カナダへのファイザー製ワクチンの供給が滞っている。結果、1回目にファイザー製ワクチンを接種した人が、2回目の接種でモデルナ製をオファーされ、予約をキャンセルする人がいるという。カナダの複数のメディアが報じている。1回目と同じファイザー製ワクチン接種を希望しているためという。
1回目ワクチン接種者半数近くがファイザー社製
カナダ政府の発表では、最低1回の新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた人の種類別割合は6月19日時点で、ファイザー製が約50パーセントで最多となっている。モデルナ製は2番目に多いものの、ファイザー製ワクチンを受けた人はモデルナ製の4倍以上。
6月19日時点でのワクチン別接種者の割合
COVID-19 ワクチン | 最低1回の接種 |
ファイザー | 48.41% (18,399,333) |
モデルナ | 11.80% (4,483,925) |
コビシールド | 0.72% (272,042) |
アストラゼネカ | 4.26% (1,619,474) |
ジョンソン&ジョンソン | 0% (103) |
コンビネーション | 1.21% (459,481) |
(注:ケベック州の数字を含まず)
欧州でも行われている交差接種
ワクチン接種で先行したアメリカでは、2回接種が必要なワクチンについては同じ会社のものを使用している。カナダでも接種開始時には2回とも同じワクチンを接種していた。そのため、1回目にファイザー製ワクチンだった人は2回目もファイザー製を受けると思っていた人が多い。
mRNAワクチンの交差接種が急増したのは、カナダでファイザー製ワクチンの供給が減少しているためという。SNS上でも2回接種が必要なワクチンについて、異なるワクチンが接種がされているという現状に困惑する投稿を見かける。
ただし、交差接種でも血栓の問題があったアストラゼネカ製ワクチンを1回目に接種した場合は、ヨーロッパの一部の国でもアストラゼネカとmRNAワクチンの交差接種が行われている。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相も1回目はアストラゼネカ製、2回目はモデルナ製を接種した。イタリアのマリオ・ドラギ首相も、1回目はアストラゼネカ製だったが、2回目は米ファイザー製ワクチンだった。
さらに新型コロナワクチンに関連してアストラゼネカ製ワクチンのみ2回接種するより、アストラゼネカ製ワクチンとファイザー製やモデルナ製のようなmRNAワクチンを交差接種すれば免疫効果がより大きいという研究結果がいくつか出ている。
「インターネットで検索しても、アストラゼネカ製とmRNAワクチンの交差について多くの記述が見つかるのですが、mRNAどうしの交差はなかなか見つけることができません。カナダ政府が安全と言っても、どれだけのデータがあるのでしょう」(50代女性)と不安の声が聞かれる。
接種会場で前回と異なるmRNAワクチンを接種されると知って、キャンセルするケースが出ているという。バンクーバー新報が話を聞いた人も「予約しましたが、モデルナしか受けられないようなら約をキャンセルするべきか考えています」と答えている。
あるいはファイザー供給が8月には増えると考えて「私は8月で予約しました」(60歳代女性)という人もいる。
ファイザー製とモデルナ製ワクチンは同じ?
ブリティッシュ・コロンビア州衛生管理局長ボニー・ヘンリー博士は6月23日の定例記者会見で、ファイザーとモデルナワクチンについて「異なった脂肪カプセル(脂質ナノ粒子)に組み込まれているものの互換性があります。これまでに数百万という人で安全であることが確認されています」と説明した。
カナダ連邦政府の公衆衛生局長テレサ・タム博士も6月28日のツイッターに、ファイザーとモデルナはいずれも同じmRNA技術を用いていて、1回目にファイザーかモデルナの接種を受けた人は、2回目はいずれのmRNAワクチン接種を受けても問題はない旨の投稿を行った。
一方、カナダの予防接種に関する諮問委員会(NACI: National Advisory Committee on Immunization)は「(ファイザー、モデルナの)mRNAワクチン接種を1回目に受けた人は2回目も同じmRNAワクチンをオファーされるべき」との基本姿勢を示している。
ただし「同じワクチンが利用できないとき、もしくは最初に接種を受けたワクチンが何か分からない場合は、別のmRNAワクチンを用い、接種を完了するべき」と6月17日の声明で述べている。
(編集部注:1回目にアストラゼネカ製ワクチンを受けた人は2回目はmRNAワクチンのほうが好ましいとしている)
デルタ株拡大阻止に向け、急がれるワクチン接種完了
カナダでmRNAワクチンの交差接種が行われるようになったのには、ファイザー製ワクチンの供給減少と、デルタ変異株への警戒によるという。デルタ変異株はインドで初めて確認され、より感染力が強いとされている。
イギリスではデルタ変異株の感染が拡大したことで、予定されていたロックダウンの緩和が延期された。
イギリス健康安全局の副主席医務官ジェニー・ハリーズ医師はデルタ株の感染拡大が進んでいる中、最大の防御はワクチン接種、特に2回の接種を終えることで、1回のみと比べると極めて大きな効果が確認されえているとして、ワクチン接種を受けること、また1回のみしか接種を受けていない人には2回目も接種することを呼び掛けている。
テレサ・タム公衆衛生局長は6月4日の会見の際に、イギリスを例にとって、デルタ株がカナダでも確認されている中、2回の接種を終えることが重要だと述べた。
さらに7月2日のツイッターでも、2回目のワクチン接種により新型コロナウイルスに対する免疫を強め、持続期間を延ばすことができるとして、(2回の)ワクチン接種の重要性を再度、強調する投稿を行った。
カナダ政府が発表しているワクチン供給と分配予測(7月5日時点)
ファイザーワクチン分配予測
配布先 | 6/21 – 27 | 6/28- 7/4 | 7/5 – 11 | 7/12-18 | 7/19 – 25 | 7/26-8/1 |
計 | 2,414,880 | 2,414,880 | 897,390 | 1,433,250 | 3,107,520 | 3,671,460 |
QC | 546,390 | 547,560 | 203,580 | 324,090 | 703,170 | 830,700 |
ON | 939,510 | 938,340 | 348,660 | 558,090 | 1,208,610 | 1,428,570 |
AB | 283,140 | 281,970 | 105,300 | 167,310 | 362,700 | 429,390 |
BC | 327,600 | 328,770 | 121,680 | 194,220 | 422,370 | 498,420 |
モデルナ ワクチン分配予測
配布先 | 6/24 – 27 | 6/28 – 7/4 | 7/5 – 7/11 |
計 | 1,000,020 | 3,889,900 | 1,406,720 |
QC | 226,380 | 880,600 | 318,500 |
ON | 388,920 | 1,512,840 | 547,120 |
AB | 116,900 | 454,720 | 164,500 |
BC | 135,800 | 528,500 | 191,100 |
(取材 西川桂子)
合わせて読みたい