~グランマのひとりごと~
ええ、本当!?それって!
息子が入手してくれたiPhoneでフェイスブックを開ける。あるわ、ある。
もうそれぞれの自慢の花、料理、旅、パーティー、家族 美しい景色。まぁ、あらゆることが誇らしげに短い文で、また写真で書かれている。
僻みっぽく、ウェブを知らないこの老婆には、皆が自慢気に話していることがうらやましい。またできない自分がくやしくて「クッソ!」と思うことも。「なるほどね」と同調したり、「わーすごいー!」と感嘆の声の時もある。あらゆる思いで。
つまり私は一つ一つフェイスブックを丁寧に読ませてもらう。腎臓手術、他いろいろ病気を繰り返す80歳の老婆には、それでも、それは一つの楽しみなのだ。
そして、最近、そこに「Liu Wei」というヴァイオリニストが腎臓移植手術を受け元気になったことが書かれていた。移植した腎臓の提供者がなんとその人の夫なのだ。感動して一言「頑張って下さい」とポストしたら、本人ではなくその友人であり、私の知人でもある人からメールが入った。「人の輪の繋がりと広さとその速さ。」すごい時代だ。
思い出すのは半世紀以上前、ドイツのハンブルクに新入社員でトレーニングに行かされた。仕事の内容はほとんどが計算だから算盤を持参。そして、世界中12ケ国から集まった新入社員の勉強が始まった。私は算盤を使った。すると講師から止めるように言われ、とうとう算盤無しで3週間筆算でとうした。計算機がない時代である。
フェイスブックの私のポスティングを読んだ方からのメールは次のとおりだった。
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澄子様
ご無沙汰しております。最後にお会いしたのが6か月以上前だった様な気がしますが、如何お過ごしでしょうか?私のお友達のヴァイオリニストのLiu Weiさんのフェイスブックのポスティングに6月に手術をされたとコメントされていたので、どうされているかと思いメール差し上げました。
術後の回復は如何ですか?こういう状況の中では、入院も大変だったと思います。澄子様はLiuさんの生の演奏はお聞きになった事はございますか?私が尊敬している方の紹介で知り合って、3年。
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そして、わかったのは、そのメール送信者は何と3年前のLiuさんのヴァイオリン演奏会をここバンクーバーでオーガナイズし、日本領事館、新報社、隣組などの協賛で開いていたのでした。その方がLiuさんの後援会ニュースレター向けに書いたその一部を、以下に添付してみます。半世紀前には想像も出来ませんでした。
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劉薇さんバンクーバーでのコンサートについて
バンクーバーで行われたコンサートは普段劉さんが日本で開催されるコンサートとは比較出来ない程の規模ですが、音楽家として最高の演奏をお客様に体験して欲しいという彼女のプロフェッショナルな意識は、念入りに行われるリハーサル、コンディションを整える過程などで大変良く理解できました。
“その時の演奏が自分の最後の演奏と思いヴァイオリンを弾いている”という劉さんの言葉、その通りのコンサートに皆さん感動し、涙を流されている方も沢山目につきました。魂を込めたメッセージの様に深い感動を皆さんの心に残した演奏だったと思います。演奏の後に行われた講演も参加者の方々は大変興味深く聞き入ってらっしゃいました。
透析を進められている友達に是非本を紹介したい、これからの食生活の改善の参考にしたい等の声を聞き、音楽に加えて劉さんの生き方が様々な人の道標になるんだと認識すると共に、コンサートのタイトル”生命(いのち)への感謝”を分かち合えた事にこの場をお借りして改めてお礼を差し上げたいと思います。
一期一会、この出会いに感謝し、何か強く思えば、必ず道は開けるという事を今後私自身の信念として生きて行きたいと思っております。
バンクーバー在住 ハイディ浜野
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許 澄子
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好評の連載コラム『老婆のひとりごと』。コラム内容と「老婆」という言葉のイメージが違いすぎる、という声をいただいています。オンライン版バンクーバー新報で連載再開にあたり、「老婆」から「グランマのひとりごと」にタイトルを変更しました。これまでどおり、好奇心いっぱいの許澄子さんが日々の暮らしや不思議な体験を綴ります。
今後ともコラム「グランマのひとりごと」をよろしくお願いします。