つすべてを使えるサイトをフルフックと呼びます。 

 TT側にはこれらに接続する電力のケーブルや、入水口と生活排水口が付いています。多くのサイトではこれらの設備が、TTをバックで駐車したときに左側にくるように設計されています。ですから車両購入の際には、それぞれの口が左後方にある車両を選ぶと使いやすいでしょう。

 BC州の公営キャンプ場は、これらの設備がない所も見受けられます。ただしその場合はパーク内に水とトイレ、場所によってはシャワー施設も備え付けられています。電力はTTに搭載しているバッテリーから供給しますが、多数泊のときは小型発電機を持って行くことをお勧めします。

電気と飲料水、下水が使えるフルフックサイトの接続部分。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
電力と水が使えて、生活排水が流せるフルフックサイトの接続部分。この車両では左側に付いている。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

5. メリットとデメリット

 トラベルトレーラーのメリットは、大きく分けて3つ。

1. ホテルと比べると宿泊コストを安くできる。
時期や人数によっては、半額以下に抑えることも可能です。

2. テントキャンプと比べると居住性が高く、テント設営や撤収の必要がない。

3. 一体型のキャンピングカーと比べると切り離すことができるので、牽引車だけで自由に行動ができる。

デメリットは、

1. バックの運転が難しい。
 キャンプサイトなどにバックインするときは、ハンドル操作に戸惑うことがあります。

 初めて運転するときは、車両の動きを覚えるために練習が必要かもしれません。経験者に同乗してもらい、運転のコツのアドバイスをもらうとよいでしょう。

2. 駐車場の確保。
 全長は15フィート(約4.6メートル)くらいから30フィート(約9.1メートル)以上の車両もあるので、駐めて置くスペースが必要です。

長旅の途中で一休み。車内にはトイレもあるので安心。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
長旅の途中で一休み。車内にはトイレもあるので安心。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

 カナダやアメリカは、公営、民営ともにキャンプ場が豊富です。先着順でその日の宿泊者が決まるところと、予約が可能なところがあり、どちらもインターネットで簡単に見つけることができます。BC州の公営キャンプ場は、bcparks.caから予約できます。  

 近年は新型コロナウイルス禍の影響もあって、キャンプの需要が増えているようです。特に夏休みなどは、現地に早めに到着するか、早期のサイト予約をした方がよいでしょう。

 アウトドアが好きな方にとってトラベルトレーラーは、旅そのものを豊かにしてくれます。この記事が、購入を検討している皆さまの参考になれば幸いです。

古川 透
《フォトグラファー、記者。トラベルトレーラー歴は10年。カナディアンロッキーやユーコン準州のホワイトホース、アルバータ州のドラムへラー、アメリカのイエローストーンやマウントレーニアなど十数カ所へ、TTでの旅行経験を持つ》

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