ブリティッシュ・コロンビア州の北、アラスカの東にあるユーコン準州。北極圏に暮らす先住民のグウィッチン族の言葉で「偉大な川」を表す「ユーコン」が語源となったという。手つかずの大自然が残っている。
仕事でバンクーバーに2018年に赴任してからユーコンに魅せられて、2020、2021年と2度訪れた種村幸治さんに2020年の旅(9月5日から14日まで)について話を聞いた。種村さんの旅のリポートの2回目。
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4日目は「いよいよ」というか、「やっと」ユーコン準州に入る。
アラスカハイウェイはBC州側が97号線、ユーコン準州が1号線。ユーコンに入ってからもしばらくはBC州側に戻ったり、またユーコンに入ったりを繰り返す。そのため州境を通過するたびに97、1、97…と走っている道路の番号が変わり面白かった。
ユーコン州の検問があったのはワトソンレイクという町だった。(注: 種村さんが訪れた2020年9月のユーコンではBC 州、北西準州、ヌナブト準州以外のカナダ住民は、ユーコン到着後14日間の自己隔離が必要だった。そのため州境で検問が行われていた)
在住都市、連絡先、行先、さらに1週間以内にアルバータ州に行ったかも聞かれた。BC州から来たということで隔離は不要。係員から地図や案内誌ももらう。親切で気持ちの良い対応だった。
北に進むにつれ、秋の訪れも早く、紅葉や黄葉が進んでいる。とりわけ黄金色に輝くゴールデンラーチ(カラマツ)が美しい。
この日はホワイトホース泊。バンクーバーからの走行距離はここまでで2,611.2キロ。バンクーバーからアルバータ、サスカチュワン州を越えて、マニトバ州ウィニペグまでが1,871 キロなので、それ以上を走ったことになる。
5日目はついに最終目的地でもあるクルアニ国立公園へ。カナダ最高峰ローガン山(5959m)を頂点に5000m級の山が連なり、世界遺産にも登録されている。また、長さ65kmのローウェル氷河、幅が6km以上もあるカスカウォルシュ氷河など、巨大な氷河がいくつもある。
面積は22,013平方キロメートル。東京都の面積は2,194平方キロメートルなので10倍以上と、とにかく広大な国立公園だ。車やハイキングで訪れることができるのは、手前の前衛峰とその少し先までだ。途中の展望台では、奥の標高4577mのハブバード山、切り立った頂きが印象的な標高4250mのケネディー山が見えるとあったが、残念ながら雨交じりの天気で全く見えなかった。
国立公園の玄関口、ヘインズジャンクションに到着。ビジターセンターやホテルなどがあるが、この日はキャスリーンレイクのキャンプ場泊。国立公園が管理する車で入れる唯一のキャンプ場の中だ。
ユーコンにはブラックベアはもちろん、グリズリーベアも多数棲息している。3日目のリアードリバーホットスプリングスのキャンプ場のような電気柵はなかったが、金属製の食料ストレージがある。クマが食べて、人間の食べ物の味を覚えたりしないようにするもので、食料はこのストレージにおいておく。
焚火をして暖を取る。火がないと寒い。このキャンプ場も9月中旬にはクローズするというから、滑り込みでの滞在となった。
6日目はキャスリーンレイクからそのまま3号線(ヘインズハイウェイ)を南下。再びBC州に入り、さらに米国アラスカ州の国境まで行ってみることにした。
セントエライアス山脈を越えて州境まで全くの無人地帯で、レストエリア(トイレと避難小屋のみ)などはあったが住居はない。壮大な景色を楽しみながら、ついにアメリカ国境到着。アラスカは文字どおり目の前だが、コロナの規制で残念ながら国境を越えることはできなかった。
この日は同僚がホワイトホースで合流。空港まで迎えに行く。ユーコンの州都ということもあり、小さい街ながらもレストランでは美味しい食事が楽しめた。
7日目はいよいよ今回の旅行のハイライト、セスナでの遊覧飛行。4人乗りのセスナで飛行時間2時間のコース。当初10時からで申し込んでいたが、途中でパイロットから午後4時に変更できないか連絡があった。「まぁいいか」とOKする。時間変更の理由はツアーが始まると分かった。もう一人参加希望者がいて、彼女が4時をリクエストしたため変更になったわけだ。
パイロットとしては、1回で3人乗せるほうが効率がよかったのだろう。「そんな理由か!」と思ったが、離陸すると絶景の連続で不満は吹き飛んでしまった。
幅も長さも圧倒的なスケールの氷河が次から次へと目の前に現れる。アラスカクルーズで海側から、氷河が海に溶け落ちるのを見ることができるハブバード氷河、氷河の傾斜部が氷の滝のようになっているアイスフォール、カナダ最高峰のマウント・ローガン(標高5,959m)…。
ローガン付近では飛行するのは高度3,500メートルほどのところだ。空気が薄く、セスナに座っているだけで息が切れてきた。そびえ立つマウントローガンを目の前にすると、その圧倒的な存在に感動する。
(続く)
(取材 西川桂子、写真提供 種村幸治さん)
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