9月に入り、本格的に秋の気配を感じるようになってきた。
秋と言えば食欲の秋、そして秋の味覚の代表の一つがマツタケではないだろうか。海外に住んでいると日本の味覚から遠ざかりがちだが、嬉しいことにカナダでもマツタケが採れる。
今回はマツタケ狩りをはじめ、マツタケ料理など、カナダでの楽しみ方、そしてカナダ産マツタケについて、日本や中国などほかの地域との違いなどをレポートする。前編はマツタケ狩りとカナダ産マツタケについて、後編は料理だ。
前編執筆にあたりマツタケを扱うCheena、Kenwest、Seaborn社の皆さんに協力してもらった。(アルファベット順)
気になる今年の作柄だがKenwestの向井ケイさん(以下、Kenwest)によると平均的だという。
マツタケ狩り(遊び編)
秋になるとペンバートンやチリワックで「マツタケ狩りに行ってきた」と聞いたことはないだろうか。ただし、BC州政府に問い合わせたところ、マッシュルーム狩りに関してのルールは次のとおり。
地域 | アクセス |
Provincial Forest Lands | 可能 |
Indian Reserves Tree Farm Licences Leased Crown Land Private Lands | 許可が必要 |
Regional Parks National Parks Defense Lands Provincial Parks Ecological or Special Reserves Recreation Areas | 不可 |
州立公園、国立公園、Regional Parkなどではマッシュルームの採取は禁止されている。禁止地域でマツタケを採っていると罰金を科せられることもある。禁止地域でマツタケ狩りをビジネスにしている人、ピッカーに会って、注意を受けたという話も聞いた。
また毒キノコにも十分に気を付けたい。
Kenwestは「マツタケ狩りは山の中でするので、クマやクーガ―といった動物に襲われる危険があります。また夢中になってどんどん中に入って行って、帰れなくなることもあり、私たちが契約しているベテランのピッカーさんでも必ずペアで行動するようにしています」と注意を呼び掛ける。
以前にマツタケ狩りの”達人”とチリワックに行ったというYukaさんは「5人で出かけたのですが、夢中になって探しているとはぐれてしまって慌てました。森の中なので携帯の電波がつながりません。音量を上げて音楽をかけて見つけてもらおうとしたのですが、友人たちは聞こえなかったそうです」と怖い思いをした。
カナダ政府の『Harvesting of edible wild mushrooms in BC』では救急キットを持参すること、複数名で森に入るときでもはぐれることもあるので、携帯電話や笛、コンパス、地図をそれぞれ持っていることを勧めている。動物対策でクマよけの鈴を用意したほうがいいともいう。
カナダ産マツタケ(知識編)
「カナダのマツタケの大半はテラスなどのBC州北部から来ます」とシーボーンの中堀さんから聞いたが、一言でカナダ産マツタケと言っても、産地はどこなのだろう。
Kenwestによるとマツタケの産地は、チリワックやホープ、ペンバートン、ベラクーラ、ナカスプなど。量ではテラスがダントツだという。「ユーコンでも採れますし、マツがあれば生えてくる可能性はあるので、私はバンクーバーでもケリスデールのコミュニティセンターで見たこともあります」
テラスはBC州北西部のスキーナ川沿いの街で、プリンスルパートから東へ約116キロ、2016年の国勢調査で先住民の割合は23.6%と、人口全体に占める先住民の割合が高い。また、先住民の居留地でマツタケが取れることもあり「テラスのマツタケのピッカーの大半は先住民です」とKenwestはいう。
「マツタケの収穫は9月はテラス、10月からペンバートンなど南に下がってきます。そして北に行くほど採れるマツタケは大きく、南のペンバートンなどのものは小さくなります」
風味の良いカナダのマツタケ
マツタケは日本とカナダ以外にも、中国、韓国など、様々な国で採れると聞く。Kenwestは「風味が最も良いのは日本、そして次にカナダ産です」と評する。
また、北米産マツタケの学名はTricholoma Magnivelare=white matsutake(白いマツタケ)と呼ばれる種類で、対して日本はTricholoma matsutake=brown matsutake(茶色のマツタケ)と、日本とカナダのマツタケは学名が違うそうだ。
ちなみに日本のマツタケはIUCNの絶滅危惧種に指定されたそうだ。(Cheena リトンかおりさん、以下Cheena)
名前のとおり、白いカナダのマツタケ
世界各国のマツタケについて、Kenwestさんに聞いた。アメリカでもマツタケは採れてカナダ産より茶色いが、カナダと同じ品種だそうだ。
「中国と韓国は日本と同じ品種で茶色です。中国に関しては日本に輸出し始めたのが約20年からですが圧倒的な数量でした。近年は国内消費が増えてきたため日本への出荷数量は減りましたが、輸出量はまだダントツ多いです
欧州ではスウェーデンやフィンランドといった北欧で、モノはいいのですが、インフラがまだ整っていないので数は採れません。メキシコも質はいいのですが、やはり少ないですね」(Kenwest)
そのほか、ロシアやトルコ、モロッコなどでも採れるという。意外に世界各国で生育しているが、海外産の中でも、カナダ産のものは数十年前から日本に輸出されているということで、日本の食卓での浸透度が高いようだ。
「今年の日本は不作、お隣中国は豊作のようですが飛行機減便につき大量輸出できないそうで日本の松茸売場が縮小されているそうです」(シーボーン)
取材協力(アルファベット順)
取扱店
Cheena(チーナ)
www.cheena.com
カナダ産スモークサーモン、シーフード、メープルシロップ、アイスワイン、スイーツ等の日本向け宅配ギフト。松茸に関しましては、店頭販売は受付けていません。日本向け宅配のみ扱っています。
Tel 1-800-663-1110(フリーダイヤル)
Kenwest (ケンウエスト)
www.kenwest-export.com/wp/ja/
マツタケの日本向け宅配ギフト。青果物、水産物の輸出、日本食品の輸入。マツタケの店頭販売も(予め問い合わせのこと)。
Tel: 604-270-6070 / Email: info@kenwest.bc.ca
Seaborn (シーボーン)
www.seaborn.ca
バンクーバーのお魚屋さん(松茸あり)。自家製スモークサーモン、シーフード、松茸などの季節商品を日本へ宅配。
Tel: 604-324-7166 / Email: vancouver@seaborn.ca
参考
https://www.for.gov.bc.ca/hfp/publications/00028/harvest.htm
(取材 西川桂子)