カナダで知り合って10年近くになる友人が最近やっとPRを取得し喜んでいたら、今度は40代後半の他の友人が子供の頃からの夢を叶えるためにカレッジに入り直したりと、人生その気になれば新しい景色が見れるもんだ、と元気をもらっている今日この頃。そんな折、これまた挑戦を続けるカナダの映画監督さんたちにお会いする機会があり、大好きなことに突き進む人生もいいなぁと大いに刺激をもらった私です。
今回ご紹介する映画も、これが長編第一作となるカナダ人監督による「I Used To Be Funny」(アリー・パンキウ監督)。20代半ばの女性が、周囲の人との絆の中でトラウマを乗り越えて再生しようとするコメディドラマ。若い女性はもちろん男性も、若いとは言えない私のような人の胸にもぐっとくる映画です。
主人公のサムはかつてはステージで喝采を浴びていたスタンダップコメディアン。でもある出来事が原因でPTSDに苦しんでいるため今はステージにも立てず、何もやる気になれず一日の大半をベッドで過ごす毎日。そんなある時、かつてベビーシッターをしていた少女ブルックが行方不明になったと知ります。捜索を手伝うべきか迷いながらブルックと過ごした時間を振り返っていると無視できない過去の出来事も次々思い出され・・・。ストーリーはサムと周囲の人の今と過去を重ねながらトラウマを乗り越えることの大変さと尊さ、そして人とのつながりの温かさをリアルに描いてゆきます。
トラウマ、性加害、ドラッグなど現代の若者が抱える問題を扱っているのにもかかわらず、全体のトーンをコメディタッチにすることで、暗くならずに話が進みます。本当に笑えるシーンもあって脇役も含めてみんな本職コメディアン?という感じ。それなのにサムが笑っているのは心から可笑しいんじゃなくて辛さの裏返しなんだよ、というのもちゃんと伝わってきて、そこは監督うまくまとめてるなぁと感心も。これまでテレビシリーズなどで経験を積んできたアリー・パンキウ監督にとって第一作目の長編映画となったこの作品。この映画のアイデアは10年くらい前からずっと温めてきたのだとか。監督の出身地トロントが舞台なんですが、よく知っている街で撮っただけに登場人物たちが本当にそこに住んでいるような感がありそれも良かったです。
ポスターの雰囲気で何の予備知識もなく観たこの映画。ただのコメディかと思ったら笑いの裏には重いテーマが!(苦笑)でも本当にシリアスなテーマにコメディという要素をバランスよく差し挟むことで主人公の心の傷の大きさを効果的に際立たせていました。立ち直るのは難しいけれどきっと出来る、あなたの価値を決めるのはあなたなんだよ、あなたは一人ではないんだよ、そんなメッセージを届けてくれる映画です。
バンクーバーではVIFF Centreで上映です。
Lalaのシネマワールド
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バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
旬の映画や話題のドラマだけでなく、さまざまな作品を紹介します。第1回からはこちら。
Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
みなさん一緒に映画観ませんか!?