夏にぴったりのアニメの祭典、アニメレボリューション。アニメの世界だけでなく日本文化も広めてくれるバンクーバーの一大イベントには毎年大勢のアニメファンが詰めかける。今回はそのアニレボの仕掛け人、CEO(最高経営責任者)でビジネスマンでもあるCan Ngoさんに話を聞いた。
アニメとの出会い
Canさんは両親がベトナム戦争から逃れて滞在していたタイで生まれた。カナダへ移住が決まり喜んだ父親がCanという名前をつけたという。両親と4人の子どもたちがカナダへ移住して新しい生活が始まったが、彼がわずか10歳の時に母親が亡くなった。そのころカナダはフォスターケア制度を取り入れていたため、子どもたちは別々の家族に預けられた。Canさんは家族と離れて寂しくてたまらなかったという。
そんな時、アニメに出会った。まだインターネットもなく、テレビからCDにダビングして友達と交換していた時代。Canさんも友達から借りた「るろうに剣心」(オリジナル版)を夢中で視聴した。アニメは彼の心に癒しを与えてくれたという。
14歳でIT会社に就職し、テクノロジーを始めとしてビジネスのノウハウも取得。その後自分のIT会社を設立した。もちろんアニメも見ていた。だが参加していた小さなアニメコンベンションがなくなった時、自分と同じようにアニメで慰められた人たちが悲しむのを見て、それなら自分が新しいアニメの集まりを作ろうと考えた。
「最初から大きなことはできない。まず小さくてもいいからと考えてスタートしました」と振り返る。もちろんその当時は、これがのちにバンクーバーからトロント、大阪にまで広がるとは全く思っていなかったそうだ。
日本の声優招待について
ファンの間ではアニレボと呼ばれて親しまれているこのイベント。日本では絶対に会えない声優が毎年続々と来加するのも魅力の一つ。しかも他と違う点は、記者会見だけにとどまらず、声優に近寄れて写真撮影、サイン会など、ファンにとって最もうれしいイベントが恒例となっている。
だがCanさんによると日本から声優を招待するほど大変な作業はないらしい。まず日本の声優のスケジュールは1年びっしり詰まっているため、招待も1年以上前に計画。通常、声優のマネージメント・エージェントと掛け合うことから始まる。声優が宣伝のために国内の地方に出かけることはあるが、海外、しかもバンクーバーに来る理由は全くない。一旦日本を飛び出したアニメ制作は、こちらの配給会社によって宣伝されるため、こちらのイベントですら日本語の声優を必要としない。
「これはもう声優の『慈善と優しさ』にかけるしかない」そうだ。そして交渉に応じてくれた声優にはそれなりの待遇をしてあげたいと考えるCanさんは、自分のチームに失礼のない接待を指示して、声優たちがファンと直接交流して個人的にも楽しめるようにと工夫している。
近年は新型コロナウイルス感染予防対策でカナダ・日本両政府によるPCRテストやホテル待機など、声優のスケジュール調整が全くできない状況にあった。それだけに今年のアニレボ開催には大きな期待がある。
「コスプレ、されたことありますか?」という質問を逆質問してきたCanさん。「いいえ」と答えたら「やってみたらいいかも」とアドバイスしてくれた。彼の言葉から、もし何かのキャラクターに自分を置き換えたら人生が変わるのかと想像してしまう。
アニレボの舞台に立ちファンと笑顔で交流するCanさんを見た人は、彼がこれまでアニメの主人公以上に苦労してきたとは誰も想像できないだろう。そんなヒーローになるべくしてなった彼のアニレボに今年も期待大だ。
アニレボは7月29日から31日までの3日間。アニメを満喫して、新たな自己発見に遭遇するチャンスを逃す手はない!
サマー・アニレボ2022:
今回のゲストはガンダムやセーラームーンでお馴染みのベテラン声優、古谷徹さん。くじに当たった人のみが30ドル払って写真撮影できる。当日でも可能だが、希望する人は https://forms.gle/Fjb6Dbsspqwc4UPk8 から先に申請可能。ほかに日本からはオンラインで小西克幸さん、バンクーバー地元の声優やVTuberらも登場する。
どのアニメイベントでも共通するマナーとして、コスプレの人たちの写真を撮るときは先に声をかけて確認を。またかわいいからといっていきなり触ったり抱きついたりするのはタブー。トークショーでは相手に失礼のない質問で。ファンレターや小さな贈り物は、声優さんがスーツケースに詰めて持って帰れる重量程度なら大丈夫ということだ。
3日間で回りきれないぐらいほどのイベント、展示、パネル、パフォーマンス、ゲーム、タレントショー、グッズ販売、コスプレコンテストが予定されているので、週末チケットはお早めに。https://anirevo-summer.eventix.app
期間:2022年7月29日~31日
HP:https://summer.animerevolution.ca/
(取材 ジェナ・パーク)
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