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Naomi Mishima

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イーストサイド・アート・フェスティバル18日から開催、パウエル祭とのコラボイベントも

写真提供 Eastside Arts Festival。Photo by Wendy D Photography
写真提供 Eastside Arts Festival。Photo by Wendy D Photography

 今年で5回目となるイーストサイド・アート・フェスティバルが7月18日から始まる。開催期間は27日まで。

 老若男女を問わない多彩な体験が楽しめるアートなイベントで、参加型アートワークショップや臨場感あふれるライブ音楽パフォーマンスなど、感性を刺激するプログラムが満載。ビアガーデンも用意されている。

 街を彩るパブリックアートの展示やユニークな作品が並ぶアートショップも登場し、芸術に触れ、学び、楽しむ絶好の機会となっている。会場はバンクーバー市イーストサイド地域。

 プログラムの一つには、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館を出発する360 Riot Walk(有料)もある。1907年にこの地域で日系・中国系カナダ人を襲った反アジア人暴動を振り返る。30分のウォーキングツアーも含めて約3時間のプログラム。実施日7月20日。詳細はウェブサイトで。https://www.eventbrite.com/e/360-riot-walk-july-20th-tickets-1403083002029?aff=odcleoeventsincollection&keep_tld=1

 無料イベントでは、Big Print Powell Street/Paueru Gai 2025 Carving Demonstrationに注目。7月24日に3回開催され、最終仕上げは8月2日、3日にオッペンハイマー公園とその周辺で開催されるパウエル祭で披露されるコラボイベント。1回20人と人数制限があるため要予約。https://www.eventbrite.com/e/big-print-powell-streetpaueru-gai-2025-carving-demonstration-tickets-1406607794779?aff=odcleoeventsincollection&keep_tld=1

フェスティバルのプログラム内容はウェブサイトで確認を。https://eastsideartsfest.ca/

(記事 編集部)

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もっとカナダを楽しめる夏、Canada Strong Passで国立公園入場が無料に

国立カナダ戦争博物館。設計は日系カナダ人建築家レイモンド・モリヤマ氏。2025年4月3日、オタワ市。撮影 日加トゥデイ
国立カナダ戦争博物館。設計は日系カナダ人建築家レイモンド・モリヤマ氏。2025年4月3日、オタワ市。撮影 日加トゥデイ

 カナダ政府は国立公園や博物館・美術館などを無料、もしくは割引価格で利用できるプログラムを6月20日から実施している。

 無料になるのは、パークスカナダ(Parks Canada)管轄の国立公園(national parks)と国定史跡(national historic sites)、国立海洋保護区(national marine conservation areas)。国立公園でのキャンプは25%割引となる。対象は全利用者。カナダ在住や海外からの旅行者など関係なく誰でも利用できる。

 割引が適用されるのは、国立博物館・美術館。17歳以下は無料、18~24歳は50%割引となる。ケベック州ケベックシティにあるアブラハムの平原博物館(Plains of Abraham Museum)やオンタリオ州オタワ市のカナダ戦争博物館(Canadian War Museum)、マニトバ州ウィニペグ市のカナダ人権博物館(Canadian Museum for Human Rights)など。

 カナダを横断する鉄道ヴィアレール(VIA Rail)も子どもを対象に割引となる。大人と同乗する17歳以下は無料、18~24歳は25%割引。

 その他にも同プログラムに参加している州立博物館や美術館も割引となる。17歳以下は無料、18~24歳は50%割引。

 Canada Strong Passプログラムの利用にカードやオンラインでの「パス」を申請したり、持ったりする必要はなく、対象者であれば利用時に適用される。ただし、一部には予約が必要な公園や博物館があるため確認する。

 ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー近郊ではリッチモンド市スティーブストンにある日系カナダ人の歴史とも関係が深いGulf of Georgia Cannery National Historic Siteが無料利用できる。

 適用期間は、6月20日から9月2日まで。

 詳しくはカナダ政府ウェブサイト、もしくは、パークスカナダウェブサイトで確認を。

Canada Strong Pass:https://www.canada.ca/en/canadian-heritage/campaigns/canada-pass/about.html#wb-cont

Parks Canada:https://parks.canada.ca/voyage-travel/conseils-tips/choisis-canada-choose/admission-camping

(記事 編集部)

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第26回 「主役じゃない私が、もらったエール。」~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

夏の陽ざしが少しずつ力を増し、バンクーバーにも季節の移ろいが感じられるようになってきました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。わが家ではこの夏も、野球一色の日々が続いています。

私には高校生の息子が2人います。長男はこの6月に卒業したばかりですが、どちらも小さい頃から野球を続けていて、春から夏にかけては家族総出で練習や試合に帯同するのが毎年恒例です。

先日は、長男の高校最後のトーナメントが、バンクーバーから約350キロ離れた町・カムループスで開催されました。

準決勝までギリギリ勝ち上がったチームが、なんと、まさかの優勝!

最終回、1点ビハインドのまま迎えた攻撃で同点に追いつき、2アウトからのサヨナラ勝ち。スタンドの歓声がグラウンドに響き渡る、劇的な幕切れとなりました。

……が、実は私、その感動の瞬間、タイミング悪く外野席の奥のトイレに向かって歩いておりまして(笑)かろうじて遠目でホームへの滑り込みだけは撮影できたものの、歓喜に沸く選手たちの姿は見逃してしまいました。

そんな3泊4日の滞在中、ある方から一通のメッセージが届きました。「今、日本で“終活”をテーマにしたドラマが放送されているんですよ」と、関連ニュースや写真とともに教えてくださったのです。

そのドラマの原作は漫画なのですが、実は私、その作品を数年前に、友人のご主人からプレゼントしていただいたことがありました。「終活の話だから、のりこさんの役に立つと思って」と、友人を通じて贈ってくださったものです。

その時のやさしさや、背中をぽんと押してくれるような思いが、メッセージを読んだ瞬間によみがえってきました。

何年も経ってからでも思い出してもらえること、そして「きっと喜ぶだろうな」と誰かが自分のことを思ってくれること。それだけで、胸がじんわりとあたたかくなります。

私は今も、弁護士アシスタントとして、遺言や委任状などに関する仕事に携わっています。そして、終活アドバイザーとして開催するセミナーでは、「貴重な情報が得られた」「気づきをありがとう」といった感謝の言葉をいただくこともあります。

でも、そこからすぐに“行動”へと移す方は、実はそれほど多くありません。

どれだけ言葉を尽くしても、どんなに丁寧に伝えても――
動かない人は、やっぱり動かない。
そしてそのまま、家族やまわりの人を、争いや混乱の渦に巻き込んでしまうのです。

何度も、もどかしさに押しつぶされそうになりました。
「私のやっていることは無意味なのでは?」「もう、やめてしまおうか」――
そう思ったことも、一度や二度ではありません。

それでも、こうしてさりげなく応援してくださる方がいて、「ちゃんと届いているよ」と知らせてくれる人がいる。その存在があるからこそ、私は今日も、こうして続けていられるのだと思います。

日々、家族を応援する立場にいる私自身が、実は見えないところでそっと応援されていた―― そのことに、ふと気づかされた出来事でした。

派手な言葉や大きな拍手でなくても、小さなエールは、確かに人の心をあたためてくれるもの。それもまた、人生を大切に生きていく上での、大切な力のひとつなのかもしれません。

……そんなことを、トイレへ急ぎ足で向かう途中に、ふと感じた夏の一日でした。

*ご感想・ご質問は、メールにてお気軽にどうぞ。voice@shukatsu.ca

本コラムは終活に関する一般的な情報提供を目的としています。内容には十分配慮しておりますが、必要に応じてご自身での確認や、専門家へのご相談をおすすめします。なお、本コラムをもとに行動されたことによる不利益については、免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

グローバルライフデザイナー/海外終活アドバイザー
カナダ・バンクーバー在住。

カナダで親しい友人を突然亡くしたことをきっかけに、終活の大切さを実感。
相続専門の弁護士アシスタントとしての経験をもとに、海外を含むさまざまな場所で暮らす日本人の終活を、学びの視点から支えている。

エンディングノートの活用や家族との対話を通じて、「自分らしくこれからを生きる」ヒントを共有する活動を続けている。

「終活」を、これからの人生を見つめ直す機会ととらえる——そんな“私活(わたしかつ)”という考え方も、大切にしている。

家族は、カナダ人の夫、2人の息子、愛猫1匹。
ホームページ:https://www.shukatsu.ca

「カナダ“乗り鉄”の旅」第26回 ゴールラッシュ時代を追体験できる列車、金に代わる「夢」の行方は…

カナダ西部ユーコン準州カークロスを走るホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)
カナダ西部ユーコン準州カークロスを走るホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)

大塚圭一郎

カナダ西部ユーコン準州カークロスを走るホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)
カナダ西部ユーコン準州カークロスを走るホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)

 世界で2番目に大きな国土を抱えるカナダには、鉄道利用とは縁遠い地域がある。その一つだと信じ込んでいた西部ユーコン準州の州都ホワイトホースを2024年9月に訪れたところ、宿泊したホテルの目の前に想定していなかった駅舎風の建物がそびえ、線路が延びている。ユーコンでゴールドラッシュがわき起こった後、一攫千金を狙った夢追い人たちを運んだ鉄道路線がホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車として健在だったのだ。「ゴールドラッシュ時代の列車を追体験したい」という私の「夢」の行方は―。

【ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルート】アメリカ西部アラスカ州スカグウェイの港とカナダのユーコン準州の州都ホワイトホースを結ぶ鉄道路線。1896年にユーコンのドーソンシティーで金が発見されたことでゴールドラッシュが起こり、金の採掘を目指す開拓者らを運ぶため1900年に完成した。船舶でスカグウェイに到着後、険しい峠を越えてホワイトホースまで列車を利用し、ユーコン川を下ってドーソンシティーへ向かって金を掘り当てることを狙った。

 1982年にいったん運行停止したが、88年に一部区間が観光列車として復活した。現在は毎年5月下旬から9月中旬までの夏期に、スカグウェイとカナダ西部カークロスの間を、ディーゼル機関車または蒸気機関車(SL)が客車をひく観光列車を運行している。旅行方法では全区間を列車で往復する行程のほか、途中駅での折り返し運転、列車とバスを組み合わせたツアーなども販売している。

「駅舎」なのに列車は…

カナダ西部ユーコン準州の州都ホワイトホースにある駅舎風の建物(大塚圭一郎撮影)
カナダ西部ユーコン準州の州都ホワイトホースにある駅舎風の建物(大塚圭一郎撮影)

 ユーコン川に沿った建物は木造2階で、屋根に「ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルート」の看板を掲げている。建物には「ホワイトホース ユーコン」の表示もあり、脇には短いプラットホームもあるため「ここを観光列車が行き来するのだろう」と駅舎としての役割を想像した。

 だが、私が訪れた夕方に建物は施錠されており、人けもなかった。そこで近くのユーコン準州の観光案内所を訪れ、窓口の女性にあいさつをすると「ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの列車は何時に出発するのかご存じですか?」と質問した。すると、想定していなかった答えが返ってきた。

 「あの建物の場所からはもう列車は走っていないの。でも、列車に乗るツアーは今の時期は毎朝出発しているわ」

 列車が走っていないのに、列車に乗車するのはどうして可能なのだろうか。駅舎風の建物の扉は漫画「ドラえもん」のひみつ道具「どこでもドア」になっており、扉の向こうに列車が待ち受けているとはさすがに思わなかったものの首をかしげた。

 すると、合点がいっていないのを直ちに察した女性は、笑みを浮かべながら付け加えた。「朝になるとあの建物の前にバスが来て、乗客をピックアップしてスカグウェイへ向かうの。そこから列車に乗るのよ」

ホワイトホースの駅舎風建物に掲示されたホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの説明文(大塚圭一郎撮影)
ホワイトホースの駅舎風建物に掲示されたホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの説明文(大塚圭一郎撮影)

 建物は厳密には「元駅舎」で、今は事実上のバスターミナルとして機能していたのだ。このホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートはスカグウェイからホワイトホースまで運行していたものの、1982年にいったん運休。その後、ゴールドラッシュ時代に開拓者たちがたどった“ゴールデンルート”を追体験する“舞台装置”として復活し、ホワイトホースの南70キロ余りにあるユーコン準州カークロスとスカグウェイを結ぶようになった。

 しかしながら、列車はホワイトホースまで戻ってこなかった。代わりに夏期の観光シーズンに列車とバスを併用する“ハイブリッド”のツアーを販売しているのだ。

 ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの公式ウェブサイトによると、行程はバスでホワイトホースを午前7時半に出発し、10時にブリティッシュ・コロンビア州フレイザー着。列車に乗り換えて10時15分に出発し、国境を越えたスカグウェイまでの約45キロを1時間半余りで走る。2時間余りのスカグウェイ観光を楽しんだ後、午後2時にバスで帰路について5時半にホワイトホースに戻る。

ホワイトホースの駅舎風建物の隣を流れるユーコン川(大塚圭一郎撮影)
ホワイトホースの駅舎風建物の隣を流れるユーコン川(大塚圭一郎撮影)

 料金は大人1人当たり170アメリカドル(1ドル=144円で2万4480円)だから安くはないが、優れた鉄道旅行を表彰する賞「鉄旅オブザイヤー」の審査員が2024年度で12年目になった愛好家として到底放っておけない。情報を知った瞬間、私にとって追い求める「夢」は金、もとい列車となった。

直談判、返ってきた答えは

 ただ、サイトには気になる記載が2点あった。1点目は「表示料金で購入するには24時間前までに購入してください」と書かれていることで、もう1点は電話での予約受付時刻がアラスカ州時間で午前7時から午後3時と既に過ぎていたことだ。

 表示料金の期限を過ぎており、予約可能な時間も過ぎている。案の定、記されていた電話番号にかけても通じなかった。

 「予約受付時刻を過ぎているので無理でしょうね」と残念がる私に、女性はこう勇気づけてくれた。「明日朝に直接行ってみたら。当日でもツアーに入れてくれるかもしれないわよ」

 確かに人の良いカナダ人は、融通を利かせてくれることが往々にしてある。バス乗り場で「当日料金でもいいので乗せてください」と直談判すれば、もしかすると受け入れてくれるかもしれない。

 「アドバイスをありがとうございました。明日の午前7時に行ってみます」と伝え、翌朝にいちるの望みをつないで旧駅舎に向かった。

 旧駅舎の建物の扉は既に開いており、中に入ると窓口で女性が対応していた。そこで、「予約していませんが、参加したいです。代金はここで支払います」と切り出した。

 女性はきっぱりと応答した。「それは無理です。前日までに予約していなければ参加できません。アメリカ当局に参加者の名簿を前日に提出しており、そこに名前がない方は受け入れられません」

 国境をまたぐので、管理が厳格なのだ。それでも「この通りパスポート(旅券)を持っており、(アメリカのビザ免除プログラム)ESTAも取得しています」と食い下がったが、「名簿にない方の参加を認めることはできません」となしのつぶてだった。

 無理難題の依頼だったのかもしれないが、カナダでは珍しくきっぱりとした「ノー」の言い方だった。その理由に気づいたのは、バスが出発する時だった。

 窓口にいた女性も乗り込んだバスは、アラスカ州のナンバープレートだったのだ。ホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートはアラスカ州が拠点で、ツアー時にはアメリカ人の係員がホワイトホースまで来て対応しているのだ。

 「あの断り方はアメリカ流だったのだ」と考えると、アメリカに通算10年間住んでいた私には妙に合点がいった。おそらくカナダ人ならば無理な場合でも、「まだ乗れる日もあるので予約をお待ちしています」といったフォローをしてくれた可能性が高い。

 肩を落としたものの、親愛なるカナダ人にお門違いの不信感を抱かなくて済んだことに胸をなで下ろした。

独特の鐘の音色、その正体とは

ホワイトホースのユーコン交通博物館で保存しているカナダ太平洋航空のDC3(大塚圭一郎撮影)
ホワイトホースのユーコン交通博物館で保存しているカナダ太平洋航空のDC3(大塚圭一郎撮影)

 こんな展開も想定した私は「プランB」を選択し、ホワイトホース空港行きの路線バスに乗り込んだ。前日にエア・カナダでホワイトホース空港に着いた後、近くに旧カナダ太平洋航空(現エア・カナダ)のプロペラ機「DC3」が屋外に保存されているのに目が釘付けになった。そこは「ユーコン交通博物館」で、訪問したいと思っていたのだ。

ユーコン準州ホワイトホース空港の外観(大塚圭一郎撮影)
ユーコン準州ホワイトホース空港の外観(大塚圭一郎撮影)
ユーコン交通博物館に展示したホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの元客車(大塚圭一郎撮影)
ユーコン交通博物館に展示したホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの元客車(大塚圭一郎撮影)

 交通を通じて紹介したユーコン準州の歴史と自然を学ぶのはとても有意義で、その一角にはホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートで使っていた客車や資料も展示されていた。客車の座席に腰掛け、列車からの車窓映像を眺めた。ユーコンの大自然の山岳部の断崖絶壁を縫うように鉄路が続き、先人たちが大変な労力を投じて完成させたであろう巨大な橋梁を列車が渡っていくスリルに満ちた映像に引き込まれていると、まるで客車に乗り込んで「ゴールドラッシュ時代の追体験」をした気分になった。「搭乗拒否」の鉄槌を受けた失望感も雲散霧消し、すっかり気分が晴れて博物館を後にした。

カークロスに停車中のホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)
カークロスに停車中のホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)

 翌日は団体のツアーで、カークロスを訪れた。ゴールドラッシュ時代の建物が残る街並みは風情があり、広場にはシャチやカエルなどを彫った柱「トーテムポール」が先住民文化を伝える。脇にあるベンチに腰掛けると、ウィリアム英王子夫妻(当時、現皇太子夫妻)が2016年にユーコンを訪れた時に着席した「貴賓席」だった。なんと恐れ多い!

ユーコン準州カークロスにあるトーテムポールを立てた広場(大塚圭一郎撮影)
ユーコン準州カークロスにあるトーテムポールを立てた広場(大塚圭一郎撮影)

 野心でギラギラした男たちが集うゴールドラッシュ時代を思い浮かべていると、「カンカン…」という独特の鐘の音色が聞こえてきた。「あの音はもしや…」と聞こえてくる方角へ早足で向かうと、想像した通りだった。

 緑色と黄色のツートンカラーで彩られたディーゼル機関車が茶色のレトロ風客車をひくホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車だった。前日に交通博物館で眺めた車窓の映像と、眼前の列車が結びついて乗り鉄気分を味わうことができた。この瞬間に完全ではないものの、私が追い求めた「夢」が半ば実現した。

カナダ西部ユーコン準州カークロスを走るホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)
カナダ西部ユーコン準州カークロスを走るホワイト・パス・アンド・ユーコン・ルートの観光列車(大塚圭一郎撮影)

 降りてきた観光客たちの多くが列をつくったのは、「24種類の伝説のアイスクリーム」との看板を掲げたアイスクリーム店だった。

 私の「夢」はゴールドラッシュ時代をしのばせる列車に乗ることで、それを成し遂げた列車の乗客たちが目当てにしたのはアイスクリーム。一攫千金を追い求めた開拓者たちはあの世から私たちを見下ろし、「後世の連中はずいぶんと小粒になったものを追い求めているんだな!」とあざ笑っているかもしれない。

共同通信社元ワシントン支局次長で「VIAクラブ日本支部」会員の大塚圭一郎氏が贈る、カナダにまつわる鉄道の魅力を紹介するコラム「カナダ “乗り鉄” の旅」。第1回からすべてのコラムは以下よりご覧いただけます。
カナダ “乗り鉄” の旅

大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)
共同通信社経済部次長・「VIAクラブ日本支部」会員

1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学外国語学部フランス語学科を卒業し、社団法人(現一般社団法人)共同通信社に入社。2013~16年にニューヨーク支局特派員、20~24年にワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。24年9月から現職。国内外の運輸・旅行・観光分野や国際経済などの記事を多く執筆しており、VIA鉄道カナダの公式愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員として鉄道も積極的に利用しながらカナダ10州を全て訪れた。

 優れた鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」(http://www.tetsutabi-award.net/)の審査員を2013年度から務めている。共同通信と全国の新聞でつくるニュースサイト「47NEWS(よんななニュース)」や「Yahoo!ニュース」などに掲載されている連載『鉄道なにコレ!?』と鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」(https://www.47news.jp/column/railroad_club)を執筆し、「共同通信ポッドキャスト」(https://digital.kyodonews.jp/kyodopodcast/railway.html)に出演。
 本コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」や、旅行サイト「Risvel(リスヴェル)」のコラム「“鉄分”サプリの旅」(https://www.risvel.com/column_list.php?cnid=22)も連載中。
 共著書に『わたしの居場所』(現代人文社)、『平成をあるく』(柘植書房新社)などがある。東京外大の同窓会、一般社団法人東京外語会(https://www.gaigokai.or.jp/)の広報委員で元理事。

カナダデーに今年もスティーブストンでサーモンフェスティバル開催

開会式の後で。左から、バンクーバー総領事館・岡垣首席領事、髙橋総領事、フェスティバル理事コジマさん。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
開会式の後で。左から、バンクーバー総領事館・岡垣首席領事、髙橋総領事、フェスティバル理事コジマさん。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ

 カナダの建国記念日にあたるカナダデー。今年も各地でさまざまなイベントが7月1日に開催された。特に今年はトランプ大統領の「51番目の州」発言もあり、例年以上に愛国心が爆発したカナダデーになった。

カナダの国歌「オーカナダ」合唱を前に。開会式で。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
カナダの国歌「オーカナダ」合唱を前に。開会式で。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ

 リッチモンド市スティーブストンでは毎年恒例のサーモンフェスティバルが開催された。今年で78回目となる。開会式ではリッチモンド市マルコム・ブロディ市長が「ハッピー・カナダデー」と叫ぶと会場からはさらに大きな声で「ハッピー・カナダデー」の大合唱が返ってきた。在バンクーバー日本国領事館・髙橋良明総領事もあいさつ。岡垣さとみ首席領事も出席した。

 戦前に和歌山県から多くの漁師が移民し、サーモン漁でにぎわった地域として知られるスティーブストンは、日系コミュニティと関りも深い。フェスティバルでは、今年も、武道、琴やいけばな、書道などの伝統文化がマーシャルアートセンターで披露され、日系文化センターでは日本語学校などがブースを出して、どこも大勢の人でにぎわっていた。

多くの人が聞き入っていた琴の演奏。スティーブストン・マーシャルアート・センターで。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
多くの人が聞き入っていた琴の演奏。スティーブストン・マーシャルアート・センターで。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ

 その他にも、朝からはパレード、午後からはステージやアートショー、マーケットプレース、もちろん主役のサーモンバーベキューにも長蛇の列ができていた。

 10年以上フェスティバルの理事を務めるジム・コジマさんは「今年は去年よりもさらに多い人が集まっている」と笑顔を見せる。

 1946年に始まったというサーモンフェスティバル。夏の陽ざしがまぶしい晴天のカナダの誕生日に今年も多くの笑顔がスティーブストンに集まった。

サーモンフェスティバルのマスコット、サミー。どこに行っても人気者。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
サーモンフェスティバルのマスコット、サミー。どこに行っても人気者。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
大道芸人に興味津々の子どもたち。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
大道芸人に興味津々の子どもたち。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
広範囲にわたる会場ではたくさんのブースが並び、どこも人だかりが。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ
広範囲にわたる会場ではたくさんのブースが並び、どこも人だかりが。2025年7月1日、リッチモンド市。撮影 日加トゥデイ

(取材 三島直美)

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有名プロサッカー選手の大久保嘉人選手・那須大亮選手がバンクーバーに!サッカーイベント・講演会を開催!

なんと!有名プロサッカー選手の那須大亮選手と大久保嘉人選手がバンクーバーに来ます!

この機会に、お二人と一緒にプレーできるサッカー交流イベントを開催します✨

子供から大人まで参加可能です!

プロ選手と直接ふれあえる、とっても貴重なチャンス!

サッカー未経験の方も大歓迎ですので、ぜひお気軽にご参加ください!

【イベント第1弾】

那須大亮選手&大久保嘉人選手 \サッカー交流イベント/ in Vancouver

日時:7月16日(水)19:00〜21:00(受付18:30〜)

会場:Minoru Park Richmond

参加費:40ドル

参加者特典:
・選手名鑑
・オリジナルボトル
・伊藤園お茶

会場ではグッズ販売(現金のみ)・サイン会も予定しています。

サッカー教室申し込みフォーム
https://forms.gle/RU2u8Q9JZFxBHWK27

ーーー

【イベント第2弾】

那須大亮選手&大久保嘉人選手 \講演会/ in Vancouver⚽️

お二人からお話しが直接聞ける講演会も開催します!

🌟テーマ:世界で通用する力とは〜環境が人を育てる〜🌟

日時:7月17日(木)18:00〜20:00(受付17:30〜)

会場:日系文化センター

参加費:30ドル

講演会申し込みフォーム
https://forms.gle/J897ZYieS24NkgS46

<バンクーバー日系人合同教会から7月のお知らせ>

  • バンクーバー日系人合同教会はLGBTQの方々を含めすべての人に開かれた教会です。キリスト教会が初めてという方も大歓迎です。聖書や信仰に関心がある方は牧師に相談ください。ZoomやIn Personでお会いすることもできます。
  • 毎週日曜日午前11時から12時日本語で礼拝を行っています。聖書についての話しを聞き、讃美歌を歌い、礼拝後は軽食を囲み交流の時を持っています。ワーキングホリデー、留学生の方々の情報共有も行われています。
  • 月の第2日曜日は日本語と英語のバイリンガルで礼拝が行われます。8月10日(日)は午前11時より野外礼拝とBBQを予定しています。初めての方も大歓迎です。
  • オンラインZoomで聖書を読む会(火曜、水曜)があります。聖書を読むことに興味がある方はお問い合わせください。
  • ボランティアしてみませんか?

ダウンタウンイーストサイドのホームレス、Foodlessの方々に配るサンドイッチ作りと配布のお手伝いを募集しています。木曜日午前9時から教会集合です。

  • 結婚、葬儀、その他の人生相談をお伺いします。

お問合せ:604-618-6491(テキスト可)、vjuc4010@gmail.com  牧師 イムまで

住所:4010 Victoria Dr, (Between 23rd and 25th Ave East), Vancouver

  • Zoom(ID 5662538165、パスコード1225)

ホームページ、Facebook “バンクーバー日系人合同教会”で検索

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サレーNorthwood 合同教会 日本語会衆礼拝 

7月20日(日)午後2時より。

住所:8855 156 St, Surrey, BC, V3R 4K9

お問い合わせ:604-618-6491(テキスト可)イム、kuniokazaki98@gmail.com 岡崎まで 

お寺DE七夕まつり🎋


7月6日(日)午前10時〜午後12時

コキットラム市にあるお寺、 東漸寺(とうぜんじ)にて開催いたします。

七夕まつりをお寺でお祝いしましょう!

🌟  🫖 七夕キッズ茶会 こどもたちと楽しむ、お茶の時間♪呈茶スタイルでカジュアルに茶道を体験してみましょう。

お茶代:$3(お子様〜12歳)$5(13歳〜大人)写真のお菓子は昨年のお菓子です。

🖌 書道アート短冊に願いを込めて、アート書道体験!

書道アート参加費:無料

書道アートをご存じですか。  

筆と墨で描く書で、メッセージカードやお部屋のインテリアにも飾れます。

バンクーバー近郊在住で癒しの書を描く、木村冴子さんによる書道アート。

ご一緒に体験してみませんか?

今の想いを書にのせて、七夕の願い、大事な人へ届けましょう。

ご希望の方に「基本の書道」「かな書道」や筆ペンでのお稽古も承ります。(有料)

お申し込みお問い合わせは、コナともこ (和の学校@東漸寺) までtands410@gmail.com

会場:Tozenji temple 209 Jackson St, Coquitlam, BC

和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/

インスタグラム https://www.instagram.com/wa_no_gakkou_tozenji/

フェイスブック https://www.facebook.com/profile.php?id=100069272582016

東漸寺Tozenji Temple https://tozenjibc.ca/

日本語認知症サポート協会「オンライン de Cafe・笑いヨガ」

「笑顔の力」を引き出そう〜「笑いヨガ」で、元気な心と体づくり〜

毎月、「笑いヨガ」を行っています。自宅にいながら参加できる、オンラインでのセッションです。初めての方も大歓迎。楽しく、一緒に笑いましょう!

日時:2025年7月17 日(木)午後8時〜午後9時

会場:Zoom

参加費:初回無料、2回目からドネーション(e-Transfer、PayPalまたは小切手にて)

申し込み締め切り:2025年7月15日(火)

申し込みリンク:https://forms.gle/C6WEFwP4csxeUjPu5

*お申し込みいただいた方には、追って参加方法をご案内いたします。

お問い合わせ先:orangecafevancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会(Japanese Dementia Support Association)

ホワイトキャップス首位攻防に敗れる 高丘MLSオールスター出場決定

ゴール前で構えるGK高丘。サンディエゴFC戦。2025年6月25日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
ゴール前で構えるGK高丘。サンディエゴFC戦。2025年6月25日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 西カンファレンス2位のサンディエゴFCをバンクーバーに迎えての首位攻防戦はゴールラッシュを制したサンディエゴに軍配が上がった。ホワイトキャップスは今季初めて首位を明け渡した。

6月27日(BCプレース:20,867)

バンクーバー・ホワイトキャップス 3-5 サンディエゴFC

前半35分に先制点を決められた2分後に2点目を入れられ0-2。43分にはDFオカンポがゴールし1-2としたが、その1分後には3点目を許した。後半開始早々に4点目を決められたが、キャップスも66分に途中出場のDFラボルダがゴールして2-4。その後も両チームが1点ずつを加えた。

ホワイトキャップス2連敗で首位陥落

 今季開幕から好調だったホワイトキャップスは3月から首位を走っていたが、気づけばすぐ後ろにサンディエゴFCが追いかけていた。首位を死守するには負けられない一戦。試合開始から高丘も好セーブを連発した。15分には左からのシュートを跳ね返し、32分には緩く上がったバー付近の際どいシュートをジャンプ一番片手で防いだ。

ポール際に上がってきたボールをジャンプ一番弾くGK高丘。サンディエゴFC戦。2025年6月25日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
ポール際に上がってきたボールをジャンプ一番弾くGK高丘。サンディエゴFC戦。2025年6月25日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 今季を象徴するような守りの堅さを見せていたディフェンス陣だったが突如崩れた。ソレンセン監督は試合後、ゴールした後すぐに相手にゴールを決められる展開に、「ゴールへのリアクションがまずかった。常に受け身になった」と振り返った。ただハーフタイムで切り替えて後半はチャンスも多く作ったし良かったとも。戦術については自分の責任と語り、「いつもなら3点取れば勝てる試合だが、今日は違った」と攻撃の手を緩めないサンディエゴが上回っていたと強調した。

 チームは現在9選手が国際大会出場のためにチームを離れている。主力不在の戦いに「いない選手のことを言い訳にしたくない。サンディエゴも状況は同じ」と語った。

 これでチームは6月に入り、CONCACAF Champions Cup(CCC)決勝も含めて3敗。今季はここまで連敗すらなかっただけにチーム状況と選手のメンタルが心配なのではとの質問には、「スポーツとはこういうもの。悪い時もあるがそれを乗り越えて立ち上がるだけ」とシーズン中盤での連敗は修復できると前を向いた。

試合前、入場してきたソレンセン監督。サンディエゴFC戦。2025年6月25日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
試合前、入場してきたソレンセン監督。サンディエゴFC戦。2025年6月25日、BCプレース。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 ホワイトキャップスはCCCで勝ち進んだこともあり、5月は過密スケジュールだった。6月は1日にメキシコでのCCC決勝を含めここまで4試合と比較的通常スケジュールで来た。しかし、6月29日のLAFC戦以降、7月9日のカナディアンチャンピオンシップを除いては7月19日まで5試合連続アウェイと、再び厳しいスケジュールとなる。

 ここまで18試合を戦って10勝3敗5分の勝ち点35。レギュラーシーズン34試合を折り返し、これから後半戦をどう乗り切るかで前半戦の強さが本物だったかが試される。

高丘も含め、ホワイトキャップスから4人がオールスター出場へ

 MLSは26日、今年のオールスター出場選手を発表。ホワイトキャップスからはGK高丘を含む4選手が選ばれた。チーム史上最多。

 高丘は日本人選手としては初のオールスター出場。今回は監督推薦で選ばれた。その他は、FWホワイト、DFブラックモン、MFバーハルター。3人とも投票で選ばれた。

 この日は試合後に選手へのインタビューがなかったため、高丘を含め選ばれた感想などを聞くことはできなかった。

 オールスターには他にインテル・マイアミのメッシやアルバ、GKではカナダ代表でミネソタ・ユナイテッドのセントクレアも出場し、高丘とチームメートとなる。

 試合は7月23日、テキサス州オースティンで、メキシコプロリーグのリーガMXオールスターチームと対戦する。

7月、8月のホームゲーム(https://www.whitecapsfc.com/

7月26日(土)7:30pm スポルティング・カンザスシティ戦
8月17日(日)6pm ヒューストン・ダイナモFC戦
8月23日(土)6:30pm セントルイス・シティSC戦

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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腎臓病の専門薬局?

 日加トゥデイ読者の皆様、こんにちは。カナダ西海岸も、だいぶ夏らしくなってきましたね。

 私が数年前から学位取得に励んでいることは以前もお話ししましたが(第18回「ベテランになっても学び続けます!」2025年1月掲載)、1ヶ月単位で通常業務の休みを取る必要がある実務実習をこなすためには、自然とペースが落ちてしまい、卒業はもうちょっと先になりそうです。それでも、今年は2回の実習を行い、普段とは異なる分野の薬物治療や薬局の運営システムを学ぶ機会は新鮮で、多くの刺激を受けました。実は、今月(6月)、バンクーバーにあるMacdonald’s Renal Pharmacyで実習を行いましたので、この薬局について皆様にご紹介したいと思います。

 専門領域のある薬局というのは滅多に見つけることはありませんが、その一つがMacdonald’s Renal Pharmacyです。こちらの薬局は、州レベルで腎疾患の診療・治療ネットワークを統括する公的機関「BC Renal(ビーシー・リーナル)」と専属的に連携しており、BC州全体の慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Diseaseの略)患者さんに対して、遠隔から専門的な薬物治療の管理を行うという、非常に特徴的な業務形態をとっています。

 つまり、一般的な地域薬局とは大きく異なり、患者さんが直接来局されることはほとんどない代わりに、様々な医療機関からファックスで送られてきた処方せんに沿って、ブリスターパックに薬をセットして患者さんに配達するシステムをとっているのです。薬剤師は、処方せんが届いた患者さんに電話連絡をとり、新規処方せんや処方変更の内容等がきちんと伝わっているかを確認し、その上で新しいブリスターパックを作成したり、変更を加えたりします。

ブリスターパック
ブリスターパック

 ちなみにブリスターパックとは、お薬を飲むタイミングごとに薬を小分けにしているパッケージのことです。例えば「朝・昼・夕・寝る前」など、1日のお薬を時間帯ごとに区切って透明なパックにまとめてあり、曜日や時間が一目でわかるようになっています。薬の種類が多く、服用のタイミングが細かく決められている患者さんにとって、ブリスターパックは飲み間違いや飲み忘れを防ぐことで、毎日の薬の管理の負担を軽くします。

 ここで少し腎臓についてお話しすると、腎臓は血圧の調整、体液バランスの維持、老廃物の排出、電解質の調整、骨を丈夫にするカルシウムのコントロール、赤血球生成のサポートなど、多岐にわたる重要な役割を担っています。日々の健康状態を保つうえで不可欠な存在でありながら、状態が悪くなるまでは黙々と働き続け、一度悪くなると元に戻ることはありません。

 腎機能が著しく低下した場合には、人工透析や腎移植が必要になります。人工透析には血液透析(hemodialysis)と腹膜透析(peritoneal dialysis)の2種類があります。血液透析は病院や透析センターで週3回程度実施されることが多く、体外で血液を浄化する方法です。一方、腹膜透析は患者さんが自宅でも行える透析方法で、腎臓の状態やライフスタイルに応じて透析の方法を選びます。

 慢性腎臓病(CKD)は、その初期には自覚症状に乏しく、知らないうちに進行しているケースも少なくありません。高血圧や糖尿病、肥満、喫煙などの生活習慣がリスクとなるため、日頃の生活の中で腎臓にやさしい選択を意識することが大切です。

 例えば、食事では減塩を心がけ、加工食品や外食を控えるようにする、水分をこまめに摂取する、定期的に身体を動かす、十分な睡眠をとる、禁煙をするなど、どれも特別なことではありませんが、これらの積み重ねが腎機能を守る第一歩になります。特に糖尿病や高血圧のある方は、腎機能を定期的にチェックしながら、医師や薬剤師と連携した薬物治療を進めていくことが進行予防に直結します。

 腎臓機能の全ての側面をサポートする薬物療法は自然と複雑なものになりがちです。例えば、リンの吸収を抑えるためのリン吸着薬、活性型ビタミンD(腎臓で活性化されるため)、カルシウム製剤、貧血に対する鉄剤、カルシウムや鉄剤による便秘を防ぐための便秘薬、アップダウンの激しい血圧をコントロールする薬、むくみを取るための利尿薬などです。また腎性貧血に対しては、造血を促進するエリスロポエチン刺激薬という注射剤が使用され、定期的に注射を行う必要があります。もちろん、腎臓病以外の疾患の治療薬を併用している患者さんも多くいますので、服用する薬の量は必然的に非常に多くなります。

 ただ、そこに薬剤師の腕の見せ所も出てきます。薬によっては、腎機能が低下していると体内に蓄積し、副作用のリスクが高まります。そのため、医師や薬剤師は腎機能を評価し、それに応じて薬の量や種類を慎重に調整するわけです。例えば、一般的に使われる抗菌薬や糖尿病治療薬であっても、腎機能に合わせた適切な薬と量を選ばなければ、有害反応を引き起こしてしまいます。それをチェックするのは、まさに薬剤師の腕の見せ所といえます。

 実際に現場で働いてみて驚いたのは、処方変更の頻繁なこと。10剤から15剤もの薬が入ったブリスターパックの患者さんが、毎週のように処方変更されることです。透析の患者さんでは、血圧管理がうまくいかなかったり、電解質のバランスを維持するのがとても難しいのです。数日前に配達したばかりのブリスターパックに、新たな変更が重なっていくのですから、その管理を一手に引き受けるという意味では、Macdonald’s Renal Pharmacyは非常に大きな使命を負っています。

 今回の実習で特に印象に残ったのは、患者さんとのやりとりでした。患者さんご本人やご家族が病状や薬について深く理解されており、こちらの説明も的確に伝わっていることを実感しました。それだけに、慢性腎臓病のケアにおいてチーム医療がしっかりと根づいており、薬剤師もその一員として重要な役割を担っていることの重みをあらためて感じました。

 腎臓病は、誰にでも起こりうる可能性のある身近な病気です。一度悪くなってしまった腎臓の機能は元に戻りませんから、早期の予防と進行抑制を意識した生活を心がけていただければと思います。定期的な健康診断で腎機能をチェックし、気になることがあれば早めに医師や薬剤師にご相談ください。

*薬や薬局に関する一般的な質問・疑問等があれば、いつでも編集部にご連絡ください。編集部連絡先: contact@japancanadatoday.ca

佐藤厚(さとう・あつし)
新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。 2008年よりLondon Drugsで薬局薬剤師。国際渡航医学会の医療職認定を取得し、トラベルクリニック担当。 糖尿病指導士。禁煙指導士。現在、UBCのFlex PharmDプログラムの学生として、学位取得に励む日々を送っている。 趣味はテニスとスキー(腰痛と要相談)

全ての「また お薬の時間ですよ」はこちらからご覧いただけます。前身の「お薬の時間ですよ」はこちらから。

The Life of Chuck(邦題:ライフ・オブ・チャック)マイク・フラナガン監督

Courtesy of TIFF
Courtesy of TIFF

 昨年あたりからバンクーバーでは頻繁にオーロラが見られるようになりました。寒いところが苦手なためオーロラなんて一生縁がないと思っていた私。こんなチャンスは逃すまい!とオーロラ情報が出る度に外に出て、夜空を見上げる日々を繰り返しています。6月の初めでも見れたってすごくないですか?

 今回ご紹介するのは、私がオーロラを見上げる度に思い返していた「The Life of Chuck」(マイク・フラナガン監督)。昨年のトロント国際映画祭(TIFF)で観客賞を受賞したこの作品は、スティーブン・キング原作のSFファンタジー。私たち一人ひとりが形作る世界は、オーロラがかかる星空のように深くて広いのかも知れない、と思わせてくれる素敵な映画です。

 スティーブン・キングといえばスリラーやホラーの印象が強いですが、実は心温まる系の物語もたくさんあって、「ショーシャンクの空に」や「スタンドバイミー」なんかの原作も彼の作品。そしてこの「The Life of Chuck」も、そんな観た後に優しい気持ちになれるストーリーです。

 この映画は逆時系列で語られる3幕構成。あらすじは、異常気象や天変地異によって世界が終わりを迎えつつある中、街のあちこちに突如現れる「39年間ありがとう、チャック!」という謎の広告に人々は困惑します。「チャックって誰?」「一体世界に何が起こっているの?」… というのが第3幕。そこから第2幕、第1幕へとさかのぼりながら、チャックという男の平凡ながらも幸せだった人生が丁寧に描かれていきます。

 まず感想としては、最初はよくわからないけど、最後には「人生っていいな」と思える映画。そして後でいろいろなシーンやセリフを思い返しているうちに、どんどん良さが増して、じわじわと感動が押し寄せてくる、そんな作品でした。

 世界の終わり、人生の終わりが近づいた時に、愛や悲しみ、生と死も全部含めて生きていてよかった、体験してきた出来事にはそれぞれ意味があったんだ、と感じられるのは幸せなこと。そして死がいつ訪れるかは誰にもわからないからこそ「今」という瞬間を大切にするべきだと気づかせてくれる。映画が伝えるメッセージは素敵だし感動した、という人が多いのもわかるけど、ややテンポがスローで説明的なナレーションが多すぎるために気持ちが入りこみにくかったところが少し残念。子役も含め俳優陣の演技が皆素晴らしいだけに、なおさらそう感じました。

 チャックがまだ幼い頃に祖父母から「人生の美しさは日常のささやかな瞬間にある」と教わる場面があります。マーク・ハミル演じるおじいさんがチャックに語るこの場面と、ミア・サラ演じるおばあさんがチャックにダンスの楽しさを教えてくれるシーン。トム・ヒドルストンのダンスシーンが好評ですが(確かに見ごたえあります!)、私は、この祖父母とのシーンに強く惹かれました。

 “I contain multitudes”というウォルト・ホイットマンの詩の一節に出会えたことも、この映画を観て良かったと思えたところ。スティーブン・キングほどの深い “multitude”は私の頭の中にはありませんが、私自身の中に築いてきた宇宙や私に影響を与え今の私を形作ってくれた人たち、そしてそのすべてに伴う悲しみと幸せ――そんなことを考えていると、この詩の表現にも納得し原作にも触れてみたくなりました。

 死を描きながらも、人生の美しさや尊さを讃える、そんな一作です。

 バンクーバーを始めカナダ各地ではCineplex系映画館で上映中。トロントではTIFF Lightboxでも上映しています。

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バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
旬の映画や話題のドラマだけでなく、さまざまな作品を紹介します。第1回からはこちら

Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
みなさん一緒に映画観ませんか!?

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