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Keiko Nishikawa

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心と体を楽しく過ごす交流の場、「脳の運動教室」

カルガリーのFCいづみさんのリードによるコグニサイズ。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society
カルガリーのFCいづみさんのリードによるコグニサイズ。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society

ウエストコースト・ヘルシー・メモリー・ソサエティー 

 新型コロナウイルス禍でステイホームが推奨されるなか、カナダ全国に在住する日本人を対象に非営利団体(NPO)West Coast Healthy Memory Society(以下WCHMS)が「脳の運動教室」を行っている。すでに約600人もの参加があり、昨年はファシリテーターの菅野久志さんがバンクーバー新報ウェブサイトで20回にわたり教室の状況を楽しくリポートしている。

 今回はWCHMSについて、代表のプール希美さん(以下「キミさん」)と菅野久志さん(以下「ひさしさん」)に話を聞いた。

対面教室での脳トレ。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society
対面教室での脳トレ。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society

– West Coast Healthy Memory Societyとは?

キミさん:2019年に発足したNPO団体で、高齢者の心と体の健康と、認知知能の向上をミッションとし、認知症予防のプログラム「脳の運動教室」をメインに、*野外交流会や*ヘルスショーなどを行っています。
(*新型コロナ規制のため一部イベントは保留中)

– 脳の運動教室に関しては、すでに600人もの人たちが参加されたのですね!

キミさん:3年前に発足した際はバンクーバーで対面教室を行っていましたが、2020年からはコロナ禍となりオンラインプログラムに移行しました。去年は、外務省からも助成金がおりたので、カナダ全土の日本人を対象に無料でオンラインプログラムを提供できたんですよ。

ユーコン準州からニューブランズウィック州まで、30代から90代と幅広い年齢の方が参加してくださいました。

ズームでの座談会。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society
ズームでの座談会。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society

-「脳の運動教室」ではどんなことをするのですか?

ひさしさん:参加型の教室で、体操やコグニサイズ(脳と体を同時に動かすエクササイズ)、毎週違うテーマで作成した音読教材や簡単な計算、数字盤、座談会、ゲーム、バーチャル日本旅行やゲストスピーカーの講演など、いろいろなプログラムを用意しています。脳の活性化を目指し、記憶力や集中力、コミュニケーション力の向上を図っています。

– 新報ウェブでも教室の内容を連載されていたので、私も1つ試してみましたが、面白かったです! ピアノを弾くので右手左手と違う作業をするのは簡単だと思っていたのですがなかなか難しかったです。

対面教室でのコグニサイズ。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society
対面教室でのコグニサイズ。Photo courtesy of West Coast Healthy Memory Society

ひさしさん:左右、手の動きが違う運動だったということは、コグニサイズですね。例えば、片手でグー、パー、グー、パーして、反対の手でグー、チョキ、パーといった具合ですよね。頭ではわかっているつもりでも、思い通りに手が動かないので、悔しいですよね。

キミさん:ちょっと難しいくらいじゃないと脳の活性化にはつながりませんからね!(笑)

私たちの提供しているプログラムは、参加者の皆さんが楽しむことを一番に作っていて、できる、できない、にフォーカスするのではなく、遊び感覚で楽しんでもらえる内容となっています。

そのおかげで参加者のみなさんが徐々に変わっていくのも実感します。お化粧をするようになったり、シャイな人が積極的に発言するようになったり、あとはここが情報交換の場になって、みんなが生き生きと発言する場になってくれましたよ。

ひさしさん:あとは皆さんすごく笑顔ですよね!

キミさん:プログラムを提供している立場ですが、参加者の方たちがすごく楽しいので、刺激をたくさんもらっています。

– お二人と話していると、プログラムがすてきなんだろうなということが伝わってきます。コロナ禍で一人暮らしの方の孤立化が懸念されていますが、このプログラムを通して、人とのつながりも増えて、楽しそうですね

キミさん:その通りです!本団体は、認知症にならないようにすることが目的ですが、それには、高齢者の孤立を予防すること、心と体と脳を元気にすることが含まれています。

ひさしさん:カナダの日本人のコミュニティって、中国や韓国またインドからの移民と比べると小さいだけに日本人同志のつがなりが薄くて孤立している日本人の高齢者が多いように感じます。でも病気になったときこそ、日本語が恋しくなって、日本人とのつながりを必要とされる傾向にあります。僕たちの活動を通して、セーフティーネットワークの構築という意味でも、孤立した日本の方を救いたいと思っています。

キミさん:それに高齢者の方々が本プログラムを通して心身ともに元気になってくれると、介護にあたる側の家族の負担も減り、医療費の削減にもつながります。その結果、社会全体が健康になるんですよね!

– 日系コミュニティに不可欠なプログラムだと言っても過言ではないですね。最後に読者の皆さんになにか一言ありますか?

キミさん:脳の運動教室なんていうと、自分には関係ない、周りから自分が認知症だと誤解されるんじゃないか、歳をとったら認知症になるのは仕方ないといった正解ではない意見をお持ちの方がいますが、心と体を楽しく過ごす交流の場だと思ってお気軽に参加してもらいたいです。

ひさしさん:難しいことをしているというイメージをお持ちの方もいますが、実際のところ、そんなことは全然なくて、先ほど話したコグニサイズにしてもできない人がほとんどです。みんな「できない〜」なんて笑いながら参加してもらっています!

コンピューターが得意じゃない人もたくさんいて、Zoomの入り方から説明しますので、ご興味があればぜひご連絡ください。

脳の運動教室 オンライン

開催日:週に1回(90分)x 12回のプログラム。随時参加可能。
対象:カナダ国内在住のシニア(60代から80代を中心)
費用:120ドル

West Coast Healthy Memory Society
バンクーバーを拠点とするNPO団体。脳の運動教室に加え、年に1回野外交流会やヘルスショーなど行っている。

ウェブサイト: https://wchealthymemory.com/
Eメール: info@wchealthymemory.com
電話番号:778-960-4735

(取材 小林昌子)

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トラベルトレーラーの魅力

アラスカハイウェイを走るトラベルトレーラー。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
アラスカハイウェイを走るトラベルトレーラー。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

 旅の途中で、お気に入りの風景を目の前にして目を覚ます。

 同じ空間に居ながら行く先々で景色が変わっていく楽しさは、キャンピングカーの旅ならではの醍醐味でしょう。

 キャンピングカーには、ワンボックスタイプから大型バスのような車両を改造したものまで種類は豊富です。

 今回は比較的居住スペースに余裕があるトラベルトレーラー(TT)に焦点をあて、これからTTの旅を始めたいと思っている皆さんが注意する点などを、私の経験をもとにまとめてみました。

1. 牽引車との関係
2. 内装
3. 価格
4. 電力、水と生活排水
5. メリットとデメリット

車窓からの景色が行く先々で変わる。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車窓からの景色が行く先々で変わる。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

1. 牽引車との関係

 TTはエンジンを持たず自走しないため、牽引するためにピックアップトラックやSUVなどの牽引車が必要です。トレーラーとの関係は馬と幌馬車にも似ていて、北米ならではの文化的な匂いを私は感じます。

 牽引車は、TTの重量に対して最大牽引力が約1.5倍、あるいはそれ以上あることをお勧めします。

 たとえば4,500ポンド(約2,000kg)のTTを引く時は、最大6,800ポンド(約3,100kg)以上の牽引力を持つ車両が必要だと思います。

 理由は距離の長い急な峠道(例えばコカハラ・ハイウェイなど)を走るとき、牽引車のパワーを最大限に使うことがあるので、余力がないとエンジンを壊す可能性があるからです。

 これはTTを初めて購入したあと、よく耳にするトラブルなので注意した方がよいでしょう。

 なおブリティッシュ・コロンビア(BC)州では、重量4,600kg以下のトレーラーならば牽引免許は必要ありません。

2. 内装

 一般的な室内装備は、ガスコンロとオーブンに冷蔵庫や電子レンジ、流し台とダイニングテーブル、クイーンベッドやソファー、そしてシャワーとトイレなどです。

 またバンク(2段)ベッドを備えたり、スライドアウトといって駐車中に居住スペースを広げることができる車両もあります。

車内前方に、出入り口(右)とメインベッドルーム(中央)がある。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車内前方に、出入り口(右)とメインベッドルーム(中央)がある。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車両の中央にキッチンスペース(右)とテーブルが配置される。後方中央の扉内はトイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車両の中央にキッチンスペース(右)とテーブルが配置される。後方中央の扉内はトイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
車内レイアウトの一例。RV Guide.comから引用。

3. 価格

 トラベルトレーラーの車両購入価格は、どのくらいでしょうか。

 新車の値段は大きさによって異なりますが、たとえば7〜8人用ですと約2万ドル台から5万ドル以上とかなり幅があります(2022年2月現在)。

洗面台とシャワー(右奥)、トイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
洗面台とシャワー(右奥)、トイレ室。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

 中古車もあるので、探せば程度の良いものをリーズナブルな価格で購入することも可能です。あとはレンタル*を利用する方法もあります。

 購入の際に注意する点ですが、使用人数よりは少し大きめの車両を買うことをお勧めします。 

 仕様書などに書かれている最大就寝人数というのは、ダイニングテーブルを折りたたんでベッドのスペースを作る(2人分)ことを想定していることがほとんどです。ただテーブルは食事の時はもちろん、それ以外のときでも物を置くスペースとして重宝するので、ベッドとして使わない方が通常の使い勝手は良くなります。

 ですから7人まで就寝可能とあれば、テーブル展開分の2人分を差し引いて実質5人で利用すると考えた方がよいでしょう。

(*レンタル会社にはCanaDream https://www.canadream.com
Fraserway RV https://www.fraserway.com/ があります)

公営のキャンプサイト。テーブルや焚き火ができるファイヤーピットが常備されている。2017年7月、BC州のオカナガンで。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
公営のキャンプサイト。テーブルや焚き火ができるファイヤーピットが常備されている。2017年7月、BC州のオカナガンで。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

4. 電力、水と生活排水

 キャンプサイトには電力と水の供給のほかに、キッチンやシャワー、トイレで使用した生活排水を流し込む設備を持つ所があります。これらは民営のキャンプ場に多く、3つすべてを使えるサイトをフルフックと呼びます。 

 TT側にはこれらに接続する電力のケーブルや、入水口と生活排水口が付いています。多くのサイトではこれらの設備が、TTをバックで駐車したときに左側にくるように設計されています。ですから車両購入の際には、それぞれの口が左後方にある車両を選ぶと使いやすいでしょう。

 BC州の公営キャンプ場は、これらの設備がない所も見受けられます。ただしその場合はパーク内に水とトイレ、場所によってはシャワー施設も備え付けられています。電力はTTに搭載しているバッテリーから供給しますが、多数泊のときは小型発電機を持って行くことをお勧めします。

電気と飲料水、下水が使えるフルフックサイトの接続部分。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
電力と水が使えて、生活排水が流せるフルフックサイトの接続部分。この車両では左側に付いている。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

5. メリットとデメリット

 トラベルトレーラーのメリットは、大きく分けて3つ。

1. ホテルと比べると宿泊コストを安くできる。
時期や人数によっては、半額以下に抑えることも可能です。

2. テントキャンプと比べると居住性が高く、テント設営や撤収の必要がない。

3. 一体型のキャンピングカーと比べると切り離すことができるので、牽引車だけで自由に行動ができる。

デメリットは、

1. バックの運転が難しい。
 キャンプサイトなどにバックインするときは、ハンドル操作に戸惑うことがあります。

 初めて運転するときは、車両の動きを覚えるために練習が必要かもしれません。経験者に同乗してもらい、運転のコツのアドバイスをもらうとよいでしょう。

2. 駐車場の確保。
 全長は15フィート(約4.6メートル)くらいから30フィート(約9.1メートル)以上の車両もあるので、駐めて置くスペースが必要です。

長旅の途中で一休み。車内にはトイレもあるので安心。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報
長旅の途中で一休み。車内にはトイレもあるので安心。2014年9月、ユーコン準州で。Photo by ©︎ 古川透 / バンクーバー新報

 カナダやアメリカは、公営、民営ともにキャンプ場が豊富です。先着順でその日の宿泊者が決まるところと、予約が可能なところがあり、どちらもインターネットで簡単に見つけることができます。BC州の公営キャンプ場は、bcparks.caから予約できます。  

 近年は新型コロナウイルス禍の影響もあって、キャンプの需要が増えているようです。特に夏休みなどは、現地に早めに到着するか、早期のサイト予約をした方がよいでしょう。

 アウトドアが好きな方にとってトラベルトレーラーは、旅そのものを豊かにしてくれます。この記事が、購入を検討している皆さまの参考になれば幸いです。

古川 透
《フォトグラファー、記者。トラベルトレーラー歴は10年。カナディアンロッキーやユーコン準州のホワイトホース、アルバータ州のドラムへラー、アメリカのイエローストーンやマウントレーニアなど十数カ所へ、TTでの旅行経験を持つ》

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会員への便益や他団体との提携強化で、プレゼンスのさらなる向上を目指す企友会

 企友会が1月31日、オンラインで年次総会と新春懇談会を開催した。年次総会では2021年度の会計や活動の報告を行い、22年度の理事選出、予算や活動計画などを話し合った。その後、懇談会でゲストとして出席した在バンクーバー日本国総領事館の経済担当、久田桂嗣領事に話を聞いた。

オンラインイベントが中心だった2021年

 2021年度は1月に、新春懇談会、「業界の声を聞くパネルディスカッション」を懇話会とZoomで共催。バンクーバーの日系ビジネスにおける主な業種に携わる人を招き、パネルディスカッション形式で、パンデミックでのビジネスの現状、見通しや戦略など「業界の生の声」を聞いた。

 そのほか、4月にもオンラインで「SDGsをチャンスにする」を開催。6月に日加商工会議所と共催でオンラインネットワーキング、10月に「東西をまたにかけるビジネスパーソンのコロナ禍での挑戦」セミナーをトロント新企会と共催した。

 新型コロナウイルス感染拡大により、2021年もオンラインでのイベントが中心だったが、7月の日加商工会議所と共催のゴルフトーナメント、12月の「日系ビジネスアワード&クリスマスパーティ」は「インパーソン」で開催することができた。

TEDや3MT手法の活用など、より質の高いイベントの開催、提携強化で会員増を目指す

 2021年の一部イベントは他団体との共催だったが、2022年もさらに他団体との戦略的提携を進める。それにより、23年末までに正会員と提携先メンバーの合算で300人と参加者数増を目指す。

 企友会は日系事業家や起業を目指す人を支援して、日系ビジネス社会の発展に寄与することを目的に1987年に設立された。カナダではこの35年間で起業のハードルが上がっている。これからはカナダで働きたい人など、広く門戸を広げて、インターネットでは分からない情報なども提供していく。

 また、より質の高いイベントを開催し、会員への便益を図ることで、「入ってよかった」と思ってもらえる団体を目指す。そのほか、日系以外のバンクーバービジネスコミュニティや、他地域のビジネス団体との交流を行い、共催イベントを企画していく予定。

 2021年10月のオンラインセミナーを共催したトロント新企会は、1978年に設立された独立した非営利団体で、メンバーのネットワークを通じてそれぞれのビジネスの発展・向上を目的としている。 新企会との共催は初めての試みだった。こういった試みにより、企友会のプレゼンスを高めたいという。

 また、企友会には、「バンクーバー寺子屋」という勉強会もある。海外で活躍する日本人が、将来のビジョンを分かち合うことで、参加者がともに学ぶことを目的とした塾で、2021年度には4回開催した。

 2022年度はTEDや、3分間で主義主張をしっかり伝える3MTの手法を導入して、参加者のプレゼンテーション能力を伸ばす。

 さらに年末のビジネスアワードは選考方法や賞の種類を大幅に見直していく。

 新たに会長に選出された岡本裕明さんは、「かつてはボランティアが活発に参加していた。そういった状況を復活させるためにも、ボランティアにも利点があるような活動を行っていきたい」「全く新しいイベントをやっていきたい」と抱負を述べた。「バンクーバーのビジネス団体といえば、企友会と呼ばれるようにしたい」という。

懇談会でバンクーバーの印象を語った久田領事

 続いての懇談会では久田領事が「バンクーバーに着任して感じていること」として実際に赴任以来感じていることを語った。久田領事は経済産業省出身でエネルギーや製造の分野に強いという。

 カナダは規制が少ないこともあり、特にブリティッシュ・コロンビア州には外国企業が多い。法人税がほかのG7諸国に比べて安いほか、海外からの熟練工の受けいれもハードルが低い。また、UBC(ブリティッシュコロンビア大学)、SFU(サイモンフレイザー大学)、UVIC(ビクトリア大学)などがあり、優秀な人材へのアクセスが容易になっている。

 一方、英語とフランス語の2カ国語が公用語で、商品のラベルも英語以外にフランス語も必要となっていることを挙げ、「コストなど準備が大変そう」と述べた。さらに先住民問題については課題のひとつだと感じているという。

(取材 西川桂子)

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参加することで楽しむアート インタラクティブアートでコミュニティ形成を目指す

作品のテスト段階。Photo courtesy of GETA Media Art
作品のテスト段階。Photo courtesy of GETA Media Art

GETA Media Art

 見る人もアート作品に参加して、一緒に作品を作り上げる楽しみがあるインタラクティブなアートを発表するGETA Media Art。日本ではこうしたアート作品が多数出てきている一方、バンクーバーではまだそれほど知られていない。このアートの世界を広げていこうとしている、GETA Media ArtのGenki NishidaさんとTatsuya Kosudaさんに話を聞いた。

***

- バンクーバーを活動の拠点にした経緯は?

Genkiさん(以下G)「まず日本にいたときにテレビ制作をしていたんですが、映画をやりたくてハリウッドノースともいわれているバンクーバーにしたというのが大きかったです。来てみたらすごく気に入り10年くらい住んでいます。

Open Studios Productionsという映画スタジオに所属し、スタジオを運営しながら映像演出やVJ(ビデオジョッキー)を学び、カナダを拠点にニューヨーク、東京、ヨーロッパ、オーストラリアなど世界各国をツアーし、リモートで映像編集をしながら働いていました」

Tatsuyaさん(以下T「日本にいたときにテクノロジーをベースとしたアート作品を作っていました。ジャンルはインタラクティブアートで、例えば自分が体を動かしたら、それに映像が追従するように反応してくれるなど、あたかも自分が映像の中に入ったかのような体験ができる作品を作っていました。

ヨーロッパやアメリカでも展示できる機会が多くあり、世界中でアートを通じたコミュニケーションを取れることを実感し、ワールドワイドに自分のスキルを展開していきたいという気持ちがありました。お互いのカルチャーをこえたコミュニケーションというものをアートで実現したいと思って、昨年バンクーバーに来ました。

バンクーバーは世界有数の人種のるつぼで、多文化の地域なので、自分の持っているものを試していけるような環境があるのではと思っています」

- GETA Media Art結成のきっかけは?

G「昨年の秋に受けたプロジェクトでインタラクティブビジュアルが必要となり、できる人を募集したところ、すごい人(Tatsuyaさん)が来てくれて。10月ごろから週1回ミーティングをしていく中で、ふたりで面白いことができることがわかりました」

T「Genkiさんとは、やっている仕事としてはかなり違うんですが、ベースとなっている考え方やエンタメとしての考え方、映像制作で使うツールの共通言語などがあるので、すぐ意気投合できました。ふたりで映像を作ろうとなってから作品になるスピードは早かったです」

G「ふたりともジャンルは異なるけれど経験値が高かったので、作品を人、場所、設備に適正化する段階だと思い、今回発表しました」

- このプロジェクトのアート作品の楽しみ方、鑑賞のポイントは?

T「自分がアートの一部になっているところを体感してほしいというのが、メインポイントです。

自分は楽しみながら作っているんですが、こうした楽しみを他の人にも体感してほしいなと。自分が映像の中に入り込めるような体験、その中で、偶然の瞬間があり、その偶然の瞬間というものは、その人がその時にしか作れなかったことで、そのタイミングを切り取った写真が抜群にかっこいい、といった瞬間を見ることができるのもおもしろいと思います。一期一会の映像体験です」

G「ハッピーアクシデントという言葉がしっくりくるような感じですね。実験的な要素も大きいので、テストの段階でも思いがけない発見があったりと制作も楽しいです」

T「想定しているようなポーズなどはあるんですが、『想定していない』ことを、体験してる人が生み出します。そういう意味ではパブリックに出して始めて作品が完成します」

- 今後の予定、抱負など。

G「チャイナタウンにスタジオがあり、そこで定期的に作品を紹介します。またギャラリーやエキシビション、イベント、フェスティバルなどで紹介していきながら、今年の夏くらいから本格的に発信します。コミュニティに対して貢献したいという気持ちもありますので、日系文化センターやバンクーバー日本語学校、ローカルのイベントを開催したいと思っております」

T「コミュニティを形成していくひとつの橋渡しに、自分たちの作品がなっていけばいいなと思います」

GETA Media Artのアートに触れよう!

参加予定のフェスティバル
Vancouver Mural Festival
2月26日(土)4:00 pm~9:45 pm
バンクーバーアートギャラリー前のスペース。入場料無料。マスク着用が必要となるスペースもあり。
https://www.winterartsfest.com/programming/gy1sxl6d6gt2swynsuky2eyybibdzm

Rafraction Festival
3月~4月
メタバース(仮想共有空間)を使ったオンラインでのフェスティバル。
https://www.refractionfestival.com/

GETA Media Art

 Tatsuya KosudaとGenki Nishidaによるインタラクティブアートに特化したチーム。バンクーバーにあるLetter Boxスタジオをベースに映像、写真、ウェブAR、VRやインスタレーションなどを制作している。

イベント情報:https://www.vjgenki.com/getamediaart

Genki Nishida
 日本でテレビ制作に携わりディレクターとして活躍。2011年にカナダに移住し、短編映像のディレクター、映画スタジオOpen Studios Productions (http://www.openstudios.ca/) の運営。
ウェブサイト https://www.vjgenki.com/

Tatsuya Kosuda
 デジタル技術での空間演出やエンタテイメントなどを手がけるOne to Ten(https://www.1-10.com/)で、テクニカルディレクターを務めた。

Genki Nishidaさん。Photo courtesy of GETA Media Art
Genki Nishidaさん。Photo courtesy of GETA Media Art

Tatsuya Kosudaさん。Photo courtesy of GETA Media Art
Tatsuya Kosudaさん。Photo courtesy of GETA Media Art

(取材 大島多紀子)

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職人が培った燕三条の製品をバンクーバーで販売

モノづくりの街、「燕三条」の商品。©The Vancouver Shinpo
モノづくりの街、「燕三条」の商品。©The Vancouver Shinpo

 刃物をはじめとした金属製品、金属ハウスウェアや洋食器などで、世界の注目を集める新潟県の燕市と三条市(燕三条)。職人が長年にわたり培ってきた技術で作り上げた優れた製品は、日本国内のみならず、世界各国に輸出されていて、燕三条は金物の街、モノづくりの街としても知られている。

 そんな燕三条の「モノづくり」を支援して、地域産業の育成と発展を担う燕三条地場産業振興センターが、日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization: ジェトロ)と協力。バンクーバー市内のキッチン用品や食器を扱う店Itsumoで、イベント「Made in Tsubamesanjo(燕三条製)」を開催中で、燕三条の製品を3月6日まで販売している。当初は2月28日までの予定だったが延長となった。

 燕三条の金属加工産業は江戸時代までさかのぼり、信濃川の氾濫に苦しむ農民の副業として始まった和釘づくりに起因するといわれている。地域ではその技術を現代まで受け継ぎ、スプーンやフォーク、鍋やケトル、フライパン、ザル、包丁などのキッチンツールを今も製造している。

 今回のイベントで、バンクーバーで販売されているのは、ステンレスのボウルや水切りラック、急須やスライサー、ピーラー、おろし金、おたま(レードル)、缶オープナー、ステンレス製ざる、カトラリーなどの台所用品、さらには剪定用ハサミ、園芸用ナイフのようなガーデニングツールなど。

 急須をはじめ、一部、商品は好評ですぐに売り切れたため、現在、入荷待ちとなっている。

 「新潟県燕三条地域の製品を紹介します。長年、職人が受け継いできた燕三条の技術は、現在、槌(つち)で起こす伝統的な金属工芸品や鋭利な道具の製造に利用されています。金属細工の職人技と伝統文化の製品をご覧ください!」(ジェトロ)

 ジェトロバンクーバー事務所で同イベントを担当するゲイルさんは、仕事で燕三条の人と会い、製品に魅了され、2019年にプライベートで日本を訪れたとき、日本人の友人と地域を訪れたという。個人的に「プロモーション先としてバンクーバーを選んでもらえてうれしかったです」と語った。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、イベント開催も難しく、今回の「Made in Tsubamesanjo(燕三条製)」は2019年10月の日本酒プロモーション以来のインパーソン・イベントとなった。パンデミック以降、ジェトロ・カナダでは水素エネルギーについての「カーボンニュートラルに向けた北米太平洋地域コリドーの構築」など、バーチャルイベントを開催した。

上質なカトラリーも取りそろえている。©The Vancouver Shinpo
カトラリーも取りそろえている。©The Vancouver Shinpo
燕三条の「モノづくり」を支援して「Made in Tsubamesanjo」をバンクーバー市内のITSUMOで開催。期間も3月6日までに延長された。Photo courtesy of ITSUMO
燕三条の「モノづくり」を支援して「Made in Tsubamesanjo」をバンクーバー市内のITSUMOで開催。期間も3月6日までに延長された。Photo courtesy of ITSUMO

ITSUMO
279 East 6th Ave., Vancouver
Phone: 604-423-3679
営業
火~土: 12:00 ~ 18:00
日: 12:00 ~ 17:00
月曜休業(プロモーション中。「燕三条」プロモーション終了後は月、火休業)
https://itsumo.ca/news/made-in-tsubamesanjo/

(取材 西川桂子)

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硬い体が柔くなるストレッチ

 West Vancouver図書館で最速で硬い体が柔くなるストレッチの本を見つけました。筋膜リリース、PNFストレッチという2つの科学的アプローチを使った手法です。ストレッチ後、体全身の凝りを緩和します。 各凝りに悩んでいる方々にお勧めします。

 タイトルは:”自分史上最高の柔軟性が手に入るストレッチ” JPN-613.7182MUR

首・肩・太もも・ふくらはぎ、など部位別に筋肉をゆるめ、最大限のストレッチhttps://hyper-body.com/stretch1/

超速効ストレッチ」をベースに、12のお悩み・目的別におススメのストレッチメニューhttps://hyper-body.com/stretchmenu/

山下
連絡先: webarts3000@yahoo.com

「PRカード更新」~S.U.C.C.E.S.S.

無料Zoomワークショップ

テーマは「 PRカード更新 」

日時:2022年3月8日(火) 午後1時~午後2時半(無料)

申し込みリンク: https://bit.ly/3rKsgus

お申し込みの締め切り:3月7日(月)

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PRカードの更新は5年毎にやってきます。基本自己管理なので移民局から更新のお知らせなど来ませんし、有効期限が切れてしまう数か月前には更新の手続きをしましょう。このワークショップでは申請書の記入の仕方、そろえる書類、申請料の払い方などについて詳しく説明します。

<内容>

  • 申請資格と居住条件
  • 必要書類
  • 申請書の書き方

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お申込み・問い合わせ:kozue.ito@success.bc.ca / 236-880-3392こずえ

要予約:
移民の方、住み込みケアギバーの方、難民指定を受けている方、カナダから保護認定を受けて在住されている方が対象のプログラムです。

S.U.C.C.E.S.S.による「 PRカード更新 」セミナー。Photo courtesy of S.U.C.C.E.S.S.
S.U.C.C.E.S.S.による「 PRカード更新 」セミナー。Photo courtesy of S.U.C.C.E.S.S.


「BC州の薬局サービスとファーマケア」~S.U.C.C.E.S.S.

無料Zoomワークショップ

テーマは「 BC州の薬局サービスとファーマケア 」

日時:2022年3月2日(水) 午後1時~午後2時半(無料)

申し込みリンク: https://bit.ly/3Lu9lfE

お申し込みの締め切り:3月1日(火)

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日本と違うカナダの医療制度。その両方で薬剤師の資格をもつ佐藤さんを講師にお迎えして、薬局のシステムとBC州の公的保険であるフェアファーマケア(処方薬や医療器具などの患者負担を州が援助してくれる)について説明してもらいます。

自分が医療のお世話にならないとなかなか関心が持てませんが、いつ何が起こるかわからないので医療関係の情報は知っておいたほうが、いざという時に安心ですね。上手く薬局と公的医療保険と付き合っていきたいです。

<内容>

  • BC州の薬局システムについて
  • 薬局や薬剤師はどんなサービスを提供できるのか
  • BC州保険、BCフェアファーマケアの活用

お申込み・問い合わせ:kozue.ito@success.bc.ca / 236-880-3392こずえ

要予約:
移民の方、住み込みケアギバーの方、難民指定を受けている方、カナダから保護認定を受けて在住されている方が対象のプログラムです。

S.U.C.C.E.S.S.によるファーマケアセミナー。Photo courtesy of S.U.C.C.E.S.S.
S.U.C.C.E.S.S.によるファーマケアセミナー。Photo courtesy of S.U.C.C.E.S.S.


2月22日は猫の日、そして回文の日

 来週の火曜日は2月22日だ。日本では「ニャン・ニャン・ニャン」で「猫の日」として知られているが、英語圏では2022年2月22日は「Palindrome Day(回文の日)」。

 回文の日とは上から読んでも下から読んでも、同じになる日のことで、2022年2月22日はアメリカ英語式に「月/日/年」とすると「2/22/22」、イギリス英語式の「日/月/年」でも「22/2/22」となる。

 そのため、カナダやアメリカの一部の小学校などでは、22日に「回文の日」イベントを予定している。

 2月2日も「2/2/22」で回文の日だったが水曜日だった。一方、2月22日は火曜日、TuesdayでTwosdayと発音がTwo(2)に似ているため、「こんなに2がそろう日はない」とSNSでも盛り上がっている。

 日本の猫の日については、「猫の日制定委員会」が1987年に2月22日を「猫の日」と制定したというものだが、世界各国で異なる猫の日が存在している。たとえば「International Cat Day」は8月8日。International Fund for Animal Welfareが2002年、猫への関心を高めようと定めたという。

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サレーでも高齢者をターゲットにした詐欺が増加

バンクーバー警察が公表した、加害者とみられる男性。Photo courtesy of Vancouver Police Department
バンクーバー警察が公表した、加害者とみられる男性。Photo courtesy of Vancouver Police Department

 サレーRCMP(連邦警察)が、高齢者をターゲットにした詐欺「Grandson Scam」が増加していると、プレスリリースで市民に警告を行った。

 「Grandson Scam」では、容疑者は警察や弁護士、もしくは孫を装って被害者に電話をかけ、孫が逮捕され保釈金が必要と説明するというもの。

 サレー市では1月中に10件の通報があり、うち3人が現金などをだまし取られたという。合わせて13万9,000ドルの被害があった。また、3人のうち2人は、容疑者が自宅に現れ、現金やデビットカード、クレジットカードを被害者から受け取っている。

 同様の事件が起きているとの報告は、バンクーバー市でもあった。バンクーバー市警察が1月14日、シニアをターゲットにした詐欺事件で、犯人が被害者の自宅に現れ、現金を受け取っていると警告した。

 バンクーバーで最初に届け出を行ったのは、市内ウエストサイドの70代カップルで、甥が自動車事故を起こし、保釈金として8,000ドルが必要だと電話があったという。その後、裁判所で働くクリスと名乗った男は二人の自宅に来て、現金をだまし取った。

 サレーRCMPでは市民に対して、以下のように呼びかけている。
・電話で決して個人情報を明らかにしない。
・誰からの電話か必ず確認する。電話をしてきた人が、孫を名乗った場合は、一度、電話を切って、自分が持っている孫の番号に電話をかけて、本当に孫からの電話だったのか確認する。
・保釈金を求める人がいても、送金したりクレジットカード情報を渡したりしない。
・かかってきた電話について、信頼できる友人や家族の意見を聞く。

同時に、高齢者を家族に持つ人に対しても、高齢者に注意を促すようにと警告している。

加害者とみられる男性がセキュリティカメラに録画されていた。


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第60回 「自己主張」の裏表

 日々起こる社会現象には必ず表裏の両面があるものだ。一方から見れば「よし」と思うことも、反対の側面から観察すれば、必ずしも賛成出来ず「如何なものか」と感じることは多々あるのが常である。

 政府が規定するワクチン接種の義務化、特に米加間を行き来するトラックドライバーに課したことから始まった首都オタワでのデモは、1月28日から始まり3週間近く続いた。米加間の物流に欠かせないアンバサダー橋を無数の大型トラックが埋め尽くし、市内を始め近隣の人々の生活は大変な悪影響を被った。今週には一応鎮静化したようだが、スッキリと解決したとは見受けられない。

 この間世論は賛否両論に分かれたが、デモ隊たちは「国民の持つ権利の自由を政府に支配されたくない」と主張し続けた。コロナの蔓延を出来るだけ最小限に抑えたい政府は、接種することを推し進めているが、「人権」の立場から見ると憤懣やるかたないのである。

 目に見えないコロナの病原菌に世界中が怯えるようになってから丸二年。予防のためにワクチン接種を三回打つことが日常化しているが、だからと言って絶対に罹患しないと言う保障はなく疑問点も多い。年明け早々には接種が完了していたツルドー首相でさえも、月末に陽性になった自身の子どもからうつされたとのことで数日間自主隔離をした。

州都ビクトリアでのデモ 

 オタワに比べ規模こそ小さいが、BC州の州都ビクトリア市の州議事堂の前でも、デモ隊が奇声を上げる日々が今も続いている。中にははるばる島の北方の町キャンベル・リバーから参加した女医さんもいた。医療者側の言い分として彼女は「私はワクチン接種に反対ではない。実際のところ自分も受けているが政府が強制するのには納得が行かない」と主張。「政府は国民に十分な情報を与えた上で、後は個人がそれぞれの立場から決定することが大事」と言う。自分の患者にはinformed consent(同意書)を実施しており、「個人の生き方は個人が決めるべき」との立場をとる。

 自己主張の強い国民性が如実に表れており、一口にデモと言っても、それぞれの立場から参加していることが分かる。「権利」をトコトン追及するこうした言い分は、一見身勝手のようでもあるが、反面では理にかなった考えであることも理解出来る。

他人の気持ち

 昨秋ノーベル物理学賞を受賞したプリンストン大学の真壁叔郎氏は、日本の国籍を捨て米国籍になってまで自分の研究を続ける理由を「(日本人は)とても調和的な関係を作っています。日本人が仲がいいのはそれが主な理由です。ほかの人のことを考え、邪魔になることをしないようにします」と言い「なぜそう言うかというと、彼らは他人の気持ちを傷つけたくないからです。だから他人を邪魔するようなことをしたくないのです。アメリカでは自分のしたいようにできます。他人がどう感じるかも気にする必要がありません」とインタビューで答えた。

 北米で生活していると、真壁氏のこの言葉は身に染みて分かるが、反面それが自分本位な利己主義から来る場合も多いにあることにも気付く。

 日本もこの二年間政府が次々と打ち出す、時には“一貫性のない措置“に国民は翻弄され続けている。それによって商売を畳んだ人も続出しているが、規制反対デモなどは絶対に起こらなかったし、これからも決して起こらないことを確信する。

 “それが日本人なのだ”と言えようが、特にオーソリティに対しては驚くほど従順なことに、時々は苛立たしさを覚える。そう感じるのは私一人ではあるまい。

半分お祭り気分さえ感じられる州議事堂前のデモ。悲壮感のない所がカナダ的か?Photo courtesy of Keiko Miyamatsu Saunders
半分お祭り気分さえ感じられる州議事堂前のデモ。悲壮感のない所がカナダ的か?Photo courtesy of Keiko Miyamatsu Saunders

(2月14日記)

サンダース宮松敬子 
フリーランス・ジャーナリスト。カナダに移住して40数年後の2014年春に、エスニック色が濃厚な文化の町トロント市から「文化は自然」のビクトリア市に国内移住。白人色の濃い当地の様相に「ここも同じカナダか!」と驚愕。だがそれこそがカナダの一面と理解し、引き続きニュースを追っている。
URL:keikomiyamatsu.com/
Mail:k-m-s@post.com

ギャシー・ジャック像を、先住民女性への暴力に抗議する人らが引き倒す

ギャシー・ジャック像撤去を求める「Change.org」ページ。Photo courtesy of © Change.org
ギャシー・ジャック像撤去を求める「Change.org」ページ。Photo courtesy of © Change.org

 バンクーバー発祥の地ともいわれるガスタウン。その名称の由来となったギャシー・ジャックの像が2月14日、先住民の女性らに対する暴力に抗議する、Women’s Memorial March(ウィメンズ・メモリアル・マーチ)の参加者らに引き倒された。

 ギャシー・ジャックとは、イギリス人の蒸気船の船長で、1867年にガスタウンで酒場を始めたジャック・デイトンのこと。おしゃべりだったことから、あだ名はギャシー(おしゃべり)・ジャックだったという。その後、一帯がガス(ギャス)タウンと呼ばれるようになったのは、彼にちなんでのこととされている。

 ガスタウンは港に近く、港湾労働者や船乗りらが集まる繁華街となり発展していき、バンクーバーも1886年4月6日に市となった。銅像は1970年代前半にガスタウンを再活性しようとしたデベロッパーが中心になって制作。その後、バンクーバー市に寄贈された。

 一方、近年、銅像の撤去を求める運動が活発になってきていた。

 ギャシー・ジャックは先住民スコーミッシュ族の若い女性と結婚。その女性が病気になり死亡したあと、当時12歳だった女性の姪、Quahail-ya(英語名マデリン)と再婚した。 ギャシー・ジャックは再婚したとき40歳だったという。Quahail-yaは息子を出産したが、3年後、15歳のときに逃げ出した。

 2020年6月にも銅像にペンキがかけられる事件があったほか、オンラインで署名サイト、「change.org」で撤去を求める活動が始まると、5日間で1,500人の署名が集まった。現在、2万人以上が活動への賛同を示している。

 2022年のWomen’s Memorial Marchはギャシー・ジャック像があったメープル・ツリー・スクエアに到着。参加者らが植民地支配や小児性愛について糾弾する声をあげる中、午後1時15分ごろに銅像はロープで引き倒された。さらに、倒れた銅像はペンキで真っ赤に塗られた。

 バンクーバー市のケネディ・スチュワート市長は、銅像撤去やギャシー・ジャックが行ったことについての認識について、スコーミッシュ・ネーションと話し合っていたと、ツイッター上で述べた。そして14日の行為は危険で、市の努力を損ないかねないものとして非難した。

 スコーミッシュ・ネーションも、銅像撤去やQuahail-yaの尊厳回復に向けて、バンクーバー市やQuahail-yaの子孫と話し合いを行っていたことを明らかにした上で、抗議グループの行為について遺憾の意を示した。一方、先住民の女性らに対する暴力に抗議するWomen’s Memorial Marchの運動を支持するという。

 Women’s Memorial Marchは、行方不明になったり、殺害された先住民女性を追悼し、これらの事件が発生する状況に抗議して、1991年から毎年2月14日に行われている。

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