バンクーバー国際空港に日本庭園の造園が進んでいる。バンクーバー日系ガーデナーズ協会(VJGA)がバンクーバー国際空港公団から受注したもので、最終仕上げが終わると、カナダの西の玄関口で本格的な枯山水の日本庭園が世界中の旅行者を出迎える。
バンクーバー日系ガーデナーズ協会の伊澤敏之会長と大草広和プロジェクト委員長にZoomで話を聞いた。
サステナブルな枯山水庭園を空港に
-バンクーバー国際空港に日本庭園ということですが、空港のどの辺りにできるのでしょう。
国際線でバンクーバーに着いて外に出て、自動車で迎えに来てもらう人が待つ場所の横になります。以前は大きな樹が植えられていた細長い公園がありました。
-バンクーバー国際空港に日本庭園と聞いて、日本人としてはうれしかったのと同時に、驚きました。日本庭園ができることになった経緯を教えてください。
現在あるバンクーバー国際空港拡張工事にも関わったヘンリー・ワカバヤシさんに紹介していただきました。
日本庭園ができた場所には拡張工事が計画されていましたが、それがとん挫していました。この工事現場をどう美化するかというとき、以前、空港にあった小さい池の修復も必要という話に、そして枯山水の日本庭園ならサステナビリティというキーワードにも合っているということになりました。
-枯山水がサステナブルというのはどういうことでしょう?
たとえば庭園に人工的な池を造ると、ポンプが必要で電力を使います。また浄化に薬が必要になり、環境にやさしくないとも考えられます。このようなこともあり、近年の都市計画において池を造るということは「ハードルが高い」のが現状です。
一方、枯山水だと石や砂などを用いて水の流れを表現するので、環境にも優しいということになります。
元々あった大きな石を使うこともできるので、コストも抑えることができました。現場にあった、たくさんの大きな石をそのまま景石として使いました。これらの石は25年前にウィスラーから空港に持ってきたものです。
-完成までどれぐらいの時間がかかっているのでしょうか? プロジェクトはいつ始まったのでしょう?
空港公団との最初のミーティングは2019年5月だったので、かなり時間がかかっています。空港関連の工事にはさまざまな規制があり、それらを全てクリアして進める必要がありました。
現段階で8割方できているのですが、これから電気工事やスプリンクラーの工事を行い、それが終わってから最終的に仕上げます。今年いっぱいぐらいかかるかもしれません。
-どのような庭園になるのか教えてください。
空港は、急いで飛行機に乗って、あるいは飛行機から下りて、急いで帰る人が多い場所です。空港を利用する人の目を楽しませ、記念撮影もできるよう、観光名所にできたらと考えてデザインしました。ライトアップもされます。
紋切り型になりがちな、つくばいや灯篭は避けて、国際的な空港ですので、日本庭園の基本を押さえながら普遍性を強調しました。
また、苔の緑を中心に、水仙、桜、シャクナゲ、ツツジ、アジサイ、日本のモミジと、季節の色を楽しむことができるようにしています。
-最後に一言お願いします。
戦時中、強制移動させられた日系カナダ人が、BC(ブリティッシュ・コロンビア)州の沿岸地域にようやく戻ることができたのは1949年のことでした。そして、UBC(ブリティッシュコロンビア大学)の新渡戸ガーデンの造園がきっかけでバンクーバー日系ガーデナーズ協会ができたのは1960年です。
カナダ勲章(オーダー・オブ・カナダ)の叙勲者ヘンリー・ワカバヤシさんの紹介で、協会が60周年を迎えた2019年にプロジェクトが始まりました。これらのことからも、戦前からの日系コミュニティが築きあげてきた大きな流れ、日系コミュニティのチームワークと協会の成熟をひしひしと感じています。
我々協会も、新渡戸ガーデン、PNEのモミジガーデン、日系文化センター・博物館の日系ガーデンと各種プロジェクトで成功して、力を付けてきていて、そしてそれが認められてきていると思っています。
今回の日本庭園もバンクーバー空港公団の方たちが想像していた以上の出来だったようでとても好評です。
-オープンの日が待ち遠しいですね。ありがとうございました。
バンクーバー日系ガーデナーズ協会
The Vancouver Japanese Gardeners Association
1959年設立、非営利団体。建設、保守、教育技術を通じて日本庭園を促進することを目指し、プロの庭師と造園家により構成。
https://www.vanjapangardeners.com/
(取材 西川桂子)
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