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Naomi Mishima

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第38回BC州日本語弁論大会(2026年)

大会公式ウェブサイト:https://bcspeechcontest.blogspot.com/2025/09/38th-british-columbia-japanese-speech.html 

主催:BC州日本語弁論大会実行委員会、在バンクーバー日本国総領事館

協力:ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)アジア研究科、日系企業、姉妹都市

日時:2026年3月7日(土)

・高校部門:午前10時~午後12時
・大学・一般部門:午後1時~午後5時30分

会場(対面開催):Asian Centre, ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)

対象者:ブリティッシュコロンビア州およびユーコン準州に居住する、日本語を母国語としない日本語学習者

オンライン申請フォーム:https://forms.gle/3vobWBftVuibWwNt8

大会応募要項:https://drive.google.com/file/d/1-4Hc0L1i6u9OvfF0YH-TbEIHtOKetPzh/view

スピーチ原稿テンプレート:https://docs.google.com/document/d/1csKR5beLQxrpp0KM5QCfyzL807oe7O7F/edit

応募締切:2026年2月6日(金)午後5時締切

(原稿および音声ファイルを bcjapanese@gmail.com宛に送付)

<バンクーバー日系人合同教会から12月のお知らせ>

  • バンクーバー日系人合同教会は、すべての方に開かれた教会です。
    「教会は初めて」「キリスト教についてほとんど知らない」という方も、どうぞお気軽に。どなたでも大歓迎です。ご関心のある方は、お一人で悩まず、どうぞお気軽に牧師までご相談ください。Zoom(オンライン)でのご相談も、教会での対面でのご相談も可能です。

  • クリスマス礼拝の案内
    12月21日(日)午前11時よりクリスマスバイリンガル礼拝が行われます。礼拝に続きて一品持ち寄りでパーティーと祝会があります。どなたでもお気軽にご参加ください。
    12月24日(水)午後6時、クリスマスイブ晩餐会および礼拝。

  • 毎週日曜日午前11時から12時日本語で礼拝を行っています。礼拝後は軽食を囲み交流の時を持っています。
  • オンラインZoomで聖書を読む会(火曜、水曜)があります。聖書を読むことに興味がある方はお問い合わせください。
  • ボランティア募集:サンドイッチ作りと食料品配布
    ダウンタウンイーストサイドで生活される方々へ、温かい食事と支援を届ける活動に一緒に参加しませんか?ホームレスの方々をはじめ、食料を必要とされている方へサンドイッチを作り、食料品を直接お渡しするボランティアを募集しています。

木曜日午前9時から教会に集合、現地で11時頃から手渡しします。少しの時間でも、多くの手が必要とされています。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

  • 結婚、葬儀、その他の人生相談をお伺いします。

お問合せ:604-618-6491(テキスト可)、vjuc4010@gmail.com  牧師 イムまで
住所:4010 Victoria Dr, (Between 23rd and 25th Ave East), Vancouver

  • Zoom(ID 5662538165、パスコード1225)
    ホームページ、Facebook “バンクーバー日系人合同教会”で検索

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サレーNorthwood 合同教会 日本人会衆礼拝 

12月14日(日)午後2時より、クリスマス礼拝として行います。
住所:8855 156 St, Surrey, BC, V3R 4K9
お問い合わせ:604-618-6491(テキスト可)イム、kuniokazaki98@gmail.com 岡崎まで 

「オードリー・オチョア」音楽の楽園〜もう一つのカナダ 第41回

はじめに

 音楽ファンの皆さま、日加関係を応援頂いている皆さま、こんにちは。

 11月は、MLBワールド・シリーズ最終戦とともに始まりました。息を呑む白熱した試合は、日付を超えて、延長11回にまで縺れ込みました。私はと言えば、ブルージェイズの野球帽を被り、背番号27番ゲレーロJrの公式ジャージを着込んで、オタワ・ダウンタウンのスポーツバーの大画面を前に同僚達と精一杯応援しました。優勝にあとちょっとというところで、非常に残念ながら、ワールド・チャンピオンを逃しました。試合後に帰宅する際の体感温度は氷点下でした。

 そして、今(11月9日午後5時)、この原稿をオタワ空港で書き始めました。G7外相会合の開催されるナイアガラ・オン・ザ・レイク出張に向かう途上なのですが、今季初の積雪で、航空便が大幅に遅れています。その時間を活用している訳です。

 正に、冬到来です。日没時間も早く、夜がどんどん長くなっていきます。そんな冬の寒い夜には、トロンボーンが良いです。時に、過剰な程に熱量を発散するラテンのリズムに乗った温かい音色が気分を解してくれます。そこで、今回は、トロンボーン奏者にして作編曲家のオードリー・オチョアです。知名度は、率直に言って、未だ高くありません。しかし、彼女の音楽には、カナダならではの多様な要素が溶け込んでいます。是非、聴いて欲しいアーティストです。

オードリー・オチョアとは誰?

 フランシス・フォード・コッポラ監督の傑作「ゴッドファーザー」を持ち出すまでもなく、主人公をより良く理解するためには、その両親を知ることが極めて重要です。そこで、オードリーの父親、ロメオ・オチョアです。ロメオは、フィリピン人のトランペット奏者です。オチョア家は音楽一家でロメオは運と実力を試すべく、フィリピンを出てカナダはアルバータ州エドモントンに移住したのです。多文化主義の下、自由と開放性と多様性を重んじるカナダ社会の求心力と言えるでしょう。とは言うものの、移民であれ誰であれ、音楽で身を立てるのは容易ではありません。単純に演奏が上手いというだけで道が開けるほど甘い世界ではありませんから。ですが、ロメオは音楽で身を立てるに至るのです。地元の誇りエドモントン交響楽団、更に人気絶頂のトミー・バンクスの楽団でも演奏するようになります。このトミー・バンクスという音楽家はエドモントンを拠点に活用したピアニスト・作曲家にしてTV番組ホストでもありました。後年、上院議員にも任命される地元の名士でした。フィリピンからの移民一世ロメオは、正に運と実力を証明したのです。

 オードリーは、そんなロメオを父として、エドモントンに生を受けます。母親もアコーディオン奏者です。音楽溢れる家庭環境で育ちます。ですから、オードリーが幼少の頃からピアノを習い始めたのも自然な成り行きと言えるでしょう。

トロンボーンとの出会い

 ピアノを通じて音楽の基礎を身につけていったオードリーの運命の瞬間は、中学1年生の時に訪れました。それ以来、「トロンボーンから離れたことは一度たりともない」とエドモントン音楽評議会のインタビューに答えています。ヴァイオリン、チェロやフルート、サクソフォンではなく、トロンボーンが生涯の楽器となったのです。

 そこで、トロンボーンの歴史です。ルネッサンス期にトランペットに伸縮可能なスライドを装着した新しい楽器として登場。柔らかく荘厳な音色が特徴で、バロックを経て古典音楽の金管楽器群の一翼を担って来ました。ベートーヴェン「運命」でも活躍しています。そして、20世紀初頭に全く新しい音楽ジャズが誕生。日々進化を遂げていますが、20世紀前半は、率直に言えば、黒人が演奏する奇妙な音楽と一般には受け取られていました。そんな偏見を撃ち破ったジャズ音楽家がトロンボーン奏者にして作曲家・バンドリーダーのグレン・ミラーです。「ムーンライト・セレナーデ」や「イン・ザ・ムード」は、今や古典ですが、その核心は、美しく印象的な旋律を奏でるトロンボーンにあります。20世紀後半になると、トロンボーンはクラッシック、ジャズ、更にはロック、レゲエ等にも導入されるようになります。ビートルズも「Got To Get You Into My Life」や「All You Need Is Love」で効果的に使用しています。

 オードリーは、そんなトロンボーンに熱中します。「好きこそ、モノの上手なれ」と云うとおり、彼女は瞬く間に上達します。地元の名門アルバータ大学音楽学部に進学。18歳になると、アルバイトで演奏する機会も増え、結構なお小遣いを稼ぐようになります。ここで特筆すべきは、オードリーの旺盛な音楽的好奇心です。クラシックのみならず、ジャズ、ロック、更にはレゲエ、スカといった音楽をも演奏。そして、自ら作曲も手がけるようになります。当然ながら、職業音楽家への関心も湧いてきます。

 しかし、父ロメオは、愛娘が職業音楽家の道に進むことには消極的であったそうです。その道が険しいことを身を持って知っていたが故かもしれません。ですが、フィリピンからトランペットだけ抱いて未知の国へ移民し、実力と運で音楽の道を歩んだ父のDNAを持つオードリーです。自ら、職業音楽家への道を歩み始めます。父ロメオも応援します。

デビュー盤の衝撃

 2013年、オードリーはデビュー・アルバム「Trombone & Other Delights」を地元アルバータ州の独立系クロノグラフ・レコードから発表します。表題もジャケットも非常に軽妙で洒脱な装い。ですが、トロンボーンを通じてオードリーの持てる音楽のチカラを全て示そうとする彼女の覚悟を感じさせます。

 全8曲、45分に及ぶ音盤は、正に音楽の楽園です。ここには、ジャズをベースにしつつも、ロックやポップやラテンの深く豊かな芳香があります。全て、オードリーの作曲です。録音はエドモントンで、地元ミュージシャンの協力を得て完成させました。カナダの音楽業界をみれば、その中心はトロントです。カナダ最大にして北米3位の大都市で経済・学術・文化の活力に満ち多様性に溢れています。次いで、モントリオール、バンクーバーでしょう。エドモントンは地方都市に過ぎません。オードリーのこのデビュー盤は、言ってしまえば、音楽的辺境の地の無名の女性トロンボーン奏者のマイナーなレコード会社からリリースされた一枚に過ぎませんでした。しかし、音楽の本質は、何処で制作されたか、誰の作品かではなく、内容です。優れた音楽であるか否かに尽きます。そして、カナダの聴衆は、肩書や外見ではなく、音楽を愛でる耳を持っています。このデビュー盤は、カナダのジャズ・チャートの首位に立ちました。快挙です。

 ここで一つトリビアです。オードリーのこのデビュー盤は、その表題といいジャケットデザインといい、ハーブ・アルパートの「Whipped Cream & Other Delights」と瓜二つです。深夜放送オールナイト・ニッポンの主題歌「Bittersweet Samba」も収録したこの音盤は、1965年11月にはビルボード誌チャート首位となった名盤です。オードリーは、この音盤にインスピレーションを得て、その成功にあやかったのでしょう。是非、2枚のジャケットを見比べてみて下さいませ。

離陸

 デビュー盤の成功で、オードリーの一般的な知名度は、カナダ国内で上がります。と同時に、ミュージシャンの間での評判は急上昇です。晩年のマイルス・デイビスを支えた現代ジャズの巨匠であるマーカス・ミラーを筆頭に、テンプテーションズ、クリス・ポッター等と共演しています。職業音楽家として、作曲・編曲・録音、更には他のアーティストとの共演に忙殺される日々です。

 一方、上述のとおりアルバータ大学音楽学部で学ぶ中、オードリーは音楽教育の重要性を実感。同時に、人気商売である音楽家稼業とは別に生活の基盤を確保する大切さも痛感します。地に足のついた考え方は、父ロメオ譲りとも言えるでしょう。オードリーは、地元の小学校で音楽教師を勤めつつ、音楽活動を本格化させます。

 2017年には、第2弾アルバム「Afterthought」を発表。前作とは、全く赴きを異にするトリオ・アルバム。要するに、トロンボーンとベースと打楽器の3つだけです。ここで注目すべきは、ピアノとかギターという和音を奏でる楽器が無いということです。それ故に、より広い音楽的スペースが生まれ、トロンボーンが縦横無尽に走り舞うことが出来る訳です。ジャズの核心である即興演奏の実力が露わになります。非常に野心的な試みと言えるでしょう。この音盤を聴いて思い出したのがソニー・ロリンズ1957年の異色作「Way Out West」です。サキソフォン・ベース・ドラムの三重奏が生み出す独特の音空間には、歌心に満ちたロリンズ節が溢れています。

飛翔

 2020年、第3弾「Frankenhorn」が発表されました。表題とジャケットデザインが示すとおり、オードリー版のフランケンシュタインです。ヴィジュアル的にはちょっと気味悪いですが、異質な要素を繋ぎ合わせて新しい次元に踏み出そうという意気込みを感じます。

 聴けば、1枚の音盤の中に4つの異なる音楽が脈打っています。①ピアノ・ベース・ドラムという定番のリズム・セクションに乗って奏でるジャズ、②パーカッションを強調したラテン、③ピアノと弦楽器を背景にしたクラシック風、④ヒップホップ的なエレクトリカ・DJ、です。その上で、主役であるオードリーのトロンボーンが素晴らしい音色で歌っています。

 そして、2023年には最新盤「The Head of A Mouse」をリリース。まず、この表題に興味が湧きます。実は、父ロメオが娘オードリーに授けた格言で、フランスの諺「ライオンの尻尾になるより、ネズミの頭がまし」に由来するものです。中国の歴史書『史記』蘇秦伝にある「鶏口となるも牛後となるなかれ」と同趣旨です。強大な組織や集団の中で上の者に従って末端にいるよりも、たとえ小さな組織であってもそのトップになった方が良いとの考え方です。要するに、有名音楽家のバンド・メンバーになるよりも、自分自身でバンドを率いるべし、ということです。自分が心底演りたい音楽を心の赴くままに存分に演るということに尽きるのです。

 「The Head of A Mouse」は表題どおり、オードリーが持つ多様で多彩な音楽性が表れています。前作が更に拡張され、全13曲、1時間7分の大作です。ここには、トロンボーンによる現代ジャズの万華鏡の趣きがあります。

 全てオードリーの作編曲ですが、ちょうど新型コロナ感染爆発の時期に書き溜めたものです。各楽曲には、家族・喪失・絆といった思いが込められていると言われています。

結語

 オードリー・オチョアは、フィリピン系カナダ人でカナダの今を体現している音楽家だと思います。彼女は移民社会の成熟を想起させるからです。と言うのも、近年のカナダへの移民の出身国トップ3は、インド、フィリピン、中国(香港・台湾を含む)です。フィリピン系カナダ人の活躍は様々な分野に及んでいて、連邦下院議員も誕生しています。

 オードリーは、音楽家として一作毎に進化を遂げています。デビュー盤はハーブ・アルパート的なポップ感、第2作はソニー・ロリンズを彷彿させるビバップ感、第3作は多様性を示しました。そして「The Head of A Mouse」は、フィリピン系カナダ人音楽家として初めてジュノー賞候補となった作品です。

 オードリーの次なる音楽的冒険が何処に向かうのか興味が尽きません。

(了)

山野内勘二・在カナダ日本国大使館特命全権大使が届ける、カナダ音楽の連載コラム「音楽の楽園~もう一つのカナダ」は、第1回から以下よりご覧いただけます。

音楽の楽園~もう一つのカナダ

山野内勘二(やまのうち・かんじ)
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

「縄文の三内丸山遺跡はなぜほろんだか」~投稿千景~

エドサトウ

 一万年ぐらい続いたと思われる青森県の三内丸山遺跡は、なぜ忽然とその姿を消したのかと言えば、今から4200年前の気候変動による寒冷化により冬の食料にしていたと思われる栗などのナッツ類が取れなくなり三内丸山遺跡を放棄されたようである。

 我が家にも少しばかりのブドウの木があり、2年前までそのブドウで自家製ワインを作っていた。昨年はブドウはなったけれど、少し未熟な感じがしたので10月に入るまでそのままにしておいたら、ブドウの葉の下でほとんどがカビが生えて腐ってしまい、ブドウ酒にはできなかった。今年は、それよりもひどく、小さな黒い乾燥した房になってしまった。温暖化により、2度くらい高い乾燥した夏であったことが原因でないかと想像する。

 三内丸山遺跡の場合は寒冷化により2度ぐらい気温が下がったらしい。しかし、なぜ栗などの不作で、あの大きな縄文時代の集落が忽然と姿を消したかを考えれば、クマが人里の三内丸山遺跡に現れて、人間とか食料が狙われて生活ができなくなったのかもしれない。

 今年の秋、日本でも山奥のクマの食料不足か、頻繁に人里にクマが現れて、多くの人が亡くなったり、大けがをしたのをみると、縄文時代の三内丸山遺跡でも、きっと同じことがあったのではと想像される。

 何故か、三内丸山遺跡と同じころ、シュメール人のメソポタミア文明も忽然と姿を消している。民族が大移動してナイル川の北部に住み、後にピラミッドなどの建設に携わったのではと考えられなくもない。

 余談だが、仏教の西方浄土という考えはこの時のものらしく、日の沈む西の方に行けばいい生活ができるというものが死後の世界観になったらしい。

 三内丸山遺跡の人々も、西、正確に言えば、南西に下り、クマがいないとされる千葉県あたりへ移住したのかもしれない。

 しかし、北海道にいるアイヌの人たちは、僕の想像からすれば、太古の時代にマンモスを追って、大陸から南下してきた狩猟民族の人々なので、クマをとらえてマンモスのように冬の食料として、秋になれば積極的に狩猟を行ったりサーモンの捕獲をしたのであろう。クマの肉は冬の食料となり、毛皮は冬の防寒着になったように想像できる。クマはアイヌの人々にとって神聖なものであったのである。

 「イヨマンテの夜」という歌があるけど、あれは祝いの歌らしい。父が好きな歌で、戦後のNHK「歌ののど自慢」で歌って、鐘が二つなったらしいという話を母から聞いたことがある。

 戦後は、アメリカの食料援助がなければ、日本の多くの国民が餓死したのではという話もある。食料は人の命であるが、今では日本の食料の大半は海外からの輸入で、日本の自給率は半分以下(40%)である。しかし、日本のコメの増産はしない様子、それは人口の減少とか、食生活の変化でお米を食べなくなったからだと言われているが、食料安保の考えからすれば、ある程度コメの増産をして、余ったお米は、米粉にして小麦と混ぜて、新し加工法でパンなどを作れるようにして、食料の不足している国々に援助として送ればよいのではと、日本のニュースを見ながら思うことである。

投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
これまでの当サイトでの「投稿千景」はこちらからご覧いただけます。
https://www.japancanadatoday.ca/category/column/post-ed-sato/

“1910: The Uncovering” 「知られざるもう一つの日系カナダ人の悲劇」を追うドキュメンタリー映画、VIMFFでワールドプレミア

ワールドプレミアに出席した“1910: The Uncovering”関係者で。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
ワールドプレミアに出席した“1910: The Uncovering”関係者で。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
VIMFFの会場で。左から、ブリュースターさん、タウンセンド監督、藤村さん、脚本を担当したオーエン・アキラ・カトウさん。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
VIMFFの会場で。左から、ブリュースターさん、タウンセンド監督、藤村さん、脚本を担当したオーエン・アキラ・カトウさん。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 バンクーバー国際山岳映画祭(VIMFF: Vancouver International Mountain Film Festival)でワールドプレミアとしてドキュメンタリー映画 “1910: The Uncovering”が上映された。

 11月12日、映画祭のオープニング会場となったリオ劇場(バンクーバー市)には、チャド・タウンセンド監督、主人公として出演する藤村知明さん、モーガン・ブリュースターさん他、出演者が出席した。

 物語は1910年にブリティッシュ・コロンビア(BC)州ロジャーズパスで起きたカナダ史上最悪の雪崩事故を掘り起こし、関わった人々の思いを映し出す。

“1910: The Uncovering”

“1910: The Uncovering”より。Photo by Vancouver International Mountain Film Festival
“1910: The Uncovering”より。Photo by Vancouver International Mountain Film Festival

 1910年3月4日、BC州レベルストーク近くのロジャーズパスで大規模な雪崩が起きる。そこは1885年に完成したカナダ太平洋鉄道(CPR)が走る重要な地点。当時、鉄道作業に従事していた作業員58人が雪崩の犠牲となった。うち32人は日本人だった。

 時は流れ現代。事故について調べていた2人が出会う。レベルストーク市在住の藤村知明さんは犠牲となった日本人について日本語資料などを調査。一方、バンクーバー市在住のブリュースターさんは事故当時に同じく作業に関わっていた曾祖父の足跡をたどっていた。異なる動機を持つ2人だが、共有する情熱で忘れられた悲劇を掘り起こしていく。

史実を魅せるドキュメンタリー映画にする難しさを乗り越えて

 100年以上前に起きた雪崩事故をドキュメンタリーとして制作するには難しさがあったとタウンセンド監督は語る。ドキュメンタリー映画とする提案は藤村さんから持ち掛けられたという。「最初は乗り気ではありませんでした。というのもテーマが非常に複雑なものだったからです」。タウンセンド監督は以前に日系カナダ人強制収容をテーマに野本久一の人生を映画いた「Nomoto: A BC Tragedy」を制作していた。

 2人に説得されて映画作ると決めてからも「歴史的な事故を題材にし、それを現代の人々、特に若い世代が興味を引くような作品に仕上げることは難しい」という思いは変わらない。予算、期限、環境という制作側の厳しい条件に加え、「日本人側の視点とブリュースターさん家族の観点を一つの物語にして、どうやって幅広い観客に興味を持ってもらうのかが課題でした」。

 映画では資料などから当時のことを知る博物館や大学、墓地などの関係者が出演し、当時の状況を説明する。なぜ雪崩は起きたのか、なぜ多くの犠牲者が出たのか、なぜその多くが日本人だったのか、当時の社会情勢や救出活動など、さまざまな角度から当時を掘り下げていく。

インタビュー中も話が弾む3人。左から、ブリュースターさん、タウンセンド監督、藤村さん。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
インタビュー中も話が弾む3人。左から、ブリュースターさん、タウンセンド監督、藤村さん。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 その中心にいるのが藤村さんとブリュースターさんだ。2人はフェイスブックで知り合ったという。「投稿した1910年の雪崩事故についてトモ(藤村さん)がコメントして。それに返信して…」。そうして「この人に連絡を取ったら良さそうだ」とやり取りが始まった。「自分のやっていることや、関心のあることを説明して」。それからすぐに2人でのコラボレーションになったと振り返る。

 タウンセンドさんが監督すると決まって分かったことは「2人は5分しか離れていない所に住んでたんです」とブリュースターさんは笑う。ドキュメンタリーにするにあたり、2人は何度も会って物語を絞っていったという。「この一つの事故を取り上げるだけで膨大な物語を語ることができる。どこに焦点を当てるか、それが最大の挑戦でした」と監督。「とにかく2人が調査した量が多くて膨大な情報が送られてきたんです。これをどうやって30分ほどの短い映画に収めるのか」。何層にも重なる物語を一つのドキュメンタリーにする難しさが常に頭にあった。

 ただ、制作にあたり始めから自分たちに問いかけたのは、「この事故がなぜ今と関係するのか」だった。「この歴史的事故の物語を、2人(藤村さんとブリュースターさん)の関係を通してどのように現在の関心事としてつなげるのかが一貫したテーマでした」

時空を超えて1910事故から伝えたいこと

 レベルストークではロジャーズパス雪崩事故から100年となる2010年に記念行事が予定されていた。藤村さんに実行委員会から2009年に連絡が来たという。犠牲になった日本人の名前や人数、なぜ日本人が犠牲になったのか、などの調査の依頼だった。それがロジャーズパスの事故を知るきっかけとなった。藤村さんは「実行委員会から日本人の自分に声を掛けてくれたのはとてもうれしかった」と話す。それからは仕事の合間を縫って調査した。記念行事が終わっても調査を続けている。

 一方ブリュースターさんは曽祖父が生涯鉄道関係で働いていたことやロジャーズパスの雪崩になにかしら関わっていたことは知っていたが、「それ以外はよく知らなかったので調べ始めました」と話す。新型コロナウイルスが猛威を振るっていたころだったという。調べ始めてすぐに藤村さんと知り合った。「彼はすでにすごく調査していて。ドキュメンタリー映画のアイデアは彼からでした。2人でアイデアを出し合ってコラボのようになりました」。ブリュースターさんはレベルストークでの2010年記念行事がなければ自分のリサーチは難しいものになったと思うという。記念行事のおかげで多くの資料がすでにデジタル化されていたからだ。「最初は個人的なファミリーヒストリーを調べていたわけですが、それがすぐに映画という話になりました」

 27分の映像の中には2人の思いとさまざまなテーマが詰まっている。115年前に起きた事故は今に何を伝えるのか。

 タウンセンド監督は「2人の目的の一つはこの物語を多くの人に知ってもらうこと。(VIMFFに来る)人たちはすばらしいスキーシーンやアドベンチャーを期待していると思うけど、同時に1910年の出来事がなぜ今大事なのかという教訓を得てほしいと思っています」と語った。

 ブリュースターさんは「悲劇が起きたという事実を知ってもらうこと。犠牲になった人たちがいて、その人たちそれぞれに家族がいて、そうした人の努力が事故の背景にはあることを知ってもらえれば、またこの映画をきっかけにそれぞれのヒストリーをたどってみようと思うきっかけになってもらえれば」と語る。

 そして藤村さんは「たくさんの違った角度から見ることができる映画なので、それぞれがどう捉えるかは分からないですが、何か一つでもつかんでくれたらうれしいです」と期待した。

 映画祭は劇場での鑑賞は終了したが、映画は引き続きオンラインで視聴できる。

Vancouver International Mountain Film Festival(VIMFF)オンライン視聴
視聴可能日時:11月19日12:00 pm ~12月14日11:59 pm(太平洋標準時)
ウェブサイト・チケット情報:https://vimff.org/show/online-adventure-show/
“Adventure Show”のカテゴリーで上映される8本のうちの1本として上映。

“1910: The Uncovering”
DIRECTOR: Chad Townsend
LANGUAGE(S): English, Japanese | SUBTITLES: English
https://1910theuncovering.ca

ワールドプレミアに出席した“1910: The Uncovering”関係者で。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
ワールドプレミアに出席した“1910: The Uncovering”関係者で。2025年11月12日、バンクーバー市。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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バンクーバー・ライズ、カナダ女子サッカーリーグNSL初代チャンピオンに

NSL初代チャンピオンに輝いたバンクーバー・ライズ。優勝トロフィを手に。2025年11月15日、トロント市。Photo by Vancouver Rise FC
NSL初代チャンピオンに輝いたバンクーバー・ライズ。優勝トロフィを手に。2025年11月15日、トロント市。Photo by Vancouver Rise FC

 バンクーバー・ライズがノーザンスーパーリーグ(NSL)カナダ女子サッカープロリーグ初代チャンピオンに輝いた。

 オンタリオ州トロント市のBMOフィールドで行われたAFCトロントとの決勝戦。前半は完全にトロントが支配した。19分には17歳のストライカー、ハンターが右から放ったシュートがバンクーバーGKマッカシアンの股を抜けて先制。トロントが1-0とリードした。さらにバンクーバーに悲劇起きる。36分にMFクインがけがで退場。主力を失い、猛攻するトロントに立ち向かわなければならなくなった。

 その直後、雷により試合は一時中断。約30分後に再開した時にはバンクーバーは息を吹き返していた。

 後半に入り8分。バンクーバーのコーナーキックがトロントのオウンゴールを誘い同点に追いつくと67分にはFWワードが左からドリブルで上がりそのままシュート。右隅に決まり2-1と逆転に成功した。

 その後もトロントの猛攻が続いたが、バンクーバーが守り切りゲームセット。ほとんど試合を圧倒していたトロントを、少ないチャンスを確実にものにしたバンクーバーが制し、優勝した。

 バンクーバー・ライズの岡本祐花は先発出場。再三チャンスを作る活躍をしたが、同点になった後の59分に交代した。トロントの木﨑あおいは出場機会がなかった。

同点を喜ぶバンクーバー・ライズの選手たち。岡本(#18)も喜びの輪に。2025年11月15日、トロント市。Photo by Vancouver Rise FC
同点を喜ぶバンクーバー・ライズの選手たち。岡本(#18)も喜びの輪に。2025年11月15日、トロント市。Photo by Vancouver Rise FC

(記事 三島直美)

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上映会のお知らせです!『ある家族の肖像〜被爆三世代の証言〜』

テレビ朝日の「報道ステーション」を立ち上げた上松道夫監督によるドキュメンタリー映画で、このバンクーバーでの上映が海外初上映になります。

広島で被爆した一人の男性、その娘、そして孫へと継承された負の遺伝子。科学的には放射能の影響が3世代へ引き継がれると証明はされてはいませんが、現実には二世や三世で病気に苦しむ人たちはたくさんいるのです。そのほとんどの人が声を上げずに、差別を恐れ、病気の苦しみにただ無言で戦っているのです。

この家族は、そういう現実の中で、実名をあげ、顔を隠すことなく映画の中で思いを語っています。たくさんの方々に見ていただき、核の解明されない恐ろしさを知っていただきたい。そして、戦後80年経った今も、戦争を知らない世代が向き合わなければならない身体を通しての戦争体験、そして、20代の3世が癌とどのように向き合い、未来を思うのかを見ていただきたいロードムービーです。

監督が挿入の音楽にこだわり、言葉ではなく音楽で語りたいと言わしめた音楽を提供した作曲家でありジャズピアニストである金谷康佑氏のピアノ演奏と、映画に出演した二世である鈴木カオル氏のトークショーも行います。映画は英語の字幕付きです。

▶︎上映日時 2025年11月22日(土) 開場13:00 開演13:30 終演16:00

13:30〜 映画『ある家族の肖像〜被爆三世代の証言〜』(60分)英語字幕付き
14:45〜 金谷康佑ピアノ生演奏+鈴木カオル(二世)のトークショー

▶︎場所 日系文化センター・博物館(Nikkei National Museum & Cultural Centre)

▶︎参加費 $10(会員) $15(非会員)

▶︎予約 お申し込みはこちらからお願いします https://00m.in/xoFSU

▶申し込みのリンクやQRコードから登録ができない場合は office.jccoc@gmail.com に氏名とメールアドレスを明記してお申込みください。

▶︎共催/後援 日本カナダ商工会議所共催・バンクーバー広島県人会後援・日加トゥディ(メディアスポンサー)

書道教室  並びに  書道ワークショップのお知らせ

★書道教室:月2回 漢字・かな・ペン字
*日系センター 第①,②水 曜日 11時~
*リッチモンド 第①、②火曜日      〃

*** 

★書道ワークショップ:「万葉集 漢詩を書く会」
*日系センター 月1回 土曜日 11時―12時半
万葉集で仮名 または 漢詩で漢字のお稽古をし 毎回作品を制作します
清書用紙は受講料に込み  初心者用の手本有  準備上事前予約要

***

★シニア(55才以上)の書道ワークショップ  -シニア料金-
日時―12/18、 1/15/2026、 2/12、3/12  月1回  木曜 2時30分―4時
継続のクラスではなく 月ごと(1回ごと)の申し込みになります。
お道具のレント等も受講料に 込み  5名以上で開講
*場所― Minoru Senior Centre Richmond (7191 Granville Ave. Richmond)  

 *** 

●各クラス、初心者歓迎、見学できます。ご希望の方は事前連絡を。

お申し込み・詳細は下記までお気軽にお問い合わせ下さい。
書道研究 一成会
TEL(604)273-1621
e-mail : rvan2@hotmail.com

日本語認知症サポート協会「オンライン de Cafe・笑いヨガ」

笑いヨガで初笑い〜イーヤーサーサーのリズムに乗って〜

2026年の「笑いヨガで初笑い」は、「サザンウェーブ沖縄の唄と踊り愛好会」と共催で、 ハイブリッド形式で開催します。三線の音色に合わせたカチャーシーも踊る、一味違った初笑いで新年を祝いましょう。

日時:2026年1月25日(日)午後2時〜午後4時
会場:会場参加:日系文化センター・博物館 1階 IGルーム、およびZoom

参加費: 無料
申し込みリンク:https://forms.gle/XbLDYfxX919LWsrM6

申し込み締め切り:2026年1月22日(木)

お問い合わせ先:orangecafevancouver@gmail.comsouthernwave.vancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会(Japanese Dementia Support Association)

共催:サザンウェーブ沖縄の唄と踊り愛好会

<申し込みを締め切りました>日本漢字能力検定(2026年1月)のお知らせ:グラッドストーン日本語学園

グラッドストーンで漢字検定開催

 2026年1月31日実施予定の漢字能力検定試験は11月15日に定員に達したため、申し込みを締め切りました。ありがとうございました。

***

 2026年1月31日(土)に『公益財団法人 漢字能力検定試験』を実施いたします。

 この検定は国内はもとより、世界の日本語学校でも実施されているものです。日本国内でも高校や大学の入学試験において有利であったり、企業内でも受検を促しているところもあるとのことです。

 カナダにいるけれども、将来日本で勉強しよう、あるいは働こうと思っている方、もしくはいずれ日本で社会生活を送ろうと考えている方は、この機会に受検をお勧めします。

 日本語能力試験に大変役に立っているという声もあります。

 受検をご希望の方は、グラッドストーン日本語学園までお問い合わせ下さい。

公益財団法人認定日本漢字能力検定実施要項

実施日:2026年1月31日(土)午後4時から
会場:グラッドストーン日本語学園(日系文化センター・博物館2階)

申し込み締切日:2025年12月6日(土)
※定員になり次第、締め切りとさせて頂きます。
※学園ホームページからお申込み頂けます(https://www.gladstonejls.com/kanji/

申し込み連絡先:グラッドストーン日本語学園
電話:604-515-0980
Email:info@gladstonejls.com
ホームページ:https://www.gladstonejls.com

第30回 “やることリスト”より、“やらないことリスト”で整える年末 ~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

気づけば、いつの間にか11月。

ハロウィンが終わった途端、スーパーにはもうクリスマスソング。日本では年賀状コーナーも出てくる頃でしょうか。

「うわ、もう今年もあと2ヶ月ないの?」と焦る方もいるかもしれません。でも、ここでちょっと立ち止まってみてください。

大掃除やクリスマスカード、はたまた年賀状の前に、“心と人生の棚卸し”をしてみませんか?今日は、年末前に少し取り組むだけで“新しい年が軽くなる終活3選”をご紹介します。

① エンディングノートを“ちら見”する

「とっくに書いたから大丈夫!」と思っている方も、念のため中をのぞいてみましょう。最後にノートを開いたのがいつだったか、思い出せない人もいるのでは?書いた当時は完璧でも、住所や保険、口座情報、希望の住まいなど、意外と変わっているものです。

全部を書き直す必要はありません。気になるところだけ、“ちら見更新”で十分。それだけで、今の自分に寄り添ったノートになります。

見直しのタイミングは、年末や自分の誕生日がおすすめ。
新年を迎える前、または生まれた日に感謝しながら、これからを整えてみる。

そんなアップデートや振り返りを、毎年の小さな習慣として取り入れてみてはいかがでしょうか。

② スマホの写真を“眺める”

「減らさなきゃ!」と気合を入れるより、“眺める”のがポイント。

1年分の写真って、けっこう捨てがたいんですよね。

え?1年どころか3年分?5年分?それ以上??
それはもう、見応えたっぷりの“人生アルバム”です。
でも今、見返してみると気づくはず。

「これ、なんで撮ったんだっけ?」とか、
「この夕飯シリーズ、ほぼ同じ構図じゃない?」とか。

そんな“あるある写真”は、笑いながら即削除。

削除したくない写真ばかりなら、これを機に思い切ってハードドライブなどへ保存。それができたら、携帯には本当に残したい写真だけになっているはず。

それが、“今を大切に生きる”ためのデジタル終活。
まずは、隙間時間でできる“スマホから”始めてみるのがおすすめです。

③ “やらないことリスト”を作る

「来年こそ新しいことを始めよう!」と意気込むより、まず「やめること」を決めてみましょう。

手放すものを決めると、時間も心も軽くなります。人生の“余白”をつくることでもあるのです。

たとえば、
・気が進まない飲み会には行かない
・SNSを目的なく眺めて、なんとなく時間が過ぎるのをやめる
・「いつか使うかも」で、物を溜め込まない
やらないことを決めるのは、“自分をラクにする”ための選択。「手放す勇気」も、立派な終活のひとつです。

来年を軽くしたいなら、今ちょっとだけ手を動かす。こんな小さな積み重ねの終活なら、取り入れやすく、続けやすいはず。

大掃除の前に、“心のホコリ”をサッと払っておきましょう。

……はい、書いている本人(筆者)も、溜めがちなので一緒に頑張ります!

*ご感想・ご質問は、メールにてお気軽にどうぞ。voice@shukatsu.ca

本コラムは終活に関する一般的な情報提供を目的としています。内容には十分配慮しておりますが、必要に応じてご自身での確認や、専門家へのご相談をおすすめします。なお、本コラムをもとに行動されたことによる不利益については、免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

グローバルライフデザイナー/海外終活アドバイザー
カナダ・バンクーバー在住。

カナダで親しい友人を突然亡くしたことをきっかけに、終活の大切さを実感。
相続専門の弁護士アシスタントとしての経験をもとに、海外を含むさまざまな場所で暮らす日本人の終活を、学びの視点から支えている。

エンディングノートの活用や家族との対話を通じて、「自分らしくこれからを生きる」ヒントを共有する活動を続けている。

「終活」を、これからの人生を見つめ直す機会ととらえる——そんな“私活(わたしかつ)”という考え方も、大切にしている。

家族は、カナダ人の夫、2人の息子、愛猫1匹。
ホームページ:https://www.shukatsu.ca

怪物の内側にある、人間よりも人間らしい心『フランケンシュタイン』(ギレルモ・デル・トロ監督)

「フランケンシュタイン」より。Courtesy of TIFF
「フランケンシュタイン」より。Courtesy of TIFF

 ハロウィーンが終わり街はあっという間にクリスマスムードになってきたバンクーバー。そんな11月7日、Netflixで『フランケンシュタイン』(ギレルモ・デル・トロ監督)が配信開始となりました。フランケンシュタインと言えば、ハロウィーンのコスチュームでも定番の、あの緑色で顔に傷がたくさんある怪物を思い浮かべる人も多いはず。でもメアリー・シェリーが書いた原作では、フランケンシュタインは怪物を創り出した科学者の名前なんですね。今回お届けするのは、その科学者フランケンシュタインと彼が創り出した怪物、クリーチャーが繰り広げる悲しい物語です。

あらすじ:19世紀ヨーロッパ。科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、死者の体をつなぎ合わせて命を吹き込むという禁断の実験に成功します。
生まれた怪物は「クリーチャー」と呼ばれ、創造主であるヴィクターに拒まれながらも、生きる意味と愛を求めてさまよい始めます。やがてその孤独な怪物は、人間の残酷さと優しさの狭間で揺れ動き、復讐か赦しかを選ぶことになります。

怪物の内側にある、人間よりも人間らしい心

 ギレルモ・デル・トロ監督が長年温めてきた構想をついに映像化した『フランケンシュタイン』。デル・トロ監督らしい幻想的でダークファンタジー的な世界感の中で、「人間が命を生み出す」という傲慢が引き起こす悲劇を描いています。

 監督の代表作『シェイプ・オブ・ウォーター』も、異形の存在と人間の愛を描いた物語でした。『シェイプ・オブ・ウォーター』では愛による救いがあったのに、『フランケンシュタイン』ではむしろ愛を拒絶された痛みが強く描かれています。それでも監督の怪物の中に見る「人間らしさ」へのまなざしには、変わらぬ優しさが感じられます。その優しさがあるからこそ、「異形の物」を受け入れようとしない人間たちの愚かさとエゴが一層際立って見えるのです。

(L to R) Jacob Elordi as The Creature and Oscar Isaac as Dr. Victor Frankenstein on the set of Frankenstein. Cr. Ken Woroner/Netflix © 2025.
(L to R) Jacob Elordi as The Creature and Oscar Isaac as Dr. Victor Frankenstein on the set of Frankenstein. Cr. Ken Woroner/Netflix © 2025.

 さらに、創造主と被創造物の関係を父と子の関係にも重ね、生みだした者としての責任にも問いを投げかけています。命を与えながら愛を与えなかった父と、愛されることを知らない子。その断絶こそが、この作品の悲劇の核心なのかもしれません。 

 デル・トロ版「フランケンシュタイン」は、この絶望的な物語の終わりに、ほんのわずかですが「救い」を忍ばせています。もしクリーチャーが、この究極の「毒親」である科学者を最後に赦し自分を受け入れられたのなら、それこそが本当に救いです。

 物語の悲しさとは別に、壮大なセットや衣装、そして俳優さんたち皆、怪物までもがとても美しく描かれています。150分と長めですが、ヴィクターサイドの話とクリーチャーサイドの話に分かれているので、気にならない長さです。細部にまでデル・トロ監督の情熱が宿る世界に浸れることは間違いなしの作品です。

 Netflixで配信中です。

Lalaのシネマワールド
映画に魅せられて

バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
旬の映画や話題のドラマだけでなく、さまざまな作品を紹介します。第1回からはこちら

Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
みなさん一緒に映画観ませんか!?

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