バンクーバー・ファッションウィーク2025春夏コレクションがブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市で10月22日から27日まで開催された。若手デザイナーの登竜門と言われ、北米ではニューヨークに続いて大きな規模を誇る。
毎年春と秋に開催され、世界各国からデザイナーが集結。日本人デザイナーも今年は8人が参加した。
今回は「HAYAMA SUNDAY」ブランドの杉本伸子さんに話を聞いた。
ときめきからリアルクローズに
10月26日の土曜日夜、バンクーバー・ファッションウィーク5日目に登場したのは、デザイナー杉本伸子(Nobuco Sugimoto)さんによるブランド「HAYAMA SUNDAY」。名前が紹介されると大スクリーンにいきなり美しい動画が流れ出した。
「葉山の日曜日です」と杉本さんが語るように、葉山の真っ赤な太陽、緑の山、青い海を舞台にしたファッションに会場がざわめいた。続いてきれいな衣装を着たモデルたちが華麗にステージを飾った。カシミアやリネンなど上質な素材にこだわり、大人が「楽しくカジュアルを着れるように」とデザインされたリアルクローズに会場はすっかり魅せられた。
杉本さんは文化服装学院ファッション工科アパレルデザイン科を卒業して、チーフデザイナーとしてオンワードやレナウンなど大手アパレル会社に勤務していた。東京ではデザイナーブランドの黒っぽい洋服を着ることが多い生活だったが、40歳を過ぎて神奈川県の葉山へ引っ越し。当時「自分の着れる服があまりない」と思っていた彼女はライフスタイルを大事にする葉山の人を見てインスパイアされた。
せっかく葉山にいるのだからこの雰囲気から感じたものを形にして、自分でも着たい服を作ろうと思った。そして2006年に、会社のCOOで夫でもある杉本善英さんと一緒に「HAYAMA SUNDAY」を立ち上げた。アトリエやセレクトショップ、ギャラリー個展を経て、2013年に初の店舗“HAYAMA SUNDAY1号店”も開いた。
葉山の場所にはゆったりとした時間で過ごす日曜日が似合っている。ブルーの海にはカモメが飛び、ヨット、ボート、ウィンドサーフィンなどマリンスポーツが見え、富士山も眺める。また作家やアーティストがたくさん住んでいるので葉山の町自体が文化的。生活の中で得たインスピレーションをもとにシンプルで上質なリゾートウェアをデザインするには最適ともいえる場所だ。
そしてチョコレート色のラブラドールのSUNDAY(サンデー)をブランドのマークにした。バンクーバーでも杉本さんは愛犬サンデーの写真をポケットに入れて舞台に登場した。
着て元気になる
高級ブランドの洋服で育ってバブルを経験した女性たちは歳を重ねるうちに着たい服がないと「HAYAMA SUNDAY」を訪れる。日本ではデザイナー服は通常クリーニングに出すのが習慣だが、上質でも気軽に自宅で洗えるという点も人気につながっている。
杉本さんに洋服選びのポイントを聞くと、「きれいで元気の出るような色と肌触りの良い素材」と答え、さらに「デザインされすぎるとコーディネイトが難しくなるので、組み合わせのきくシンプルな洋服を」と続けた。
ファッションショーのコレクションは見るとすてきでうっとりする反面、自分も買って着てみようと思えるような服にはなかなか出合えない。今回「ハヤマサンデー」のステージには誰もが似合いそうなサマードレスや、“ビーチ”というイメージのかわいいシャツ、スカートやズボンが、ブルー、ホワイト、グリーン、レッドなどの色彩で華麗に登場。モデルたちもカラフルで心地よい服を着て楽しそうに歩いていた。
若い女性からシニアのモデルまで起用したショーは、どの年代でも「HAYAMA SUNDAY」を楽しく着れると伝えていた。ショーの終わりに送られたファンからの大きな拍手に杉本さんは笑顔で応えた。
(取材 Jenna Park)
合わせて読みたい関連記事