カナダと日本をつなぐ新たな航空会社として「ZIPAIR Tokyo」が今年3月バンクーバー・成田線を就航する。日本の国際線中長距離LCC(格安航空会社・Low Cost Carrier)として初めてカナダに乗り入れる。
今回は3月13日の初フライトを1カ月後に控え、ZIPAIR Tokyoマーケティングマネージャー森本マーク氏にオンラインで話を聞いた。
期待の日本初LCCバンクーバー線
バンクーバーと日本を結ぶ空路は意外と多い。成田に日本航空、エアカナダが、羽田に全日空が毎日1便、さらに関西空港へもエアカナダが5月から運航する。そこに新たに加わるのがZIPAIR Tokyo。初のLCCだ。新型コロナウイルス規制が撤廃される前からカナダ・日本間の運賃は燃油サーチャージなどもあり新型コロナ前と比べ驚くほど値上がりしている。
そんな中で発表されたZIPAIR就航。2023年12月27日の公式発表によれば、スタンダードバリューは片道300ドル~(28,950円から~)。そのためバンクーバーでも期待は大きく、森本氏によると12月のチケット販売開始からすでに3月、4月はほぼ満席状況という。
会社は2018年7月31日に日本航空100%出資で準備会社としてティー・ビー・エルが設立され、2019年3月8日にZIPAIR Tokyoとなった。成田空港を拠点とする国際線中長距離に特化したLCCだ。現在はアジアに4路線、北米にはハワイと、西海岸にサンフランシスコ、サンノゼ、ロサンゼルスの3路線、バンクーバーは北米西海岸4路線目となる。
ZIPAIRを設立するにあたり森本氏は、これまで難しいとされてきた中長距離路線でのLCC就航について「しっかりと利益が取れるビジネスモデルを一から作り上げて、日本から東南アジア、北米へ、格安で運航できるエアラインを立ち上げることにしました」と説明した。「色々と模索し、前例にない低価格でクオリティの高いエアラインとして誕生したのがZIPAIRです。リーズナブルな料金で中長距離を飛べる新しい付加価値を提供しつつ、これまでになかった新しい常識を作っていくエアラインを目指しています」
バンクーバー・成田路線ではすでに親会社の日本航空も毎日1便運航しているが、そんな中で開設を決めたのは「需要が高いと見込んでいるから」と説明する。アメリカ西海岸3路線をここまで見てきて「今まで日本やアジアに行きたいと思っても運賃が高くて諦めていた新しいマーケット層を開拓できると確信しています」。ZIPAIR利用者の約70%はZ世代と言われる20代から30代と言う。さらに「バンクーバーは(新型)コロナ前から日本との往来が活発でアジアゲートウェイ的な役割も持っている都市だと認識しています。フルサービスエアラインを利用しない層の需要があるとの見込みから、9路線目としてバンクーバーを選びました」。
航空運賃のカスタマイゼーション
フルサービスエアラインには、ビジネス・エコノミークラスというサービスが異なるクラス分けが存在する。しかし「ZIPAIRの大きな特徴は全てモノクラスということなんです」と話す。「全290席、サービス内容は同じです」。ただビジネスクラス同様の座席としてジップフルフラット席を提供している。「これは(1機に)18席しかなく、とても人気がある座席です」
他にも特徴的なのは、一律のエンターテイメントや機内食サービスがないこと。「ZIPAIRの座席には個人モニターがありません。その代わりにタブレットやスマートフォンを目の前に置くことができる座席設定がされていて長時間のフライトでも自分の端末で動画を楽しむことができます。ただ、事前に端末にダウンロードしておくことをお勧めしています」
食事は事前予約のみ、ただ軽食やドリンクは機内でインターネット(Wi-Fi)サービスに接続して自身のスマートフォンで注文することができる。機内インターネットサービスは無料。「現時点では動画ストリーミングは難しいですが、メールの送受信やSNSの閲覧投稿などは快適に行えるほどの通信速度は確保しています」
つまりチケット購入時は座席料金のみを購入し、サービスについては自分が必要なサービスを必要な分だけ追加する、「航空運賃のパーソナライゼーション・カスタマイゼーション」ができるというわけだ。
「大きなポイントは納得感」
長距離路線ではZIPAIRだけが行っているサービスもあるという。それは受託手荷物で、有料だが荷物1個につき重さ上限は30キログラム。「去年の10月にルールを改定して1個30キロに設定することになりました。バンクーバー線は1個につき7,000円に設定しています」。1人5個まで同じ料金で預けられる。
さらに料金で特徴的なのは子供料金。6歳未満なら夏休みや年末年始も含め定額設定となっている。北米路線はバンクーバーも含め片道1万円(104カナダドル)。「ファミリーにとっては優しい運賃体系となっています」
安さが強調されるLCCだが機材は日本航空なども使用しているボーイング787-8型機を使用。決して小さい機材を使っているわけではないと語る。
「ZIPAIRの大きなポイントは納得感ですね。ただ安い運賃を提供するだけでなく、その金額に見合ったサービスをきっちりと提供することです」と森本氏は語る。
気になる成田から、バンクーバーからの国内線乗り継ぎについては、「他社とのコードシェアについてはありません」ということで国内乗り継ぎサービスはないとのこと。国際線はZIPAIRのアジア線に成田経由で同日乗り換えできる路線があるということだった。
「皆様と一緒に成長できるエアラインを目指したい」
現在は10月までのスケジュールしか販売していないが夏季限定就航ではなく通年で運航するとのこと。
森本氏は「ZIPAIRはフライト時間を好きなように使えますので、ぜひ効率よくご利用いただければと思います。皆様と一緒に成長し続けるエアラインを目指したいと思いますので、ぜひ機会がありましたらZIPAIRにご搭乗いただき、良かったことも、そうでないことも、教えていただければ大変ありがたく思います。皆様のご搭乗を心よりお待ちしております」とメッセージを送った。
ZIPAIR Tokyo
2024年3月13日からバンクーバー・成田線を就航
運航日は、バンクーバー発、成田発ともに、月・水・土
運航時間や料金など詳しくはこちら:https://www.zipair.net/ja/notification/208
ZIPAIRホームページ:https://www.zipair.net/ja
(取材 三島直美)
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