ビクトリアのRoyal Roads University(住所:2005 Sooke Road, Victoria, BC)にて、100年以上の歴史を持つ日本庭園の再生プロジェクトが進行中です。このプロジェクトの一環として、本格的な茶室が2024年8月末に完成しました。
この茶室は、地元のダグラスファー(米松)を使用し、手作業で丁寧に建築されました。
設計と建築は、Ogawa Landscape Designの小川隼人氏が手掛け、持続可能な素材を活用しています。茶室は日本庭園の南西の隅に位置し、周囲の自然美と調和するようデザインされています。
プレオープン時には、Royal Roads Universityの学長やビクトリア駐在日本国名誉総領事、地元自治体の市長、考古学者などが出席し、ビクトリア裏千家淡交会のメンバーが主催する茶会が行われました。ゲストたちは、茶室内で和菓子と抹茶を楽しみました。
この八畳の茶室は、どの位置からも庭を眺められる設計となっており、雪見障子や襖を閉じることで外部から遮断された静寂な空間を演出します。内部には無節のダグラスファーや檜、掛川和紙、京畳、聚楽塗りの壁など、高品質な素材が使用されています。また、カナダの建築基準に準拠したバリアフリー設計で、茶道だけでなく、華道、香道、書道など多目的に利用可能です。
将来的には、四畳半の小間と屋根付きの渡り廊下で接続し、北米でも類を見ない規模の本格的な茶室を計画しています。さらに、茶庭、メインゲート、神輿舎、花見ガーデン、盆栽園、菖蒲園、既存の滝や小川の補修、禅ガーデンとしてのリニューアルなど、多彩なプロジェクトが進行中です。これらが完成すれば、ビクトリアやバンクーバーの新たな名所となることでしょう。
小川氏は、「この場所は単なる建物ではなく、自然と共存する場であってほしい」と述べ、茶室を通じて多くの人々が自然の美しさや季節の移ろいを感じ、新たな出会いを育むことを願っています。訪問者は、茶室に入る前に茶庭で心を清め、特別な空間で一服を楽しむことができます。
このプロジェクトは、Royal Roads Universityの「A Vision in Bloom」キャンペーンの一環として進められており、地域社会や寄付者の支援を受けております。茶室の完成により、学生や地域住民が日本文化を体験し、学ぶ機会が提供されることが期待されています。
(寄稿)