沖縄の文化に親しみ、恒久平和を発信するイベント「Icahri-Van Night~The Spirit of Okinawa」が6月22日、日系文化センター・博物館で開催された。主催はバンクーバー沖縄太鼓、共催はバンクーバー沖縄県友愛会。
会場では沖縄料理やオリオンビールが楽しめたほか、三線(さんしん)やエイサー、琉球舞踊、平和学習、折り紙などの体験ブースがあり、舞台では、琉球舞踊、三線独唱と、訪れた約450人が一夜限りの「沖縄」を満喫した。
「命どぅ宝・サガリバナプロジェクト」
同じ時間、日本は6月23日、沖縄「慰霊の日」を迎えていた。太平洋戦争末期の1945年の沖縄戦で日本軍の組織的戦闘が終結したとされる日。沖縄県では休日で、79年たった今も、推計9万4千人と言われる一般住民の犠牲者を含む約20万人の戦没者の霊を慰め、恒久平和を祈る大切な日として過ごす。
その「慰霊の日」に沖縄から全世界に向けて平和の大切さを発信しようと企画されたのが、沖縄の創作芸団レキオスが主催した「命どぅ宝・サガリバナプロジェクト」。日本時間の正午に、沖縄で、日本で、バンクーバーで、そして世界で、同時に黙とうをささげ、一斉にエイサー「舞香花〜SAGARIBANA〜」を舞う。バンクーバーでは午後8時に始まった。人々は演舞に見入り、涙を流し、沖縄に思いを馳せた。
「舞香花~SAGARIBANA~」は、沖縄のシンガーソングライターYuMeさんがレキオス代表・照屋忠敏さんの思い出を基に作詞作曲した楽曲。
バンクーバー沖縄太鼓代表・花城正美さんは「慰霊の日」は沖縄の人々にとって特別な日と話す。日本国内38団体、海外ではインドネシア、アメリカ、南米やオーストラリアなど9団体が参加、「バンクーバー沖縄太鼓もこの『命どぅ宝・サガリバナプロジェクト』に参加し、感慨無量です」。
「命どぅ宝」は「ぬちどぅたから」と読む。太平洋戦争で唯一地上戦が行われ、大きな犠牲を払った沖縄の人が大切にしている言葉。「『命どぅ宝』というのは沖縄の言葉で命っていうのが一番大切なんだよって、命あってこそできるんだよという意味です。沖縄で起きた歴史を通して世界の平和を望んでいきたいということですね」と笑顔を見せる。
エイサーにはもともと「先祖供養・鎮魂の意味がある」と言う。それが現在は創作エイサーという形で舞台でもできるようになり世界に広がったと説明した。バンクーバー沖縄太鼓も創作エイサーで恒久平和への思いを発信している。
今回の「Icahri-Van Night」の準備期間はたったの4カ月。「兼次(飛翔)実行委員長の吸引力とバンクーバー沖縄太鼓メンバーの見事な結束力と、バンクーバー沖縄県人会友愛会のご尽力、献身なボランティアの方々、そして日系センターのご協力、ご支援していただきました諸々のスポンサーのおかげさまで実現できました」
サガリバナプロジェクトはエイサー演舞だけだが、バンクーバーではプロジェクトだけするよりも「沖縄を感じてもらって、沖縄芸能に触れて、沖縄のことを話しながらみんなで世界の平和を願うということで『Ichari-Van Night』としました」。「Ichari」とは沖縄のことわざ「いちゃりばちょーでー」から来ている。「みんな一度会えばもう兄弟・家族だという意味なんです。いつも支えてもらっているコミュニティの人たちと交流したいということで、その言葉を取って今回のイベント名にしました」
これだけ多くの人が来てくれたのは「感動ですね」とうれしそうに笑う。「Ichari-Van Night」は恒例イベントとして継続したいという。「第1回の成功に皆さんにお礼をお伝えしたいと思います」と花城さん。「沖縄の文化芸能を通して、そしてエイサーを見て感じていただき、沖縄の歴史を顧みながら、皆さまと共に世界の平和を願いたいという思いから、これからも続けていきます!」と満面の笑みを見せた。
(取材 三島直美/写真・動画 斉藤光一)
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