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ヤニック・ネゼ=セガン 音楽の楽園〜もう一つのカナダ 第27回

はじめに

 日加関係を応援頂いている皆さま、音楽ファンの皆さま、こんにちは。

 9月の声を聞くと同時に、オタワに秋がやって来ました。街には緑が溢れているものの、既に紅葉が始まっています。世界中を沸かせたパリのオリンピック、そしてその後のパラリンピックも閉幕しました。いよいよ、芸術の秋の到来を実感します。

 そこで、今回は、カナダが誇る指揮者ヤニック・ゼネ=セガンについて綴ってみたいと思います。

 ヤニックは、世界の楽壇にあって、現在、最高峰の指揮者と言っていいと思います。カリスマ指揮者と崇められたゲルギエフが、ロシアのウクライナ侵略以降もプーチン大統領との親密な関係を保っていたことから、世界の楽壇から事実上追放されたこともあり、今やヤニックは世界中で引っ張りだこです。1975年3月生まれでモントリオール出身の49歳で、既に、膨大な録音を残しています。例えば、ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーン、シューマンの交響曲全集、或いはモーツァルトの主要オペラを筆頭に実に多彩なディスコグラフィーを誇っています。

 しかも、ヤニックは、現在、フィラデルフィア管弦楽団とメトロポリタン歌劇場という世界最高峰の二つの楽団の芸術監督を同時に務めています。実は、同時に最高峰の二つの楽団の音楽監督を務めることは稀有なことです。全盛期のカラヤンがベルリン・フィルとウィーン国立歌劇場の芸術監督を務めた例があるぐらいです。

 それでは、ヤニック・ネゼ=セガンの素晴らしき世界に参りましょう。

初めてのヤニック@カーネギーホール

 私が初めてヤニックを生で観たのは、前職でニューヨークで勤務していた頃です。2019年10月15日のカーネギーホールで、フィラデルフィア管弦楽団を率いての公演でした。同月末からの日本ツアーを控えてのニューヨーク公演ということで、オーケストラ側から招待頂いたものでした。既に5年も前のことですが、ステージ正面のボックス席で、カーネギーホール館長のクライブ・ギリンソン夫妻らと一緒に鑑賞したことを昨日のように思い出します。と言いますのも、鮮やかな色彩感覚のフィラデルフィア・サウンドの美音の洪水を満喫したからです。

 公演は、まず、米国の若手作曲家ニコ・ミューリーがフィラデルフィア管弦楽団のために書いた現代音楽「Liar」の世界初演で幕を開けました。続いて、エルガーの「チェロ協奏曲」でした。このジャンルの最高傑作の一つ。チェロという楽器にして初めて可能な慈愛に満ちた音色で奏でられるメランコリックの旋律が胸に迫るのですが、チェロを懐深く優しく包み込むオーケストラがこの協奏曲の骨格を見事に支えていました。

 そして、休憩の後のメイン・ディッシュは、ベートーヴェンの交響曲第6番へ長調・作品68「田園」でした。聴力を喪失しつつある中、ベートーヴェン38歳の才能が爆発している作品です。御承知のとおり、本格的な表題音楽を交響曲というフォーマットで実現した歴史を画す傑作です。ヤニックは、フィラデルフィア管を見事に差配し、マンハッタンのど真ん中に1808年ウィーン近郊の田園風景を音で再現したのです。怒涛の拍手が湧き上がりました。

 伝統のオーケストラの持つ力を全開させる純白のシャツの若き指揮者。身体からエネルギーが迸り、その熱量がオケに憑依しているようでした。圧倒的な印象でした。

 実はこの段階で、私はヤニックについて何も知りませんでした。それでも、素晴らしい演奏にただただ圧倒されていました。公演終了後、楽屋を訪れる機会に恵まれ、ヤニックに紹介され、若干の会話をしました。私は、エルガーのチェロ協奏曲も「田園」も大好きでよくCDを聴いているけれど、今夜は、貴方の凄い指揮でこれらの名曲の真髄に触れることが出来て、本当に感動した旨を述べました。ヤニックは、日本公演を本当に楽しみにしていると笑顔で話してくれました。そして、驚いたことが一つあります。ステージ上では大きく見えたヤニックは、実際は小柄な人だったのです。音楽愛とエネルギーが横溢してゾーンに入っている時とオフの時の違いが、巨大な才能を浮き彫りにしていると感じたことを憶えています。

モントリオールの神童〜ジュリーニとの出会い

 ヤニックは、教育学の大学教授と大学講師の両親の下に生まれ、恵まれた環境で育ちます。5歳でピアノを本格的に習い始め、瞬く間に上達。10歳の時には、指揮者になると決意したと、各種インタビューで語っています。興味深いのは、何故、指揮者になりたいと思うに至ったかはよく憶えていないようです。両親が愛聴していたモーツァルトの交響曲第40番に合わせて指揮者の真似をするのが好きだったとも言っています。音楽大好き少年の無垢な思いだったのかもしれません。モントリオール音楽院で学ぶ傍ら、14歳で、モントリオール・ポリフォニー合唱団のリハーサル指揮者を務めます。思いを着々と実現していく訳です。

 何事によらず、勉強はすればするほど、学びたい事や教えを乞いたい師が増えていくものです。ヤニックの学びもそうで、モントリオールを超え、米国ニュージャージー州プリンストンのウェストミンスター・クワイヤー・カレッジでも合唱の指揮を勉強しています。

 運命的な転機は、モントリオール音楽院を卒業した1997年、ヤニックが22歳の時に訪れます。巨匠カルロ・マリア・ジュリーニに1年間にわたって師事する機会を得たのです。

 ジュリーニは、かつて39歳の若さでミラノ・スカラ座の音楽監督に就任し、世界のオーケストラを総なめにしたイタリアの名指揮者です。虚飾を排した歌心溢れる音つくりで、20世紀の指揮者列伝に名が刻まれています。ヤニックが師事した時は、既にジュリーニは83歳。フリーの指揮者として、特定の組織に属せず、世界の一流オーケストラに客演する日々でした。側近として、ジュリーニが如何に準備し、リハーサルに臨み、楽団員を掌握し、自らの音楽を奏でるかを間の当たりにしたことは、何物にも変え難い貴重な経験だったに違いありません。楽曲に対する深い理解と洞察に基づく、他の誰かの真似ではない自分だけの音楽的解釈で、オーケストラを率いる。ジュリーニの下で学んだ事は、指揮者の頂点を目指す若きセガンの原点であり、血となり肉となったのです。各種インタビューでは、最も影響を受けた指揮者としてジュリーニの名を常にあげています。

旅立ち

 2000年、25歳の若さでヤニックは、地元のグラン・モントリオール・メトロポリタン管弦楽団の首席指揮者兼芸術監督に就任します。快進撃の始まりです。

 2003年には、ヤニック色に染め上げたグラン・モントリ・メット管を率いてCDデビューします。演目が、ちょっと意表を突いてます。ニーノ・ロータです。名匠フェデリコ・フェリーニ監督とのコンビで数々の名画・名曲を生んだ現代イタリアが誇る作曲家です。選んだのが「組曲『道』」とハープ及びトロンボーンの2つの協奏です。歌の国、イタリアの面目躍如の旋律に溢れています。師ジュリーニの影響を感じさせます。

 実は、同年、ヤニックはピアニストとしてもCDデビューしているのです。「カンバセーション」と題するCDは、トロンボーンとの二重奏という個性的なフォーマット。冒頭に収録されたガブリエル・フォーレ作曲の「シチリアンヌ」が、チェロやフルートとは違った趣きで胸に迫ります。2つのデビュー盤は、クラシックの世界では、直球ど真ん中の勝負というよりは、変化球で腕試しという感じです。厳しい競争のクラシック市場に、知名度の低い青年が切り込むための、戦略的な動きにも見えます。が、功なり名を遂げた今から振り返れば、ヤニックが固定観念に囚われず優れた音楽を世に問う新しい発想の持ち主である証左とも言えるでしょう。

飛翔

 「指揮は人なり」です。舞台で唯一人観客に背を向け、百人に及ぶ楽団員に対峙して己の音楽をつくるのです。そこには、指揮者の全人格や個性が滲みます。エネルギー溢れる指揮ぶりは、ヤニックの音楽性と生産性を如実に物語っているのです。

 上述のとおり、2003年、28歳で発表した2枚のデビューCD以降、今日に至るまで毎年、複数枚のCDをリリースし続けています。膨大な量です。指揮者とピアニストの二刀流です。そのプログラムは非常に幅広い音楽的地平を網羅しています。マーラーやブルックナーらの交響曲を指揮する一方で、「モーツァルト歌曲集」では18世紀後半のフィルテピアノを演奏するのです。マギル大学で教鞭も取るカナダの代表的ソプラノ、シュジー・ルブランと吹き込んだ隠れた名盤です。天衣無縫のアマデウスが紡いだ珠玉の旋律が古式ゆかしくも全く黴臭くなく、生き生きと今に蘇ります。ヤニックの奔放で明朗なピアノフォルテは、きっとモーツァルトはこんな風に弾いたんだろうなと感じさせます。

 デビュー当初は、活動の舞台もカナダが中心でした。CDもカナダのクラシック音楽専門レーベルATMAからのリリースでした。が、徐々に欧州での公演も増えていきます。

 2005年には、今も音楽関係者の間で語り草になっている、ヤニックの恐るべき実力を示すステージがありました。シドニーのオペラ・ハウスでの公演です。当代の第一人者ロリン・マーゼルが病に伏せってしまい、急遽、その代役として、ヤニックに白羽の矢が立ったのです。演目はブルックナーの交響曲第8番です。その夜、ヤニックは、スコアを見ることなく全て暗譜して指揮したそうです。天才的な記憶力を見せつけました。そう言えば、トスカニーニも急遽代役で指揮。しかも暗譜していました。運命の扉はどこで開くか分からないのですね。

 2006年以降は、サン=サーンス、ドビュッシー、ラベル、ベルリオーズなどフランスの作曲家も積極的に取りあげていきます。2008年からは、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者を務めています。

 録音についても、ドイツ・グラムフォン・レーベルと長期契約を締結。多彩な取り組みで、ヤニックの音楽的冒険が進行中です。幾多の名指揮者が残しているベートーヴェンやブラームスの交響曲全集ですが、ヤニック盤の切れの良いリズムと鮮やかな色彩感は特筆に値します。また、ショパン・コンクール優勝のチョ・ソンジンのデビュー盤「モーツァルトピアノ協奏曲第20番ニ短調」では、チョのデリケートなピアニズムに、寄り添いつつ鼓舞し刺激し、哀愁のメロディーの向こうに希望の光を灯すようです。新人を抱擁する貫禄を感じさせます。

巨匠への道と新しき音楽的冒険

 ヤニックは、2012年、シャルル・デュトワの後任として、フィラデルフィア管弦楽団の第8代音楽監督に就任します。1900年に創設された名門で、ストコフスキー、オーマンディ、ムーティ、エッシェンバッハといった錚々たる先人に肩を並べています。

 2018年からは、謂く付きで退任したジェームス・リヴァインの後を継いで、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場の第3代音楽監督も務めています。6年契約を更新して、2030年までメットの顔となる訳です。

 今年49歳のヤニックは、クラシック楽壇ではまだまだ若い世代ですし、未だ巨匠というイメージではないかもしれません。しかし、これまでの実績と実力は、紛れもなく巨匠です。

 しかも、ヤニックは、新しき音楽冒険にも積極的です。その好例がフローレンス・プライス作品の録音です。プライスは、1887年アーカンソー州生まれで米国初の黒人女性作曲家と言われています。黒人霊歌を西洋の古典音楽に融合した交響曲は、20世紀の米国独自の音楽的進化を示しています。しかし、ヤニック以前には、非常に限られた音源しかありませんでした。2021年にヤニックが指揮してフィラデルフィア管が録音し、その進化を世界に示したのです。23年には、プライスの「交響曲4番」加えてウィリアム・リーヴァイ・ドーソン作曲の「ニグロ・シンフォニー」を問うています。忘れられていた優れた音楽に光を当てる。現代の音楽界を牽引しているのです。

カナダとヤニック

 才能が横溢し成功したカナダの音楽家には、世界の舞台が待っています。特に、米国で活躍します。ヤニックも例外ではありません。世界最高峰のフィラデルフィアとニューヨークを往復する日々です。しかし、ヤニックは母国カナダの聴衆にもちゃんと世界最高峰の音楽を届けています。ヤニックは、現在も故郷モントリオールのグラン・モントリオール・メトロポリタン管弦楽団の音楽監督も務めているのですから。

 24年夏には、モントリオールのマウント・ロイヤルの麓で、グラン・モントリ・メット管を率いての無料コンサートを行っています。ビゼー「アルルの女」に加えカナダ人作曲家クロード・シャンパーニュの作品も取り上げました。音楽家に出来る最大の地元コミュニティーへの貢献あるいは恩返しこそ、最高の音楽を届けるフリー・コンサートです。また、2024年4月には、フィラデルフィア管弦楽団のカナダ・ツアーを敢行しています。

 カナダが生んだ、現代の若き巨匠ヤニックが今後のどんな活躍を見せてくれるのか期待が高まります。実は、カナダは若い国ですが、優れた作曲家を輩出しています。しかし、残念ながら、世の中には余り知られていません。今後、ヤニックがカナダ人作曲家の真価を世界に問うて欲しいと思います。

(了)

山野内勘二・在カナダ日本国大使館特命全権大使が届ける、カナダ音楽の連載コラム「音楽の楽園~もう一つのカナダ」は、第1回から以下よりご覧いただけます。

音楽の楽園~もう一つのカナダ

山野内勘二(やまのうち・かんじ)
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

「多文化の地で広がる未来」バンクーバー日本語学校入学式

2024年度バンクーバー日本語学校入学式。2024年9月7日、バンクーバー市。写真提供:バンクーバー日本語学校
2024年度バンクーバー日本語学校入学式。2024年9月7日、バンクーバー市。写真提供:バンクーバー日本語学校

 バンクーバー日本語学校2024年度(2024年9月~25年6月)入学式が9月7日にバンクーバー日本語学校並びに日系人会館(VJLS-JH)で行われた。今年度は、キンダー(幼稚園)クラス、小学科1年生、基礎科Aクラスに新入生として合わせて83人が入学。小学科、基礎科、午後からの中学科、高等科、ユースクラス、アダルトコース合わせて380人が土曜日に通学する。平日クラス、オンラインクラス、プライベートクラスを入れると約500人の生徒となる。

 午前中に行われたキンダー(幼稚園)クラスから小学科の入学式では、新入生が会場の大きな拍手に迎えられて入場し、日本とカナダの国歌を斉唱した。

 小学科4年生のクラスに入学する生徒は学校で楽しみにしていることを聞かれ、「友達に会えることが楽しみです」と丁寧な言葉遣いで答えた。始めた漢字の学習は「楽になるから好き。ひらがなをいっぱい書かなくてよくなるから」と笑顔で話した。

日本語への関心 急上昇

 同校の多くの子どもたちは、家族の勧めで入学している。入学式に出席した保護者のプロッサー彩佳(あやか)さんは「海外生活が長いため、子どもたちに日本語を維持してほしい」という思いで3人の子どもを通わせていると話す。また、2人の子どもが同校に通うアルベロ妙(たえ)さんは、カナダに来る前にアメリカで10年以上生活していた経験から、「ずっと海外で生活している子どもにとっても、授業がしんどいと思わない、無理のない形で日本語の勉強を続けさせたい」との考えからこの学校を選んだという。

 大学生・社会人を対象としたアダルトコースは入学者数が昨年度の約1.5倍。通常、初級レベルは1クラスだけだが、今年度は3クラスに増設して対応する。同校ゼネラルマネジャーの杉山ヨシさんは、「日本文化やアニメをきっかけに、日本語自体への関心の高まりを感じます」と話す。

日本とカナダを繋ぐ架け橋になる人に

新入生に向けてあいさつをするバンクーバー総領事館・丸山総領事。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ
新入生に向けてあいさつをするバンクーバー総領事館・丸山総領事。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ

 あいさつで「今日はこれから日本語を勉強する皆さんを応援するためにやってきました」と新入生にエールを送った在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は、こうした日本語学校がバンクーバーにあることの意義は非常に大きいと話す。「日加関係の増進には、お互いの言語を理解し、交流を深め、信頼関係を築くことが重要です。その基礎となる大きな部分が『言語』にあると思います。言葉以外のコミュニケーションももちろん大事ですが、言語の役割は非常に大きく、無視できないものです。習得は大変ですけどね…。私も外国語の勉強にはずっと苦心していますが、小さい子どもたちが日本語の勉強を始める姿を見て、今日はすごく自分もフレッシュな気持ちになりました」と語った。

入学式で新入生を激励する本間真理校長。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ
入学式で新入生を激励する本間真理校長。2024年9月7日、バンクーバー市。撮影 佐々岡沙樹/日加トゥデイ

 1906年に設立された同校は、カナダで最も古い日本語学校であり、日系カナダ人コミュニティによって運営され、日本語教育と日本文化の継承・普及に努めている。ここで40年以上教師を続ける今年度校長に再任した本間真理校長は、同校の教育方針について「『今日これだけの漢字を覚えたよ』というようなすぐ見える結果ではなく、ずっと先まで、子どもたちが日本語学習や日本文化に興味を持ち続けることが一番大切」と述べ、「オーバーな話ですが、日本とカナダを繋ぐ架け橋になる人材育成をモットーにがんばっている」と熱意を語った。

 カナダは多文化主義の国で、人口のおよそ4分の1が移民であり、200以上の言語が母語として使用されている。本間校長は、こうした環境こそ言語を学ぶにはうってつけだという。「日本でいろんな言葉を習うのは難しいですが、ここでは隣の人は日本語ではない言語を話し、日本とは異なる文化を持っていることが当たり前。すでにもう子どもたちは国際人なんです。そういうすばらしい環境の中で育っている子どもたちのさまざまな可能性をもっと広げてあげられたらいいな」と思いを語った。

(記事 佐々岡沙樹)

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漁具に絡まったザトウクジラを4日間かけて救出

 カナダ漁業海洋省(DFO)が、4日間かけて漁具やロープ、ブイなどが絡まったザトウクジラを救出した。同省の海洋哺乳類コーディネーター、ポール・コトレル氏は「最も時間のかかった救出活動のひとつ」と話した。

 救出は、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州北部沿岸のプリンス・ルーパートとハイダ・グァイの間で行われた。クジラは、明らかに数カ月に渡って漁具が絡まった状態で、頭部にもロープが絡まり口を開けることができなかった。コトレル氏によると「どこから手を付けていいのかわからない状態だった」という。

 救出チームはロープなどを50カ所切断し、クジラの体から絡まったものを取り外した。クジラは長期間、何も食べていない状態で、呼吸のために浮上することも困難なほどひどい状態だったが、救出後は元気を取り戻した様子だった。しかし体に多くの傷を負っているため、DFOは様子を見ていくという。

  コトレル氏は、BC州沿岸で漁具がクジラの体に絡まるケースが増えているとし、この海域へのクジラの流入との関連性を考えているという。クジラの保護団体はDFOに対し、外部団体も救出活動を行えるよう、トレーニングや設備の提供を求めている。

(記事 編集部)

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「ザ・ゲスイドウズ」トロント国際映画祭で上映、宇賀那健一監督インタビュー「音楽以外は何をやってもダメ、そんなバンドのメンバー達が奏でる熱く楽しい物語」

今夜ミッドナイトマッドネスでプレミア上映を行った宇賀那健一監督(左端)とキャストの皆さん。レッドカーペットではカメラに向かってジャンプするなど終始楽しそうだった。Photo Michiru Miyai
今夜ミッドナイトマッドネスでプレミア上映を行った宇賀那健一監督(左端)とキャストの皆さん。レッドカーペットではカメラに向かってジャンプするなど終始楽しそうだった。Photo Michiru Miyai

 今年も278作品が上映され大いに盛り上がったトロント国際映画祭(TIFF)。中でも一段と熱かったのが午後11時59分に上映開始、真夜中にホラーやファンタジーなどの映画を観て楽しむ「ミッドナイト・マッドネス」部門。そこで新作「ザ・ゲスイドウズ」が上映された宇賀那健一監督が現地で取材に応じ作品への思いなどを語った。

ザ・ゲスイドウズ あらすじ

「ザ・ゲスイドウズ」より。Photo courtesy of TIFF
「ザ・ゲスイドウズ」より。Photo courtesy of TIFF

 売れないパンクバンドの「ザ・ゲスイドウズ」。CDがあまりに売れなかったため田舎に移住しそこで曲を作って来いと事務所から命じられる。音楽以外は何をやってもダメなメンバーたちが田舎で畑仕事を手伝い周囲の人たちと触れ合いながら曲作りに励むなか、自分たちの音楽と居場所を作りあげてゆく。主演は夏子。多国籍バンドALIの今村怜央、ゴールデンボンバーの喜屋武豊、アメリカで映画監督をするロッコ・ゼベンベルゲンらが出演。

レッドカーペットの宇賀那健一監督。Photo Michiru Miyai
レッドカーペットの宇賀那健一監督。Photo Michiru Miyai

―これまでホラー映画も撮ってきた宇賀那監督ですが「ザ・ゲスイドウズ」はホラーではなくロックコメディ。今回音楽をテーマにされたのはどういう思いからですか?

「この物語はホラー映画が大好きな主人公がパンクな音楽をやっていて、社会と馴染めずにいるなか、新しい環境に触れ自分と自分の音楽の居場所を見つけるという話しなんです。もともと『物を作り続ける』というのがテーマにあって、何か物をつくり続けていいんだ、という温かい目線を向ける物語を作りたかった。自分が作るホラー映画と同様にパンク音楽も社会で少し白い眼で見られがちだったりするので、パンク音楽のミュージシャンが周囲に受け入れられながら曲を作りあげてゆく話になりました」

―バンドのメンバーには今村怜央さんと喜屋武豊さんというミュージシャンが本業のお二人もいますね。

「音楽映画で当て振り(録音済みの音源を流しそれに合わせて演奏するふりをすること)だと冷めてしまうので、そこは本業の人でと考えていた。夏子さんは音楽はやっていなかったけどカリスマ性でお願いしました。夏子さんは作品中で唄うのは初めてだったし、喜屋武さんも普段はエアギターのところをベースを弾いてもらうなどチャレンジはあったんですが、撮影開始ぎりぎりまで皆で練習していたので大きなライブを前にしたバンドメンバーの様な強いつながりができてとても良かったです」

―出来上がった作品にはホラー映画を思わせるシーンもあります。

「自分は母親の影響で小さい頃からホラーを観て育ったためホラーは自分の原点と言えるので、そういうホラー味はやっぱり入りますね」

―今回はミッドナイト・マッドネスでの上映となりました。

「トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネスに出品するのが本当に目標のひとつだったのですごくうれしいとともにお客さんの反応が楽しみで怖くもあります。ここまで来たのだから他の作品もできる限り見ようと毎日すごく映画を見て楽しんでいます」

―映画をこれから観る方にメッセージをお願いします。

「もともと何か物を作り続けている人、夢を見続けている人に向けた応援映画にしようと思って作りました。結果として夢を追い続けている人だけでなく、夢をあきらめた経験のある人(監督も映画をあきらめて会社員をやっていた時期が3年ほどあった)や夢が見つからない人など、何かをがんばっている人全員に対しての応援映画になったと思います。パンク音楽やホラー要素があるととっつきにくいかも知れないですが、実際は怖い要素は無いし誰にでも楽しんでいただけるエンターテインメントになっているので幅広い人にご覧いただけたらと思います」

プレミア上映当日・・・

今夜ミッドナイトマッドネスでプレミア上映を行った宇賀那健一監督(左端)とキャストの皆さん。レッドカーペットではカメラに向かってジャンプするなど終始楽しそうだった。Photo Michiru Miyai
今夜ミッドナイトマッドネスでプレミア上映を行った宇賀那健一監督(左端)とキャストの皆さん。レッドカーペットではカメラに向かってジャンプするなど終始楽しそうだった。Photo Michiru Miyai

レッドカーペットには多忙なスケジュールをぬって駆け付けた出演者さんたちの姿が!

宇賀那監督「いよいよ憧れの場所で皆さんに見てもらえるので興奮しています。楽しんでいただきたいですね」

数時間のみの滞在(!!)という今村怜央さん「こんなすごい舞台に連れて来てもらい嬉しい。皆に届くといいなと思っています」

喜屋武豊さん「こんなに歴史のあるすばらしい劇場で上映されるというのは、なかなか味わえる経験ではないので最高の気分。このレッドカーペットで寝たいくらいです(笑)」

夏子さん「音楽を生業にしてらっしゃる方たちとバンドを組むという役だったので最初は自分に務まるかと思いました。群馬での撮影も含め毎日が本当に楽しく大変なこともあったけど皆でやり遂げたという感が大きい撮影でした」

上映終了時は午前2時前。にもかかわらず監督、出演者の登壇に会場は多いに盛り上がり活発なQ&Aも行われた。

上映は午後11:59開始、終了は午前2時前にも関わらず大盛況!上映後に登壇した宇賀那健一監督(左端の司会者の隣)とキャスト、スタッフの皆さん。上映は途中笑いや歓声が起こるほどだった。Photo Michiru Miyai
上映は午後11:59開始、終了は午前2時前にも関わらず大盛況!上映後に登壇した宇賀那健一監督(左端の司会者の隣)とキャスト、スタッフの皆さん。上映は途中笑いや歓声が起こるほどだった。Photo Michiru Miyai

記事 Michiru Miyai

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バンクーバー国際映画祭2024日本映画を紹介、「ぼくが生きてる、ふたつの世界」など今年も話題作を上映

「ぼくが生きてる、ふたつの世界(英題:Living in Two Worlds)」より。Photo courtesy of VIFF
「ぼくが生きてる、ふたつの世界(英題:Living in Two Worlds)」より。Photo courtesy of VIFF

 第43回バンクーバー国際映画祭(VIFF)が9月26日に開幕する。今年は4,800本の応募作品の中から選ばれたプレミア70本を含む長編作150本とショート作品81本が、バンクーバー市内の映画館で上映される。

 日本映画は、日加トゥデイ・メディアパートナー作品の「Living in Two Worlds」(「ぼくが生きてる、ふたつの世界」呉美保監督)をはじめ、シンガーソングライターの石橋英子さんが来加し、濱口竜介監督とのサイレント映画「GIFT」をVIFF Liveで披露する。

 今年もVIFFで上映される日本映画を紹介する。

「ぼくが生きてる、ふたつの世界(英題:Living in Two Worlds)」日加トゥデイ・メディアパートナー作品

「ぼくが生きてる、ふたつの世界(英題:Living in Two Worlds)」より。Photo courtesy of VIFF
「ぼくが生きてる、ふたつの世界(英題:Living in Two Worlds)」より。Photo courtesy of VIFF

 国内外から高く評価されてきた呉美保監督が9年ぶりに手がけた長編映画。耳が不自由な両親のもとで育った息子五十嵐大(吉沢亮)の成長に伴う葛藤や親子の絆を描いたストーリー。原作は作家・エッセイストの五十嵐大氏自身による「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」(幻冬舎)。

 母役は日本最初のろう者主演俳優として活躍する忍足亜希子、父役は数々の舞台作品に出演する今井彰人が演じる。そのほか、ろう者の登場人物には全てろう者の俳優を起用。共演は他にユースケ・サンタマリア、烏丸せつこらなど。

 バンクーバー国際映画祭パノラマ部門正式出品作品。https://viff.org/whats-on/viff24-living-in-two-worlds

「GIFT」

VIFf Liveに参加する石橋英子さん。(c)JimO'Rourke/Photo courtesy of VIFF
VIFf Liveに参加する石橋英子さん。(c)JimO’Rourke/Photo courtesy of VIFF

 ライブパフォーマンスが行われるVIFF Liveシリーズでは、音と映像の最先端で活躍するアーティストたちが集結。日本からはシンガーソングライターの石橋英子さんが来加し、2022年にアカデミー賞国際長編映画賞を獲得した「ドライブ・マイ・カー」でタッグを組んだ濱口竜介監督の「GIFT」で石橋ワールドを披露する。

 本作品は濱口のサイレント映像と石橋のライブサウンドトラックで作られている。8月28日にバンクーバー市で行われたプレスコンファレンスにでも「すばらしいコラボ」と紹介されるほど注目されている。

https://viff.org/whats-on/gift-hamaguchi-ishibashi-live

「Super Happy Forever」

「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF
「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF

 幼馴染の佐野と宮田は2人で伊豆を訪れる。そこは、佐野が5年前に亡くなった妻・凪と初めて出会い、恋に落ちた場所。二人は凪の影を追うように思い出の地を巡る。

 世界が注目する五十嵐耕平監督による長編最新作で、日本映画初となる第81回ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ部門でオープニングを飾った作品。

 「泳ぎすぎた夜」で共同監督を務めたDamien Manivelもプロデューサーとして参加し、日仏合作映画として製作された。「青春期の終わり」を迎えた人々の奇跡のようなひとときを描いている。

 バンクーバー国際映画祭パノラマ部門正式出品作品。https://viff.org/whats-on/viff24-super-happy-forever

「 HAPPYEND(英題:Happyend)」

VIFF2024ではShowcaseカテゴリーで上映される空音央監督作品「Happyend」より。Photo courtesy of VIFF
VIFF2024ではShowcaseカテゴリーで上映される空音央監督作品「Happyend」より。Photo courtesy of VIFF

 ありえるかもしれない未来を舞台に、高校生の友情の揺れ動きや葛藤、そしてテクノ音楽が融合したクリエイティブかつ力強い作品。コンサートドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto | Opus」で世界の映画祭から注目された空音央監督による初のドラマ映画。

 2024年第81回ベネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門出品作品、トロント国際映画祭では北米プレミアとしても上映された。

https://viff.org/whats-on/viff24-happyend

「Viva Niki タロット・ガーデンへの道(英題:Viva Niki – The Spirit of Niki de Saint Phalle)」

「Viva Niki タロット・ガーデンへの道(英題:Viva Niki - The Spirit of Niki de Saint Phalle)」より。Photo courtesy of VIFF
「Viva Niki タロット・ガーデンへの道(英題:Viva Niki – The Spirit of Niki de Saint Phalle)」より。Photo courtesy of VIFF

 フランスを代表するフェミニスト・アーティスト「ニキ・ド・サンファル」の人生と作品を追ったドキュメンタリー。世界で活躍する女性アーティストを撮り続けてきた写真家松本路子が映画初監督を務める。ナレーションを担当したのは歌手で俳優の小泉今日子、エンディング曲でも上田ケンジとのユニット「黒猫同盟」として参加している。

 ニキの集大成としてイタリア・トスカーナに制作した彫刻庭園「タロット・ガーデン」。1981年からニキと10年以上にわたり交流してきた松本路子自身がその庭園を訪れ、ニキが歩んだ道を辿る。

https://viff.org/whats-on/viff24-viva-niki

「The Chef & the Daruma」

「The Chef & the Daruma」より。Photo courtesy of VIFF
「The Chef & the Daruma」より。Photo courtesy of VIFF

 36年にわたり数多くの著名人から愛されてきたバンクーバー市にあるレストラン「Tojo’s restaurant」のオーナー東條英員氏の活動を追いかけたドキュメンタリー。Mads K. Baekkevold監督初の長編作品。東條氏はカナダでの日本料理のパイオニアで、カリフォルニアロールの生みの親としても知られている。VIFFでの上映が世界初公開。

https://viff.org/whats-on/viff24-the-chef-the-daruma

「あめだま(英題:Magic Candies)」

「あめだま(英題:Magic Candies)」より。Photo courtesy of VIFF
「あめだま(英題:Magic Candies)」より。Photo courtesy of VIFF

 韓国の絵本作家ペク・ヒナの「魔法のキャンディー」を原作とした短編アニメーション。「ニューヨーク国際こども映画祭2024」の短編アニメーション審査委員最優秀賞作品。コミュニケーションをとるのが苦手な少年ドンドンが不思議な「あめだま」の力を通じて、他人の心を理解し、自身の気持ちを伝えることができるようになるまでを描いている。監督はドラゴンボールなどを手掛けてきた西尾大介。カナディアン・プレミア作品

https://viff.org/whats-on/viff24-magic-candies

Colors Under the Streetlights

「Colors Under the Streetlights」より。Photo courtesy of VIFF
「Colors Under the Streetlights」より。Photo courtesy of VIFF

 深夜にガールズバーのキャストを乗せ、夜の街を走るドライバーのユリカを主人公にした、東京の夜を生きる女性たちを描いたショートムービー。

 監督・脚本は「ドーナツもり」の定谷美海。

https://viff.org/whats-on/viff24-colors-under-streetlights

「My Dog is Dead / 私の犬が死んだ」

「私の犬が死んだ(英題:My Dog is Dead)」より。Photo courtesy of VIFF
「私の犬が死んだ(英題:My Dog is Dead)」より。Photo courtesy of VIFF

 家族の犬が亡くなったと知り、犬を飼っている人の気持ちが分からないボーイフレンド・ヨシキと一緒にリコが実家を訪ねる物語。家族や喪失、悲しみを静かに描き出す感動的なショートムービー。松永侑と千田丈博の共同監督作品。

https://viff.org/whats-on/viff24-my-dog-is-dead

Vancouver International Film Festival 2024

期間:2024年9月26日~10月6日
チケット:一般19ドル、シニア17ドル、学生14ドル。6枚、10枚のチケットパックもあり
上映時間やチケット情報はバンクーバー国際映画祭ウェブサイトを参照。https://viff.org/festival/viff-2024

(記事 田上 麻里亜)

バンクーバー国際映画祭チケットプレゼントのお知らせ

日加トゥデイがメディアパートナーの「Living in Two Worlds」(「ぼくが生きてる、ふたつの世界」呉美保監督)を10名に、好きな映画を選べる一般チケットを10名に、プレゼントします。

希望の方は、件名に「Living in Two Worlds」希望、一般チケット希望と、どちらかを明記して、promo@japancanadatoday.caまでご応募ください。締め切りは9月23日(月)正午となります。

抽選の上、当選者には直接メールで連絡いたします。

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偶然と恋愛「Super Happy Forever」五十嵐耕平監督インタビュー

「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF
「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF

 「特別な思い出はだいたい取るに足らないようなささやかな事柄の方が多い」。監督のそんなさりげない発想から生まれたような映画「Super Happy Forever」。この作品は今年のバンクーバー国際映画祭パノラマ部門から、見所としてメディアコンフェレンスで紹介された唯一の日本映画。9月7日、大学の授業のためバンクーバーに来られない五十嵐耕平監督は、東京から日加トゥディのインタビューに応えてくれた。

 まず冒頭から海の好きな人、そうでない人でもため息が出るくらい奇麗な景色に遭遇する。そしてブルーのさわやかな海を囲むように、ひと夏の物語りが始まる。

 海辺のリゾート地を5年ぶりに訪れた幼なじみの佐野(佐野弘樹)と宮田(宮田佳典)。でも佐野は最愛の妻・凪(なぎ、山本奈衣瑠)を亡くしたばかり。自身も悩みを抱えているが幸せを信じて明るい宮田。それに比べ佐野はただ怒りっぽい。彼の目的はただ一つ。凪と偶然に出会った場所で、二人の思い出の赤い帽子を見つけること。ひたすら帽子を探す彼の悲しみといらだちは隠せない。

「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF
「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF

 今年ベネチア国際映画祭でプレミアしたこの作品は、3部構成で現在、過去、現在へと時間を横断する。1部での佐野の変わった行動が、2部でその理由が解かれる。偶然が偶然を呼んでワクワクしたり、カップヌードルのシンプルな幸せを感じた後は、3部で人生を変えるための帽子を私たち観客も一緒に探す。そして…

最後まで魅せる作品

 静かで優しいから、どこかノスタルジックな恋や喪失感を期待すると、意外な所へたどり着くのでびっくり。「現在の日本だとどこか変わった映画だと思われるかもしれないですね」と語る五十嵐監督の言葉通り、独特な皮肉やユーモアが感じ取れた。ただこのふわっとした青春感は、どの年代の人にも通じるものがあり、席を立つと振り返ってまた見たくなる。

「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF
「Super Happy Forever」より。Photo courtesy of VIFF

 最近カナダでも見られる宗教的な自己啓発セミナーについて「信じることで救われたり明るくなるのはよいが、金銭と結びつくと良くないことがある」。また最近の映画で見られない入浴やタバコのシーンについても「自分の好きな映画にそういうシーンが多いから」と前置きして、「まあタバコ吸う人多いし、全然いいでしょう」と明るく応えてくれた。この70年、80年代の監督みたいな発言も五十嵐監督の大きな魅力だ。

五十嵐耕平監督。Photo courtesy of VIFF
五十嵐耕平監督。Photo courtesy of VIFF

 年齢より若く見え、まだ新鋭イメージがある監督だが、大学在学中に手がけた「夜来風雨の声」が、2008年のシネマ・デジタル・ソウル映画祭でいきなり韓国批評家賞を受賞。続いて大学院時代に作った「息を殺して」がロカルノ国際映画祭に、さらに「泳ぎすぎた夜」がベネチア国際映画祭に連続招待されるという快挙を成し遂げている。また監督のミュージックビデオ(D.A.N.「Pool」「Native Dancer」)や過去のショート作品など長編作に至るまでの映像と色使いも注目してほしい。

 主人公を見ているといつの世代でも青春時代はあったと実感。五十嵐監督は「ぜひ見てくださいね」と元気よく締めくくった。終わらないひと夏の物語、劇場で見たい作品だ。

「Super Happy Forever」上映日時・会場

10月4日(金)6:00 pm @Fifth Avenue Cinema
10月6日(日)6:15 pm @SFU Woodwards
https://viff.org/whats-on/viff24-super-happy-forever/

(取材 Jenna Park)

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日本語認知症サポート協会「オンライン de Cafe・笑いヨガ」

「笑顔の力」を引き出そう〜「笑いヨガ」で、元気な心と体づくり〜

毎月、「笑いヨガ」を行っています。自宅にいながら参加できる、オンラインでのセッションです。興味のある方、初めての方も大歓迎。楽しく一緒に笑いましょう!

日時:2024年10月17日(木)午後8時〜午後9時
会場:Zoom
参加費:初回無料、2回目からドネーション(e-Transfer、PayPalまたは小切手にて)
申し込み締め切り:2024年10月15日(火)

申し込みリンク:https://forms.gle/k3vhNu5ux71eYu8p9
*お申し込みいただいた方には、追って参加方法をご案内いたします。

お問い合わせ先:orangecafevancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会(Japanese Dementia Support Association) http://www.japanesedementiasupport.com

MagicJo山下の無料手品レッスン

MagicJo山下の無料手品レッスン http://www.magicjos.magix.net/public

場所:Vancouver中央図書館(W.Georgia@Homer)8階

所要時間:30分
Props/教材費:$5

三名集まり次第連絡ください。  webarts3000@yahoo.com

ご家庭で簡単にできるおいしいココナツ マカロン

ワーさん(W.A.3.)のレシピ#1.

www.webarts3000.magix.net/public

ご家庭で簡単にできるおいしいココナツ マカロン。

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ココナツ マカロン

ココナツ                    500 g。
砂糖               250 g。
卵白               250 ml。
溶かしたバター   75g。

全材料をよく混ぜる。アイスクリームスクープを使って鉄板に並べる。350Fで約20分。

質問は山下にお聞きください:webarts3000@yahoo.com

第16回 おひとりさまが終活をしないと、どうなる?! Pさんのケース その3~Let’s 海外終活~

終活は新しい大人のマナー

叶多範子

秋の気配が少しずつ感じられ始める今日この頃。みなさんは思い思いの夏を楽しめたでしょうか? 夏の喧騒が遠のき、静かに秋が忍び寄る季節の変わり目。カナダの長い冬がまた始まると思うと、心に重みが感じられる瞬間もあります。しかし、その前に訪れる秋の輝きは、私たちに最後の華やかな贈り物をしてくれるようです。メープルの葉が赤や黄金に染まり、澄んだ青空との対比が心を躍らせます。この数少なくなってきた晴れやかな日々を、一瞬一瞬大切に味わいたいものです。

さて、前回からの続きです。

妹さんの帰国により、Qさんの肩にのしかかる責任が一層重くなりました。Pさんの遺産整理が本格化する中、持ち家だったことが幸いし、即座の退去は免れました。しかし、新たな問題が次々と浮上します。

まず直面したのは、マンションの保険切れでした。保険会社に連絡すると、「空き家」扱いとなるため、Pさんが加入していた保険の継続は不可能だと告げられます。水回りトラブルへの不安から、可能な限りの保険に加入しましたが、それは新たな重荷となりました。保険会社の担当者から「毎日の部屋チェック」を強く要求されたのです。

Qさんには自身の生活があり、Pさんの家からも遠距離に住んでいたため、毎日の訪問は現実的ではありません。結局、週に1度の換気を兼ねた訪問で妥協することになりました。

しかし、最大の難関がまだ待っていました。それは、デジタル資産へのアクセス問題です。Pさんは銀行取引から公共料金の支払いまで、すべてをオンラインで管理していました。どの金融機関や事業者と取引があったのかを把握するため、Qさんは古い通帳や明細書を必死に探し出さねばなりませんでした。

Pさんは一人暮らしだったせいか、パスワードやユーザー名の記録を残していませんでした。見つかったメモは判読困難な走り書きで、どのアカウントに対応するものかも不明でした。結果として、Qさんは各機関に個別に問い合わせるという煩雑な作業を強いられることになりました。

もしパスワードが判明していれば、Pさんのメールアドレスにアクセスでき、取引先や親しい知人への連絡もスムーズだったはずです。しかし、それも叶わず、Qさんの苦労は続くことになります。

この経験は、デジタル時代における「おひとりさま」の終活の難しさと、事前準備の重要性を浮き彫りにしました。パスワード管理や緊急時のアクセス権設定など、デジタル資産の承継計画が不可欠であることを、Pさんのケースは如実に物語っているのです。

幸いにも残っていたマンションのローンは生命保険で完済されたため、Pさんには大きな借金はないことは確認することができました。でも、もしかしたら誰も把握していないPさんの資産があったかもしれませんが、それはもう知る由がありません。

さらにQさんが直面した重要な課題の一つが「グラント」の取得でした。このグラントとは、裁判所が発行する遺産管理権を認める不可欠な法的文書です。Qさんは弁護士事務所に手続きを依頼しましたが、Pさんの事案が通常とは異なる少し複雑なケースだったため、この相続手続きにおいて重要なグラントの入手に約1年以上もの時間を要しました。これが出たら、すぐに銀行がお金を払い戻してくれるのかと思いきや、なかなか手続きをしてくれません。Pさんに関する税金の支払いもわからないため、会計士さんにお願いすることになりました。

Pさんの遺産整理は、想像以上に複雑で時間のかかる作業でした。管理費の未払い金の精算、滞納していた税金の支払い、さらには裁判所や弁護士事務所への対応など、次々と浮上する問題に、Qさんは粘り強く取り組みました。

マンションの片付けも大きな仕事でした。長年の生活で蓄積された私物の整理、不用品の適切な廃棄、そして部屋全体の徹底的な清掃。これらの作業を終えてようやく、マンションを売却に出すことができたのです。幸いにも、Pさんがマンションを購入した際の不動産業者の協力を得られ、比較的短期間で買い手を見つけることができました。

QさんがPさんとそのご家族のために尽力したことは、ここに書ききれないほど多岐にわたります。その献身的な姿勢と、惜しみなく費やした時間と労力には、聞いた誰もが頭が下がる思いでした。

続く

*このコラムは終活に関する一般的な知識や情報提供を目的とするものです。内容の正確さには努めておりますが、必要に応じてご自身で確認、または専門家へご相談ください。このコラムを元にして起きた不利益は免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。

叶多範子(かなだ・のりこ)

海外終活アドバイザー・弁護士アシスタント
「終活をせずに亡くなった!認知症になって困った!途方に暮れた!!」を、「終活しておいて良かった!」「終活してくれていて、ありがとう!」に変えたい!そんな思いから2020年に終活アドバイザー資格を取得。海外在住の日本人向けの「海外終活」についての講座や説明会、ご相談はブログやFacebookなどのSNSをご覧ください。家族はカナダ人の夫+息子2人+猫1匹、バンクーバー在住。

ブログ: https://globalmesen.com/
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その他SNS: https://lit.link/norikocanada
著書「海外在住日本人のための50代からの終活」:​​https://a.co/d/ad4OeLw

GK高丘2試合連続無失点、ホワイトキャップスは主力選手欠場も6位維持

GK高丘、試合後ロッカールームの前で。2024年9月7日、BCプレース。写真 日加トゥデイ
GK高丘、試合後ロッカールームの前で。2024年9月7日、BCプレース。写真 日加トゥデイ

 MLS(メジャーリーグサッカー)レギュラーシーズンは9月に入り終盤を迎えている。バンクーバー・ホワイトキャップスは9月7日、アメリカ・テキサス州ダラスに本拠地を置くFCダラスとBCプレースで対戦。何度もチャンスはあったもののゴールを決められず、引き分けに終わった。

9月7日(BCプレース:23,188)
バンクーバー・ホワイトキャップス 0-0 FCダラス

終始キャップスが主導するも得点できず

 前半から終始ホワイトキャップスが試合を支配していた。この日ホワイトキャップスが放ったシュートは20本、対してダラスは6本と、その差は一目瞭然。試合前半から多くの得点機会があり、ビックチャンスもあったが、惜しくも得点には繋がらなかった。

 ホワイトキャップスは、各国代表に合流するため、Ryan Gauld、Andrés Cubas、Ali Ahmed、Pedro Vite、Fafa Picaultがいなかったほか、Brian Whiteも欠場で、主力6人を欠いた状態で戦った。

 Vanni Sartini監督は、試合前から若手選手にチャンスを与えられるポジティブな機会として捉えていた。試合については、「(選手たちは)とてもいいプレーをしたと思う」と語ったものの、試合結果については満足していないとコメントした。

プレーオフに向けて厳しい試合が続く

 GK高丘は、ディフェンス機会が少なかったものの2回のセーブでチームを守った。「ホームで勝ちをしっかりと取りたかったという気持ちはありましたけど、スタートからゲームを支配することができていましたし、まずはこの状況をポジティブに捉えて次のホームの試合に繋げたいと思います」と引き分けを前向きに捉えた。

 この日は主力選手が複数欠場する試合となったがチームの雰囲気について、「チームの中心選手がいない分、多少違う部分もありましたけど、代わりに出場した選手が生き生きとミスを恐れずにプレーしていたので、そういった意味ではチームの底上げができた良い90分だったと思います」と振り返った。

 自身のプレーについては「守備機会は少なかったですけど、相手にも良いフォワードの選手もいる中で、チャンスを与えないということは今日のテーマでもありましたし、チームのみんなが90分間ハードワークをしてくれたおかげもあって、しっかりと0点で終えられてよかったです」。

 高丘は現在2試合連続無失点。「無失点は自分の中でもこだわっている部分で、かといって自分だけでできることではないので、チームと協力しながら自分の仕事をしっかりとまっとうしたいと思っています」とチーム一丸を強調した。

 チームは現在西カンファレンス6位だが、4位以上がホームでプレーオフを迎えることができる。「(この先は)トップ4に食い込んでいくために勝ちにこだわる必要があると思っています。今日も難しい試合でしたけど次の試合はより難しい試合になると思います」

 レギュラーシーズンは残り9試合、うち5試合がホームゲーム。シーズンも終盤を迎え、ホームでプレーオフを迎えるための大事な試合が続く。

9・10月のホームゲームhttps://www.whitecapsfc.com/

9月14日(土)7:30pm サンノゼ・アースクエイクス戦
9月25日(水)7:00pm トロントFC戦(カナディアン・チャンピオンシップ決勝)
9月28日(土)7:30pm ポートランド・ティンバーズ戦
10月2日(水)7:30pm シアトル・サウンダーズFC戦
10月5日(土)4:30pm ミネソタ・ユナイテッドFC戦
10月13日(日)4:30pm LAFC戦

(記事 田上麻里亜)

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25人以上の建設現場で水洗トイレ設置を義務化

 建設現場で長年求められていた「トイレ事情の改善」が実現することになった。ブリティッシュ・コロンビア(BC)州では2024年10月1日から、25人以上の作業員が働く工事現場では水洗トイレと手洗い設備の設置が義務付けられる。トイレは下水設備かタンクに接続されて水で流せるもの、手洗い設備は水とせっけんを備えたものと定められている。

 建設現場でよく使われている水洗式ではない簡易トイレ、いわゆる「ポータ・ポッティ」について、州内45,000人の建設作業員を代表するB.C.ビルディング・トレードは、不潔で(作業員の)尊厳を損なうものだと非難し、昨年10月から水洗トイレ設置義務化のキャンペーンを行っていた。同時期にデイビッド・イービー州首相はこの問題に取り組むことを明言していた。

 今回の措置についてハリー・ベインズ労働大臣は9月5日付の発表で、「簡易トイレは不快なものだが(それ以上に)これは建設作業員の健康と安全問題である」と述べた。また、トイレ事情の改善は女性を含めた建設業界における雇用の促進や離職の防止にもつながるという。

 カナダ統計局によるとBC州では245,000人が建設業界で働いている。

(記事 編集部)

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