JALがデジタル健康証明書アプリ実証実験開始
日本航空(JAL)が、新型コロナウイルス感染症の検査結果やワクチン接種歴をスマートフォンで確認できるデジタル健康証明書アプリの実証実験を4月2日から開始した。
JALが検証を始めたのは 「コモンパス(CommonPass)」、「VeriFLY」、「IATAトラベルパス(IATA Travel Pass)」の3種類で、運航便への導入に向けての取り組みだという。
ワクチン接種歴も確認するため「ワクチンパスポート」と呼ばれることもあるデジタル健康証明書について、各アプリのウェブサイトで内容を調べるとともに、日本航空海外広報部に導入への動きについてEmailで話を聞いた。
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政府や航空会社が連携して開発が進むデジタル健康証明
新型コロナウイルスの感染拡大により、現在世界の多くの国や地域が、渡航前のPCRテストの実施と陰性証明の取得を求めている。現時点では紙の証明書だが、デジタル化しようという動きがある。海外渡航の際にデジタル健康証明書が必要な時代が来ているという。
また、PCRテストの陰性証明が中心の健康証明も、新型コロナウイルスワクチンの接種が進むと、接種の有無も証明を求められる可能性もある。
この「デジタル健康証明書」は政府や航空会社と連携して数種類の開発や導入が進んでいる。その主なものに、「コモンパス」、「VeriFLY」、「IATAトラベルパス」がある。
「コモンパス」は世界経済フォーラムなどが開発するアプリで、JAL、全日空(ANA)、キャセイパシフィック航空、ルフトハンザ航空、カンタス航空、スイス航空、ユナイテッド航空などが参加している。スイスの非営利組織であるコモンズ・プロジェクト(The Commons Project)が世界経済フォーラムと連携して推進している。
「VeriFLY」はアイルランド発祥で、現在アメリカに本社を置く、世界的に生体認証サービスを展開するデオン(Daon)社が開発したアプリ。ブリティッシュ・エアウェイズ、アメリカン航空、イベリア航空などが参加している。
「IATAトラベルパス」はその名のとおり、国際航空運送協会(IATA)主導のアプリで、シンガポールのチャンギ国際空港で2021年5月1日から、本格運用の開始が決まっている。
JAL、証明書アプリ導入に向けて取り組みを開始
JALでは、主なデジタル健康証明書の3種類、コモンパス、VeriFLY、IATAトラベルパスについて、導入に向けて検証を開始したという。渡航先によって異なるアプリを利用することになるため、3種類の検証を始めたと説明している。
コモンパス
JALのプレスリリースによると、コモンパスは「医療機関から発行される検査結果が受入国の入国基準を満たしているかを検証し、検査結果をデジタル証明する仕組み」だという。
JALでは、東邦大学羽田空港第3ターミナルクリニック(ハワイ州の指定医療機関)でPCRテストを受けた結果をアプリに連携させ、空港チェックインカウンターでの確認などを実施した。
対象となったのは4月2日JL074便(羽田発21:00ホノルル着09:30)と、4月5日JL711便(成田発17:55シンガポール着翌00:20)だった。
4月2日のホノルル便に対しては、ハワイ到着後の検疫審査を出発時に済ませる「プリクリアランス(事前検疫審査)」(3月26日より開始)も同時に組み合わせて実施している。
VeriFLY
JALによると「アメリカの一部路線では既に導入されている」アプリで、「アメリカン航空や、デンバー国際空港が導入するなどの大手の実績もあり、US本土の入国検疫でも利用」されている。
「検査結果などの登録や渡航先の入国要件に合わせた準備書類などの確認を、事前に参照・入力・管理」できるアプリで、「登録した情報に基づく渡航資格をアプリ画面に表示させ、チェックインカウンターにて提示することで、搭乗手続きをスムーズに進めることが可能となります」
JALでは、運航する日本と北米間の一部路線で、VeriFLYを利用した搭乗手続きを4月下旬から開始予定。現在調整中のため、具体的な路線については回答を受けることはできなかったが、決まり次第Webサイトで提示していく予定だという。
試験として北米の一部路線から開始して、評価を行なった上で、全路線への導入を検討する。米国本土のみではなく、ハワイも検討対象に含まれている。
IATAトラベルパス
国際航空運送協会(IATA)主導ということで、IATAトラベルパスには、JALを含む「世界23社の航空会社が実用化に向けた取り組みに参加」しているという。
医療機関から検査結果などを受け取る仕組みと、結果を踏まえて入国要件を満たしているかの検証ができるようになるというもの。JALでは「3月15日よりIATAトラベルパスの試験導入プロジェクトに参画している」とのこと。試験導入は5月下旬より一部路線で予定している。
IATAトラベルパスでは、パスポートを利用した本人認証、医療機関からPCR検査結果がアプリに送信でき、アプリ画面での渡航先入国要件の閲覧、空港チェックインカウンターでの渡航資格の確認などができるようになる。
ポストコロナの渡航に向けて
今回の取り組みは、ポストコロナおいて、安全・安心でスムーズな渡航の実現を目指してのものだという。
JALでは
1.医療機関が発行した新型コロナウイルス感染症の検査結果や、渡航先の入国要件・渡航資格などを、渡航者のスマートフォンなどの各種デバイスで確認できるデジタル証明書アプリの導入と普及
2.デジタル証明書アプリを利用した非接触、非対面でのスムーズな搭乗手続き(自動チェックイン)
3.デジタル証明書アプリによる到着国での検疫通過など利用シーンの拡大の実現
を目指す。
「今回取り組みを開始する3つのアプリのうち、現在開発中の コモンパスとIATAトラベルパスは、安全な情報管理と世界共通の規格となることを目指しており、将来世界中のさまざまな空港で利用できる可能性があります。
また、 VeriFLYは、アメリカの一部の路線で既に実用化されており、安全な情報管理に加えて早期導入が可能です。それぞれ特徴をもつデジタル証明書アプリと連携を進めることで、お客さま一人一人のニーズにお応えしながら、安全・安心でスムーズな渡航の実現に向けて取り組んでまいります」(日本航空海外広報部)
全日本空輸(ANA)でも同様の実証試験を行っている。ウィズコロナ、ポストコロナの人の往来の再開に向けて、デジタル証明書の実用化はすぐそこまできている。
(取材 西川桂子)
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