A Future for Memory:
Art and Life After the Great East Japan Earthquake
記憶のための未来 ― 東⽇本⼤震災後のアートと暮らし
東日本大震災発生からもうすぐ10年がたつ。ブリティッシュコロンビア大学人類学博物館(MOA)で2月11日から9月5日まで、展覧会『A Future for Memory: Art and Life After the Great East Japan Earthquake(記憶のための未来 ― 東⽇本⼤震災後のアートと暮らし)』が開催される。
東日本大震災では、東北を中心とする東日本地域がマグニチュード9.0の大地震、津波、福島第一原子力発電所事故と3つの大きな災害に見舞われた。震災を境に何もかもが大きく変わった。
展覧会は物質的な環境が劇的に変わってしまった時、記憶とどう向き合っていくのかをテーマに、震災後の⼈々の⼼象⾵景も含めた移りゆく⾵景に視点を置いている。
開催のきっかけはキュレーター中村冬日(ふゆび)さんの被災地での体験だという。「2011年に被害の⼤きかった宮城県で、RQ市⺠被災地救援センター(⋆注)ボランティアとして救援や復興⽀援活動に携わりました。その中でも被災写真を救済し洗浄する活動に⻑期間で関わったことで、記憶とモノの関係を⾒つめ直すようになりました」
(*注: RQ市⺠被災地救援センターは東日本大震災の被災者救援のための任意団体で、RQはレスキューの略)
展覧会で、東日本大震災は単に東北と呼ばれる地域や⽇本という国だけの話ではなく、世界につながることだと提起している。「この災害によって私たちは⾃然と共⽣する⽣き⽅を再考するようになりました。また、震災の状況下であっても、⼈間にはモノを⽣み出し表現する欲求があり、また同様に⾃然にも⽣み出す⼒があることも知りました」と中村さん。

中村さんは、「東日本大震災では、見える恐怖と見えない恐怖の両方にさらされました。これは現在、私たちが新型コロナのパンデミックで経験しているものとある意味で似ています」と言う。「災害はどんなものであれ、復興には時間がかかります。またその道のりは困難です。芸術は希望を反映します。また希望を共有することで、災害に見舞われたコミュニティで重要な役割を果たしています」と芸術の重要性を語った。
日程
2021年2月11日~9月5日

場所
Museum of Anthropology University of British Columbia(MOA)
6393 NW Marine Drive, Vancouver, BC
ウエブサイト
moa.ubc.ca
出展者

- 岡部昌生(広島と福島で被爆した樹木を用いた作品)
- 港千尋(制作中の岡部氏の写真とビデオ)
- 片桐功敦(華道家。南相馬で活けた花の写真)
- リアス・アーク美術館(気仙沼市の美術館が写真を出展)
- Lost & Found Project(被災写真)
- 「失われた街」模型復元プロジェクト(失われた街や村を1/500の縮尺の模型で復元し、地域に育まれてきた街並みや環境、人々の暮らしの中で紡がれてきた記憶を保存・継承)
- 3がつ11にちをわすれないためにセンター(東日本大震災とその復旧・復興のプロセスを独自に発信、記録していくプラットフォーム。17の映像)
- 「津波レディース」製作委員会(ドキュメンタリー映画)
キュレーター : 中村冬日
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中村冬日さんコメント
震災後も思いましたが、人間は衣食住があれば死にませんが、こんな時だからこそ、芸術や文化の大切さを考えます。
MOAのオープニングは招待状もいらず、入館料も無料となるので、通常は多くの方々にお越し頂きますが、今回はそのような展覧会オープニングは開催できません。
海外からの観光客が訪問できない状況ですので、入館者は減っていますが、それでも連日人は訪れています。年末年始は時間制チケットが売れ切れとなるほど盛況でした。
コロナ禍で一時休館となり、7月に再開してから館内での人数規制をしています。
よって、事前にオンラインで時間制のチケットを購入して頂くことが必要です。詳細はこちらをご覧ください。https://moa.ubc.ca/moa-re-openingnew-procedures-for-a-safe-visit/

(取材 西川桂子)