ワクチン接種に関する疑問に答える!BC州ワクチン接種計画リポート後編

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州政府が新型コロナウイルスのワクチン接種計画の追加発表を1月22日に行った。

 400万人を超える州民が対象という大掛かりな接種となるため、州ではNational Advisory Committee on Immunization(予防接種に関する全国諮問委員会)、 州の Immunization Committee(予防接種委員会)、公衆衛生局の委員会などのガイダンスや専門家の助言を受けて計画を準備してきたという。

 ワクチン接種計画について政府発表の内容を、1月22日の発表に基づき、2回に分けてリポートする。前編ではスケジュールを中心にリポートしたが、後編ではワクチンに関してBC州政府がウェブサイトで発表しているFAQについて、一部の質問と回答を紹介する。

 日加ヘルスケア協会理事の田中朝絵医師も「ワクチンについてデマやうわさもあるので正しい情報を得るようにしてください」と言う。田中医師から一部の「うわさ」について話を聞いたのでコメントとして加えた。

ワクチンの効果が現れるのは最初の接種の2週間後

 現在、カナダで承認を受けているのはファイザー社とモデルナ社のワクチンだ。両ワクチンとも2回接種するとその効果は約95パーセントとBCCDCのウェブサイトにある。

 そのほか、
・ワクチンの効果は最初の接種の2週間後に現れ、その効果は90パーセント以上
・ワクチンを開発した会社が推奨する1回目と2回目の接種間隔は21~28日で、21日以前に2回目の接種を受けるべきではない
・一般的には間隔を延ばすことで、長期的なワクチンの効き目が減ることはなく、多くのワクチンで少し長めに間隔を持つことは逆に良いとされる
と説明する。

 一方、ワクチン接種による効果がどれだけ持続するかは現在も研究中で、はっきりしたことは分かっていない。

ワクチン接種後もマスク着用などは必要

 ワクチンを接種しても新型コロナに感染することもあるが、その場合、病状が重篤になる可能性は低いという。

 ワクチンを接種したあと、新型コロナのような症状が出た場合は、 BC self-assessment tool でPCRテストを受けるべきか判断することを求めている。

 接種後も感染の可能性があることから、これまで同様に手を清潔に保つ、物理的距離(Physical Distance)を保つ、マスクを着用する、体調が悪いときは外出しない、州の公衆衛生命令を守るなどが必要とされている。

早すぎたワクチン開発?

 パンデミックが始まって1年以内に開発された新型コロナワクチンについて、不安に思っている人は多い。州政府は新型コロナワクチンに関するウェブサイトで、「あらゆるカナダ人に対しての安全性と有効性を確認した上で、規制や承認プロセスを全てクリアした」として安心を呼び掛ける。

 田中医師も「ワクチンの開発があまりにも早くて心配だという話をよく聞きます。でも、たとえばモデルナ社は新しい会社ですが、10種類ほどのワクチンの開発を進めていてデータは既にありました。新型コロナウイルスのワクチンは急いで作る必要があったため、多くの政府や企業が資金を出しています。こんなに早くワクチンができたのはそのおかげです」と説明する。

 「今回のワクチン開発では、治験・研究期間は数カ月しかなかったので、今のところ長期的なデータはありません。でも、BCCDCのウェブサイトにも書かれていますが、たいていのワクチンの副作用は6週間以内に出るそうです」 

mRNAワクチンがヒトのDNAを変えることはない

 mRNAワクチンがヒトのDNAを変えるのではないかという懸念を示す人がいるが、そのようなことはないという。

 Immunize BCの新型コロナワクチンのウェブサイトでは、その根拠としてアメリカVaccine Education Centerのポール・オィット博士の説明が紹介されている。  

 ・DNAは細胞核内で守られていて、mRNAは核に入ることができないため、DNAを変えることはできない。  
 ・mRNAはDNAではないため、ヒトのDNAを変えるときにはRNAをDNAに変換する必要がある。RNAをDNAに変換するには、一部のウイルスにのみ存在する特定の酵素が必要だが、コロナウイルスにはその酵素が含まれていない。

とする。

 田中医師も「mRNAは遺伝子ではありません。メッセンジャーとしてタンパク質を作る青写真すなわち設計図を届け、その結果、免疫ができます」という。

 「またmRNAはとてももろく、低温で保存が必要なのはそのためです。抗体をつくるとすぐに破壊されています」と、DNAを変えることはないとの考えを示した。

ワクチンにマイクロチップが含まれている?

 「ワクチンにはマイクロチップが含まれていて動向を追跡される」という人もいる。

 マイクロソフトのビル・ゲイツ氏がマイクロチップで、ワクチン接種した人の動きを追跡しようとしているというものだ。

 「慈善活動に熱心なゲイツ夫妻がアフリカなどの途上国で予防接種を行っていて、誰に何を接種したかを管理することが難しく、マイクロチップの使用を検討していることから、そんな話が出てきたようです。

 また新型コロナウイルスワクチンに特別なインクを入れて誰がワクチンを受けたかわかるようにするリサーチが、Gates Foundationから資金を得ていると聞いて、マイクロチップに結び付けて考える人もいるようです」と田中医師は語った。

 「検討しているのは、マイクロチップをワクチンとは違う場所に入れて、その情報をあとで機械を使って見るようにするというものです。マイクロチップの技術は今でも例えばペットのために使われていて、うちの犬にも入れてあります。マイクロチップは米粒ぐらいの大きさで、注射には入りません」

 「つまりワクチンの中にマイクロチップを入れることはできません」
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC526112/ (アメリカ国立衛生研究所・国立医学図書館)

ワクチン接種後数日はアルコールを我慢!

 ワクチンを接種してから数日はアルコールを飲まないことを強く勧めている。これはアルコールが免疫反応に影響するためで、強い、長期的な免疫をつけるためにはアルコールを飲むのは避けるべきとされている。

ワクチン接種の順番を他の人に譲れるか?

 今回のワクチン接種は年齢などによって順番が決められている。自分は接種を受けたくないが、たとえば家族は受けたい。でも、順番は後ろだという場合、接種の権利を譲ることができるかだが、答えは否。自分の順番が来るまで待つ必要がある。

ワクチン接種の時期を逃してしまった

 ワクチン接種の時期が来たけれど、体調を崩して受けられなかった。あるいはそのときは受けたくなかったが、気が変わって接種してもらいたい…、そういう場合もBC州ではワクチン接種を受けることはできる。

 予定されている時期より前に受けることはできないが、後になるのは構わない。

インフルエンザなど他のワクチンとの接種

 肝炎、インフルエンザ、HPV(子宮頸がん)など他のワクチンの接種を受けても、あるいは受ける予定があっても、新型コロナワクチンの接種を受けることはできる。

 しかし、副反応が現れたときどちらのワクチンによるものか見極めるためにも、異なるワクチン接種は2週間以上後に行うことを推奨している。

心配な場合は医師に相談

 前編でも紹介したが、Canadian Society of Obstetrics and Gynecology:SOGC(カナダ産科婦人科学会)、National Advisory Committee on Immunization(予防接種に関する全国諮問委員会)、BC州の公衆衛生の専門家は、妊娠中や妊娠したい人、授乳期の人もワクチン接種を安全に受けることができるという考えを示している。

 ただし、心配や質問がある場合は医師への相談を推奨している。

 Immunize BCのウェブサイトで新型コロナワクチンに関する質問を受け付けている。https://immunizebc.ca/ask-us

*記事は1月31日の時点でのBCCDCとBC州政府の情報に基づく。

(取材 西川桂子)

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