読書の新年~フィクション篇

あけましておめでとうございます。前回は冬が始まる前にフィクション篇をと書いていたにも関わらず、何と年を越してしまい、反省。

次に何を読もうかなとなった時にどう選んでいますか?

好きな作家さんの小説を読むのはもちろんですが、作家さんによっては1年に1冊ペースの方もいれば、何冊も新刊が出る方もいらっしゃいますよね。推し作家さんが多い方は追いつかないと嬉しい悲鳴が上がりそうですね。

新しく開拓したい場合は、直木賞や本屋大賞などの受賞作、ノミネート作から、読んでみようかなと思うのが自然な流れでしょうか?

流れに乗って辿り着いたのが、砂原浩太郎著『高瀬庄左衛門御留書』(講談社)は、第165回直木賞候補の時代小説です。

年貢・戸口・宗門・検段・訴訟など農村に対する諸政、群方を務めるアラフィフ高瀬庄左衛門の日々の物語です。庄左衛門は、妻を亡くし、自分の跡目を継いだ息子も事故で失い、残された嫁の志穂と生活しています。彼は絵を描くことを趣味としていて、志穂が興味を持ったため、教え始めます。群方の務めながら日々が流れ歳を重ねて、次に繋げることを静かに語っています。

宮部みゆきさん、畠中恵さんなど、女性作家さんの時代小説は読んだことがありますが、男性作家さんのものは、こちらが初めてのような気がします。江戸を舞台とした作品は、妖が登場するものや、町人目線の物語が多いイメージがあります。本作品は名家でもない普通の武士が主人公とあまり読んだことない切り口ですが、清々しい読後感を味わえる作品でした。

「一万円選書」をご存知でしょうか?北海道にある「いわた書店」の社長・岩田さんが本人記載のカルテを基にお薦めの本を一万円分選んでお届けするサービスです。岩田徹さんは『一万円選書: 北国の小さな本屋が起こした奇跡の物語』の中で、自身の生い立ちを辿りながら一万円選書がどう生まれたかや、選んだ作品が紹介されています。

この中からではなく、私が興味を魅かれたのは、岩田さんの高校の後輩が今野敏さんだったことなのです!この時はまだ、今野さんの本を読んだことはなく、図書館の選書を通じてお名前を知っているだけでした。

警察小説はシリーズ化と作品数が多く、既刊巻数が多くあるシリーズは新参読者にはハードルがグーンと上がる気がします。そのため、追いつけそうな倉島警部補シリーズを読んでみることにしました。第一作目は『暁光の街』(文藝春秋)です。元KGBで父が日本人、母がロシア人のヴィクトルは、殺しの命令を受けて日本に潜入します。それを受けて、警視庁外事課の倉島警部補が捜査の担当に任ぜられます。倉島警部補は、言われたことを及第点で仕上げればいいと事なかれ主義的な所があって、こんな主人公で良いのかと思ってしまいました。特殊な訓練を受けたヴィクトルの所作に驚愕しつつ、それらに発奮され成長する倉島の姿に感動です!

読み始めたら止まらない一気読みしたくなるエンタメ型小説で映画を見る感覚で手に取れますよ。

次回は、児童書編です。春までにはお届けしたいと思っています。