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カナダ政府の入国規制強化早ければ2月4日に実施か

Parlament, Ottawa, Canada; File Photo by Japan Canada Today

 カナダ政府は本格的なスプリングブレイク(春休み)が始まるのを前に、現在実施されている入国制限をさらに強化すると1月29日に発表した。

 1月31日にCBCのラジオ番組に出演したオマー・アルガブラ運輸大臣は、早ければ2月4日にも空港でのPCR検査とホテル滞在義務化を実施すると語った。

 ジャスティン・トルドー首相は1月29日、新型コロナウイルス感染拡大防止策を強化する目的で、水際対策として、航路で入国するすべての渡航者に対して空港で新型コロナ検査し、結果が出るまで政府が指定するホテルに最長3日間自費で隔離することを義務化するという。隔離中の滞在費は最低2000ドルかかるとしている。

 理由はスプリングブレイクを控えて、海外旅行へ行かないよう促すためと、変異株がこれ以上入ってこないためと説明した。

 これに加えて、スプリングブレイクやスノーバードに渡航先として人気のあるメキシコや中米への運航を停止するようカナダの航空会社に要請し、エアカナダ、ウエストジェット、サンウィング、エアートランザットが1月31日からこれらの目的地への便を4月30日まで停止した。

 スノーバードとはカナダ寒い冬の期間を、アメリカ南部やメキシコなどの暖かい場所で過ごす、主に定年した高齢者を指す。規制が実施されれば、すでにそれらの地域に滞在している人々にも影響がある。

 アルガブラ運輸大臣はラジオ番組の中で、「すべてのフライトを禁止することも考慮している」と語っている。ただそうするとカナダにとって必要不可欠な製品やサービスにも影響が出るため慎重に検討する必要があるとも語った。

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トロント空港で新型コロナ検査、連邦政府に先行して実施へ

現在、オンタリオ州で変異種が確認された保険局。©Weekly Epidemiologic Summary , Public Health Ontario
現在、オンタリオ州で変異種が確認された保険局。©Weekly Epidemiologic Summary , Public Health Ontario

 現在新規の新型コロナウイルス感染者数が毎日約2000人確認されているオンタリオ州で、海外からの入国者にトロント空港で新型コロナウイルス検査を実施することが明らかになった。

 オンタリオ州政府はトロント空港で海外からの渡航者に対して新型コロナウイルス検査実施の義務化を29日発表した。

 ダグ・フォード州首相は「感染率が高いとされる新型コロナウイルスの変異株が国内に入っている状況で、何が起こるか分からない」と説明した。

 オンタリオ州では変異株を抑え込めなければ、3月に感染者が激増するとの研究結果が発表されたばかり。

 州政府は、トロントピアソン国際空港で2月1日正午から新型コロナウイルス検査を入国者全員に実施し、拒否した場合は750ドルの罰金を科すとしている。

 空港での新型コロナウイルス検査は、同日連邦政府が導入を発表。検査結果が出るまでの間は指定されたホテルで最長3日間滞在することも義務化し、その費用は渡航者が負担。滞在費は少なくとも2000ドルはかかるだろうとジャスティン・トルドー首相が説明している。

 この連邦政府の水際対策強化については、スプリングブレイクに海外旅行に行かないようにさせる狙いもあるとされている。

 フォード州首相は、連邦政府のこの対策を歓迎しながらも、実施されるまでには数週間かかかるとみられることから、それまで州で独自の対策を取ると説明した。

 オンタリオ州で27日時点でのイギリス型変異株に感染している人は51人と発表されている。

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BCは州境隔離実施せず

The Legislative Assembly of British Columbia, Victoria, Canada.
ブリティッシュ・コロンビア州の州都ビクトリアにある州議事堂。

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州ジョン・ホーガン州首相は27日、他州からBC州に入った旅行者について14日間の自己隔離を求める措置は取らないと語った。

 新型コロナウイルスの変異株がカナダ国内でも確認され、海外からの渡航者には搭乗72時間前にPCR検査で陰性であることや、入国後14日間の自己隔離を求めるなどの対策が取られているが、州境を超える場合でも各州で強化する声が聞こえている。

 マニトバ州は29日から州外から入ってきた人に14日間の自己隔離を実施することを発表した。

 BC州ではホーガン州首相が「現時点はまだ必要ないと判断した」と語ったが、BC衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士のアドバイスがあれば実施する可能性はあるとした。またBC州に来た人はBC州のルールに従ってもらう、違反した場合は厳しく取り締まるとも語った。

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ケベック州夜間外出禁止令延長か

Canada News by Vancouver Shinpo; Designed by ©Vancouver Shinpo

 夜間外出禁止令が出されているケベック州で、2月8日の期限を前に州政府が28日、規制について言及した。クリスチャン・デュベ保健相は、モントリオール・モントリオール広域圏と、その他のケベック州の「2種類のケベック」になると、モントリオール以外では規制緩和の方向で考えていることを明らかにした。

 フランソワ・レガルト州首相は、現在実施されている8時以降の夜間外出禁止令について「効果が出ている」と語り、期限後に延長するかどうかについては来週に詳細を発表するとした。ただ「なんらかの規制緩和があるだろう」とも語った。

 それでもイギリス型の変異株が増加していることについての懸念を示し、連邦政府に水際対策の強化を要求。「不要不急以外の海外渡航を禁止するか、入国者のホテルでの隔離を、早急に実施してほしい」と語った。

 ただ、州をまたぐ渡航者に14日間の隔離を求めるなど州境規制を強化する州がある中で、ケベック州についてはオンタリオ州オタワとガノーとの複雑な関係をあげ、同様の規制を導入するのは厳しいだろうと語った。

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BC州ヘンリー博士、夏までは海外旅行もパーティもお預け

バンクーバー空港に駐機するエアカナダ機; file photo by Japan Canada Today
バンクーバー空港に駐機するエアカナダ機; file photo by Japan Canada Today

 新型コロナウイルス感染拡大の収束に向けてブリティッシュ・コロンビア(BC)州でもワクチン接種が昨年12月から始まっているが、自由に海外旅行に行けるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。

 BC州衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士は22日の記者会見で、新型コロナの規制は夏までは続くとの見解を示した。

 ヘンリー博士は「この夏に安全な海外旅行ができるというのは、世界の新型コロナ感染状況を見れば現実的ではない」と述べ、BC州内を旅行する機会はあると思うが、おそらく昨年の夏と同じような新型コロナ対策が今年の夏も必要だろうと語った。

 また大勢で集まることについても、この夏はまだ厳しいだろうと予測した。ただ順調にいけば、高齢者への新型コロナワクチン接種が概ね終わっていることをふまえ、「人との接触を増やすことは可能だろう」と語った。

 ただ、まだまだ今後状況がどうなるか分からないこともあり、どの程度の人数で集まれるのか、移動がどのくらい自由になるのかなど、詳細については語らなかった。

 1月26日にBC州が発表した新たな新型コロナウイルス感染者は407人。死亡した人は14人、現在の感染者数は4,260人、入院313人、うち71人がICU(集中治療室)で治療を受けている。現在保健当局がモニタリングしているのは6,450人、回復した人は58,352人。

 またワクチンを接種した人は122,359人、2回目の接種者は4,105人と発表している。

 ワクチン接種については、BC州政府は1月22日に9月までの接種計画を発表している。予定通りに進めば、9月までに希望者全員が接種できるとしている。

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トルドー首相がファイザーCEOと会話、新型コロナワクチンの遅延で

ジャスティン・トルドー首相

 新型コロナウイルスのワクチン接種が昨年12月から開始されたカナダで、ワクチン不足が問題になっている。ジャスティン・トルドー首相は21日、ファイザーグローバルのCEOと21日に話をしたことを明らかにした。

 トルドー首相は「今日、ファイザーグローバルCEOのDr. (Albert) BourlaとCOVID-19(新型コロナウイルス)ワクチンのカナダへのタイムリーな提供について話をした」とツイッターに投稿。「3月末までにカナダが400万回分のワクチンを受け取れると確認した。カナダ政府は国民がなるべく早くワクチンを接種できるように今後も尽力する」とつづっている。

 連邦政府の保健当局が21日に発表した予測によると、カナダでは3月末までに300万人がワクチンを接種することができ、これは全人口の8%を占める。

 またカナダが秋までに現在承認しているワクチン以外のワクチンを承認しなかった場合でも、ファイザーとモデルナからのワクチンで、6月までに1300万人(34%)、9月30日までに3600万人(95%)をカバーすると予測されている。

 カナダのワクチン輸送を指揮するMaj.-Gen. Dany Fortinは、2月7日までは予定されていた供給分の約3分の1しか得られないと説明した。1月最終週には新たなワクチンの納入はなく、2月の第1週にファイザー社から79,000回分を受け取る予定になっているという。ただ、長期的には国民のワクチン接種予定に変更はないとしている。

 今月15日カナダ政府は、ファイザー社から、ベルギーの工場を生産量増加に向けアップグレードするため一時的に減産することから、ヨーロッパ工場から供給しているカナダを含む国々への供給を一時的に減らすことになると伝えられたと明らかにしていた。

 モデルナからは2月第1週までには23万回分を受け取る予定で、2社合わせて3月末までに600万回分のワクチンを受け取る予定になっている。

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トルドー首相、国民に海外旅行のキャンセルを呼びかけ

Vancouver Airport, British Columbia; File Photo by Japan Canada Today
Vancouver Airport, British Columbia; File Photo by Japan Canada Today

 ジャスティン・トルドー首相は国民に海外旅行をキャンセルするよう呼びかけた。22日の会見で、「カナダ国民への私のメッセージは、現時点ではだれも海外へのバケーション旅行を取るべきではないということ」と語った。

 カナダでは3月中旬にスプリングブレイク(春休み)がある。この時期は毎年、多くの学生や家族が海外旅行に出かける。海外旅行先として最も人気が高いのはアメリカで、今年は事情が例年とは異なる。

 アメリカは相変わらず世界で最も感染者が多く、カナダとアメリカの国境も閉鎖されている。1月7日からは入国するすべての渡航者には、72時間前のPCR検査で陰性証明が必要となっている。入国後の14日間自己隔離も義務化されている。

 トルドー首相が国民に海外旅行をキャンセルするよう呼びかける理由は、クリスマス休暇で約120万人が旅行へ出かけたというデータがあるからだ。

 全国紙グローバル&メールの依頼によるエンバイロニクス・アナリティクスの調査によると、昨年12月23日から30日までに少なくとも約120万人が1泊以上の旅行に出かけているという。

 分析によると、都市部の若者や白人富裕層が多く、地域別ではオンタリオ州やケベック州が多かったとしている。国民の3.3パーセントがこの時期に旅行し、その中で、3分の2は白人で、3分の1はビジブルマイノリティ(Visible Minority)グループが多かったとしている。

 分析は、2000万台の携帯電話からなる位置情報のデータベースに基づいて行われ、国勢調査の人口統計や郵便番号と照合して、旅行者のプロファイルを作成して行われている。個人情報は分析情報には含まれていない。

 昨年は、カナダ国内で3月に一気に新型コロナウイルス感染が拡大した。なかでも、ケベック州で爆発的に増加した。その要因の一つは、ケベック州のみスプリングブレイクが他州より早く、特にフランスへ旅行して帰国した人の感染が目立ったとの分析があった。そのため、3月のスプリングブレイクをキャンセルするよう昨年も政府が呼びかけていた。

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新型コロナワクチン治験体験者に聞く、ワクチン接種について(後編)

新型コロナワクチン接種2回目。写真提供 © 片瀬ケイ氏
新型コロナワクチン接種治験に参加した片瀬ケイ氏。接種2回目。2020年9月22日、アメリカ・テキサス州。写真提供 © 片瀬ケイ氏

 世界で3番目に始まったカナダでの新型コロナワクチン接種。そこで今回はアメリカで2020年夏にワクチンの治験に参加した日本人ジャーナリスト片瀬ケイ氏に自身のワクチン治験体験をメールインタビューで語ってもらった。後編はワクチン接種後の反応など。

新型コロナワクチン治験に参加、2回目の接種後には反応も

-接種は何回受けましたか? 1回の接種で治験場所にいた時間はどれくらいですか? その日は家に帰りましたか?

 1回目に治験場所の診療所に行った時は2時間半くらいかかりました。最初に基本的な問診を受けました。

 私が受けた時点での参加条件は、18歳以上、コロナ感染歴がなく、妊娠していない、おおむね健康な人です。

 治験の説明を受け、治験の目的、実施方法、条件が書かれた同意書に署名をし、PCR検査と採血をしました。また、接種後はスマホのアプリ経由で、体調を定期的に連絡するので、その準備もしました。

 その後、すでに液体の入った注射器を持った医師が現れ、注射を受けました。過去に何らかのワクチンでアレルギー反応を起こした人は、この治験には参加できないことになっていましたが、念のため注射後はアレルギー反応がでないことを確認するために30分ほど診療所で経過を見てから帰宅するという仕組みでした。

-接種したあと、なにか症状は出ましたか? プラセボ(偽薬)だった場合は症状が出ないということになりますが、それでも、接種後の自身の体調の変化などあれば教えてください。2回接種した場合、2回ともの症状を教えてください。

 筋肉注射なので、治験の説明書には、プラセボだった場合でも注射後に注射部位の痛みを訴える参加者がいたと書いてありました。

 1回目の注射は、自分が緊張していたせいもあるかもしれませんが、注射もほとんど痛みを感じず、あっという間に終わり拍子抜けしました。

 筋肉注射なので、やはり翌日はちょうどインフルエンザの予防接種を受けた時のような腕に筋肉痛のような痛みがありましたが、1日か2日で消えました。なので、受けた注射はプラセボだったんじゃないかなと思いました。  

 2回目も同じだろうと軽い気持ちで診療所に行きました。注射の前に看護師が血圧を測ったり、1回目の注射の後の様子を質問したりしました。

 その際に、注射のあと、102.1度(摂氏38.9度以上)の熱が出たり、注射痕が10㎝以上赤くなったり、腫れたりするようなら、すぐに連絡するようにと言われました。

 逆に言えば、それ以下の発熱や注射部位の腫れだったら想定内なんだなと思いました。治験の説明書には、早期に試験を受けた250人程度の経験をもとに、ワクチンの注射で一過性の発熱や腕の痛み、頭痛や筋肉痛が出る場合があると書かれていたのですが、1回目の接種では私はほとんど副反応がなかったので、自分には関係なさそうだと思っていました。         

 引き続き、自分がどっちの注射を受けるかは知らされませんが、1回目に受けたものと同じ液体を、同じ分量、注射されます。         

 ところが2回目は注射そのものが痛く感じました。家に帰ってからも1回目より腕が痛いような気がして、夜になって注射箇所を鏡で見てみましたが、赤くもなく、腫れてもおらず、注射痕さえわからない状態だったし、熱も出ないので、そのまま寝ました。   

 翌朝はなんとなく頭が重く、水に触れるといつもより冷たく感じ、風邪でもひいたかなと思いつつ会社に行きました。昼近くなると腕の痛みに加え、頭痛、寒気、だるさ、関節がきしむような痛みを感じるようになりましたが、熱は平熱のまま。

 そのまま定時まで働いて帰宅しました。家に戻るとかなりの頭痛と倦怠感で、ソファに倒れ込みました。といっても、夕食を食べる元気はあり、夕食後に市販の鎮痛剤を飲むことを思いつきイブプロフェンを飲んだら、けっこう楽になりました。

 早めに休んで、翌朝起きたら、頭は若干重い感じでしたが、会社に着いた頃には腕が痛い以外は、他の不快な症状は消えていました。

 腕の痛みが3日から4日続いたので、一瞬、不安を感じましたが、ちょうど地元のラジオ番組で、同じ診療所で治験に参加した看護師と、治験を実施していた医師のインタビューが流れてきました。

 その看護師も2回目の接種は注射も痛かったし、翌日は微熱が出て体がだるく、頭も痛いし体調が悪かったけれど、頭痛薬を飲んで普通に勤務できた程度。ただ腕の痛みは何日も続いて、1回目とは全然違うので驚いたと話していました。

 治験医師もそのインタビューで、免疫反応のためにこうした副反応を経験する治験参加者はいるが大抵は2日くらいでおさまるとコメントしていました。

 それを聞いて安心したと同時に、私が受けた注射はワクチンだったのかも?と思いました。

-接種した時の注意事項や治験期間中にやってはいけないこととかありましたか?

 接種後2週間はインフルエンザを含む、他のワクチン接種を受けないということと、避妊をしてほしいということです。妊婦に対するワクチンの安全性がまだわからないので。

新型コロナワクチン治験2回が終わって

-治験終了後も継続したモニタリングとかはあるのですか?

COVIDダイアリー。写真提供 © 片瀬ケイ氏
COVIDダイアリー。週1回「COVID-19の症状ありますか?」の質問に答えるという。写真提供 © 片瀬ケイ氏

 スマホのアプリを使って定期的に体調を報告します。一部のグループの人は、安全性(副反応)を詳しく見るために、毎日の体温や体調を報告したようですが、私は週に1回、体調に変わりがないか、COVID-19を疑う症状が出ていないかを報告しています。

 それ以外には、2回目の注射から3カ月、6カ月、1年後、2年後と、採血に行きます。抗体がいつまで続くかなどを調べるのだと思います。

-治験を受けてみてのワクチン接種についての感想を聞かせてください。

 今回は過去に例をみない歴史的なワクチン開発や治験だったと思います。ワクチンはこれまで、もっともはやく開発されたものでも実用化までに4年かかっています。一般的な不活化ワクチンだと、ウイルスを弱毒化して培養するのに時間もかかるし、治験をやろうにも参加者を集めるのに時間がかかるし、有効性を検証するのにさらに時間がかかります。

 これに対してファイザーや、ファイザーのすぐあとにやはり緊急使用許可がおりたモデルナのワクチンは、メッセンジャーRNAを使った新しいタイプのワクチンです。

 遺伝子工学がここまで発展して、新型コロナというパンデミックで多くの人が影響を受け、アメリカ政府も巨額の資金をつぎ込んで全面的にワクチン開発や治験をバックアップし、状況を打破するためにも治験に志願するという人が数多くいたので、これほど早く進んだのだと思います。

 治験で注射を受けた人が実際にCOVID-19にかかるかどうかを見なければ、有効性は検証できません。でも、有効性検証のために、わざと治験参加者をコロナウイルスに接触させる「チャレンジ試験」には倫理的な問題があります。

 世界でもダントツにコロナ感染がまん延してしまった米国だから、あえて「チャレンジ試験」をしなくても、短期間で有効性を確認できたというのは、逆に言えば米国の感染がどれだけひどいかを示す非常に残念な話なんですけどね。

-アメリカではすでに接種が始まり、感染者が世界で最も多いアメリカでは接種は新型コロナ収束へのカギとなると思われますが、ワクチン接種についてのアメリカでの国民の反応を教えてください。在住のテキサスでの市民のワクチンに対する反応とか、接種希望者が多いのかどうかなど。

 当面は医療関係者とナーシングホームなど高齢者施設だけが接種対象です。米国のコロナによる死亡はナーシングホームの入居者や介護者が6割だし、医療関係者も毎日コロナ感染に囲まれているので、全体的にはワクチンを歓迎していると思います。

 ただ、これも地元ラジオ局の放送で耳にしたのですが、テキサスの医療関係者の中でも反ワクチン主義の人はいるし、なんとなく不安でとりあえず一番最初には打ちたくないと思う人や、政治的なアジェンダでワクチンに抵抗を示す人もいるようです。

 米国は残念ながら、さまざまな場面で社会システムへの不信感や、政治的な考え方の違いや人種の違いからくる敵対意識が高まってしまっています。

 医療費が高いため、マイノリティや経済的に恵まれない人たちは、医療へのアクセスが限られていたり、気軽に相談できるかかりつけ医を持たない場合がほとんどです。

 来年(2021年)になって一般市民がワクチンを受けられるようになっても、政府や社会システムへの不信感や、ミスコミュニケーション、SNS上のフェイクニュースのために混乱するのではないかと心配です。

カナダのワクチン状況

 ワクチン治験に参加した片瀬氏の体験は、カナダでワクチンを接種する人に少しでも参考になればと思う。

 カナダ政府はファイザーに続いて12月23日には、アメリカのバイオ企業モデルナ社のワクチンも承認した。ジャスティン・トルドー首相はファイザーとモデルナを合わせて少なくとも120万回分のワクチンを2021年1月末までに受け取ると発表している。

 カナダでは、ワクチン接種に否定的な人もいるが、カナダ政府、カナダ公衆衛生局長、州首相らや各州公衆衛生局長らもワクチン接種を積極的に訴えている。

 ただ接種はあくまでも希望者のみで、接種の義務化はしないとパティ・ハイデュ保健大臣が明言している。

 希望するカナダ国民全員が接種できるのは2021年末と政府は予測している。

(取材 三島直美)

新型コロナワクチン治験体験者に聞く、ワクチン接種について(前編)

片瀬ケイ氏プロフィール

片瀬ケイ氏; 写真提供 © 片瀬ケイ氏
片瀬ケイ氏

アメリカ在住の会社員、ライター、翻訳者。東京生まれ。東京の行政専門紙記者を経て、1995年に留学のため渡米。現在はアメリカ人の夫とともにテキサス州ダラス市に在住。米国の政治社会、医療事情などを共同通信47NEWSをはじめ、さまざまな日本のメディアに寄稿している。「海外がん医療情報リファレンス (cancerit.jp)」に翻訳協力するとともに、Yahoo!ニュース個人のブログ「米国がんサバイバー通信」の執筆者でもある。片瀬ケイの記事一覧 – 個人 – Yahoo!ニュース

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