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「大好きなアニメ、スポーツ、日系人の誇り…」JALTA第25回お話発表会が開催される

第25回の節目を迎えたJALTA主催「お話発表会」。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
第25回の節目を迎えたJALTA主催「お話発表会」。参加生徒、前列中央に髙橋総領事、その左横(左端から5番目)にベイリー会長、各学校の先生と一緒に。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 JALTA日本語教育振興会主催「第25回お話発表会」が2月9日、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館で行われた。これは同会加盟の日本語学校で学ぶ生徒たちが「お話」を披露する毎年恒例のイベント。学校間の垣根を超えて学習成果を発表する。

 当日は在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事も出席。開会にあたり「カナダの学校に通いながら日本語の勉強を続けるのは、決して簡単なことではないと思います」と語り、「日本語を学べばアニメや小説を深く味わったり、日本での楽しみも増えるでしょう。今日の発表は大切な一歩だと思います。ぜひがんばってください」とエールを送った。

「給食の匂いでお腹が空いてしまいました」と体験入学について話したアルデザ瑳蘭さん。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
「給食の匂いでお腹が空いてしまいました」と体験入学について話したアルデザ瑳蘭さん。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 「お話」は最初に小学科の生徒たちが発表。アルデザ瑳蘭(さら)さんは、お母さんが通った日本の小学校での体験入学について話した。一番びっくりしたのは学校にプールがあったこと。ほかにも毎日温かいご飯が食べられる給食がうれしかったなど、カナダで育った子どもならではのいきいきとした視点が盛り込まれていた。

アニメ「ワンピース」について熱心に話す増永太陽君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
アニメ「ワンピース」について熱心に話す増永太陽君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 「ぼくのすきなもの」で、大好きな日本のアニメについて話したのは増永太陽君。特に「ワンピース」がお気に入りで、その魅力について話した。どんな困難にも仲間と一緒に力を合わせて前に進む主人公たちの姿を見て、自分も「諦めずにがんばる人になりたい」という太陽君に、会場から大きな拍手が送られた。

サッカーからたくさんのことを学んだという佐藤かいと君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
サッカーからたくさんのことを学んだという佐藤かいと君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 サッカーの日本代表になるのが夢だという佐藤かいと君は、「ファイト!」というテーマでサッカーから学んだことを発表した。あるトーナメントで敗北寸前で意気消沈しているチームに「まだ終わりじゃないぞ!」と声をかけたというかいと君。その言葉でチームメートは元気を取り戻し、逆転勝ちを果たしたという。このトーナメントで、ファイトという言葉には「最後まで諦めないことや全力を出す」という意味も含まれていることを学んだと話した。

スピーチ前に礼儀正しく一礼した永井フィオ君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
スピーチ前に礼儀正しく一礼した永井フィオ君。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 基礎科では5人が発表した。赤い野球のユニフォームで登場した永井フィオ君は、戦前にバンクーバーで活躍した日系カナダ人野球チーム「バンクーバー朝日」について話した。2014年に誕生した「新朝日」メンバーのフィオ君は「日系カナダ人として誇りを持って練習や試合をがんばっています」と胸を張った。

ジブリ映画が大好きだというチューひびきさん。堂々とした話しぶりと豊かなジェスチャーが印象的。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
ジブリ映画が大好きだというチューひびきさん。堂々とした話しぶりと豊かなジェスチャーが印象的。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

 最後の中高等科の発表は、身近な題材ながら深く掘り下げた内容だった。チューひびきさんは宮崎駿監督の映画「君たちはどう生きるか」を取り上げ、コミュニケーションや現実の世界に向き合うことの大切さを話した。

 発表後のあいさつでJALTAのベイリー智子会長は「みなさんが強く強く日本に繋がっていることが伝わって、先生の心に響いてきました」と生徒たちに語りかけた。日加トゥデイの取材には「トピックがバラエティに富んでいて、さらに私たちが気づかないような分析もあったりと、とても楽しかったです。生徒たちは、ほかの人の発表も素晴らしい態度で聴いていましたね」と笑顔を見せ、発表会の成功には保護者や先生たちのサポートが欠かせなかったと感謝した。

参加生徒と「お話」タイトル

小学科

  • 「たいようけいの ほし」コスコありさ(Arisa Cosoco)
  • 「ピアノ」古市泰(Ty Furuichi)
  • 「中新井田小学校でたいけんしたこと」アルデザ瑳蘭(Sara Aldeza)
  • 「ぼくのすきなもの」増永太陽(Taiyo Masunaga)
  • 「フランスのおもい出」渡部乃仁香(Nonika Hall)
  • 「カナダにあったらいいなと思う日本のもの」山本依真(Emma Yamamoto)
  • 「ファイト!」佐藤かいと(Kaito Sato)
  • 「47都道府県」木川恵莉花(Erika Kikawa)
  • 「ホッケー」松尾恵実(Emi Matsuo)
  • 「カナダと日本の小学校のちがい」堀谷翼(Tsubasa Horiya)

基礎科

  • 「バンクーバーあさひ」永井フィオ(Fio Nagai)
  • 「いぬとねこ」グエン・ハアン(Ha-An Nguyen)
  • 「バンクーバーで一番好きな場所」ブラックモア・マーカス(Marcus Blackmore)
  • 「日本の思い出」セン・ステファニー(Stephanie Cen)
  • 「日本とカナダの文化の違い」カプール・ケシャブ(Keshav Kapoor)

中高等科

  • 「日本語の鉄道について」高岡健太(Kenta Takaoka)
  • 「私たちはどう生きるか」チューひびき(Hibiki Chu)
発表後には劇団「座・だいこん」がステージに。まどみちおの「ちがいくらべ」を、赤鬼や青鬼たちがコミカルに演じた。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today
発表後には劇団「座・だいこん」がステージに。まどみちおの「ちがいくらべ」を、赤鬼や青鬼たちがコミカルに演じた。2025年2月9日、バンクーバー市。Photo by Japan Canada Today

(取材 宗圓由佳)

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「伝統を蘇らせ、未来へ繋ぐ」ハイダ族アーティスト、クリスチャン・ホワイトさん回顧展

クリスチャン・ホワイトさんの作品「Reprica Bentwood Box」(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
クリスチャン・ホワイトさんの作品「Reprica Bentwood Box」(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 モニュメント彫刻、緻密なアージライト(粘土質岩)彫刻、ジュエリーなど多彩な作品で知られる先住民ハイダ族のマスター・アーティスト、クリスチャン・ホワイトさん。その50年の軌跡をたどる回顧展「Kihl ‘Yahda Christian White: Master Haida Artist」が、現在バンクーバー市ダウンタウンにあるビル・リード美術館で開催されている。

 ハイダ族はブリティッシュ・コロンビア(BC)州北西部にあるハイダ・グァイ(旧クイーン・シャーロット島)周辺に居住する先住民族。独自の言語を持ち、優れた工芸品や航海術などで知られている。

 ホワイトさんの作品の多くはハイダ族の伝統的なストーリーから生まれたもの。「私の作品には祖先の精神が宿っている。彼らが作ったものにインスパイアされている」と話す。

 その一端が垣間見える作品が「Reprica Bentwood Box」だ。これはハイダの伝統的な文様を施した木の箱。美しく彩られた箱はハイダの人々の生活になくてはならないもので、食料を保存したり、衣装を入れたり、カヌーに積み込んだり、まさに「生まれてから埋葬されるまで(使う)」と言われてきた。

 その隣には似たような文様を持つ古い箱の一部が展示されている。ホワイトさんの「Reprica Bentwood Box」は、この二つの面しか残されていない箱からインスピレーションを受けたものだという。

 「これを基に新しい図柄を作成しました。元の文様は完全に左右対称ではなかったので、片側をトレースし、それを反転させたのです」とホワイトさん。

 作品の背景には先住民ハイダ族の辛い過去がある。この古い箱は、宣教師たちの眼を避け、壊れた家屋の壁の後ろに隠されていたものだった。同展のゲスト・キュレーターで自身もハイダ族のルーシー・ベルさんは「私たちの祖先はポトラッチ(祭りの儀式)を禁止され、いろいろなものを隠さなければならなかったのです」と語る。

壁に隠されていた古い箱。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
壁に隠されていた古い箱。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 苦難の歴史を経て、ホワイトさんは長年ハイダ文化の興隆に力を入れてきた。

 彼のアートも、その独自の文化の中に息づいている。会場でひときわ目を引く天井から吊り下げられた巨大なレイバン(ワタリガラス)のマスクは、2022年のポットラッチに登場したものだ。

 「大勢の人々の前にこのマスクが現れた瞬間…それはパワフル・モーメントでしたね。私も自分のドラムを激しく叩いていました」

 レッドシダーを使ったマスクは長さ約8フィート(約2メートル43センチ)にも及ぶ。

巨大なレイバンのマスク、くちばしの部分は開閉する。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
巨大なレイバンのマスク、くちばしの部分は開閉する。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 「Raven Transformation」も見る者を圧倒する大型のマスクだ。大きく広がった羽根の裏側は黒く塗られており、閉じたときにはレイバンになるが、開くと擬人化された月に変身する。オックスフォード大学の博物館に所蔵されているハイダ・アーティストのチャールズ・イーデンショーの作品に影響を受けたものだという。

レイバンから月へと変身する「Raven Transformation」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
レイバンから月へと変身する「Raven Transformation」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 作品の他には再現されたホワイトさんの「作業机」も展示されている。机の前には家族の写真と共に釣りのための海図や潮見表が貼られ、ハイダ族の暮らしと自然との繋がりを彷彿とさせる。

主にアージライトの彫刻を作っているというホワイトさんの自宅の作業机。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
主にアージライトの彫刻を作っているというホワイトさんの自宅の作業机。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 同展の開催にあたりホワイトさんには「自分だけの展覧会にはしたくない」という意向があったとベルさんは話す。それを受けて、展示は父の故モーリス・ホワイトさんやホワイトさんが指導する次世代のアーティストなどにも焦点を当てている。

 ホワイトさんは父のモーリスさんの影響で14歳から彫刻を始めた。同展ではモーリスさんの手によるアクセサリーも展示されている。ペンダントはホワイトさんがアンティークショップで見かけて買い戻したものだという。また後進の育成にも力を入れ、多くの作品で弟子が制作に関わっている。

父モーリス・ホワイトさんによるイーグルのペンダント(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
父モーリス・ホワイトさんによるイーグルのペンダント(右)。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
弟子のダニエル・ルイーズ・アラードさん(右)が着色を手掛けた「Ts’aan Xuujii (Sea Grizzly)」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
弟子のダニエル・ルイーズ・アラードさん(右)が着色を手掛けた「Ts’aan Xuujii (Sea Grizzly)」。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

 一方で、ハイダでは「新しい文化」も生まれている。会場の中ほどに置かれたレイバンやサンダーバードをあしらった鮮やかな黒と赤のローブ。これはホワイトさんの姪のハイスクール卒業を記念して、ホワイトさんが図柄をデザインし、彼の姉妹が作ったものだ。

 「高校卒業にローブを贈り、小さなポトラッチを開催するのが、ここ数十年のハイダの伝統になっています。これは他のコミュニティにも広まっているんですよ」

 過去に新たな命を吹き込み次世代へと繋げていくホワイトさんとハイダの人たち。そのエネルギーとハイダ族の今を感じられる同展は来年2月1日まで開催されている。

Kihl ‘Yahda Christian White: Master Haida Artist

期間:2025年2月1日〜2026年2月1日
時間:冬期間(10月~5月)火曜から土曜 10時~5時
会場:Bill Reid Gallery of Northwest Coast Art(639 Hornby St, Vancouver)
入場料など詳細はウェブサイトを参照:https://www.billreidgallery.ca/

高校を卒業したハイダの若者に贈る手作りのローブを説明するホワイトさん。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today
高校を卒業したハイダの若者に贈る手作りのローブを説明するホワイトさん。2025年1月31日、バンクーバー市ビル・リード美術館。Photo by Japan Canada Today

(取材 宗圓由佳)

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