ブリティッシュ・コロンビア(BC)州ブリティッシュコロンビア大学(UBC)アジアンセンターで、3月5日、第34回BC州日本語弁論大会が行われた。今回は、新型コロナウイルス対策のため、会場は大会出場者と関係者のみとし、一般の聴衆者は、オンラインストリーミングによって参加した。
発表者は、BC州、ユーコン準州に居住し、日本語を母国語としない人が対象。各地から応募し、予選を通過した28人が参加。それぞれに自らの思いを熱くアピールした。
(共催:BC州日本語弁論大会実行委員会、在バンクーバー日本国総領事館)
思わず「うまい!」と感じる流暢な日本語で
羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事も「みんな年々日本語が上手になっているようですね」と感心するように、すべての発表者が実に自然に日本語を発音していた。これは、アニメやコミックなどを、さまざまなネット環境で、音声や画像を手軽に得られるようになったことや、日本への関心によるものだろう。
また、スピーチのテーマ設定も「過去の反省と未来へ向けた新たな行動目標」「新型コロナ禍にあって逆に発奮しての人生目標」「持続可能な社会づくり」「弱者への心遣い、ダイバーシティの考え方」など、現在の状況、トレンドを的確にとらえて、それぞれの思いを熱く語っていた。
審査員泣かせ、大幅な時間超過の審査会
いずれ劣らぬ発表者。誰を推すべきか迷いに迷った審査会の様子がうかがえた。評価のポイントは、聞く人に感動を与える内容やスピーチの説得力で、日本語学習に対しての情熱や努力の成果を審査した。この厳しい弁論大会が34回も継続していること、毎回30人前後の最終出場者があること、その予選会も含めれば日本語学習の裾野の広がりは大きい。
UBCアジア研究学科長のシャラリン・オルバー教授も「日本語学習への関心は、凹凸(おうとつ)はあっても今後も続くと思う」と語った。
授賞式のあいさつで羽島総領事は、発表者へ「ゆっくりお休みください」とやさしい言葉をかけ、審査員の先生らへのねぎらいの言葉、そしてボランティア、スポンサー、関係者へ感謝の意を述べた。
各部門1位受賞者の発表内容の要約
<高校部門>
Yasmin Hassanさん
(ヤスミン・ハッサンさん)
バーナビーノースセカンダリースクール
「ドラマクイーン」
私は、幼いころ大変なわがままで、情緒不安定の「ドラマクイーン」だった。それが、ピアノ教室に入ったことで、集中でき、自分の心の中を表現できるようになり、すっかり落ち着くようになった。
<大学初級部門>
Karli Messerさん
(カーリ・メッサ―さん)
UBC
「見えない危機」
現代社会は、都市化が進み、土をコンクリートとアスファルトで覆いつくしてしまった。下の地中には、無数の微生物が生息している。微生物は植物を育てるのに欠かせないが、一刻一刻消されようとしている。これを止めるために、一人でも多くの人に「土の話」をしてほしい。
<大学オープン部門>
Michelle Anne chengさん
(ミシェル・アン・チェンさん)
UBC
「今の帯は何色ですか」
私は、テコンドーを習っている。初めのころは、早く黒帯になることばかり目指していた。そんな私を見かねた先生から、帯には白、黄、緑、青、赤、黒の色があり、成長に合わせて獲得するもの。まずは目前の目標を達成し、その自分をほめ、次を目指しなさい、と教えられた。
<大学中級部門>
Ingrid Abigail Masさん
(イングリッド・アビゲール・マスさん)
UBC
「小さな勝利」
私はバドミントンを練習しているが、友だちに勝てず、くやしい思いをしながら練習した。その結果、やっとひとつスマッシュを決めた喜びは大きかった。そんな小さな進歩の喜びを一人でも多くの子どもたちにも教えてあげたい。
<大学上級部門>
Tielia Youngさん
(ティエリア・ヤングさん)
UBC
「カンフーはできません」
カナダへ来て間もないころ「カンフーできるだろう」とよく言われた。中国に帰ったとき、銀行カードのトラブルで係員に話をしていると、一般に言われる「帰国子女はゴーマンだ」と見られた。そんな固定概念で見る人がなんと多いことか。たとえば、ホームレスの人をひとくくりで見るのではな く、心の中で架空の名前で呼んでみてはどうだろう。その印象の違いは大きい。
(取材 笹川守)
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