外から見る日本語
日本語教師 矢野修三
コロナ対策で長らく鎖国を続けていたがやっと開国し、日本上陸予定も事前に立てられるようになり、先ずは一安心。日本にいる卒業生からも、来日はいつですかなど、いろいろメールのやりとりも始まった。
そんなメールの中に、日本で日本語教師をしている卒業生からこんな質問が、「あいづち」の漢字や表記方法についてである。教室での対面授業が再開され、この「あいづち」が話題になり、日本語上級者からいろいろ質問を受けたとのこと。
この「あいづち」の漢字だが、確かに「相槌」か「相鎚」か、更に「合槌」なども絡んで、ややこしい。でも日本人は会話で「あいづち」はよく打つが、書くことはほとんどなく、漢字などあまり気にならない。でも、日本語教師は黒板などに書いて説明するので、書き方は生徒のレベルとも関係して、いろいろ気になる。
まず、この「あいづち」の語源は「つち」(槌・鎚)であり、物を叩くための道具である。叩く部分が鉄製であれば「鎚」で、木製であれば「槌」と、江戸時代から漢字をちゃんと使い分けていたとのこと。「かなづち」は「金鎚」で、「きづち」は「木槌」なり。うーん、すごい。
しかしその後、叩く部分や持つ部分がゴム製やプラスチック製などいろいろ作られ、「槌」か「鎚」か、困ってしまった。そこで現在では、どちらの漢字でもOKとなったが、一般的には「槌」のほうが多く使われている感じがする。でも残念ながら、「槌」も「鎚」も常用漢字に入っておらず、公式な文書などでは、ひらがな書きである。えー、そうなの。
さて、この「あいづち」は、江戸時代の鍛冶屋で生まれたとのこと。刀を鍛えるために、親方が鎚を打つ。その合間に、弟子が相手にうまく合わせて鎚を打つことを「相鎚」と称した。
そこから、相手の話に調子を合わせる仕草を「相鎚を打つ」と言うようになった。なるほど。ゆえに、この漢字「合槌」は「合いの手を入れる」などからの誤用とされ、古き文芸作品などには使われているが、昨今の辞書には載っていない。確かに。
そこで、日本語教師として「あいづち」の表記は、ひらがな書きでいいと思うが、上級者には「相づち」がお勧めで、「相づちを打つ」と動詞も一緒に教えるのがベストと、メールを入れた。
日本語には「話し上手は聞き上手」ということわざがあり、確かに「相づち」は会話においてとても効果的、でも打ち過ぎなどには注意すべきである。
言葉の文化として、「相づち」は世界各国どこの言語にも存在すると思うが、これは各人の個性や感情、話し相手との関係やその場の雰囲気なども大きく絡んでくるので、正に「習うより慣れよ」が一番よろしいかと。 ≪ That’s very true ! ≫
それはそうと、「相づち」の「づ」は「つち」の連濁だが、「うなずく」は「ず」、この違いの説明に、生徒が 「I see.」 と、相づちを打ってくれれば、いとうれし。≪ Totally ! ≫
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