カナダと日本の間には姉妹都市・友好都市を結んでいる都市が多い。お互いの都市を知り、2国間の友好関係を深める役割を担っている。
今回は、群馬県藤岡市と友好都市のサスカチュワン州レジャイナ市のサンドラ・マスターズ市長に話を聞いた。
カナダ中部に位置する平原州として知られるサスカチュワン州。農業が盛んで、最近では情報技術や環境エネルギーにも力を入れている。そのサスカチュワン州の州都レジャイナ市。アメフトリーグCFL(カナディアン・フットボール・リーグ)サスカチュワン・ラフライダーズの本拠地で、その熱狂的なファンを知らないカナダ人スポーツファンはいないほど。
前編では、藤岡市との友好都市関係について紹介。後編は、観光地としてはあまり知られていないレジャイナ市の街の魅力について。
サスカチュワン州レジャイナ市マスターズ市長に聞く「レジャイナの魅力と藤岡市との友好都市関係について」(前編)
ユニークなアトラクションが多いレジャイナ
マスターズ市長が真っ先にあげたのは、RCMP Heritage Centre。RCMPとはRoyal Canadian Mounted Policeの略で日本語では王立カナダ騎馬警察と訳されるが、連邦警察のことで、全国各地で市民の安全を守っている。そのRCMPのアカデミーがあるのがレジャイナ市。RCMP Heritage Centreはアカデミーにある。
市長は「夏のRCMPヘリテージミュージアムはとてもおもしろいですよ。サンセット時に、部隊が行進したり演習したり、旗を掲げるのを見ることができるんです。とても美しいです」と説明。その他にもRCMPの歴史や役割などが学べる、レジャイナにしかないアトラクションだ。
他にはMacKenzie Art Galleryを紹介。広大な展示スペースに5,000点以上の展示品があるギャラリーで特徴的なのは先住民族のコレクションが多いこと。「多くの賞を受賞したギャラリーなのですが、モダンアートや伝統的なアートだけでなく、先住民アートが多いことも特長です」と市長。「多文化、多様性のレジャイナでぜひ訪れてほしい場所です」と語った。
もう一つ、市長が自慢したのは世界最大のT-Rex。Royal Saskatchewan MuseumにあるT. Rex Discovery Centreは、 “Home of the World’s Largest T. Rex”とうたっている。
その他には、市民の憩いの場Wascana Parkがある。MacKenzie Art Gallery やRoyal Saskatchewan Museumもある北米一広い公園で、「アウトドア派にも人気の美しい公園です」と紹介した。
夏はCFLラフライダーズ、冬は国内最大のスケートリンクで楽しむ
レジャイナのアトラクションと言って忘れてならないのはCFLのサスカチュワン・ラフライダーズ。長い歴史を持つカナダのスポーツリーグ、カナディアン・フットボール・リーグ(CFL)は夏のスポーツ。現在11チームがあるが、ラフライダーズと言えば、ファンの熱狂ぶりでよく知られている。スイカのヘルメットを被っている人たちをカナダで見たら、まずラフライダーズファンと思って間違いない。今季は6月11日に開幕した。
そのラフライダーズの本拠地がモザイクスタジアム。「とっても美しいスタジアムです」と自慢する。
このスタジアムは冬には国内最大の屋外スケートリンクに変身する。冬は雪に覆われるレジャイナだが、「冬でも楽しく過ごせる工夫をしています」と市長。2月にはウィンターフェスティバルも開催され、1年中楽しめると笑った。
失業率も低く、生活費もリーズナブルな住みやすい都市
レジャイナ市の特長として住みやすさも強調した。「この街の景色を見に来る人はいないと思いますけどね」と笑ったマスターズ市長。「真っ平ですからね。本当に。でも、それが農業には向いているのです」と語る。
レジャイナの主要産業は農業。市長は、サスカチュワン州にはカナダ国内の40%を超える農地があり、レジャイナでもキャノーラからレンズ豆までさまざまな農作物を作っていると説明。他にも重機を製造する工場もあると話した。
失業率も低く、住宅価格も他の都市、例えばバンクーバーなどに比べるとリーズナブルで「国内の他の都市と比べても最も暮らしやすい町の一つと言えると思います」と胸を張る。
また、「15歳以下の人口増加率が(国内で)2番目に高い、とても若者が多い街なんです」と言う。そのため教育にも力を入れている。大学は、University of ReginaやFirst Nations University of Canada、Saskatchewan Polytechnicなどがあり、藤岡市との交換留学などでも示している通り、若者の教育機会を促進している。
また、市は3年連続で国連の “Tree City of the World”に選ばれているという。市長は「土地が平らだという話をしましたけど、ここの風景に見える木はどれも自然のものではなく、50万本を植樹したものです。そうすることで、美しい風景を保っています」
そしてマスターズ市長は、「レジャイナは比較的小さい都市だと思いますが、それが強みでもあると思います。留学や観光でも、興味があればぜひレジャイナを訪問してほしいです」と読者にメッセージを送った。
*インタビューは2022年10月にオンラインで実施した。
レジャイナ市と藤岡市との友好都市締結
2019年8月3日、レジャイナ市で、レジャイナ市と藤岡市との友好都市協定調印式が行われた。在カルガリー日本国総領事館小林成信総領事(当時)が立ち合い、レジャイナ市はマイケル・フーゲル市長(当時)、藤岡市は新井雅博市長が出席した。
産経新聞によるとレジャイナ市と藤岡市との交流は1991年(平成3年)に藤岡市からレジャイナ市への中学生ホームステイ派遣事業からスタート。JETプログラムのALT(外国語指導助手)の呼びかけがきっかけだったとしている。
レジャイナ市
カナダ西部の州、サスカチュワン州の州都。サスカトゥーン市に次ぐ都市。カナダでは16番目に大きい。州の南に位置する。人口は約22.6万人。面積は182.42平方キロメートル。緯度:北緯50度26分、経度:104度40分。市制施行1903年、サスカチュワン州(1905年)の州都になったのは1906年。
Land Acknowledgement:レジャイナ市は、「サスカチュワン州南部とアルバータ州、マニトバ州の一部にまたがる35の先住民族との間で締結された条約 “the Treaty 4 Territory” の伝統的な土地にあり、クリー族、ソールトー族、ダコタ族、ナコタ族、ラコタ族のoriginal landsであり、メティスのhomelandであることを認識している」と市のホームページで宣言している。
サンドラ・マスターズ市長
2020年9月の選挙で現職のマイケル・フーゲル市長を破り当選。サスカチュワン州の主要都市で初めての女性市長となった。
(取材 三島直美)
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