リメンバランス・デーの11月11日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー市のスタンレーパーク内にある日系カナダ人戦没者慰霊碑前では、戦没者に対する追悼式典が執(と)り行われた。
今年は1941年12月の真珠湾攻撃によりカナダが日本に宣戦布告してから80年目にあたる。その年から日系カナダ人にとっては苦難の抑留生活が始まった。
コロナ禍で約200人が規制線の外で参列
新型コロナウイルス感染拡大が続いているため会場内への参列者は50名に制限された。このため200人程の一般の人たちは、規制線の外から祈りを捧げていた。
式典は午前10時30分から、司会のデビッド・イワアサさんのあいさつで始まった。ケビン・タカヒデ・リーさんの「O Canada」の斉唱のあと、出席した各団体の代表者が紹介され、第二次世界大戦当時の日系カナダ人兵士らのビデオ映像が、会場に設置されたモニターに流された。
続いて金光教バンクーバー教会のロデリック・ハシモト牧師によるスピーチがあり、トランペット吹奏のあと黙祷(もくとう)が行われた。
午前11時になるとバグパイプの演奏が始まり、再びトランペットが吹かれたあと、アイリーン・キタムラさんの朗読があり、デビッド・ミツイさんにより日系カナダ退役軍人が投票権を獲得してから90年目にあたる趣旨のメッセージが述べられた。
続いてヘイディー・フライ議員ら3人の参列者がスピーチを行った。
最後に各団体の代表者が慰霊碑台に花輪を献花し、ケビン・タカヒデ・リーさんよる「God Save The Queen」の唱歌で約1時間の式典は終了した。
解散後も一般の人たちが、ポピーのバッジを慰霊碑台に供えていた。
「近年、カナダに来られた皆さんにも関心を持っていただきたい」
式典に参列した羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事は「こちらに着任してから4回目の参列です。リメンバランス・デーは、当時苦労された日本人移民や日系カナダ人の方たちに思いをいたす大切な行事です。近年になって永住権などでカナダに来られた日本の皆さんにも、彼らの歴史に関心を持っていただければと思います」と感想を述べた。
「自分自身を大切にして、平和な社会を継続させる努力を忘れないで」
第二次世界対戦でヨーロッパへ出兵した祖父を持つ日系4世のマイク・ヤマウチさん(29)は「今はコロナ禍によって社会の中で経済に影響が出て、人々の言動に人種差別に偏(かたよ)ったナショナリズムが現れています。しかしこれらは、現代社会への警鐘ではないでしょうか。人々に人生で何が大切かを教えてくれているのだと思います。
過去に起こったレジデンシャル・スクールにおける子どもたちへの残虐行為についても、先住民コミュニティーに対して、やっと和解が認められるようになりました。
最近では在宅勤務やズーム会議の導入などで、日常生活に不必要な行動も見直されはじめ、人々は雇用主に立ち向かって公正な扱いを求めるようになりました」と話したあと、「私にとって、人生で最も大切なものは家族です。戦争があった時代に私の家族はほとんどの所有物を奪われ、コミュ二ティーもばらばらにされて収容所に送られました。これらのことから私は、自分の築き上げた財産や、今まで続いて来た家族や地域との関係を大切にすることを教えられました」と語った。
若い人たちに対しては「たとえ他の人を混乱させたとしても、自分にとって真に意味のある物事を語り、最善であるために戦うことが重要です。自分自身を大切にして、平和な社会を継続させる努力を忘れないでほしいと思います」と訴え、「過去に祖先が何を経験してどのように苦難を乗り越えて来たかを知り、より良い未来を作るためにも、年長者から学ぶことは多いのではないでしょうか」と述べた。
2021年11月11日のリメンバランスデーの中継動画は、日系文化センター・博物館のユーチューブで現在でも視聴できる。Remembrance Day 2021 at the Japanese Canadian War Memorial in Vancouver, live stream
献花団体(敬称略・順不同)
◎日系カナダ退役軍人第9部隊
◎S−20及び二世在郷軍人会
◎In honour of Roy Kawamoto
◎カナダ政府
◎在バンクーバー日本国総領事館
◎王立カナダ騎馬警察(RCMP)
◎バンクーバー市警察
◎全カナダ日系人協会
◎日系文化センター・博物館
◎バンクーバー市
◎バンクーバー市公園管理局
◎日系市民協会
◎隣組
◎バンクーバー日本語学校
◎BC浄土真宗仏教寺院
◎金光教バンクーバー教会
◎バンクーバー日米合同教会
◎バンクーバーホーリークロス教会
◎生長の家バンクーバー
◎North American Daughters of the Revolution
(取材 古川透)
合わせて読みたい関連記事