第1回 美樹ちゃんと「澄子のつぶやき」

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

 34歳、笑顔の素敵な、そして、心の優しい女性の友人がいる。彼女の笑顔に会う人達はとにかく癒されるようだ。まるでその人は、私の「天使」。それが美樹ちゃんだ。

 久しぶりに83歳のこの淋しい老婆を彼女が訪ねてくれた。会いに来て、彼女はなにするわけでもない。私の会計帳をたまーに見てくれる時もある。
 ただ、日本を離れて60数年、不思議大好き人間で、その不思議を訪ね、世界のあちこち飛び回っていたこの老婆、その思い出話を1日中、笑顔で聞いてくれる人なのだ。
 ふっと「ねぇ、美樹ちゃん、私の83年間生きて来た思い出話を、この1年間ずっと聞かされて、ああ、またかぁって思わない?」と聞いた。
 すると彼女は『うーん、もしかすると“澄子のつぶやき”って題でコラムを書くかもしれないよ、はっはは!』と笑いながら彼女は言った。
 「いいよ、美樹ちゃんが書いてくれる、 “澄子のつぶやき”」

 紀元前3000年頃にインドの聖人アガスティアが、将来自分を訪ねてくる、その人達の為の運勢をココヤシの葉に書いて残したという話を聞いた。
 其の占いが「アガスティアの葉」と呼ばれ、特別トレーニングを受けた人、又はその家系の人なのか分からないが、又は全くただトレーニングを受けただけの人なのかもしれない。兎に角、そのココヤシの葉に書かれた占いを読み、解釈してくれる人をナディーと呼んでいるようだ。
 私は2000年、夫が亡くなった翌年、60歳で脳卒中と体内出血で倒れ、身体不自由になった。そして、生きるために、私はどうしても其の占いをしてもらいたくなり、南インドのシリコンバレー、バンガロール空港からタクシーで2時間くらいの所にあるアッシュラム迄、一人訪ねて行ったのだ。

(注)ヨガの「ナディー(ナディ)」とは、ヨガの生命エネルギーと呼吸(プラーナ)の通り道を意味し、チャクラを繋ぐものだと考えられています。

 そこでナディはカラカラに乾いた長さ20センチ、幅10センチ大、厚さ7~8センチのココヤシの葉の束を持ってきて、私に質問し、YES/NOで答えるように言った。最初、答えはNOばかり、すると別の次の葉束を持ってくる。
 次々それを繰り返し、数回目の葉束になった時、YESがつづいた。
 つまりそこに書かれていることが、私の運勢についてなのだろう。
 彼は私の夫が亡くなったことも、私が4人姉妹弟なのも、そして、70歳後半で何か「ものを書く」ようになると、ニコニコしながら言っていた。
 You have no next life. Your life is 82-83 Indian calendar.
 You will write something after your late 70.
 最初、彼に会った時、私は彼に自分の名前を紙に書いて渡しただけだった。
 しかし、そのナディーが乾いたココヤシ葉を見ながら、私に話したこと、それは本当のようだ。彼の言うとおり、私は2016年76歳でバンクーバー新報に「老婆のひとりごと」と言うエッセイを書き始め、今年で7年目だ。そして、私の寿命はインドカレンダーで82~83歳だと言った。今、私は西暦で83歳になった。あの時、私は彼にUS$150支払った。 

 ねぇ、美樹ちゃん、自由自在に生きた私の長い83年の人生「出会いと恵」、「感謝とやる気」、「不思議が一杯、セレンディピティ」。
 「自分にできない事なんて無限にあるけど、自分にできる事も無限にあるよ」
 「人間の強さとは、どんな逆境でも、夢を語れること」とか、「人生の最後に振り返るとすべてが思い出になっている」。

 美樹ちゃん、私、自分が生きた思い出に「澄子のつぶやき」書いてみるね。
 ごめんね。私、自分で書くからね、美樹ちゃんは読んでね。ははっは!

許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「グランマのひとりごと」はこちらからすべてご覧いただけます。https://www.japancanadatoday.ca/category/column/senior-lady/