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Naomi Mishima

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新型コロナワクチン治験体験者に聞く、ワクチン接種について(前編)

新型コロナワクチン接種治験1回目。写真提供 © 片瀬ケイ氏
新型コロナワクチン接種治験に参加した片瀬ケイ氏。接種1回目。2020年8月31日、アメリカ・テキサス州。写真提供 © 片瀬ケイ氏

 新型コロナウイルスが猛威を振るい始めて9カ月。待望の新型コロナワクチン接種が、イギリス、アメリカに続いて、カナダでも2020年12月14日に始まった

 オンタリオ州、ケベック州に続いて、12月15日にはブリティッシュ・コロンビア州でも接種が開始した。

 待望のワクチンだが、史上前例のない速さでのワクチン開発、承認に、不安がないわけでない。

 そこで今回はアメリカで2020年夏にワクチンの治験に参加した日本人ジャーナリスト片瀬ケイ氏に自身のワクチン治験体験をメールインタビューで語ってもらった。

 前編は治験を受けた動機や治験方法など、後編は接種後の反応を紹介する。

新型コロナ感染者数世界最多のアメリカでワクチン接種治験に参加

 2020年3月中旬からアメリカで新型コロナ感染者が急増した。

 春には感染者が最も多かった中国をあっさりと抜き去り、感染者は12月21日時点で1800万人を超えている。

 こうした背景もあり、待ったなしで進められたワクチン開発。まずはアメリカ大手製薬会社ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが共同開発したワクチンがアメリカで承認され、接種が始まった。その前には大掛かりな治験がアメリカ国内で行われていた。

-治験を受ける動機、きっかけ、経緯を教えてください。アジア人の特定年齢層として受けたのでしょうか?

 (2020年)春にワクチンの治験が始まったというニュースをテレビで見たのですが、その時は他人事でした。ところが7月ごろから私の住むテキサス州でも新型コロナ感染が爆発的に増え、1日の感染者増がテキサス州だけで1万人を超える状況になりました。

 私はダラス在住ですが、テキサス州南部のヒューストンの方では医療崩壊に近い状態でした。8月に入り、地元のテレビニュースで、自宅近くの診療所でコロナワクチンの後期治験が開始されるので、特にマイノリティの治験参加者を募集していると知りました。

 米国でコロナ感染や重症化が顕著にみられたのは黒人とラテン系、先住民ですが、アジア系も白人に比べれば感染者が多いです。

 生活習慣や基礎疾患なども影響しますが、総体的にマイノリティは家ではできない、出勤が必要な仕事をしている人が多く、白人よりも感染リスクが高い環境にいる人が多いです。私もその一人で、春に3週間弱、全米がロックダウンしていた時も出勤していました。

 治験は、色々な人種や年齢の参加者を募って目標に達しないかぎり、結果が出せません。私の住んでいるダラス市はアジア人人口があまり多くないので、参加者の多様性を増やす意味でも協力しようと思いました。

 アメリカ政府は国家プロジェクトとしてコロナワクチンの開発を後押ししているので、治験の説明や治験ボランティアに応募するウェブサイトも用意されていましたが、私は治験を実施する近所の診療所に直接、参加希望の電子メールを送りました。

-どこの会社のワクチンを接種しましたか?

 ファイザー*のワクチンです。

*アメリカ大手製薬会社ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが共同開発したワクチン

-いつ頃、ワクチン接種を受けましたか?

 8月31日に1回目の接種を受け、3週間後の9月22日に2回目の接種を受けました。 

-開発中のワクチンの治験を受けることに不安はありませんでしたか?

 治験には少人数を対象に投与量や安全性を詳しく調べる早期段階の試験があって、その結果で有望かつ安全性に大きな問題が見られないという結果を踏まえて後期の大規模試験に入ります。

 ファイザーは米国では7月末から当初は3万人の参加者を募る大規模試験を開始しました。つまり私が申し込んだ時には、米国内だけですでに2万人くらいは治験で注射を受けている人がいるだろうなと考えたんです。

 参加者のうち、本物のワクチンの注射を受けるのは半数なんですが、米国外でも治験をやっていましたから、1万人以上はワクチン注射を受けていたはずです。

 有効性はわかりませんが、とりあえず治験参加者に深刻な副反応が出たという報道はありませんでしたし、米国内の別の地域で治験に参加した医療従事者のインタビューなどもテレビでみて、大丈夫だろうと思いました。

 絶対大丈夫とは誰にも保証できませんが、治験実施を請け負う診療機関も細心の注意を払って実施する感じで、注射を受けたあとに不調がでたら24時間、担当医師に連絡がつく電話番号を渡されました。

 またファイザーは、9月12日には治験対象者数を3万人から4万4000人に増やし、対象年齢も16歳以上(当初は18歳以上)に拡大し、HIV、C型肝炎、B型肝炎の人でも、慢性期で症状が安定している人も対象に加えると発表しました。

 このニュースでも、ファイザー側はこのワクチンは基礎疾患がある人も安全に使えると自信を持っているんだなと感じ、心強かったですね。

コロナワクチン治験のランダム化比較試験とは

 治験では開発中のワクチンの効果を調べるため、ランダム化比較試験というワクチンを接種するグループとそうでないグループに分けて行われる。

-治験について、少し詳しく教えてください。ランダム化比較試験とは実際にどういうものですか。治験終了後にワクチンを受けたかどうかを知らされましたか?

 ランダム化比較試験とは、参加者の半分にプラセボ(偽薬)の生理的食塩水を、残り半分に開発したワクチンを接種して、経過を観察することで効果と安全性を比べる試験です。

 プラセボにあたるか、ワクチンにあたるかは、ランダムに振り分けられ、開発側の研究者も、治験を実施する診療所の医師も、参加者も、誰がどちらの注射を受けたかわからないようになっています。

 参加者は全員、注射を打ったあとも引き続きマスクをつけて、コロナに感染しないように気をつけながら生活します。それでも、米国のように感染が多い地域で暮らせば、感染してしまう人がでてきます。もしワクチンが有効であるなら、ワクチンの注射を受けた参加者からは感染者はほとんど出ないはずだという仮説を確かめるのです。

 医師や治験参加者が、どちらの注射を受けたか知ってしまうと、ワクチンを打ったからコロナにはかからないかも?とか、副反応が出るはずといった思い込みで、行動パターンや感じ方が変わってしまいます。そうしたバイアス(偏見)を避けて、できる限り客観的なデータを取って比較するために、誰がどちらの注射を受けたかは知らされないままです。

-アメリカのFDA(食品医薬品局)は何を根拠にファイザーのワクチンに緊急使用許可を出したのでしょうか?

 最終的に4万3448人がファイザーの治験を通して半数がプラセボ、半数がワクチンの注射を受けました。

 治験参加者から170人のCOVID-19感染者が出ましたが、そのうち162人はプラセボ注射を受けていた人で、ワクチン注射を受けたのにCOVID-19にかかったという人は8人だけでした。

 このため、有効性は95%という結果です。インフルエンザ予防接種の有効性は、年によりますが40%前後で、当初FDAは有効性が50%以上であれば承認したいと言っていたので95%は予想をはるかに上回る成績といえます。

 米国内の治験だけで2万人以上がすでにワクチン接種を受け、接種してから2カ月後までをモニターしたかぎりでは、一過性の副反応だけで、深刻な副反応はみられませんでした。

 緊急許可なので、何億人という規模で接種した場合に予期しなかった副反応が出るリスクや、長期的なリスクは引き続きモニターして調べるしかなく、子どもや妊婦への適用もさらに調べる必要があるけれど、とりあえず治験で検証した16歳以上の人がこのワクチンを接種することで、COVID-19にかかるのを防げるというベネフィットは、リスクを大幅に上回るという判断だと思います。

  実際に医療者に接種をはじめ、何件か深刻なアレルギー反応(アナフィラキシー反応)が出たのでファイザー側が原因調査をするとともに、FDAは接種後、普通の人は15分、アナフィラキシーを経験したことがある人は30分様子を見るというガイドラインを出しています。

 一口にアレルギーといってもいろいろあり、食べ物やペット、環境物質へのアレルギーなどを持つ人は治験にも参加していて問題が発生しなかったので、そうしたアレルギーと何件か出ているアナフィラキシー反応とは別の問題のようです。

新型コロナワクチン治験体験者に聞く、ワクチン接種について(後編)

(取材 三島直美)

片瀬ケイ氏プロフィール

片瀬ケイ氏; 写真提供 © 片瀬ケイ氏
片瀬ケイ氏

アメリカ在住の会社員、ライター、翻訳者。東京生まれ。東京の行政専門紙記者を経て、1995年に留学のため渡米。現在はアメリカ人の夫とともにテキサス州ダラス市に在住。米国の政治社会、医療事情などを共同通信47NEWSをはじめ、さまざまな日本のメディアに寄稿している。「海外がん医療情報リファレンス (cancerit.jp)」に翻訳協力するとともに、Yahoo!ニュース個人のブログ「米国がんサバイバー通信」の執筆者でもある。片瀬ケイの記事一覧 – 個人 – Yahoo!ニュース

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日本に一時帰国、入国体験をレポート18:12月3日羽田到着(後編)

機内で配られた書類と検査後に渡された赤紙。Photo by © The Vancovuer Shinpo
機内で配られた新型コロナ対策用の説明書類と羽田空港での検査結果でCOVID-19陰性だった後に渡された赤い紙。Photo by © The Vancovuer Shinpo

 日本政府が3月に決定した「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う水際対策強化に係る新たな措置」で、日本に渡航すると、空港からの移動には、公共交通機関(鉄道、バス、タクシー、航空機 (国内線)など)は使用できず、事前に家族らによる送迎、レンタカー手配するなどの移動手段の確保が必要になっている。(12月10日現在)

 これまで多くの入国体験を寄せてもらったが、今回は12月3日に羽田空港から入国した最新の体験談を寄せてもらった。日本では折しも新型コロナ感染者数が急増している中での帰国となった。

 後編ではいよいよ羽田で唾液検査体験。しかも申告書類に新しい試みが…

***

機内で入国について気になることが…

 フィジカルディスタンスをしながら搭乗。飛行機が飛び立ってしばらくして機内で入国用の書類が配られた。

 全部で4枚。加えていつもの税関申告書。書類を読んでいるとあることに気づいた。1枚足りない。滞在先の住所などを記載する申告書が足りない。渡された説明書には「質問票、健康カード」のすべてを機内で記入の上、到着後提出となっている。しかし質問票がなかった。

 客室乗務員さんに聞いてみると「デジタル化されたみたいです」とのこと。???。なんだか分かるような、分からないような回答をもらってますます困惑した。

 再び、もらった書類を舐めるように読む。やっぱり納得いかなくて、今度は違う乗務員さんに聞いた。すると、「12月3日午後に羽田に到着する便からは、書類記入が必要なくなりました」という。

 さらに12月3日から14日までは午後に羽田到着の国際線。それ以降は、羽田到着のすべての国際線でこの「質問票」の書類記入が必要なくなったらしい。

 つまりバンクーバー発ではこれが初ということになる。「ちょっとラッキー」と思って安心して到着を待った。ただ最初の乗務員さんのデジタル化という言葉が気になる。が、それも到着してからだろうとゆっくりすることにした。

 機内でのサービスはおおむね通常通り。乗務員さんが防護服のようなものを着ていることもなかったし、食事も、飲み物も、通常通り。最初のANAおつまみとドリンクもサービスされた。この日はサーモンか、ハンバーグの選択肢。乗務員さんおススメのサーモンにした。

 ただエンターテイメントはひどかった。あまりにもラインナップが悪くて、NHKニュースを見ようかと思ったくらいだった。機内誌やサービス案内などはなく、非常用のしおりとイヤホンとエチケット袋だけがポケットに入っていた。

いざ、唾液検査の羽田空港へ

 羽田には予定の6時45分よりも20分ほど早く着いた。着陸後、唾液検査への手順が説明された。まず係員が乗り込んできて、日本に入国する人が先に案内される。国際線へ乗り継ぐ人たちはそのあとということだった。

 順番に降りて案内に付いていく。機内でもらった書類にはあらかじめ記入しておいた。

 まずはどこから来たかという書類「健康カード」をチェックされる。これにはいつからどこで自己隔離をするかもざっくりと記入する。

 それから質問票の記入。これがデジタル化されていた。デジタル化とは何かというと、案内された指定の場所に行くと、そこら中にQRコードが貼ってあって、これをスマホで読み込んで、自分のスマホ上から記入するというもの。スマホがない人にはパソコンが用意されてあった。紙での記入があったのかは分からなかった。あくまでもデジタルで処理ということのようだ。理由はあとで分かった。

 これが結構もたついた。すでに言ったように、デジタル化はこの日が最初で、案内の人もモタモタしていたのだ。スマホでうまく機能しない人も多かったようで、「パソコンでどうぞ」と言われている人も多いと感じた

 記入内容は、これまでの新報リポートにあったのと同じで、氏名や住所、電話番号など。自己隔離をする場所もここで記入する。いくつか場所を記入する箇所があったのをみると、一つの場所に14日間でなくてもよいのではないかと思った。

 例えば、公共交通機関を使わないのであれば、3日間ホテルで、それから迎えに来てもらって自宅とかでもありなのかもしれない。この辺りは、厚生労働省に電話で確認してみると教えてくれそうだ。

 スマホでのすべての記入が終わると自分用のQRコードが発行される。これはあとで最終確認に使う。

 質問表を記入すると唾液検査へ。検査はこれまでの報告と同じ。先が丸くとがった短い試験管みたいな容器とろうとが渡される。試験管には赤い線が記されていて、「ここまで唾液を溜めてください」とのこと。

 パッとみると大した量には思えないのだが、やってみるとなかなか大変。口の中に唾液を溜めて一回入れてみる。で、どれくらいかチェックしてみると愕然。全然足りない。

 これは数回は必要かと気合を入れなおし、口の中に唾液を溜めてはろうとに落とし込んでいく。前にはレモンと梅干しの絵。そんなものがなくても結構唾液は出たので、せっせと唾落としに励んだ。それほど時間はかからなかったが、10回くらいは必要だったのではないだろうか。しかも立ったままだ。後ろ姿はさぞかし情けないだろうと思うと笑えた。

 これでどうだ!と係の人に示すと「十分です!」とお墨付き。フタをして提出。番号のシールを張った紙を戻してもらい最終チェックポイントへ。

入国のための質問票デジタル化は必要か?

 ここでさっきのスマホで記入したQRコードが必要となる。係の人が待っているブースに行くと、パスポートを読み取り装置で読み込ませ、先ほどのQRコードも専用機で読み込ませてくださいと言われる。

 そうすると、係員の持っているパソコンにさきほどの情報が映し出されるようだ。それを基に最終確認。ラインアプリを持っているのでラインでもいいと思っていたが、日本で携帯番号を持っていない人は強制的にそれ以外の電話番号が必要になるようだ。

 スマホでの「質問票」入力時にメールアドレスを記入する場所もあり選択できるのかと思ったがそうではなかった。説明書にもメールアドレスを連絡先とするという説明はなかった。ラインかその他の電話番号だった。

 「14日間自己隔離をお願いします」と念を押されて、これですべてのチェックポイントが終了。あとは検査結果を待つだけ。大丈夫とは分かっていても、検査結果とは結構ドキドキするもので、なにか落ち着かなかった。

 この時間帯に到着した飛行機はバンクーバー便だけみたいで、空港をほとんど一人占め状態。窓の外を見ても飛行機の発着がない飛行場。これはなかなか貴重な体験だった。

 検査結果が出たと自分の番号が電光掲示板に表示されると、結果をもらいにカウンターへ。「陰性でした」という女性の声を聞いてホッ。赤い紙をもらって荷物を取りに出口へと急いだ。

 荷物を受け取るターンテーブルに行くと、すべての荷物は揃えてカートに載せてあり、しかもカートには一人一人の名前が書かれてあった。待っていた係の人に名前を告げるとすぐに探し当ててくれて、荷物を受け取り、税関申告書を提出して、無事に入国完了。受け取った赤い紙を提出する必要がなかったので記念に持って帰った。

 飛行機が到着したのが6時25分、出口から出たのが8時過ぎ。約1時間40分とかなりスムーズだった。

 出口から出ると、いつもと違うガラガラの羽田国際線到着口。ほとんどのサービスは閉鎖されていて、出口付近で待っていた周回バスの係の人たちの声だけが響いていた。

 終わってから、質問票をデジタル化するのはなぜかと思った。今後はもしかしたら入国前に記入できるようになるのかもしれない。それならかなりスムーズになる。カナダではすでにArriveCanが導入されているのに対して、日本はビジネスなら外国人でも入国できるわりには、デジタル化が遅いと感じた。さらに、デジタルに対応できない人に、紙での記入もあった方が絶対に親切だと思った。デジタル化は便利だが、分かりにくいという感は否めない。

 人生初の体験でおもしろい面もあったが、次の帰国には新型コロナが収束していることを願ってやまない。

*記事中の個々のサービスなどに関する感想は取材協力者の個人的な感想です。

(取材 西川桂子)

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日本に一時帰国、入国体験をレポート17:12月3日羽田到着(前編)

機内で配られた書類と検査後に渡された赤紙。Photo by © The Vancovuer Shinpo
機内で配られた新型コロナ対策用の説明書類と羽田空港での検査結果でCOVID-19陰性だった後に渡された赤い紙。Photo by © The Vancovuer Shinpo

 日本政府が3月に決定した「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う水際対策強化に係る新たな措置」で、日本に渡航すると、空港からの移動には、公共交通機関(鉄道、バス、タクシー、航空機 (国内線)など)は使用できず、事前に家族らによる送迎、レンタカー手配するなどの移動手段の確保が必要になっている。(12月10日現在)

 これまで多くの入国体験を寄せてもらったが、今回は12月3日に羽田空港から入国した最新の体験談を寄せてもらった。日本では折しも新型コロナ感染者数が急増している中での帰国となった。

***

バンクーバーから羽田へ、一時帰国を決める

 日本への一時帰国を決めた。両親が精神的にすでにいっぱい、いっぱいのところまできていて、顔を見せて安心させたいというのが一番の理由だった。

 新型コロナウイルス感染が拡大してから、それまで以上に電話でのやり取りをしていたものの、やはり顔が見たいと言う。オンラインという手もあるが、インターネットを全くやらない両親に無理にオンラインを強いるのは酷だと思った。

 ブリティッシュ・コロンビア州では両親の元に帰るのも、今年はなるべく控えてほしいという要請が出ているが、日本の場合は手続きさえ踏めば移動はそれほど制限されていない。

 ということで帰国を決めた。本音では、少しバンクーバーを離れたいという自分の希望もあった。

 帰国時期は完全にリモートでできる準備を整えるのと、両親との希望とのバランスで決めた。正直、9月くらいから帰ってきてほしいと言われていたが、秋になって日本政府の海外からの入国について動きがあったこともあり、それを見定めからというタイミングで師走の声をきいた最初の便での帰国となった。

ガラガラのバンクーバー空港、セキュリティもヒマそうだった

午後1時ごろのバンクーバー空港ロビー。Photo by © The Vancouver Shinpo
新型コロナで厳しい規制が出ているBC州。12月2日午後1時ごろのバンクーバー空港ロビー。Photo by © The Vancouver Shinpo

 時期が決まると次はどの空港に着くかだが、「成田は遠いからそのタイミングでは仕事が終わって迎えに行けない」と言われて、ほぼ強制的に羽田着に決まった。

 バンクーバーから羽田へは現在全日空が週3便で飛んでいる。12月最初は2日発、3日着。これに決まった。

 12月2日午後1時、バンクーバー空港に到着すると聞いていた通り、人はほとんどいなかった。座席は指定せずに予約。荷物を預けるときに聞くと、「3-3-3配列で3座席に誰か(一緒に)座ることはないですね」と言われた。この時点で、横になって寝られると思った。

 セキュリティは通常の国際線のセキュリティではなく、国内線のセキュリティに集約されたままだった。セキュリティに入る前に体温チェック。指定の位置に立ってチェックされたようだ。

 セキュリティに入ると担当者も明らかにヒマそうで、「待ってました!」とばかりにチェックされた。まず入ってすぐにパソコンを布みたいなもので数カ所こすって機械にかけて調べられた。これは通常でもよく見かける光景。でも、自分が対象になったのは初めてだった。

 次は金属探知機。荷物をチェックの機械に通して、自身が金属探知機のゲートをくぐるとピンポーンとなった。???。おかしい。実はこの日、身に着けていた金属は腕時計のみ。

 それでも「こっちに寄って」と言われて、金属はないかと聞かれて「ない」と答えるとシャツを上げてウエストを見せなさいと言われた。おそらくボタンをチェックするのだろうと思ったのだが、この日はスウェットパンツをはいていた。金属製のボタンなど絶対にないけど、しかたなく言われた通りにすると、また布みたいなものでウエスト辺りをこすられて、ついでに手のひらまでこすられて、機械にかけて大丈夫だと言われた。ばい菌でもついていると思われたか?と思ったが、単にヒマだったのだろう。

この日の国際線。Photo by © The Vancouver Shinpo
12月2日午後のバンクーバー空港の国際線便数。Photo by © The Vancouver Shinpo

 利用者よりも職員の方が多いのだ。この時にセキュリティを通っていたのは3人だけ。職員は15人以上いた。みんなヒマそうにおしゃべりをしていた。

 国内線から国際線へ抜ける途中でまたまたチェックポイント。こちらでもヒマそうな2人の男性職員が話していた。私の顔を見ると「Tokyo?」と笑顔で言ってきたので「Yes」と言って抜けた。

 ゲート前の待合場所でも人はまばらだった。これだけ少ないと逆に緊張する。警察官(のように見えたが実際には警察か、国境警備か、警備員かは分からない2人組)もヒマなのか、ゲートで待っている人の荷物をやたらチェックしていた。単身の男性がターゲットになっているようだった。警察官がゲートで待っている人の荷物をあんなに調べているのは見たことがない。みんな特にあやしそうには見えなかったから、やっぱりヒマだったのかもしれない。

 まだ飛行機にすら乗っていない。ここまででもかなりおもしろい体験だった。乳児連れの母親がいた。こんなときでも子どもは無邪気だ。マスクの着用が必要ないので、思いっきりな子どもの笑顔だけが、いつもの空港の安心できる風景だった。

機内で入国について気になることが…

 フィジカルディスタンスをしながら搭乗。飛行機が飛び立ってしばらくして機内で入国用の書類が配られた。

 全部で4枚。加えていつもの税関申告書。書類を読んでいるとあることに気づいた。1枚足りない。滞在先の住所などを記載する申告書が足りない。渡らされた説明書には「質問票、健康カード」のすべてを機内で記入の上、到着後提出となっている。しかし質問票がなかった。

後編ではいよいよ羽田で唾液検査体験。しかも申告書類に新しい試みが…続きは後編で

機内で配布された書類。Photo by © The Vancouver Shinpo
機内で配布された日本政府厚生労働省の新型コロナ対策書類。健康カードとラインアプリによる健康確認同意書。Photo by © The Vancouver Shinpo

*記事中の個々のサービスなどに関する感想は取材協力者の個人的な感想です。

(取材 西川桂子)

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9月には半数以上の国民に新型コロナワクチン:トルドー首相

Parlament, Ottawa, Canada; File Photo by Japan Canada Today

 新型コロナウイルスのワクチン開発成功が発表されて以降、カナダではいつごろ国内でワクチン接種が可能になるのか注目が集まっている。

 ジャスティン・トルドー首相は27日の会見で、来年9月には半数以上の国民が新型コロナワクチン接種を受けることができるだろうと語った。

 「すべてが順調にいけば、来年の9月には国民の半数以上がワクチンを接種することができるとみている」と発表した。

 この日はワクチンの配布を指揮する担当責任者も発表された。カナダ軍で約30年の経験をもつMaj.-Gen.ダニー・フォーティン。カナダは世界で2番目に広い国土を持ち、国民の居住地が点在していることから、当初からワクチンの配布方法には課題があると指摘されていた。

 そのためカナダ軍が配布に関わることは必然的で、今回は具体的に指揮官を任命し、広いカナダのすべての国民に行き渡るようにチームを編成して準備する。

早ければ2021年1月にはワクチン接種開始

 現在のタイムラインでは、今年12月にワクチンを承認、1月から3月までに最優先グループへの接種を開始。それから順次ワクチンを受ける対象者を広げ9月には国民の半数以上が接種というのが、現時点での最善のシナリオとなっている。

 カナダ政府はワクチン開発会社7社とワクチン供給で契約している。

 30日のテレビインタビューでモデルナ社の担当者は、カナダへの配布はアメリカでの接種開始からそう遅くはならないだろうと語った。モデルナとは2000万回分以上の契約となっているとも語った。

 カナダ政府は、来年3月までには約600万回分のワクチンがカナダで可能と発表。高齢者や医療従事者など、優先順位などはこれから発表される。

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カナダ入国制限を1月21日までに延長

カナダBC州とアメリカ・ワシントン州との国境にあるピースアーチ。Photo by Keiko Nishikawa
カナダBC州とアメリカ・ワシントン州との国境にあるピースアーチ。Photo by Keiko Nishikawa

 カナダ政府は新型コロナウイルス感染拡大防止策として実施している入国制限について、2021年1月21日まで延長すると発表した。11月30日が期限となっていた。アメリカからの入国を除くすべての国からの入国が対象となる。

 これまでは期限前に毎回30日間の延長を発表していたが、今回は約50日間延長された。

 アメリカからの入国制限は12月21日までとなっている。これについても延長されるだろうと発表した。

 これでアメリカからと世界からの入国制限期限が1月に一致することになる。

 現在カナダ政府は、カナダ市民権、永住権保持者やその家族ら、労働ビザや学生ビサなど入国が許可されている対象者以外のすべての渡航者の入国を禁止している。

 入国が許可されている場合でも、入国後14日間の自己隔離を義務付け、違反した場合には罰金などの罰則を科している。

 カナダ政府は「カナダ国民の安全を守るため」と説明している。

世界トップクラスのアマチュアスポーツ選手の入国を緩和へ

 国際スポーツ大会を主催する世界トップクラスのスポーツ団体へ入国緩和措置に応じる用意があると発表した。

 各州や市の公衆衛生局が発表している新型コロナ対策への計画書などの提出が必要と説明している。認可は、カナダ公衆衛生局(PHAC)と協議の上、遺産省(スポーツ・カナダ)が担当する。

 カナダでは今年3月に新型コロナ拡大の影響で、フィギュアスケートやアイスホッケーの世界大会が中止となっている。

カナダ政府の発表: https://www.canada.ca/en/public-safety-canada/news/2020/11/government-of-canada-announces-extension-of-travel-restrictions.html

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自然療法医師 Dr. Nayumi Saiki, NDに聞く「自然療法・ナチュロパシー」:前編

Dr. Nayumi Saiki, ND 器具
自然療法で使用される器具類。Photo courtesy of ©︎ Dr. Nayumi Saiki, ND

 ナチュロパシーという言葉を知っているだろうか。近年注目され、耳にすることが多くなってきた自然療法だ。

 では、自然療法とはなんだろう。ぼんやりとしたイメージはあっても、よく分からないという読者も多いのではないだろうか。

 厚生労働省のウェブサイトによると「自然療法−自然医学ともよばれる−は、伝統的治療法と19世紀にヨーロッパで広く普及していた健康法の組み合わせから発展した医療体系」とか、「プライマリーケア、総体的な健康状態、病気の治療など、さまざまな健康に関する目的で自然療法の施術者受診」とある。

 ますますよく分からない。そこで今回は、Naturopathic Doctor(ND)の免許を持つ齋木南友己(さいきなゆみ)さんに自然療法について聞いた。カナダでは数少ない、日本語で対応してくれる医療従事者としてブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーで活躍している。今年4月からは日加ヘルスケア協会理事も務めている。

 Naturopathic Doctor(ND)とは日本語で「自然療法医師」と表現される。BC州ではナチュロパシーの免許を持つ場合のみ、Naturopath(ナチュロパス)、Naturopathic Doctor、もしくはNaturopathic Physicianのタイトルで診療でき、Dr.として認識されている。

自然療法・ナチュロパシーとは

-自然療法・Naturopathy(ナチュロパシー)とはどういうものでしょうか?

 ナチュロパシーとは、根本的な原因を探り、解明し、治療していくことで、体内の自然な治癒力を高めたり、全身のバランスを整えたり、健康上のさまざまな問題にアプローチする療法です。

 患者さんの症状だけでなく、こころとカラダの健康、生活習慣、環境など、多方面から一人ひとりをホリスティック(包括的)に診察します。

 従来の「メディカル・ドクター(MD)」との大きな違いは、自然療法医師の場合、初診で1時間ぐらいかけて問診を行うことです。メディカル・ドクターやそのほか各種の医療従事者とチームを組んで治療にあたることもあります。

 ほかにも、血液検査、ホルモン検査や食べ物の過敏症などの検査をすることもできます。BC州では、追加の資格を取れば、薬の処方、ビタミンの点滴やボトックス治療をすることも可能です。

自然療法は症状だけでなく、予防医学でも効果的

 例えば、トロントで診察していたときには、赤ちゃんからシニアの方まで、老若男女問わず、いろいろな方を診てきました。

 不妊治療、妊娠中のサポート、出産直前の鍼治療をはじめ、生理痛、生理不順、更年期障害などの婦人系の症状や、風邪の症状、頭痛、筋肉痛、関節痛などの痛み、不安症、皮膚炎、便秘など、さまざまです。中には薬を使いたくないから、西洋医学の治療を受けているのになかなか良くならないからという方もいらっしゃいました。

 自然療法医師によって治療法が異なるのですが、一般的には食事や生活習慣の見直し、植物療法、サプリメント、ホメオパシー、鍼灸などを組み合わせ、患者さんに合った治療法を提供します。

 また、予防医学の面でも自然療法は効果的です。従来日本の方は「漢方」に馴染みがあるため、想像がしやすいかもしれません。

 私が扱っているのは主に西洋ハーブなどの植物療法ですが、基本的には漢方と似た考えです。前に述べたように「体内の自然な治癒力を高めたり、全身のバランスを整えたりする」ことが目的ですので、病気になる前に利用されるのも効果が高いのです。

 植物療法と漢方の違いについては、漢方薬は植物だけでなく動物由来のものや鉱物などの生薬を複数組み合わせて作られています。

 中には植物療法、漢方、そしてインドの伝統療法「アーユルヴェーダ」で共通して利用される原料もあって、ショウガ、うこん、甘草(リコリス)などはその代表です。

 予防的に自然療法をどのように取り入れるかといえば、例えば、風邪をひきにくいカラダづくりをするために、日頃から適度の運動をしたり、乾布摩擦、熱いシャワーと冷たいシャワーを交互に浴びて血流をよくさせたり、なるべく化学調味料や添加物が入っていない食べ物を食べたり、精製されたお砂糖の摂取を控えたり、ビタミンCやビタミンDなど不足になりがちなビタミンやミネラルを摂取するなどです。

後編につづく

Dr. Nayumi Saiki, ND
Dr. Nayumi Saiki, ND (自然療法医師 ​齋木南友己さん)。2020年9月バーナビーにて。Photo by ©︎ the Vancouver Shinpo

Dr. Nayumi Saiki, ND 齋木南友己(さいきなゆみ)さん

ブリティッシュ・コロンビア州College of Naturopathic Physicians of British Columbiaと、オンタリオ州The College of Naturopaths of Ontarioに登録されているNaturopathic Doctor (自然療法医師)

2020年4月から日加ヘルスケア協会理事

2020年11月23日よりCrossroads Naturopathicに勤務

Crossroads Naturopathic
Suite 350-507 West Broadway, Vancouver, BC, V5Z 1E6
T: 604-568-6899
https://crossroadsnaturopathic.com/

ウェブサイト: www.drnayumi.com

(取材 西川桂子)

マスク着用義務違反に罰金230ドル

BC restriction Extended; by the Government of BC

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州マイク・ファーンウォース公安大臣は24日、マスク着用について、違反した場合は230ドルの罰金が科されると発表した。またこの日、非常事態宣言を2週間延長することも合わせて発表した。

 BC衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士は11月19日にマスク着用を義務化すると発表した。対象は屋内施設で、12歳以上。ただし、身体的理由でマスク着用ができないような人は免除される。

 身分証明のためにマスクを外す必要がある場合や、飲食する場所での飲食中、スポーツ施設でのアクティビティ中や病院での診療などでマスクを外さなければならない場合なども対象外としている。

 マスク着用を拒否したり、注意されても法執行官の指示に従わなかったりした場合は、230ドルの罰金を科される。

 またマスク着用拒否などの行為について通報する場合は、各地域の法執行機関に通報し、もしそうした機関がない場合は警察の緊急以外の通報番号に連絡するよう呼びかけている。

マスク着用が義務付けられているのは以下の施設;

  • malls, shopping centres, coffee shops, and retail and grocery stores;
  • liquor and drug stores;
  • airports, city halls, libraries, community and recreation centres;
  • restaurants, pubs and bars;
  • places of public worship;
  • on public transportation, in a taxi or ride-sharing vehicle;
  • common areas of office buildings, court houses, hospitals and hotels;
  • common areas of sport and fitness centres when not engaged in physical activity; and
  • common areas of post-secondary institutions and non-profit organizations.

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BC州新型コロナ感染者、データ修正でさらに増加

5 2020 11-12 Monthly Update Nov 2020
1月15日から11月7日までのヘルス区域別新型コロナ感染者数の推移。By BCCDC(BC州疫病管理センター)

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士は25日の会見で、フレーザーヘルス区域の新型コロナウイルス感染者数を修正したと明らかにした。

 修正したのは11月17日から24日までで、検査結果データがラボからフレーザーヘルスへ送られる時にエラーが生じたという。そのため正しいデータを入力して、フレーザーヘルスのホームページに掲載すると説明した。

 この日発表された修正後のデータを合計すると、これまでに発表されていたデータよりも感染者数が多くなる。941人と発表された24日のBC州感染者は実際には706人と下方修正されたが、20日は516人が832人に、21日は713人が859人に修正され、そのほかの日も1日約100人追加修正されている。

 そして26日の感染者は887人、累計は29,973人となった。ヘルス区域別では、バンクーバーコスタルが168人、フレーザーが612人、アイランド18人、インテリア65人、ノーザン24人。やはりフレーザーヘルスが約70パーセントを占めている。

 この日は死亡した人も13人と多く、合わせて384人となった。入院患者は294人、うち集中治療室で治療を受けているのは64人。現在の感染者は7,899人で、自己隔離を強制されている人は10,307人となっている。

 ヘンリー博士は昨日の会見でフレーザーヘルス区域について他州のようにレッドゾーンとして特別規制をする用意はあるかと質問に、現時点ではその予定はないと語った。現在の感染者は、少し前の自宅での集まりや結婚式などのイベントごとから、職場での感染拡大に移行しつつあると説明した。

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第101回 『ふっと死ぬ前に…』3

グランマのひとりごと

~グランマのひとりごと~ 

 グランマの小学校入学は1946年4月です。その頃、東京の町はぜーんぶ焼け、池袋駅周辺に家はなし。今の西武百貨店とパルコの間の位置に立つと遠く「護国寺」の緑色の銅製屋根が見えました。

 焼け跡で遊んでいると当時「パンパン」と呼ばれた売春婦が死んで転がっているのを何回も見ました。銀行とかお風呂屋の広い焼け跡をさがして遊び、また護国寺(真言宗豊山派 大本山 護国寺 天和元年(1681)五代将軍徳川綱吉が、生母桂昌院の願いにより創建した祈願寺である)や、雑司ヶ谷墓地等が遊び場でした。

 小学校は焼けてなし。川越通り池袋寄りに1軒焼け残った小さな古寺があり、そこが最初の小学校。手製の長いテーブルが置かれ、その両側に生徒は顔と、顔と見合わせながらのぎゅうぎゅう詰めで正座、教科書もありません。ガリ版刷りの白い紙が配られ、それが、教材でした。給食もない。池袋駅西口からかなり歩くと千川に出ます。千川には焼け残った学校があり、そこへやがて通うようになり、給食も始まりました。

 でも、まずかったなぁ、あの給食。鮭の皮の入ったスープが何だか蛇の皮に見えて、2階の窓から外へそっと捨てたのを覚えている。

 B29が来ればサイレンが鳴り響き、電気を消して防空頭巾を被り、水筒を持ち防空壕に避難した。第2次世界大戦を経験し、香港哲徳空港での仕事ではベトナム戦争の諸事を見聞し、ある時はパリからの帰路、突然飛行機がサイゴンに緊急着陸し戦時中のベトナムの首都に滞在となったことも経験した。

 そして、今度は香港で文化大革命。私の身辺での政情はどんどん厳しくなり、とうとう中国から送らてくる飲み水が週1回、3時間の給水となった。空港やあちこちに爆弾が伏せられ危険状態で、乗客誘導にも随分注意が必要となった。

 そしてとうとうカナダ在住の義弟の勧めで、我々もカナダへ移民申請書を提出した。義弟がマギール大学に働く化学研究員で保証人となってくれた。それで、上手くいくと確信していたのだが、1年過ぎ、2年経ってもカナダ総領事館からは連絡がない。そして、もう私は移民を諦めていた。 

 そんな或る夜、空港で仕事中電話が鳴った。受話器を取ると、相手は何とLufthansa香港の大ボスだった。

 彼が突然「スミコ、あなたはカナダへ移民申請しているのですね?」と聞くではないか。一瞬、ドキドキ。どうしようかと迷ったが「ハイ、2年ほど前に申請しましたが、返信が全くありません」と言った。すると彼が「スミコ、事情は分かるが申請して2年、今も本当に行きたいのか?」と聞く。私は「ハイ、行ければ行きたいです」と答える。すると彼は「それなら、直ぐ行けるよ」と。

 「実は自分の妻は香港のカナダ総領事の秘書を長年やっている。彼女が総領事の末処理書類中からスミコの申請書を見つけた」と言う。申請書にスミコの現職がルフトハンザと書いてあったので、別にされていたそうだ。それを彼女が見つけて、「スミコにどうしたいか確認しなさい」と言われ今電話したと言うのだった。

 私は「行きたい」とはっきり言った。すると彼は「すぐにビザは下りるから飛行機の予約をしておきなさい」と助言した。

 それは11月中旬の事だった。ビザは間もなく下り、12月中旬には会社が有給休暇をくれ、出発日を繰り上げ、クリスマスと正月を日本の家族と過ごし、1月に厳寒のモントリオールに着いた。ただ、そこで待っていたのは「静かな革命」 Quiet Revolution(1960年代にカナダ、ケベック州で行われた、政治、経済、教育等に関する一連の改革のこと)だった。

 Lufthansaは家族全員の飛行機代は休暇中の旅行として10%支払いで発券してくれた。12月に入って私は香港でしか買えない中国家具を幾つも買った。LHスタッフには「無料輸送R2カーゴー」という、職員一人が5KGまで世界中どこでもルフトの飛行機が飛んでいるところに無料で物を送れる特典がある。

 香港のスタッフは皆が5KGずつ出しあって、私の家具をモントリオールへ全部送ってくれた。そして、東京のスタッフも日本の本を買い集め、これまたR2カーゴー無料輸送の特典を使い送ってくれた。ありがたかった。なんて優しいのだろう。皆とお別れ会の時はやはり涙が止まらなかった。

 香港出発の日、私達家族4人、東京行きLufthansa便搭乗列に並んでいると空港所長、ボスのストリッカーさんがやってきた。彼が笑顔で私の夫を捕まえ、数歩離れたところで話し始めていた。2人は楽しそうに笑っている。わざわざ見送りに来てくれたのだ。

 とても去りがたい香港哲徳空港だったが、運命の時が来た。家族4人飛行機に乗って荷物の整理を始めた。すると夫があれやこれや助言する。そして、落ち着くと彼が言った。「ストリッカーさんがさっき僕に話したのはね、スミさんは今、あんなに沢山荷物持っているけれど、モントリオールに着く頃には、皆無くなっているから注意してあげなさいって言ったのだよ」

 私のボスは、私が忘れん坊な事もよく知っていた。それでも、スミさん、スミさんと言って可愛がってくれました。彼はその後、成田空港開港時、最初のLufthansaの空港所長になった。日本が大好きなドイツ人でした。

 ずっと通ってきた81年、長い道。振り返ると、知らず、知らずに一所懸命「念」を入れて生きていたのだろうかねぇ。それは長ーい道、感謝と学びのでこぼこ道、でもね、時々休める温かーい道だった。

グランマ澄子

***

 好評の連載コラム『老婆のひとりごと』。コラム内容と「老婆」という言葉のイメージが違いすぎる、という声をいただいています。オンライン版バンクーバー新報で連載再開にあたり、「老婆」から「グランマのひとりごと」にタイトルを変更しました。これまでどおり、好奇心いっぱいの許澄子さんが日々の暮らしや不思議な体験を綴ります。

 今後ともコラム「グランマのひとりごと」をよろしくお願いします。

BC州で1日の新型コロナ感染者約1000人、70%がフレーザーヘルス

1-2020-11-12 COVID19 Monthly Update Nov 2020; By BCCDC
感染者数増加モデリング。現在は13日で2倍のペースで増加している。By BCCDC(BC州疫病管理センター)

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で1日の新型コロナウイルス感染者数の最多を大幅に更新した。11月12日に発表されたモデリングでは、このままのペースでは近いうちに1日1,000人となると予測していたが、その通りとなった。

 この日発表された感染者は941人。これまで入ったことがない4桁の領域に近づいている。累計も28,348人となった。

 ヘルス区域別の新規感染者は、バンクーバー・コスタルが174人、フレーザーが678人、アイランド11人、インテリア49人、ノーザン29人。新規感染者の約70パーセントはフレーザーヘルス区域が占めている。

 この日発表された死亡者は10人。昨日は3日間で17人が死亡したと報告された。最近は死亡者も増加している。累計は358人。

 入院患者は284人、うち集中治療室で治療を受けているのは61人。入院患者は11月6日に100人を超えて以降、急激に増加している。

 現在自己隔離となっているのは10,283人。何らかの理由で感染者に接触したか、新型コロナウイルスに感染した疑いあるか、2週間の自己隔離を余儀なくされ医療関係者らのモニタリングを受けている人たちが1万人以上もいることになる。

 現在の感染者は7,732人、すでに回復した人は19,605人。

 BC衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士は19日の会見で、バンクーバーコスタル、フレーザーヘルスに限定していた新型コロナ強化対策をBC全土に拡張し、11月23日までだった期間も12月7日までに延長した。

 最初に強化対策を発表した11月7日に「この2週間が重要となる」とヘンリー博士は語ったが、結局2週間後にはさらに感染者が増える結果となった。

 特に南アジア系コミュニティで急増しているという。

 7月1日のカナダデーから始まり、祝日やイベントのたびに感染者の急増を繰り返している。サンクスギビング、ハロウィン、リメンバランスデー、11月14日はインド系コミュニティにとって重要なディワリだった。

 すでにクリスマスは例年通りの家族大勢で集まるのは自粛するようとヘンリー博士をはじめ、ジャスティン・トルドー首相も、カナダ公衆衛生局長テレサ・タム博士も呼びかけている。

 カナダ全体でも昨日は5,500人を超えた。ワクチンや治療薬など明るいニュースも増えているが、新型コロナはまだまだカナダで猛威を振るいそうだ。

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カナダで1日の新型コロナ感染者5500人を超える、12月には1日6万人に

Update covid-19 Canada epidemiology modelling on 2020-11-20 by Public Health Agency of Canada
Update covid-19 Canada epidemiology modelling on 2020-11-20 by Public Health Agency of Canada

 カナダ国内で新型コロナウイルス感染拡大が止まらない。この日は10州3準州で感染者が確認されなかったのは、ノースウエスト準州のみ。全国で1日に確認された感染者は5,713人にものぼった。過去最多を更新した。

 特にカナダ西部での感染が急増している。アルバータ州1,549人、サスカチュワン州235人、マニトバ州543人とこれまでの1日の感染者最多を更新。オンタリオ州も1,589人と最多を更新し、3日連続で1,500人を超えている。トロントは今日からロックダウンに入った。

 7月に導入された東海岸4州による「アトランティックバブル」もついにはじけた。ニューブランスウィック州、ノバスコシア州で急増したため、ニューファンドランド&ラブラドール州とプリンスエドワード島州が、今週から入州者に期間限定で14日間の自己隔離を義務付け、州全体が隔離状態に入った。

 11月6日に初めて新型コロナ感染者を確認したヌナブト準州では、すでに累計が134人と急増している。同準州も隔離状態にすでに入っている。

12月には1日6万人のペース

 カナダ公衆衛生局長テレサ・タム博士は20日の会見で、国民がこのまま接触者を減少させない状況が続けば、12月には1日の感染者が6万人になると警鐘を鳴らした。20日の段階では1日平均4,800人だったが、この日はすでに5,500人を超えた。

 また11月末までには感染者累計は最大で378,600人になると予測。11月23日現在では337,555人。

 タム博士は20日の会見で1日の感染者は前週比で15パーセント増加していると語り、国民に「緊急事態」として接触者を限定するよう呼びかけた。

 リモートワークを提唱するジャスティン・トルドー首相は20日には金曜定例会見を自宅前から実施。新型コロナ疲れやストレスを感じているのは理解できるが、医療崩壊を避けるためにも、今が一番大事な時として、国民に行動を自粛するよう懇願した。

 またブリティッシュ・コロンビア州とアルバータ州に新型コロナアプリへの参加を呼びかけた。

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トロントが今日からロックダウンに

Canada News by Vancouver Shinpo; Designed by ©Vancouver Shinpo

 カナダ最大都市トロントが今日からロックダウンに入った。オンタリオ州ダグ・フォード州首相は20日の会見で「状況は非常に厳しく、最悪の事態を避けるためにも、今以上の対策が必要となった」と説明した。

 ロックダウンはトロントと、隣接するピール地区が対象で、最短でも28日間、12月21日まで継続される。

 この間は、必要不可欠な外出は自粛となり、小売店やジム、ヘアサロンなどが閉鎖。レストランもテイクアウトやデリバリーのみの営業となる。一部のスーパーマーケットなどは開店している。

 フォード州首相が会見でロックダウンを発表した20日にはオンタリオ州で新型コロナウイルス感染者累計が10万人を超えた。

 21日からは1日の感染者が1,500人を超える日が続いており、緊急事態となっている。

 フォード州首相は「コロナ疲れが蔓延していることは理解している」としながらも「オンタリオ州の将来は州民一人ひとりの手に委ねられている」と述べ、一度コロナ削減に成功したあの結束をもう一度見せてほしいと呼びかけた。

 公立学校やデイケアはオープン、大学などはバーチャルで開講している。

東海岸州でも感染増加、バブルはじける

 東海岸4州でバブルがはじけた。ニューブランスウィック州とノバスコシア州で新型コロナ感染者が増加したことで、これまで7月3日から続いていた4州のみ州境を自由に往来できたいわゆる「アトランティック・バブル」政策が一時的に停止状態となる。

 ニューファンドランド&ラブラドール(NL)州とプリンスエドワード島(PEI)州が「バブル」から抜け、2州へのすべての訪問者は14日間の自己隔離が義務付られる。NLは25日から、PEIは24日から実施すると発表した。

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