日本舞踊西川流カナダ彩月会「温習会」開催、励んできた稽古の成果発表と2人の名取襲名披露の特別な会に

 西川流カナダ彩月会の第3回「温習会~和と洋の調べに心寄せて」が4月27日に日系文化センター・博物館で開催された。西川佳洋師範と門弟たちがこれまで励んできた稽古の成果を発表した。前回の「温習会」は2017年。通常はもう少し短い間隔で開かれるが、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で7年ぶりに開催された。さらに今回は西川洋香さんと西川洋雪さんの「襲名披露の会」でもあり、特別な温習会となった。雨天にもかかわらず会場に集まった多くの観客は、春の訪れとともに華やかで伝統的な日本舞踊を堪能した。

あいさつをする丸山総領事。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
あいさつをする丸山総領事。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 上演前にあいさつした在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は、温習会に招待されたことへの感謝を述べ、「彩月会の皆さまの長年の取り組みに心から敬意を表します」と語った。彩月会の日本舞踊普及の努力は、バンクーバーで日本の文化を大切にするだけではなく、日本とカナダの文化交流と友情の構築に大きな貢献をしていると称賛した。

西川流四世西川千雅家元からもメッセージ

 「彩月会」にとって2023年は特別な年だった。西川千雅家元の承認を得て2023年6月16日に正式名称を「西川流カナダ彩月会」とした。さらに、かおりリトンさんが「西川洋香」、芦田有希子さんが「西川洋雪」として「名取式」を経て正式に西川流苗字内に入った。西川流四世西川千雅家元からも温習会開催を祝福するビデオメッセージが届き、西川流の歴史、西川佳洋師範と名取の2人が名古屋市の西川会会館で名取試験の踊りを披露した様子などと共に動画で紹介された。

 プログラムは第一部と第二部で構成され、全22曲のさまざまな日本の歌に合わせて美しい舞が披露された。さらにスペシャルゲスト、フルート演奏者の小西千恵子さんとピアニストのダニエル・リーさんによる生演奏と日本舞踊のコラボレーションや、第一部と第二部の間には2人のデュオコンサート「ラブ&ユニバーサル」で会場を包んだ。

 最後の曲「きよしのズンドコ節」では彩月会のメンバーと観客が一緒に踊り、にぎやかに7年ぶりの温習会を終えた。

西川佳洋師範「私の持っている踊りを教えて、次に繋げていきたい」

西川佳洋師範による「川の流れのように」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
西川佳洋師範による「川の流れのように」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 大きなアクシデントもなく、無事に皆が楽しくよく踊れてよかったと語った西川佳洋師範は、来年にはまた3人の弟子を連れて名古屋の家元に行く予定とうれしそうに話した。今後の彩月会について「私の持っている踊りを教えて、次に繋げていきたいです。私で終わりかなと思っていたけど、その希望が出ました。がんばります」といつものお茶目な笑顔を見せた。

「荒城の月」を舞う西川洋香さん。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
「荒城の月」を舞う西川洋香さん。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 子どもの頃から始めた日本舞踊は途切れながらも稽古を積んで35年以上になるという西川洋香さんは、「全く名取になることは予想していなかったです。ただ長くやっていたので、何か残したいなと思って先生にお話しました。決まった時は緊張しました。今回の温習会が終わって一安心です」と破顔した。

西川洋雪さんによる「まり禿」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
西川洋雪さんによる「まり禿」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

 彩月会で稽古を始めて今年で9年目になる西川洋雪さんは今回の襲名について「西川佳洋先生と彩月会の皆さんのおかげです。応援してくれるたくさんの方々のご支援の賜物だと思って感謝しています。去年名取になることができて本当にうれしかったです」と目を輝かせた。

 終演後にはロビーで彩月会から菓子や飲み物が振る舞われ、日本舞踊を楽しんだ人たちのにぎやかな声とメンバーへの労いの言葉などであふれていた。

日本舞踊西川流カナダ彩月会第3回「温習会」和と洋の調べに心寄せて

小西さんのフルート、リーさんのピアノ演奏と共に舞う「さくらさくら」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
小西さんのフルート、リーさんのピアノ演奏と共に舞う「さくらさくら」。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

第一部

  1. 祝賀の舞:田口恵里子
  2. 祇園小唄:ラビンスキー・りな
  3. 梅一輪・梅は咲いたか:吉武真理
  4. まり禿:西川洋雪(芦田有希子)
  5. 幻阿国:安井リサ
  6. 秋の色種:マトソン・信子、スワッツ・初恵
  7. 夢追い酒:吉野クミ子、相原満美子
  8. 荒城の月:西川洋香(リトン・かおり)
  9. 川の流れのように:師範職/会主 西川佳洋(松野洋子)
  10. さくらさくら:彩月会
    <8〜10フルートとピアノの演奏と共に>

フルート奏者 小西千恵子/ピアノ奏者 ダニエル・リーによるデュオコンサート“ラブ&ユニバーサル”

「コンチキ踊」彩月会。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
「コンチキ踊」彩月会。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

第二部

  1. 黒田節:久永勝芳
  2. ここに幸あり:チャン・ビクトリア
  3. 白鷺の城:吉岡ルーシー
  4. 博多夜船:竹田麗子
  5. 十日町小唄:西川洋香、牛沢操、西川佳洋
  6. 北海よされ節:久永勝芳、ラビンスキー・りな、桜田美子
  7. コンチキ踊:彩月会
  8. たけくらべ:タン・サミー
  9. 宮川音頭:彩月会
  10. 木曽節:桜田美子、久永勝芳、西川洋香
  11. 花笠音頭:彩月会
  12. きよしのズンドコ節<ご来場の皆様ご一緒に踊りましょう!>

出演者(順不同)

西川佳洋(師範職:会主)、西川洋香、西川洋雪、牛沢操、相原満美子、竹田麗子、スワッツ初恵、マトソン信子、桜田美子、吉岡ルーシー、吉野クミ子、田口恵里子、吉武真理、チャン・ビクトリア、タン・サミー、久永勝芳、安井リサ、ラビンスキー・りな、岡村ジーン

西川流カナダ彩月会第三回「温習会」和と洋の調べに心寄せて。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito
西川流カナダ彩月会第三回「温習会」和と洋の調べに心寄せて。2024年4月27日、日系文化センター・博物館。Photo by Koichi Saito

(取材 古川紋/写真・動画 斉藤光一)

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