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叙勲受章グレース・トミコ・フルヤ氏への勲記・勲章伝達式が在カナダ日本国大使公邸で行われる

勲記を手にするフルヤ氏(左)と山野内大使。2023年7月28日、オンタリオ州オタワ市。写真提供:在カナダ日本国大使館
勲記を手にするフルヤ氏(左)と山野内大使。2023年7月28日、オンタリオ州オタワ市。写真提供:在カナダ日本国大使館

 令和5(2023)年春の外国人叙勲(令和5年4月29日発表)で旭日双光章を受章したグレース・トミコ・フルヤ氏への伝達式が、7月28日、在カナダ日本国大使公邸で行われた。

 オンタリオ州オタワを中心にカナダでの生け花の普及に貢献、また、全カナダ日系人協会の活動にボランティアとして参加するなど、日本・カナダ間の友好親善に寄与した功績が認められての受章となった。

 フルヤ氏は「このようなすばらしい名誉な受章者の一人に選ばれて、言葉では言い表せないほど感激しています」と思いを述べた。出席した家族、生け花関係者、友人らに、感謝するとともに、「いけばな小原流といけばなインターナショナルにも謝意を表したい、これらの協会へのかかわりは、私にとってとても大きなことでした」と語った。そしていけばなインターナショナルのモットー「華道を通じた親交」に支えられてきたと感謝した。

カナダでの生け花普及に貢献、元王立カナダ空軍女性部に在籍という経歴も

勲記を持つフルヤ氏(前列中央)、いけばな小原流オタワ支部関係者と共に。2023年7月28日、オンタリオ州オタワ市。写真提供:在カナダ日本国大使館
勲記を持つフルヤ氏(前列中央)、いけばな小原流オタワ支部関係者と共に。2023年7月28日、オンタリオ州オタワ市。写真提供:在カナダ日本国大使館

 在カナダ日本国大使館・山野内勘二特命全権大使は、「カナダにおける日本文化の普及に多大な貢献をされたフルヤさんに、この名誉ある勲章を授与できることを光栄に思います」とあいさつし、フルヤ氏の経歴を紹介した。

 フルヤ氏は、いけばなインターナショナル・オタワ・センテニアル支部といけばな小原流オタワ支部の創設者の一人で、オタワのコミュニティセンターや教育機関などで生け花を教えるほか、モントリオールでも指導するなど、積極的に生け花の普及活動を行う。

 1951年には、日系カナダ人女性として初めて王立カナダ空軍に採用され、同空軍女性部に配属されたという経歴も持つ。1953年には、皇太子さま(現・上皇さま)がイギリス女王陛下戴冠式に天皇の名代として参列する途中にカナダを訪問されることが決まり、フルヤ氏は王立カナダ空軍の特別機エスコート役、及び通訳としてご訪問を成功に導いた。

 また、全カナダ日系人協会の活動にもボランティアとして積極的に関わり、第2次世界大戦中のカナダ政府による日系カナダ人強制移動に対する戦後補償(リドレス)運動にも参加、日系人の地位向上に貢献した。

 大使は「フルヤさんのこれらの多大な貢献に感謝するとともに、この栄誉ある受章に心からお祝い申し上げます」と述べ、最後に日本語で「おめでとうございます」と祝福した。

グレース・トミコ・フルヤ

ブリティッシュ・コロンビア州生まれ。第2次世界大戦終戦後に家族と共にオンタリオ州に移り住む。1974~75年にいけばなインターナショナル・オタワ・センテニアル支部会長、現・名誉会員。1989年いけばな小原流オタワ支部初代会長。2012年にはカナダにおける日本文化普及の功績で外務大臣表彰を受けた。2009年に天皇皇后両陛下がカナダを訪問された際には、天皇陛下から1953(昭和28)年の訪問に関して謝意が表明され、56年ぶりの再会が日加両国で話題となった。

フルヤ氏(前列右から2番目)を囲んで。オタワ日系コミュニティー、山野内大使(前列左端)と共に。2023年7月28日、オンタリオ州オタワ市。写真提供:在カナダ日本国大使館
フルヤ氏(前列右から2番目)を囲んで。オタワ日系コミュニティー、山野内大使(前列左端)と共に。2023年7月28日、オンタリオ州オタワ市。写真提供:在カナダ日本国大使館

(記事 編集部)

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「ダブルダッチをオリンピック種目に」若菜里咲さんの挑戦(前編)

ダブルダッチプレーヤー若菜里咲さん。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。Photo by Japan Canada Today
ダブルダッチプレーヤー若菜里咲さん。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。Photo by Japan Canada Today
ダブルダッチプレーヤー若菜里咲さん。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。Photo by Japan Canada Today
ダブルダッチプレーヤー若菜里咲さん。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。Photo by Japan Canada Today

 なわ跳びに夢中になった小学生の夏、毎朝早起きして学校に向かい、職員室から大縄を借りてきてクラスみんなで練習した。膝を使って大きく腕を振る息のあった2人、そのテンポにあわせ、縄が上がったタイミングで思い切って飛び込む。クラスメイトが引っかからないことを祈りながら、励ましあいながら、ドキドキして順番を待ったものだ。

 そんなワクワクや情熱を、ダブルダッチというスポーツが思い出させてくれた。ダブルダッチを体験できるイベント「Let’s Play Double Dutch」に7月23日に参加した。

日本、アメリカ、カナダで、ダブルダッチの普及活動

前後から下りてくるなわを跳びながら軽快なステップでダンスを披露する若菜さんに参加者たちの歓声があがった。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音
前後から下りてくるなわを跳びながら軽快なステップでダンスを披露する若菜さんに参加者たちの歓声があがった。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音

 今回のイベント「Let’s Play Double Dutch」を主催した若菜里咲さんは、ダブルダッチをオリンピック種目にすべくアメリカ・ロサンゼルスに渡り普及活動をしている。現在はバンクーバーに滞在してさまざまなダブルダッチイベントを企画。そんな若菜さんに詳しく話を聞いた。

-ダブルダッチをオリンピック種目にするための活動をされているということですが、まずダブルダッチとはどんなスポーツか教えていただけますか?

 はい、ダブルダッチというのは、簡単に言えば大縄跳び。小さい時にみなさんがやっていたような大縄跳びを2本のなわで跳ぶ、というような種目です。そのなかでも私はなわの中でダンスをしながら跳ぶフュージョンというのをやっています。

 そもそもダブルダッチはオランダの言葉で、オランダから言葉がきてニューヨークで発信されてという感じなんですけど、ニューヨークではもともと女の子のスポーツでした。はじまりは色々と説があるのですが、警察官が非行少女、非行少年を止めるために物干し用のロープを持ってきて遊ばせたのが始まりといわれています。

***

 女の子のスポーツとしてニューヨークから始まったダブルダッチ。公式大会では女子が1人チームに参加していることが義務づけられているそう。

-なわを飛ぶだけでなく音楽に合わせてダンスをするというのは難しそうですね。

 そうですね。最近ではオリンピックに向けてルール化が進んでいて、例えば跳ぶ人だけじゃなくて、なわを回す人の技術だったり、回し方、「なわ技」と呼ばれる、どうやってなわを回して、どういうなわ技をするのかっていうのも審査基準の一つになっています。

-ダブルダッチの魅力は何だと思いますか?

 ダブルダッチをするには最低3人が必要で、相手を思いやらないと成り立たないスポーツなので、人を思いやれるところに魅力があります。あとは、なわの中で自分の得意が見つかるんです。なわを回すのが好きな人もいればアクロバットが好きな人、飛ぶのが好きな人、構成を考えるのが好きな人もいます。1つの競技のなかで得意なことを絶対1つ見つけられるというのがダブルダッチの魅力的な部分なのかなと思います。

-ダブルダッチを始められたきっかけは何だったんですか?

 大学に入学してサークル見学をしていたときに、友達にダブルダッチのサークルに入りたいと言われて。自分は興味はなかったですし、ダンスサークルに入ろうと思ってたんですけど。

-もともとダンスはされていたんですか?

 少ししていました。それを本格的にやりたいなと思っていて。ダブルダッチは幽霊部員じゃないけど、時々行って楽しめればいいか、くらいの気持ちでサークルに入ったんですけど、その年の夏の大会で同期のパフォーマンスを見て雷が落ちて。それから本格的に取り組むようになりました。

-ロサンゼルスに留学を決めたきっかけは何だったんでしょうか?

 もともと大学2年生の終わりくらいに1カ月留学していたんです。ロスに行きたいというよりもダンスがしたくて。ダンスはもともと大学でやりたいなって思っていたんですけど、ダブルダッチに行っちゃったので(笑)。だからダンスが足りない。それでロサンゼルスに1カ月ダンスしに行こうと思って、2年生の終わりごろにダンス留学に行きました。そのときすごく私の中で大きな変化があって、その期間が忘れられなくて。

 大学が終わったら1年間海外に行こうと思っていたんですけど、(新型)コロナ(ウイルス感染拡大)になってしまって。それで日本で活動を続けながらタイミングを見て行こうかなと考えていたら、ちょうど私がダブルダッチャーとして入っていたイベント会社の人が、「もうコロナも落ち着いてきたし、いまがタイミングじゃない?」と言ってくれて。会社では本当に良い方に出会えて、タイミングよく来させていただけました。

 イベントをサポートするという仕事をさせてもらう中でやっぱりプレイヤーというのが好きだなと思って、もう一歩、年齢が可能な限り挑戦したいなというのがあって。

***

 ロサンゼルスに留学する前はストリートスポーツのイベントプロデュースをしていた若菜さん。その間にもダブルダッチの大会の審査員を務めたり、レッスンでダブルダッチを教えたりとダブルダッチに関わり続けてきた。

 後半では、若菜さんの海外での普及活動に込められた思いに迫る。

【今後のバンクーバーでのダブルダッチイベント】

8月17日
DD in Night Movie at Vancouver Art Gallery
パフォーマンスと体験会を予定

8月27日
Let’s Play Double Dutch(ダウンタウン・ロブソンスクエア)
誰でも参加できるダブルダッチイベント

9月2日
Richmond Night Market
ダブルダッチのパフォーマンス

9月3日
日系祭り
ダブルダッチのパフォーマンス

9月10日
日系ファーマーズマーケット
ダブルダッチのパフォーマンス

そのほか毎月最終週の日曜日には参加型のイベント “Let’s Play Double Dutch”も開催予定。会場はダウンタウン・ロブソンスクエア。

9月24日、10月29日、11月26日、12月10日

詳しくは若菜里咲さんのインスタグラムを。さまざまな情報を発信している。

𝐋𝐈𝐒𝐀 𝐖𝐀𝐊𝐀𝐍𝐀 (@lisa.wakana)

初めてダブルダッチに挑戦した参加者の矢野波琉さん。初めは、なわの中でジャンプするところから始め、若菜さんのアドバイスを受けながら2時間で床に手をついて足を高く上げる「ドンキー」という技をマスター。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音
初めてダブルダッチに挑戦した参加者の矢野波琉さん。初めは、なわの中でジャンプするところから始め、若菜さんのアドバイスを受けながら2時間で床に手をついて足を高く上げる「ドンキー」という技をマスター。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音

(取材 池田茜音)

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パウエル祭に参加して ~投稿千景~

エドサトウ

劇団、座・だいこん。8月6日、パウエル祭での公演を終えて。
劇団、座・だいこん。8月6日、パウエル祭での公演を終えて。

 パウエル祭での座ダイコンの劇の公演が終わりホットした穏やかな夏の朝をむかえる。

 最後の日々は、劇の稽古で必死であったのが、嘘のような朝をむかえて、ふっと自分はダイコン役者なれど、黄色い菜の花のような、小さな可愛らしい花を咲かすことも出来るのかと思ったりもする。

 しかし、ダイコン役者の意味を調べてみると、歌舞伎の緞帳が降りて、次の舞台が始まる間の寸劇を披露するサーカスのピエロのような役者のことを「ドンチョウ役者」と言ったらしい。それが、後に、訛って「ダイコン役者」となり、つまり、正規の歌舞伎に出れない役者のことをダイコン役者と呼んだようである。

 僕たちアマチュアの劇の座だいこんにも新しい方が3人参加されて、大いに頑張ってくれた。それぞれ、昼間は自分の仕事をされていて、夜の稽古に参加という、大変なボランティア活動を頑張っていただき、本当にありがたい思いであった。しかし、劇を無事にやり終えた感激は忘れがたいものがあり、今後も継続して参加していく様子である。

パウエル祭で、ごみをかたずけているボランティア。
パウエル祭で、ごみをかたずけているボランティア。

 劇の本番の朝、僕は車を遠くに駐車して、パウエル通りの公園横を劇場に向かい幾分不自由な足でトボトボ歩いて劇場に向かって歩いていると、公園では昨日からの大量のごみをバンクーバー市から特別に来ているであろうゴミ収集車に若いボランティアの方々が今日のイベントのためにゴミを積み込んでいるのが見えた。大きなイベントの影でモクモクと働いている人の姿は美しく感じられた。が、歩道ではホームレスらしき貧しい人々を見た。路上での生活を余儀なくされたのは個人的なメンタリティーだけとは言い切れないものもあるが、国からそれなりのペンションはあるはずである。仕事や社会から見放されたものを助けることのできないことが、このあたりのチャイナタウンの問題でもある。僕たちの劇「貧乏神と福の神」のように両者が仲良くなればいいのであるが?

 今回、座ダイコンに中学生のかたが音響を手伝ってくれた。聞けば、最近、日本から家族で移住してきたという。温厚で真面目な彼は、長い時間にわたり、僕たちの稽古に付き合っていただき感謝にたえない。話を聞けば、彼はパイロットを目指しているとのこと、彼の人生の成功を祈りたいものである。

 僕たちの劇も多くの人達のサポートがあって、一つ完成した劇が出来るのであり、その体験を共に共有できたことは、ぼく自身にとっても貴重な経験である。

 色んな困難を乗り越えてゆくことに、自らの成長があることを実感するあつい夏の一日であった。

 「君の思い 野辺の花となり 咲けるか」

「白人の方が三味線をひき、掛け声を入れるのが異国情緒があり面白く感じられました」。パウエル祭で。
「白人の方が三味線をひき、掛け声を入れるのが異国情緒があり面白く感じられました」。パウエル祭で。

投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
これまでの当サイトでの「投稿千景」はこちらからご覧いただけます。
https://www.japancanadatoday.ca/category/column/post-ed-sato/

第16回 シンクロニシティ

 「シンクロニシティ」…というのは「偶然の一致」。
 偶然のように起きた出来事が、実は「特別な意味を持って起きた現象なのだ」と言うのだそうです。
 日本語で「共時性」の事ですかねぇ。
 グランマは今、83年半。随分長く生きてきた。そして、その80数年の間、この「シンクロニシティ」をどれだけ知らずに体験してきたことだろうか。それは沢山の人達との出会い、思えば最初、英国航空「BOAC」に、後にルフトハンザドイツ航空に香港哲徳国際空港で働いた時のことだ。空港勤務だから色々な人に会う。

 ある時、真っ白で異様な探検隊員服姿の三島由紀夫さんが飛行機から降りてくるのを出迎えた。
 「びっくりしたぁ」。あの彼の姿。彼の飛行機乗り継ぎのお世話をした。やはり乗り継ぎの長時間空港での待合に、「兼高かおるさん」と言っても、もう若い方には記憶にないかもしれないねぇ。世界160ケ国を旅した日本人女性だ。私は彼女を迎えに飛行機入り口まで行き、(当時の飛行機は空港ビルから離れて駐機されバスが迎えに行き、乗客をそのバスでビルへ案内していた)VIPルームへご案内し、その長い待ち時間、「日本人で1960年代に外国の空港で働く若い日本人女性」と言う事で、私が逆に質問攻めにあった。でも本当に色々な意味で素敵な方だったぁ。兼高さんって。
 あの頃、既に加山雄三さん、背の高い人とイメージをしていたら全く違っていた。先代貴乃花も相撲さんだから背が高く、それは太って大きな人と思っていたら、案外小柄なのに驚いた。
 小柄と言えば、ケンタッキー・フライドチキンの「カーネル・サンダースさん」。彼は全く看板とおりの姿、でも又彼も小柄でした。チェックインカウンターでお迎え出国手続きのお手伝いをした。いい思い出が一杯だ。

 そういう著名人達とその後、再会することはなかった。でも、そこで見て来た現実は、有名人だけではない、ベトナム戦争終了時、米軍機でべトナムから香港の空港へ運ばれ、そこから「パン・アメリカン」の民間機で米国に連れていかれた数100名の「ふんにゃふにゃな新生児達」。どうしてあんなに沢山の生まれたての赤ちゃんがいたのだろうか?あの時、空港の広ーいトランジットホール床上に敷かれた白布上に、これ又白布服を着た赤ん坊がずらーっと並べられていた。その空港でまぁ、色々な人達のとの出会いがあった。「困ったぁ」と思った時の突然の助け。全く思いがけない多々の助け。その経験は「感謝」と同時に『セレンディピティ』、時には「シンクロニシティ」かなぁ?
 自分には不思議現象としか思えない体験なのだ。そして、助けに助けられて、今がある。娘達に話すとまた「偶然よ、ハッハハハ、ラッキーなのよ。ママは。」と笑うだけ。

 ずっと時は経って、カナダへ移民後、ある時、バンフの高級ホテル、「バンフ・スプリング・ホテル」ってバンフで知らない人はいない。そこでこれまた高級毛皮セールとショーがあるという。友人の英子さんが私にアルバイトで数日手伝わないかと誘ってくれた。そして、私も行く事になった。その英子さんが往路機内で、貴女「桐島洋子」って知っている?と聞いた。私が「知らない、だーれその人?」と聞く。とにかく、その時、「IT」の無い時代、私は日本を離れて20年近く経っていたから日本のことをあまり知らなかった。すると英子さんは「へぇー、知らないの?有名な作家で第3回〈1972年〉大矢壮一賞の受賞者よ」。そう言われても分からない。
 英子さんが更に「私は彼女と同じ都立駒場高校を卒業なの」と自慢気に言った。そうだよなぁ、当時、都立駒場高校は都立高校の中でも入学も難しいと言われている有名校でもあったのは覚えている。兎に角、その都立駒場高校を卒業の英子さんと数日間の毛皮ショーのアルバイト終了後、あのお城の様な「バンフ・スプリング・ホテル」を後に、私はバンクーバーへ帰った。

 帰宅数日後、ドイツ在住の私の友人作家の小野千穂さんからFAXが送信されて来た。

澄子さん、

 桐島洋子さんが今ご家族とドイツに来ています。彼女のお母様も一緒です。
 彼女にバンクーバーがすばらしいとお話したら、この旅行(桐島さんの”世界一周家族卒業旅行”)の終わりにバンクーバーへ行きたいと言っています。
 彼女が行ったらお世話して差し上げて下さい。彼女から連絡が行くと思います。

千穂

Berliner Stra Be 213 62 Wiesbaden
Fax 661-3933

 この千穂さんからのFAXレターを読んでビックリ!
 千穂さんが以前バンクーバーへに来てすっかりバンクーバーファンになり、彼女自身も「移民」しようとした人なのだ。
 彼女は「上海 劇的な…いま!」と言う本を1986年に出版していた。そして、今、彼女の友人がVancouverへ来る、その友人とは「桐島洋子」さんだという。ついこの間、バンフに行く機内で英子さんが話していた彼女の高校の同級生、大矢壮一賞受賞者「桐島洋子」さんだという。
 これって「シンクニロシティ」? 

 そして、それから36年経った今2023年5月、今年も「桐島洋子先生」を横浜の御自宅へ訪ね、手を握り合い、やがて涙の別れ私はカナダへ帰って来た。

セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のものを発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるものを偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることである。

許 澄子
2016年からバンクーバー新報紙でコラム「老婆のひとりごと」を執筆。2020年7月から2022年12月まで、当サイトで「グランマのひとりごと」として、コラムを継続。2023年1月より「『セレンディピティ』幸運をつかむ」を執筆中。
「グランマのひとりごと」はこちらからすべてご覧いただけます。https://www.japancanadatoday.ca/category/column/senior-lady/

プライドパレード2023、今年も華やかにダウンタウンを彩る

 真夏のダウンタウンを華やかに彩ったのはプライドパレード2023。今年は、例年とはルーを変更して開催。距離を長くして、より多くの観衆が楽しめるように工夫した。

 パレードは、デイビー&デンマン通りから出発。ビーチアベニューからパシフィックストリートを行進し、最後はフォールスクリークのコンコルド・コミュニティパークに到着。

プライドパレード。2023年8月6日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
プライドパレード。2023年8月6日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito

 ルートと距離の変更は、公共交通機関のアクセスも考慮してのことと、プライドパレード・ソサエティは説明している。

 今年も沿道を埋め尽くすほどの観衆が集まり、大いに盛り上がったプライドパレード。デイビービレッジで最初に非公式で開催されたのは1978年。LGBTQコミュニティのデモ行進として始まった。1981年にはバンクーバー市が公式行事として認めて開催。以来、カナダで最も古い歴史を誇る。

 華やかな中にも、いまだ消えなLGBTQコミュニティへの差別をなくす訴えも込められている。

プライドパレードで、ウクライナの国旗を持って行進。2023年8月6日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
プライドパレードで、ウクライナの国旗を持って行進。2023年8月6日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
ダウンタウンを行進するプライドパレード。2023年8月6日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
ダウンタウンを行進するプライドパレード。2023年8月6日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito

(写真・ビデオ 斉藤光一/記事 編集部)

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盛り上がったパウエル祭2023、最も長い歴史を誇る日系の祭りを満喫

パウエル祭に日本の夏祭りを運ぶ楽一の神輿。今年は大きい神輿に、山車も出て、涼しげな音色でバンクーバーに日本の夏を演出した。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
パウエル祭に日本の夏祭りを運ぶ楽一の神輿。今年は大きい神輿に、山車も出て、涼しげな音色でバンクーバーに日本の夏を演出した。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today

 真夏の太陽が照りつける「パウエル街」で、今年も日系の祭り「パウエル祭」が盛り上がった。

 バンクーバーのコミュニティイベントとしては最も長い歴史を誇るパウエルストリート・フェスティバル。第47回も大盛況の2日間となった。

47回も続いているのはコミュニティの力

多くの人であふれるパウエル祭アレキサンダー通り。2023年8月5日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
多くの人であふれるパウエル祭アレキサンダー通り。2023年8月5日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 エドワード高柳パウエルストリートフェスティバル・ソサエティ会長は、毎年この場所で開催できるのはコミュニティの結束力だと語った。「パウエル祭は日系カナダ人のお祭りで、非常にユニークなイベント。日本の文化を基本にして、カナダ文化をブレンドし、そこに先住民の文化なども取り入れて、この場所で大きくすばらしく発展してきたお祭りです」と、フェスティバルに参加する人、関係者、そして、普段はオッペンハイマー公園を住み家としている人々への協力に感謝した。

 開会式は先住民族メリー・ポイントさんのオープニング・ブレッシングで始まった。ポイントさんはあいさつで友人がいま台風のせいで沖縄に足止めされているエピソードを紹介。沖縄に自身の親友が暮らしていると話し、自分が今日ここでパウエル祭にいることを知らせたと笑いながら、日本とバンクーバーがつながっているとうれしそうに語った。

 「私はピーター・フライです」と日本語であいさつしたバンクーバー市議は大の日本好きで、日本も何度も訪問し、パウエル祭にはもう30回以上来ていると自慢する。パウエル祭が47回も続くのは「全てのバンクーバー市民たちのお祭りだからで、この先47年続くよう祈っています」と祝福した。

 連邦政府からはジェニー・クワン議員が出席。「毎年パウエル祭に来るのが楽しみで、私も30回は来ていると思います」と言う。人々を一つにするフェスティバルの1つで、日系人のプライドを示すフェスティバルでもあると思うと語り、ソサエティ、ボランティア、参加する全ての人に感謝の言葉を述べた。

「日系社会とカナダの多文化主義の接点のようなお祭り」

開会式に出席した、左から、丸山総領事、ポイントさん、クワン連邦議員、フライ市議、高柳会長。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
開会式に出席した、左から、丸山総領事、ポイントさん、クワン連邦議員、フライ市議、高柳会長。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today

 今回が初めてという在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は「お話は聞いていたんですけれども、実際来て、この場所と歴史とを改めて感じる機会になっています。日系社会がずっと努力されて、色んな文化を受け入れるカナダとの、その接点のようなところに、このフェスティバルがあって、大事にされていて、色々な方々が参加されてる姿が本当にいいなと思いました」と日本文化が多文化主義と融合していることに目を細めた。

 もうすぐ着任1年を迎える丸山総領事は、これまでにさまざまな日系のフェスティバルに参加。7月にはサーモンフェスティバルに出席。リッチモンド市と姉妹都市の和歌山にも最近訪れ、「着任して、もうすぐ 1 年っていう時期に双方にお邪魔できて、繋がることが実感できたいい時間だったなと思っています」と、日本とBC州の文化交流を喜んだ。

 あいさつでは、「このフェスティバルを通して全ての人が日本文化を堪能し、相互理解を深めてくれると思います」と語り、ここにあるような友好な相互理解や友情の力が、現在の複雑で対立的な状況を解消できると信じていると文化の力に期待した。

「新しい文化もできつつあるような気がして、すごく素敵だなと思います」

大神楽を披露する鏡味さん。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
大神楽を披露する鏡味さん。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today

 日本から参加した大神楽の鏡味味千代(かがみ・みちよ)さんは、初日はten tenと舞台でのコラボのほか各ブースにも一緒に回り、神輿にも大神楽で参加。2日目にはファイアーホール・アートセンターで公演した。パウエル祭について「ここまで大きいと思ってなかったんでびっくりしました」と笑った。参加するきっかけは2019年、春に開催されるジャパンフェア桜まつりへの出演だった。その時に色々な人とつながり「パウエル際にも来れたらいいね、みたいな話をしてたんです」

 しかし、2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外公演はできない状況に。今年になってパウエル祭実行委員会の代表と日本で会う機会があり、ようやく実現。普段は大神楽の曲芸の部分だけをやっているが、「大神楽って元々は獅子舞と一緒に色々セッションっていうか、色んなお家を訪ねて回った芸なんだよって話をしたら、それおもしろいねって言うことになって」。今回はトロントから参加したten tenとのコラボが実現した。

 楽一の獅子舞をジャパンフェアで見ていてためコラボできればと思ったそうだが、残念ながら予定が合わなかった。しかしten tenの「和楽器奏者の方たちが獅子舞できるよっていうことだったので、楽一さんに獅子舞をお借りして。笑。コラボレーションできたので、すごくうれしかったです」と目を輝かせた。

トロントから出演のten ten。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
トロントから出演のten ten。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today

 来る前にはパウエル祭について調べてきたという。それでも想像以上に大きく「日本人の方がバンクーバーに移ってきて、歴史を作って、なんかそれが今こういう形で新しい文化もできつつあるような気がして、すごく素敵だなと思います」と鏡味さん。

 「日本の文化を海外に伝える仕事をしたい」という夢を、それまでの会社勤めではなく大神楽に見出した。「大神楽を見た時に、私がこの大神楽を自分でやって、色んな所で披露すれば、夢が叶うなぁって思って」。今年になって海外公演も再開し始めたと話す。バンクーバーの前にはサウジアラビアで、後にはビクトリアでも公演する。この日、見た人からは「すごいよかったって言っていただいて」と笑う。「ただ大神楽をやるだけじゃなくて、みんなに色んな話をしてもらえるというのがすごいいい機会でした」と語った。

メインイベント相撲大会、今年は男女混合で大接戦

パウエル祭が最も盛り上がるイベントの一つ、相撲大会。主催はバンクーバー相撲トレーニング。上級者が登録するA組の白熱した取組に観衆も大声援を送る。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
パウエル祭が最も盛り上がるイベントの一つ、相撲大会。主催はバンクーバー相撲トレーニング。上級者が登録するA組の白熱した取組に観衆も大声援を送る。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today

 パウエル祭のイベントはすべて無料。オッペンハイマー公園のステージで、デモエリアで、バンクーバー仏教会で、ストリートエリアで、バンクーバー日本語学校で、そして、ファイアーホール・アートセンターでと、2日間ではとても回り切れないイベントが今年も開催された。

 1日目の神輿では子ども神輿や山車も復活。日本の夏を思わせる涼しげな音色と神輿を担ぐ掛け声に、オッペンハイマー公園はしばし日本の夏に包まれた。

 どの会場もにぎわっていたが、2日目に行われた相撲大会は今年も大盛り上がり。例年と違って、今年はA上級者、B初級者と2つのグループに分け、男女混合で対戦し、各グループで優勝者を決定。性別、体の大きさに関係のない取組に、観衆から大きな声援が湧き起こっていた。

 8月5日、6日に開催された第47回パウエルストリート・フェスティバルは、大成功のうちに幕を閉じた。

佐藤派糸東流による空手のデモンストレーション。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
佐藤派糸東流による空手のデモンストレーション。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
さくらシンガーズが日本の童謡を披露。観衆からはアンコールも。2023年8月5日、バンクーバー市ストリートステージ(ジャクソン&アレキサンダー通り)。Photo by Japan Canada Today
さくらシンガーズが日本の童謡を披露。観衆からはアンコールも。2023年8月5日、バンクーバー市ストリートステージ(ジャクソン&アレキサンダー通り)。Photo by Japan Canada Today
屋台の前には今年も長蛇の列。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
屋台の前には今年も長蛇の列。2023年8月5日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
高知県よさこいアンバサダー絆国際チームのパフォーマンス。多くの観衆がカメラを構える。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today
高知県よさこいアンバサダー絆国際チームのパフォーマンス。多くの観衆がカメラを構える。2023年8月6日、バンクーバー市オッペンハイマー公園。Photo by Japan Canada Today

(取材 三島直美)

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ホワイトキャップス、メキシコのリーグ覇者にPK戦の接戦に

ティグレスの攻撃を止めるGK高丘。リーグスカップ2023、2023年8月4日、BCプレース。Photo by Koichi Saito
ティグレスの攻撃を止めるGK高丘。リーグスカップ2023、2023年8月4日、BCプレース。Photo by Koichi Saito

 またもPK戦までもつれ込んだ接戦となった。北米3カ国チームが参加するリーグスカップ。7月21日から開幕し、グループ2位でラウンド32に進んだホワイトキャップスは、BCプレースでまたもメキシコの強豪との対戦となった。

8月4日(BCプレース:13,703)

バンクーバー・ホワイトキャップス(MLS) 1-1 ティグレス(リーガMX)
(PK5対3でティグレス)

先制はホワイトキャップス。開始早々の9分にVite(#45)が決め、1-0。ティグレスは18分、絶好の得点好機だったが、Raposo(#27)がGK高丘をカバーする好セーブでゴールを許さず。前半はキャップス1-0で折り返した。しかし、後半に入った53分、ティグレスLainezが決め同点。試合はそのまま終了しペナルティ・シュートアウト(PK戦)に。先攻のティグレスは4人が成功したのに対し、ホワイトキャップスは4人目が失敗。その後、ティグレス5人目が決めて、試合が決まった。ホワイトキャップスはラウンド16に進めなかった。

GK高丘、PKは自分が止めれば次のラウンドに進めた

 この日の相手はメキシコのリーグ覇者ティグレスUANL。7月21日のクラブ・レオンに続いて、この試合もメキシコのチーム相手にPK戦までもつれ込んだ。GK高丘は「PK戦のところで僕が止めることができれば次のラウンドに進めたと思うんで、そういう意味では非常に悔しい敗戦になりました」と振り返った。

 「90分通して、厳しい時間帯もありましたけど、去年のリーグチャンピオン相手に互角以上に戦えたと思いますし、90分間の中で勝つチャンスもあったと思います」と決めきれなかったことを悔やんだ。

 Vanni監督も「相手よりも(ホワイトキャップスの方が)良かったと思うし、自分たちは非常に良いプレーをした」と試合後の会見で振り返った。ただ「残念ながら勝ちにつながる2点目が取れなかった」とも。しかし、審判の判断への批判も込めて「自分たちの方が勝ちに相応しいチームだった」と力を込めた。

 このトーナメントでは3試合戦って1敗もしていないと強調。「自分たちが良いチームであることを示せた試合だった。戦いぶりについてはハッピーだった」と前を向いた。

MLS以外のチームとの対戦は良い経験に

 リーグスカップでは、3試合を戦って2チームがメキシコのチーム。MLSチームではないチームと対戦することに、「難しさはなかったですけど、違うリーグのチームと(試合を)やるというのは僕自身非常にいい経験になりました。日本にいてなかなかメキシコのチームとやることはないんで」と語り、それだけに「勝っていい経験にしたかったな」と悔しがった。

 メキシコチームと2試合ともPK戦となったことについて、「PK戦に90分間終わってすぐに入っていくということで、日本代表が去年PKで負けましたけど、僕としてはワールドカップとかをイメージしながらやっていたので、PK戦でもちゃんと勝ち切れる強さというのは、僕自身ゴールキーパーとして求めなければいけなかったので…そういう意味では、率直に悔しいですね」と冷静に語りながらも、悔しさをにじませた。

 バンクーバー・ホワイトキャップスは8月20日にBCプレースでMLSレギュラーシーズン後半戦を開始する。

ホワイトキャップス、2点目を許す。リーグスカップ2023、2023年8月4日、BCプレース。Photo by Koichi Saito
ホワイトキャップス、2点目を許す。リーグスカップ2023、2023年8月4日、BCプレース。Photo by Koichi Saito

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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「カナダと日本は力強いパートナー」 在広島カナダ名誉領事 石田優子氏インタビュー(後編)

在広島カナダ名誉領事に就任した広島経済大学・石田優子学長。広島経済大学内にある在広島名誉領事館で。写真提供:広島経済大学
在広島カナダ名誉領事に就任した広島経済大学・石田優子学長。広島経済大学内にある在広島名誉領事館で。写真提供:広島経済大学

 在広島カナダ名誉領事に広島経済大学・石田優子学長が就任した。

 広島出身として、大学学長として、そして、名誉領事として、G7は石田氏にどのように映ったのか?5月31日、広島市内で話を聞いた。

 前編では、広島で開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)について、カナダ名誉領事としての役割が加わった立場での思いを紹介した。後編は、大学学長として、そして、カナダとの関係についての率直な気持ちを打ち明けた。

広島G7で思う「心が動いてくれればいいと思います」在広島カナダ名誉領事 石田優子氏インタビュー(前編)

若者たちには広島から「復興する力」を伝えてほしい

 広島経済大学は市街地の平和公園から車で北に約30分、武田山のふもとにある。大学からは市街地とその向こうに広がる瀬戸内海が見渡せる。石田氏が学長に就任したのは2021年4月1日。それまで10年以上副学長を務め、学生の成長を見守り続けている。また今でも教壇にも立つ。

 そんな石田氏に今回の地元で開催されたG7を見て若者たちに何を感じてもらいたかったと聞くと「対話の重要性」と返ってきた。今回はG7以外にも、韓国、インド、ベトナムなどの首脳が広島に来た。特に注目を集めたのはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電撃訪問。広島で、日本やカナダ、G7の首脳とだけでなくインドの首相とも会談した。広島で多くの首脳が対話を持ったことの意味を感じ取ってもらいたいという。対話をするにはまず知ることから始まるとも。

 各国リーダーに被ばく体験を証言した小倉桂子さんがNHKのインタビュー(5月25日NHKウェブサイト掲載)の中で「知るということが一番最初の平和運動、戦争を止めさせるための。それが今回だと思うんですよね」と語っていることに共感するという。

 「広島では日常的に地元メディアなどを通して平和が語られます。被爆者の声を聞く機会も多いし、広島出身者であれば身内に被爆者がいる場合も少なくありません。そんな広島だからこそ、まっすぐに発信できることがあると思うんです」。抑止力はもちろん理解できるが「(核兵器の)ない世界がいい、と主張できるのは広島、長崎だけだと思うんです」。若者たちには相手の主張にも耳を傾けながら、そうした自分たちの主張も発信してもらいたいと言う。

 そしてもう一つは「復興する力」を伝えてほしいと語る。「ゼレンスキー大統領もその点に強い関心を持ったと報道で聞きました。本学も原爆で多くの関係者の命、校舎や備品を失いましたが、(1945年)9月15日には再開しました。焦土からの復興は、広島が伝えられる、人間の強さ、希望のメッセージだと思います」と語る。

 広島経済大学を運営する学校法人石田学園は創立116年。広島での原爆被害を経験している。だからこそ「復興する力」の大切さがわかるという。

 「学生自身にも、人間力を備えた、たくましい人になってほしいと思っています。本学の人材育成目標は “『ゼロから立ち上げる』興動人”です」

 若者の発信力に期待する。「知識や共感は、人々の行動をシフトさせると考えています。多様な時代を生きる若者にとって、他の人を理解すること、そして、自分自身を理解することはとても重要です。それぞれの国、それぞれの人たちの立場も考えも多様で、そうした中、自分たちの主張をしながら、相手の主張も受け入れる。難しいですけど、多様性に関心を持ち、世界に目を向けて、対話をしながらお互いの理解に努め、夢とポジティブさを持って未来を作ってほしいと思っています」

カナダと日本は力強いパートナー

 今回のG7は石田氏にとって地元広島で開催されたというだけでなく、カナダ名誉領事というこれまでとは違う角度から国際関係を見る機会となった。

 「ゼレンスキー大統領の訪日には驚きましたが、改めて、法による世界秩序という足元が揺れていることを考えさせられました」。若者を社会に送り出す大学の学長という立場からも、世界情勢の動きには敏感になる。

 今、世界はインド太平洋地域を巡って大きなうねりが起きている。カナダと日本は政治的にこれまで以上に強力な関係を築き、今回のG7でもトルドー首相と岸田首相が会談を行い、改めて協力を確認した。

 「カナダと日本は太平洋地域の安全に協力できると同時に、価値観を共有できる力強いパートナーだと感じています」と石田氏。

 一方で、政治、経済、軍事だけではなく、カナダと日本は以前から留学やJETプログラムなどの若者の交流や姉妹都市提携など文化的な交流も深い。石田氏も大学としても「カナダとの交流を深めたい」と模索中だ。

 「トルドー首相が広島滞在中に『日本や広島の食材を使ったホテルの食事がおいしかったのでシェフと話をしたい』と言って料理人らと写真撮影をしたほど喜んだと聞きました。多忙なスケジュールの中、広島滞在を楽しい思い出としても記憶していただけたらうれしいですね」と、さまざまな場面で日加の交流があればうれしいと笑顔を見せた。

石田優子(いしだ・ゆうこ)
学校法人石田学園副理事長・広島経済大学学長
2022年11月2日より在広島カナダ名誉領事

石田学園は1907年創立、1945年8月6日の原爆投下により学園の全校舎、付属建物、備品の全てを焼失、9月15日には仮校舎で授業再開(広島経済大学沿革より)
1967年広島市安佐南区祇園に広島経済大学創設。卒業生には福岡ソフトバンクホークス柳田悠岐選手がいる
在広島カナダ名誉領事館は2022年12月1日に広島経済大学内図書館にオープンした

(取材 三島直美)

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S.U.C.C.E.S.S.リッチモンドから「PRカード 更新」ワークショップのお知らせ

テーマは 「PRカード 更新」

日時:2023年8月16日(水)午前10時~11時半

申し込みリンク: 2023-08-KI-Workshop Registration Form_Richmond (jotform.com)

お申し込みの締め切り:8月15日( 火 )午前9時

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カナダのPermanent residency 永住権をお持ちの皆さんは 5年に一度のPRカードの更新、忘れないようにスムーズに更新するように、どのような工夫をしていらっしゃいますか? 私は旅の記録をメモっておくことを忘れないように気を付けたり、有効期限が切れる日付から遡って9か月前の日にカレンダーにリマインダーを入れておきました。

今回のワークショップでは、PRカードの更新にまつわる基本情報と昨年に変更された申請書類や方法に関してその後の様子、そして最新情報をまとめてお届けする予定です。

<内容>

Ø  申請資格と必要書類

Ø  申請書と方法の変更点について

Ø  オンラインと郵送での申請方法の説明

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お申込み・問い合わせ:kozue.ito@success.bc.ca / 236-880-3392 こずえまで

日本語認知症サポート協会より「人生の最後をセッティング 〜明るく『死』を語り合いませんか?〜」のお知らせ

イベント名:「おれんじカフェ de 看取りーと」

タイトル:人生の最後をセッティング 〜明るく「死」を語り合いませんか?〜

要約:

今年は『人生最期の時に加えて最後のセレモニー』がテーマです。好評の高山宙丸さんのパフォーマンス後、「今日が最期の日だったら自分は何を望むか?」に加えて「自分らしい最後の締め括りをどの様に描きたいか?」を話し合い、これからの人生を充実させて生きていきましょう。「おれんじカフェ de 看取りーと」は、皆さんとゆる〜く、明るく『死』を語り合う場です。十人十色の考えに触れてみませんか?

特別ゲスト:高山宙丸

プロフィール:詩人、作曲家、映像クリエーター。法政大学哲学科卒。2007年より4年半、世界を放浪。無印良品、バンクーバー日本語学校、日系プレースなどに依頼を受けて詩や動画作品を提供。2019年ホノルルフェスティバルにてパフォーマンス。「Labyrinth of Hidden Message」「Kotoba Forest」など、パブリックアートイベントを企画・主催している。

開催日時:2023年8月25日(金) 午後7時から午後9時

場所: Zoom

参加費: $15

申込み方法 :クレジットカードでのお支払いはこちらから→ https://www.eventbrite.ca/e/618824349287

*他のお支払い方法 (E-Transfer、小切手)をご希望の方は、下記の参加お申し込みリンクからお申し込みください。追って、参加費お支払い方法の詳細をメールさせていただきます。

参加申し込みリンク:

https://forms.gle/hFrX4hwRQN5Z1kxx6

申込締切:8月22日(火)

連絡先:orangecafevancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会

後援:一般社団法人日本看取り士会

メディアスポンサー:ふれいざー、日加トゥデイ、Oops!、Life Vancouver

【第19回「お国自慢 – I ❤️ MY HOMETOWN」 Zoom イベント】

今回のイベントは鳥取の特集です。当県は砂丘が一番有名ですが、最近は「マンガ王国」として注目されています。案内役の鳥取出身の Hirokoさんのホームビデオはアットホーム満載です!

【日時】

8月27日 (日) 19:00- BC時間

8月28日 (月) 11:00- 日本時間

【お申込】

https://forms.gle/kUmd3vfrAgTqQYrNA

※参加は無料です

過去のプレゼンテーションのアーカイブです:

https://okuni-jiman.blogspot.com/

東漸寺より2023年お盆のお知らせ

暑中お見舞い申し上げます

2023年お盆のお知らせ

東漸寺*お盆参り

812(土曜日)

午後3時~着物&浴衣着付サービス

午後6時~法要(お経読み)

その他 殺陣パフォーマンス、盆踊りなどがございます。どうぞ、ご家族お揃いでお参りにお越しくださいませ。

写真/MantoArtworks

会場 東漸寺Tozenji  209 Jackson St, Coquitlam,B.C

*着物&浴衣着付けサービスについて*

ご持参いただければ着物や浴衣の着付けサービスをさせていただきます。

どうぞ、ご自宅にあります着物や浴衣でお参りをされてください。

こちらは、お心入りでドネーションをお願いしております。($5~)

尚、人数や着物の内容を把握するため、事前にご予約をいただけましたら幸いです。

お問い合わせ、お申し込みはコナともこ(和の学校@東漸寺)までお願いいたします。tands410@gmail.com

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