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Naomi Mishima

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BC州で違法薬物過剰摂取による死亡者が1万人越え

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州検視局の発表によると、2022年前半期(1月1日から6月30日)までに違法薬物の過剰摂取で死亡した人が1,095人だったことがわかった。8月16日に予備データを発表した。検視結果次第ではさらに増える可能性があるという。

 今回の数字で、BC州が2016年4月に公衆衛生緊急事態を発令して以降で違法薬物過剰摂取による死亡者数の合計が1万人を超えた。

 報告書によると、過剰摂取に含まれる薬物は、ヘロイン、コカイン、MDMA、メタンフェタミン、不正なフェンタニルなどのストリートドラッグのほか、処方箋なしで入手または購入した薬物、もしくは処方薬とそれらの違法薬物の併用となっている。

 死亡者数が多いのは、バンクーバー、サレー、ビクトリアの人口密度が高い都市で、メトロバンクーバーで約60%を占めている。

 年齢、性別では30歳から59歳までの男性が多く、ほとんどは屋外ではなく室内で死亡している。

 リサ・ラポインテ局長は声明で「公衆衛生緊急事態が7年目となり、BC州では2016年4月以降、違法薬物によって1万人以上の命が失われ、7月も死亡者数は増え続けている」という事実を悲劇的と表現。「彼らは、さまざまな立場の男性、女性、若者で、同じ地域に住み、同じ職場で働き、同じスポーツチームでプレーしている人々。普通の生活を送っている人もいれば、困難に直面している人もいる。そうした仲間が至る所にある違法薬物の犠牲になっている」と述べている。

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北米野球独立リーグ オタワ・タイタンズがジャパンナイトを開催

始球式に臨むカミバヤシさん。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans
始球式に臨むカミバヤシさん。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans
試合前にはギター演奏も披露した在カナダ日本国大使館山野内勘二大使。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans
試合前にはギター演奏も披露した在カナダ日本国大使館山野内勘二大使。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans

 カナダの首都オタワを本拠地とするオタワ・タイタンズが8月6日の試合でジャパンナイトを開催した。

 北米野球独立リーグのフロンティアリーグに所属するタイタンズには、今年福田満樹捕手が在籍している。今年は北米から日本に野球が伝わって150周年を迎える記念の年でもあり、「野球を通じた日加の友情を祝い、日系コミュニティの連帯を深めることを目的」に開催された。

オタワ在住日本人ソプラノ歌手橋本典子さんによる君が代斉唱。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans
オタワ在住日本人ソプラノ歌手橋本典子さんによる君が代斉唱。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans

 ジャパンナイトを飾ったのは、高知県よさこいアンバサダー絆・国際チームの演舞、音和太鼓(Oto-wa Taiko)の和太鼓演奏、日本人ソプラノ歌手橋本典子さんによる日本国歌斉唱、そして、在カナダ日本国大使館山野内勘二特命全権大使によるカナダとアメリカ国歌のギター演奏。

 始球式は、オタワ・ジャパニーズ・コミュニティ・アソシエーションのメリサ・カミバヤシさんが大役を務めた。野球を通じて日加の友好を温めたオタワの真夏の夜となった。

 試合はタイタンズが6−5のサヨナラ勝ち。ジャパンナイトを白星で飾った。福田捕手はこの日出場機会がなかった。

北米独立リーグ・フロンティアリーグ

福田捕手とカミバヤシさん。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans
福田捕手とカミバヤシさん。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans

 フロンティアリーグは1992年に設立、当初は、ウエスト・バージニア州、ケンタッキー州東部、オハイオ州北東部のチームで出発した。2019年10月にカナディアン-アメリカン・プロフェッショナル・ベースボールがフロンティアリーグと合併。現在は東西カンファレンス各8チームで構成されている。

 シーズンは5月から9月まで、全96試合。同リーグからは大リーグに選手やコーチを輩出している。

 オタワ・タイタンズは2020年末にリーグに参加。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今季が初シーズンとなる。東カンファレンス所属。8月17日現在、カンファレンス2位につけている。

 カナダでは他に2チームがケベック州を本拠地としている。

ジャパンナイトの様子は、在カナダ日本国大使館のフェイスブックに動画が掲載されている。

在カナダ日本大使館フェイスブック:https://www.facebook.com/JapaninCanada

オタワ・タイタンズHP:https://ottawatitans.com/

始球式に臨むカミバヤシさん。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans
始球式に臨むカミバヤシさん。Ottawa Titans Home game against the Sussex County Miners in Ontario on August 6, 2022. Photo: L. Manuel Baechlin/Ottawa Titans

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バンクーバー朝日パウエル祭で追悼慰霊式開催(寄稿)

バンクーバー朝日パウエル祭で追悼慰霊式。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks
右から、高井利夫さん(移民の父、工野儀兵衛のひ孫)、トミオ福村さん(朝日ベースボール・アソシエーション副会長)、サミー高橋さん(朝日ベースボール・アソシエーション理事・日本カナダ商工会議所会長)、ケイ上西さん(最後の生存旧バンクーバー朝日軍選手)、青木龍也僧侶(浄土真宗本願寺派・カナダ開教区バンクーバー仏教会)、現バンクーバー朝日軍主力選手(最後列)。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks

バンクーバー朝日は、戦前にバンクーバーパウエル街で結成された日系カナダ人の野球チームです。当時白人コミュニティでも熱狂的なファンが多かった、バンクーバーで最も有力なアマチュア・チームの一つでした。1941年に日本と連合国軍の間で戦争が勃発するまで、パウエル通りグラウンド(正式にはオッペンハイマー公園)を拠点に活動していました。2022年7月30日、3年ぶりの開催となったパウエル祭で、浄土真宗本願寺派・カナダ開教区バンクーバー仏教会の青木龍也僧侶が、旧朝日軍の選手たちに敬意を表し、追悼慰霊式を執行いたしました。記念式典は夏の日差しがまだ燦々と差す夕方5時から約20分間に渡りました。真っ赤なバンクーバー朝日のチームシャツを身に纏う現役選手、チーム関係者達が参列、祭りに足を運んだ人々も大勢加わり、厳かに黙祷をしました。バンクーバー仏教会の青木僧侶が戦前活躍された選手たちへの敬意と感謝を込めてお経を上げて下さり、参加者代表の方々が焼香しました。

線香の煙が雲一つない青空に登り、黙祷中に一瞬物音がパッタリと消えたパウエル通りグラウンドの会場では、100年の時空を超え旧朝日軍選手が声を掛けあい、キャッチボールをしたり、バントや滑り込みの練習をする音が聞こえてくるような感覚に襲われました。1989年に公開されたフィールド・オブ・ドリームスという映画の “If you build it, they will come.” というよく知られたセリフのように、旧朝日軍の選手たちの霊がこのメモリアルのために戻って来てくれたのではないかと、焼香をしながら想いを馳せていた人達も多々いたことでしょう。オッペンハイマー公園の周りにパウエル祭に集まり行き交う人たちの姿が、戦前に仕事や学校を終えバンクーバー朝日の練習や試合を観に意気揚々と急足で歩く、日本人街の住人や近所に住む白人住人達の姿と重なりました。

日系史の一コマに刻まれるだろう今回の行事は、新朝日軍の発起人のひとりであり、朝日ベースボール・アソシエーションの理事と日本カナダ商工会議所会長を兼任される、サミー高橋さんが発案されました。それには、朝日軍の伝統と永劫を次世代に伝えていきたい、橋渡しをしたいという熱い思いと大義がありました。その目標を実現するため高橋さんは長年に渡り、野球を通して日本とカナダを結ぶ活動にも力を注いできています。今年2022年三月には、オンラインでバンクーバー朝日軍と和歌山桐蔭高校(旧制和歌山中学)の友好100周年記念イベントを朝日ベースボール・アソシエーションと日本カナダ商工会議所の共催で行いました。それがきっかけとなり、旧朝日軍追悼慰霊式を、その延長線上にある元祖朝日軍選手たちへの鎮魂と感謝の意を込め、敬意を表する目的を持ち、多くの関係者達の協力を得て日系コミュニティの伝統であるパウエル祭での実施に至ったのです。

2005年にBC州スポーツ殿堂入りを果たした伝説の日系人野球チームオリジナルメンバー、ケイ上西さん;パウエル通りグランドを見渡して昔を懐かしむ姿。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks
2005年にBC州スポーツ殿堂入りを果たした伝説の日系人野球チームオリジナルメンバー、ケイ上西さん;パウエル通りグランドを見渡して昔を懐かしむ姿。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks

参列者のなかには在バンクーバー日本領事館羽鳥隆総領事からのメッセージを代読された今村香代領事をはじめ、トミオ福村(朝日ベースボール・アソシエーション副会長)、他沢山の関係者が集まりました。強く関心を引いたのには、参列者の中に日系パイオニア移民や旧朝日軍選手の子孫である人たちの顔があったことです。日本からバンクーバーを訪問中であった、工野儀兵衛のひ孫にあたる高井利夫さん、そしてバンクーバー在住の工野儀兵衛のひ孫、ゲリー工野さんは、ひ孫同士の初めての顔合わせも果たしました。さらにオリジナルプレーヤーのひ孫、ワイリー・ウオーターズさん、タイ・スガの孫であるリン富田さんの顔もありました。特に上西功一(ケイ上西)さんは唯一生存されているオリジナルプレーヤーであり、わざわざこの日のために酷暑の中にもかかわらず、カムループスから息子のエド上西さんと駆けつけてくれました。式典では、エドさんが代弁者となり、ケイさんの式開催実現協力関係者たちへの感謝の気持ち、旧朝日軍の思い出なども詰まった謝辞と追悼辞を読み上げました。

感極まった式終了後、祭りに参加してたまたま式に参列したという女性が“なんて美しい瞬間だったのでしょう。まるで選手がそこにいるようでしたよ”と彼女の横にいる日系女性の肩を軽く抱いている姿が目に付きました。周りを見渡すと、人々の顔がとても穏やかになっていたのも見受けられたのです。魂を鎮められたのは旧朝日軍選手だけではなく、今に生きる現役朝日軍選手や関係者、そして偶然その場に居合わせた多くの参加者達でもあったのでしょう。バンクーバー朝日史を振り返ることは、古きをあたため新しきを知る、日系史を学び尊ぶことに繋がったと信じます。平和な気持ち、明日への希望をもたらしてくれ、バンクーバー朝日の強制解散から約80年後のパウエル通りグラウンドに、旧・新バンクーバー朝日チームやそのサポーターが再び集まれた事に心から感謝し、合掌。

(寄稿 日本カナダ商工会議所リポーター)

パウエル通りグラウンド(現オッペンハイマーパーク)にて、旧バンクーバー朝日軍選手のケイ上西さん、朝日ベースボールチーム記念碑の前ににこやかな笑顔で立つ。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks
パウエル通りグラウンド(現オッペンハイマーパーク)にて、旧バンクーバー朝日軍選手のケイ上西さん、朝日ベースボールチーム記念碑の前ににこやかな笑顔で立つ。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks
追悼慰霊式主要参列者一部の集合写真;在バンクーバー総領事館今村領事(最前列真ん中左)とケイ上西さん(最前列真ん中右)を囲んで。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks
追悼慰霊式主要参列者一部の集合写真;在バンクーバー総領事館今村領事(最前列真ん中左)とケイ上西さん(最前列真ん中右)を囲んで。2022年7月30日。写真:©2022 Manto Artworks

小説は事実より奇なり?!

Blue Tree Books

こんにちは!ご無沙汰しております。前回から時間が空いてしまいました(反省!)。

バンクーバー中央図書館への納品や3年ぶりのAnime Revolution 2022に出店者として初参戦するなど、奔走していました。

さて、「実話のようだが作者の意図や気持ちが入り込んでる」フィクションは数多くあります。司馬遼太郎や城山三郎が作り出す主人公のイメージは実物とかなり違うケースも多く、坂本龍馬の実像はそれほどでもないのは知られざる事実です。昔の小説家は陽が当たらない人物を持ち上げることで、へぇというストーリーにするのがテクニックの一つともされます。その中で今回は、「より事実に基づいたフィクション」を紹介したいと思います。

総じて、この手の小説はページ数が多くて分厚く重いので「積読」から抜き出すには勇気が必要です。ただ、読み始めると先を知りたい、ウィキペディアでチェックとどっぷりその世界にはまり込んでしまいます。

伊吹有喜著『彼方の友へ』(実業之日本社)は、実業之日本社創業120周年記念作品です。また、同出版社が発刊していた少女雑誌「少女の友」をモチーフとしています。

まどろむ佐倉波津子は、昔のことを振り返っています。それは、彼女を訪ねてくる人物が70年も前の「乙女の友」の特別付録を持って来たから。戦前、戦中、戦後と「乙女の友」の発刊に関わった波津子の人生を一緒に体験できる物語です。

第158回直木賞にノミネートされていて、現在の視点から主人公が幼少から大人になっていく様を回想する語り方から「朝ドラ」のようだ、という評もあったようです。確かに、朝ドラ的ですがおもしろいから良いと思います!

さて、実際の「少女の友」は1908年創刊、1955年休刊の少女向け雑誌で錚々たる作家が執筆する小説と中原淳一作の挿絵、付録とあいまって大ブームを巻き起こしたそうです。

小説では、挿絵作家は長谷川純司という名で登場します。戦前・戦中期の統制が厳しくなるにつれ、純司の描く乙女な絵は掲載不可となり、雑誌の内容も戦争色に変わっていく様が描かれています。

SNSが当たり前で自由に表現できる今では想像しにくいですが、戦争を知る世代が減少している中で、戦争の惨禍を小説で語り継いでいると思います。

一時帰国中に読んだこともあり、中原淳一さんの作品も気になっていました。本屋巡りもしましたが、ブックカフェも気になっていたので六本木にある「文喫」に行ったところ、なんとエッセイ画集がありました。嬉しい巡り合わせに嬉々とページをめくりました。服のデッサン、心地よい部屋作りのコツを絵付きで紹介していました。

次に紹介するのが、塩田武士著『罪の声』(講談社)です。2020年に映画化されたのでご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

1984年と1985年に大阪府、兵庫県の食品会社を標的としたグリコ・森永事件をモデルにしたサスペンス小説です。

京都でテーラーを営む俊哉は、父の遺品からカセットテープと黒革のノートを見つけます。ノートには英文に交じって事件と関連のある文字が、テープからは子供の頃の自身の声が流れてくる。一方、昭和最大の未解決事件の真相を追う新聞記者とも交錯しながら過去の真実に迫っていくという内容です。

実際の事件は、未解決で既に時効となっています。ネタバレになるのでオブラートに包んで表現しますと、解が知りたいがために目がさえて夜更かししても後悔しません!

読み終わった後は、親に当時がどんな感じだったのと思わず聞いていました。

ではまた次回、お会いしましょう。

ジャズが紡ぐ日本とカナダの友情〜秋吉敏子の場合

 先日、カナダ産業省のサイモン・ケネディ次官と意見交換をしました。緊迫するウクライナ情勢の下でハイテク産業協力、エネルギー安全保障、更にはクリティカル・ミネラル(希少鉱物)安全保障等についての日加間の緊密な協力の重要性で完全に一致しました。とても実り多い会談でした。

 実は、本題に入る前にお互いの趣味である音楽、特にジャズについて話したんです。その際にマイルス・デイビスやジョン・コルトレーン等ジャズの歴史を切り拓いた巨人達について話しが弾んだんです。ケネディ次官は日本のジャズ音楽家にも詳しく、特にトシコ・アキヨシが大好きだと言いました。トシコ・アキヨシとは秋吉敏子さんです(以下敬称略)。日本を代表するジャズ・ピアニストにして作曲家・編曲家、バンド・リーダーです。若くして米国に移り、ニューヨークを拠点に活躍。グラミー賞ノミネーション14回、米国のジャズ・ジャーナリズムの最高峰ダウンビート誌で女性初の作曲賞と編曲賞を受賞、「ジャズの殿堂」入りも果たしています。紫綬褒章、旭日小綬章も授けられジャズ史に残る音楽家です。カナダ政府高官とのジャズ談義・秋吉敏子談義のおかげでその直後の本題が実にスムーズに運びました。ジャズが日加間の友好親善の一層の発展に貢献するのだと改めて実感しました。

 しかし、今回の連載で皆様にお伝えしたいのは、秋吉敏子という巨大な才能が如何にして発見されたかという事なのです。それこそ、1人のカナダ人と1人の日本人の真の友情の物語です。少々長くなるかもしれませんが、お付き合い下さいませ。

***

 秋吉敏子は、1929年12月12日に満州で生まれ、小学1年生の時モーツアルトの「トルコ行進曲」を聴いて天啓を受けてピアノを習い始め瞬く間に上達します。が、45年8月15日の終戦で両親の故郷大分に引き揚げます。終戦直後の厳しい窮乏生活でしたが、秋吉敏子は米軍キャンプで米兵相手のジャズ楽団でピアノを弾き始めます。クラシックで鍛えた基礎と抜群の音楽センスで頭角を顕すと大分から福岡、そして東京へと進出します。日本人のジャズ音楽家、ジャズ愛好家の間では一目置かれる存在でしたが、レコードを出している訳はありません。はっきり言って一般的には無名の若く貧しいジャズ・ピアニストでした。但し、御本人の心象風景は日々ジャズの奥義に迫る充実した日々であったと著書「ジャズと生きる」(岩波新書)で述べています。

 1953年11月、そんな秋吉敏子に運命の出会いが訪れます。

 米国から名うてのジャズ音楽家集団JATPが初めての日本公演ツアーで来日中でした。JATPとはJazz  At  The  Philharmonicの頭文字で、ヴァーヴ・レコードの創始者にしてジャズ興行師のノーマン・グランツが率いる面々です。オスカー・ピーターソン、エラ・フィッツジェラルド等々のコンサートは大変な話題になりました。特に、「鍵盤の帝王」の異名を持つ天才オスカー・ピーターソン率いる彼のトリオは大人気です。実は、オスカー・ピーターソンはカナダを代表する音楽家です。首都オタワの中心に位置するナショナル・アート・センター前の銅像が象徴的です。英領ジャマイカ出身の鉄道員を父としてモントリオールに生を受けました。

オンタリオ州オタワにあるオスカー・ピーターソンの銅像。Photo from website of Culture, history and sport of Canada
オンタリオ州オタワにあるオスカー・ピーターソンの銅像。Photo from website of Culture, history and sport of Canada

  来日中のオスカー・ピーターソンは、東京に優れたピアニストがいるとの話しを聞きます。と、いうのも、1953年11月と言えば、マッカーサー元帥率いるGHQの占領が終わって1年半後ですから東京には駐留米軍関係者が多数いて、彼らの間でトシコ・アキヨシは凄いとの評判が立っていたのです。そういう経緯で、秋吉敏子が昼に出ている「テネシー・コーヒー・ショップ」にオスカー・ピーターソンが来店します。天才は天才を知る、と言います。有名か無名かは全く無関係で、国籍も年齢も性別も関係ありません。オスカー・ピーターソンは、一曲聴いただけで、秋吉敏子の素晴らしい潜在力を見抜きます。その日の夜は「クラブ・ニュー銀座」に再び秋吉敏子を聴きに来たのです。

 そして、オスカー・ピーターソンは、JATP総帥にしてプロデューサーであるノーマン・グランツに、秋吉敏子を録音するように言うのです。ノーマン・グランツにしてみれば、演奏を聴いた事のない無名の日本人の女性のピアニストです。が、「オスカー・ピーターソンが保証するのだから自分は聴く必要はない」と言って即断即決。契約と録音が決まりました。秋吉敏子の運命の扉が開いた瞬間です。

  一週間の準備期間の後、11月13日深夜から、有楽町駅近くのラジオ東京(現TBS)スタジオでノーマン・グランツ立会いの下、14日早朝までレコーディングは続きます。オスカー・ピーターソン・トリオからベースのレイ・ブラウン、ギターのハーブ・エリス、そしてエラ・フィッツジェラルドの伴奏陣からドラムのJ.C.ハードです。天下のJATPの世界最高峰の演奏家を率いて、ほとんどリハーサルも無く本番に臨みます。この時のセッションで、秋吉敏子のオリジナル『トシコズ・ブルース』を含め8曲がOKテイクとなります。これこそ秋吉敏子のデビュー盤「トシコズ・ピアノ」です。23歳の彼女の溢れる才能全開です。この音盤は、日本発売に先立ち、米国で1954年初頭にリリースされジャズ誌「ダウンビート」で3星を獲得。ジャズ関係者に注目され、3年後には日本人初のバークレー音楽院進学、ニューヨークを拠点としての八面六臂の活躍が始まります。

 1953年11月のカナダ人オスカー・ピーターソンによる秋吉敏子の発見がジャズ史に新しいページを開いたのです。日加関係の幅広さと奥深さを示す素晴らしいエピソードだと思います。

(了)

山野内勘二
2022年5月より第31代在カナダ日本国大使館特命全権大使
1984年外務省入省、総理大臣秘書官、在アメリカ合衆国日本国大使館公使、外務省経済局長、在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使などを歴任。1958年4月8日生まれ、長崎県出身

第66回 日本関連の行事が続くビクトリア

 まだ100%安心ではないものの、コロナの規制が大幅に緩んできたため、この夏は「待ってました!」とばかりに人々が東西南北に移動している。

 楽しいパーティーやイベントを開催したり、旅行に出かける人が多い一方、ワクチン接種を完了しながらも、帰宅後に陽性反応が出てしばらく自主隔離を余儀なくされている人も少なくない。

 そんな状況下とはいえ、ビクトリア島の日系社会でも最新の注意を払いつつ、ここ2~3年停止していた各種の行事が再会した。本土と違い、バンクーバー島の日系社会の状況は知られることが少ないため、ここにその幾つかの行事を紹介しよう。

(1)BC州からの100万ドルのリドレス(謝罪補償)パッケージの授与‐5月21日:

 この日スティーブストンにおいて、ホーガンBC州首相を迎え日系カナダ人コミュニティーに対し100万ドルの授与式が行われた。これは日系カナダ人の教育、健康、文化などの育成のために支払われたものである。本土での授与式に参列できなかったビクトリア在住の日系サバイバーたちと、関係者35,6人はビクトリア大学に集まりネット放送された式を見守った。 
(注:今回の授与は、当時日系人に対する排斥の強かったBC州政府からのもので、連邦政府からのリドレスは88 年に終了している)

(2)ゴージパーク(Gorge Park)・パビリオン・グランドオープニング式典‐6月18日: 

 戦前は日系人のタカタ家の私有地に、日本風の造りを施し軽食がエンジョイ出来たTea Gardenを中心とした遊園地があり市民の憩いの場所であった。しかし1942年に日系人が強制収容所に送られた前後に消滅し、以後所在地のEsquimalt市のものになった。今夏そこに木をふんだんに使った落ち着きのあるコミュニティー・センターと日本庭園が復活し、4世代のタカタ家一族が集合し盛大な式典が行われ一般に公開された。

先住民の踊りで式典を開始。2022年6月18日、ゴージパーク。Photo by Keiko Miyamatsu Saunders
先住民の踊りで式典を開始。2022年6月18日、ゴージパーク。Photo by Keiko Miyamatsu Saunders

(3)戦時中の強制収容所送りから80周年目の記念ランチョン‐7月10日:

 戦時中強制収容所に送られた日系カナダ人のサバイバーたちを讃えるランチが市内のホテルで開催された。実際の体験者やその家族たちの語る数多くの実話をまとめたビデオも公開され、それぞれの戦中戦後に耳を傾けた。バンクーバーから羽鳥総領事も出席され祝辞を述べた。

(4)ローヤル・ロード大学(Royal Road University)でのガーデンパーティー‐7月24日:

 当大学には100年ほどの歴史を持つ日本庭園があるのだが、年月と共に傷みが目立つようになっていた。そのため新たな息吹を吹き込む計画が浮上し、禅/盆栽ガーデン/茶室なども加味される壮大なプロジェクトが動き出した。数年を予定している大掛かりな仕事のランドスケープデザインを任されたのは、本土Burnaby 在住の造園デザイナー小川隼人氏。

 爽やかに晴れた夏日の午後、大学の総長主催の前祝賀ガーデンパーティーが開催され、日本人を含む多くの招待者たちは将来の日本庭園に想いを馳せた。

(5)長崎/広島メモリアルイベント‐8月9日:

 1945年の広島/長崎への原爆投下から77年目の今年は、ロシアによるウクライナ侵攻が半年を迎え、プーチン大統領がチラつかせる核戦争の恐怖に世界中がおののいている。日本での悲劇が、ウクライナで繰り返されることのないように参列者全員が祈りを捧げた。新装なったゴージパーク・パビリオンの前庭で、盆踊り、太鼓などの演奏後幾つもの灯篭が池に浮かべられた。

灯篭流し。2022年8月9日、ゴージパーク・パビリオン。Photo by Keiko Miyamatsu Saunders
灯篭流し。2022年8月9日、ゴージパーク・パビリオン。Photo by Keiko Miyamatsu Saunders

(6)お盆の墓参り‐8月14日:

 毎年8月半ばにはスティーブストンの仏教会からグラント・イクタ開教師を招き、お盆の行事を行っていたが今夏3年振りにそれが復活。朝9時から昼までは150個ほどの墓石をボランティアが掃除し、その一つ一つに生花、子供の墓には縫いぐるみなどを手向けた。続いてイクタ開教師が祈りを捧げ参加者が焼香をした後は、茶菓が振舞われ歓談のひと時を持った。

(7)日本文化祭‐8月27日:

 ビクトリアで開催されるエスニック関連のフェスティバルは各種あるが、日系文化協会が催すJapanese Cultural Fairは特に大人気で通常1000人近い人が来場する。日本食、またThings Japaneseと称される日本関連の品々の販売は特に人気があり飛ぶように売れる。この行事も二年間ブランクがあったが、新装なったGorge Park Pavilionでの初の開催を楽しみにしている人は多い。

サンダース宮松敬子 
フリーランス・ジャーナリスト。カナダに移住して40数年後の2014年春に、エスニック色が濃厚な文化の町トロント市から「文化は自然」のビクトリア市に国内移住。白人色の濃い当地の様相に「ここも同じカナダか!」と驚愕。だがそれこそがカナダの一面と理解し、引き続きニュースを追っている。
URL: keikomiyamatsu.com/
Mail: k-m-s@post.com
サンダース宮松敬子さんのこれまでのコラムはこちらから

カナダの7月の物価指数、食料品が6月より上昇

 カナダ統計局が8月16日に発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.6%上昇した。しかし、6月の8.1%より上昇率は下がった。7月の減速は、ガソリン価格の伸び率が鈍化したことが要因と当局は分析している。

 ガソリン価格の上昇率は35.6%、6月の54.6%よりも9.2%下がっている。これは2020年4月以降では最大の下げ幅となった。

 ガソリンを除く物価は、6月の6.5%に続き、7月も前年同月比で6.6%上昇。ガソリン以外の物価は引き続き上がっている。

 値上がりが顕著なのは、食料品、家賃、航空券、ホテル代、外食代と統計局が指摘。特に食料品は、6月は8.8%、7月は9.2%上昇。家計を直撃している。

 食料品では、卵が15.8%(6月7.9%)、コーヒー・紅茶13.8%(同11.3%)、ベーカリー製品13.6%(同10.0%)、生フルーツ11.7%(同10.2%)、フルーツ加工品10.4%(同5.3%)、砂糖・菓子類9.7%(同5.2%)、清涼飲料水9.5%(同5.1%)が6月より大幅に値上がりしている。

 夏の旅行シーズンを迎え、新型コロナウイルス感染拡大防止策が緩和されたこともあり、旅行関係の料金も上昇。航空券は25.5%、宿泊施設は47.7%、レストランなどの外食は7.3%、前年同月比で情報している。

 家賃は7月に4.9%上昇し、6月の4.3%を上回った。

 地域別では、全州で7月のインフレ率は6月より下がったが、唯一ブリティッシュ・コロンビア(BC)州のみ0.1%上昇し、8.0%だった。当局は、宿泊、自動車保険、ガソリン価格の上昇が影響していると説明している。BC州は家賃引き上げ率の上限を7月のインフレ率を基に州政府が決定するが、2023年はインフレ率よりも低くなると州政府関係者は語っている。

 多くのエコノミストがカナダの物価上昇は6月がピークになると予測している。しかし、カナダ銀行は来月7日に発表する政策金利を引き上げるとみられている。

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メトロバンクーバーに再び熱波、高温警報発令

バンクーバーの8月17日から30日までの予報。Image from The Weather Network website
バンクーバーの8月17日から30日までの予報。Image from The Weather Network website

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州南部を再び熱波が覆うとの予報が出された。環境・気候変動省は8月16日にメトロバンクーバーを含むBC州南部と西部に高温警報を発令。暑さのピークは、8月17日と18日なると注意を呼びかけた。

 ウェザーネットワークによると、両日とも気温は、バンクーバーなどの海岸沿いで最高気温29度、内陸部で35度になるとの予報。体感温度はさらに高くバンクーバーでも35度になると予測している。

 気温は19日には一旦落ち着くが、晴天はしばらく続く予報で、来週半ばから週末にかけて再び25度を超える暑さになるとしている。

 さらに最低気温も例年より約5度高い日が続くため、環境省は、体調管理にはくれぐれも気をつけるよう、熱中症対策を呼びかけている。

 熱中症の症状には、めまい、頭痛、吐き気、喉の渇き、激しい呼吸や心拍数の増加などがある。こうした症状が出た場合には、無理をせず、すぐに日陰に入る、エアコンの効いた涼しいところで休憩をする、水を飲む、必要なときには助けを求めるなどの対策を取るよう促している。

 BC州南部は7月最終週から8月初旬にかけて、約1週間続く熱波に見舞われ、30度前後の気温が長く続いた。BC検視局はこの期間に16人が暑さが原因で死亡したとみられると発表している。

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CTV看板アンカー、リサ・ラフレイム氏降板へ

 カナダのテレビ局CTVのニュース番組CTVナショナルニュースでアンカーを務めるリサ・ラフレイム氏が降板することが8月15日わかった。

 本人がツイッターにビデオメッセージを投稿。「現在58歳で、日々の生活の中で起こる物語をまだまだ伝えることができると思っていた」と語り、自身の選択ではなくCTVナショナルニュースを去ることになったことにショックを隠しきれないと心境をつづっている。

 ラフレイム氏がアンカーに就任したのは2011年。前任者ロイド・ロバートソン氏が退任したあとを引き継いだ。

 同日に発表されたニュースリリースの中で、CTVの親会社ベルメディアは理由について、「視聴者の好みが変化しているため」と説明している。

 契約内容の変更については今年6月29日に告げられていたという。35年のCTVでのジャーナリズム活動をこういう形で終了することが悲しいと語っている。

 後任にはCTV全国版で政治などを担当しているオマー・サチェディナ氏が9月5日放送から就任する。

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「ウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチする貴重な経験」モーグル女子元日本代表 星野純子さんインタビュー(前編)

元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。
元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。
元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。
元モーグル日本代表、星野純子さん。2022年7月12日、バンクーバー市内レストランForage前で。

 今年2月中国・北京で開催された冬季オリンピックに出場し、3月に現役を引退した星野純子さん(リステルホテル所属)。大好きだったモーグルという競技を離れ、今は次のステップへの充電期間として色々なことに挑戦する準備中だ。

 6月下旬にはウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチする機会を得て、新しい可能性にも気づいた。7月12日、帰国前に立ち寄ったバンクーバーで話を聞いた。

 前編はウィスラーでのコーチ経験について。

ウィスラーで子どもたちにモーグルをコーチ

 6月25日から7月3日までブリティッシュ・コロンビア(BC)州ウィスラーで開催されたMomentum Campsにコーチとして招待され、来加した。ウィスラーを訪れるのは2回目。夏は初めて。「すっごいいところでした」と笑う。

 招待されたきっかけは、現役時代の友人でモーグル元選手からの推薦だった。「私はそんなにすごく英語が堪能じゃないんですけど」と笑って、「でも彼女が私っていう選手を、なんかすごく好きでいてくれて、『ジュンコっていう存在を子どもたちとかにも知ってほしい』って言ってくれて」。

 この友人もこのキャンプでコーチをした経験があり、星野さんもキャンプ自体は「すごい有名」と知っていたと言う。モーグル男子元カナダ代表ジョン・スマートさんがディレクターを務めるスキーとスノーボードを指導するプログラムで、ウィスラーで毎年開催されている。

 今年は6月10日から7月18日まで5週間開催され、星野さんは第3週でコーチとして参加した。この週の参加者は10歳から17歳までで約100人。各グループに分かれ、コーチが付く。

 星野さんらが担当したグループは約7人で、午前中は雪が残るウィスラーの頂上付近で一緒に滑って、ビデオ撮影したり、ワンポイントの課題をクリアできるよう練習したりとモーグルが上達するコツをアドバイスする。午後1時半で雪上でのレッスンを終え、下山。午後からは麓で「アクティビティの時間で。モーグルのジャンプを練習するための施設ウォータージャンプがあるので、ジャンプのエア台があって着地が水という、そういう練習もやってました」。参加者にとってはまさにモーグル漬けの6日間。

 「メニューは決まっていなくて、コーチ次第ですね」。レベルもさまざまで、オリンピックを目指すアスリート系から楽しく滑ることを目的としているグループまで。それでも練習環境は抜群という。

夏にウィスラーで開催されているモーグル教室の環境に驚き

 キャンプに参加した感想を聞くと「楽しかったです!」と弾むような声で返ってきた。「すごい良い経験でした」と満面の笑みを見せた。

 引退時にはメディアに「子どもたちにモーグルの魅力を伝えたい」と語っていた。それは「日本の子どもたちに向けて考えていたんです」と言う。

 日本の子どもにモーグルを伝えていかないとモーグルという競技が衰退していくという危機感もある。オリンピックが終わったあとで「イベントとかあると子どもたちが興味を持ってくれるので、きっかけになったらなという思いで言ったんです。最初は世界の子どもたちにもっていうのは全然考えてなくて」。

 しかし「たまたま今回こういう機会があったので来てみて。すごく楽しっかったです」と目を輝かせた。

 楽しかった理由のひとつは子どもたちの反応。1日の終わりに「今日はこれで終わりです。ありがとうって言ったら、『ジュンコ、ほんとうにありがとう。すばらしいコーチだった』『すごく良い練習ができました。ありがとう』って声をかけてくれて。私の名前って覚えにくいと思うんですけど、ちゃんと覚えてくれてて、毎日会うと『ジュンコ〜』って話しかけてくれたりとか、押しの強い子は『今日も一緒に滑りたい』みたいな感じで来てくれて」。積極的な北米の子どもたちに「すごくびっくりした」と笑いながらも感動した様子。

 ただ、北米の選手層の厚さの理由には、こういう自己主張や自分がやりたいという気持ちが強いこともあるのかもと日本との違いも痛感したと話した。

 日本との違いと言えば、今回のスキーレッスンの環境もそうだ。「すごい良い環境だなって思いましたね」。この時期に雪の上でスキーをして、下山するとウォータージャンプ台がある。トップアスリート並みだ。「こんな小さい頃からスキー選手として最高の環境で練習できるのはすごいなぁって思いました」

 最高の環境が子どものモチベーションも、テンションも、上げるのかもしれない。「スキーへの向き合い方の違いも感じた1週間でした」と語った。

後編に続く。

星野純子(ほしの・じゅんこ)
モーグル女子元日本代表。チームリステル所属。ロシア・ソチ、中国・北京冬季オリンピック出場。北京では13位。2022年3月21日の全日本選手権(2位)を最後に現役を引退した。
現在は、地元新潟や母校、福島などでの頻繁に講演を行うほか、地元新潟や富山のチーム、また北海道でもジュニアの指導にあたっている。

7月上旬でも雪が残るウィスラーで、コーチ仲間と。Photo courtesy of Junko Hoshino
7月上旬でも雪が残るウィスラーで、コーチ仲間と。Photo courtesy of Junko Hoshino

(取材 三島直美)

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BCリカー、ストライキへ

BCリカーストア。2022年8月。Photo by the Vancouver Shinpo
BCリカーストア。2022年8月。Photo by the Vancouver Shinpo

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の酒類販売州営企業BCリカーが8月15日からストライキに突入した。

 BCリカーストアの従業員を含め約33,000人の州営企業職員からなる労働組合BCGEU(The British Columbia General Employees’ Union)が8月12日にストライキ実施72時間前通告を行い、15日午後2時46分からストを決行した。

 BCGEUは、山火事消火にあたる消防士やソーシャルワーカー、刑務官、保安官、BCキャノビス(大麻販売)ストア職員などから構成されているBC州公営としては最大の労働組合。今年6月22日に組合員でストライキ実行への投票を実施し、賛成が約95%になった。

 BC州政府側から交渉にあたっているのはPSA(The Public Service Agency)。前の労使契約の有効期限が今年4月1日までだったため、今年2月8日から交渉を続けていたが、4月6日に決裂。以降、労使契約がないままとなっている。

 今回ストライキに突入したのは、リカーストアーのディストリビューションセンター(配送センター)3カ所と、ビクトリアのホールセール・カスタマーセンター。15日午後3時30分からピケラインを実施している。

 組合側の要求は、1年5%の賃上げを2年間か、生活費上昇に見合った賃上げ率のどちらか高い方の実施。PSAは、3年間で約11%の賃上げと、組合員1人あたり2,500ドルの契約ボーナスを含むオファーを、7月に直接組合員に送っている。

 ピケラインが張られているBCリカー配送センター3カ所は以下のとおり。現時点で店舗閉店などの影響は出ていない。

・Delta Distribution Centre:7003 72nd St., Delta, B.C.
・Kamloops Distribution Centre:9881 Dallas Dr., Kamloops, B.C.
・Richmond Distribution Centre:3389 No 6 Rd., Richmond, B.C.

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陸路入国に限り、1回のみArriveCAN申告の免除が明らかに

ArriveCAN登録を忘れずに!Photo from Government of Canada Website
ArriveCAN登録を忘れずに!Photo from Government of Canada Website

 カナダに入国する全ての入国者に対して義務付けられているArriveCANアプリでの申告が、陸路入国では1回のみ申告を免除されていることが8月13日明らかになった。同日のCTVニュース電子版が伝えた。

 CTVニュースによると、新型コロナウイルスワクチン接種完了者でこれまでに入国の際に違反をしたことがない場合に限り、アプリでの申告を忘れても1回のみ罰金や自己隔離を免除する措置が今年5月から実施されていたという。当時は市民権、永住権、Indian Actに登録している人が対象だったが、7月29日からは旅行者にも拡大している。ただ、ワクチン接種完了の証明は提示する必要がある。

 1回のみ免除された後に、再び同様にアプリでの申告を怠った場合は、自己隔離や最大5,000ドルの罰金が課せられる。

 ちなみに、現在のカナダ国境サービス庁のウェブサイトには、陸路での申告免除については記載されていない。

 CTVニュースによると、5月24日から8月4日までに陸路でアプリでの申告を済ませた入国者は5,086,187人、1回の免除入国者は308,800人とCBSAが明らかにしたと伝えている。

ArriveCAN申告など、カナダ水際対策は9月30日まで、それ以降は未定

 カナダ政府は、カナダ入国に際し、新型コロナワクチン接種を完了している場合は、国籍に関係なく、ほとんど制限を設けていない。7月19日からバンクーバー空港などの主要4空港に到着した入国者が無作為に新型コロナ検査を要請されるのみとなっている。

 また、ワクチン接種を完了していなくても、市民権、永住権者などは入国可能。ただし、到着時新型コロナ検査、14日間自己隔離などの規制がある。ワクチン未接種の旅行者は入国できない。

 すべての入国者は入国前72時間以内にArriveCANでワクチン接種の有無などを申告しなければならない。ArriveCANは、スマートフォン以外ではパソコンからでも申告できる。スマートフォン、パソコンでの申告ができない場合も対応している。

 カナダ政府はこうした水際対策を今年9月30日までは続けると発表しているが、それ以降については決まっていない。

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